2009/4/16  1:28

アニータ事件とタゴ事件、こんなに違う責任追及のやり方  他の自治体等の横領事件とタゴ51億円事件

■通称「アニータ事件」と呼ばれるのは、青森県住宅供給公社を舞台にした巨額横領事件ですが、同事件では、同公社の元経理担当主幹千田郁司が1993年2月から2001年まで計約14億5900万円を横領しました。事件の規模は、安中市土地開発公社を舞台にしたタゴ51億円事件に比べると、犯行規模は約3.5分の1に過ぎませんが、マスコミでの報じられ方は、何十倍にもなりました。

 この事件は、2001年9月11日の米国での同時多発テロをきっかけに、日本政府が我が国から海外に出て行ったカネの流れを調べたところ、青森県から南米チリに対して高額な送金がたびたびあるのがわかり、その連絡を受けた仙台国税局が、青森県住宅供給公社の税務調査をしたところ横領が発覚したものです。横領は1993年2月から始まりましたが、公訴時効のため1994年10月以降の計約14億4600万円が起訴されました。千田郁司は青森市の飲食店で知り合ったチリ人女性アニータ・アルバラードと結婚した1997年から横領額が急増し、約11億円がチリ人妻に渡ったとされています。

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↑3月31日に解散し、今後3年間清算業務を続けることになった青森県住宅供給公社↑

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↑県合同ビル内の各階案内板。最上階の8階に公社がある。↑

■千田郁司は2002年、青森地裁で懲役14年の判決が確定し、その後山形刑務所に服役をしていると報じられました。一方、事件発覚から間もなく、青森県住宅供給公社は千田郁司を相手取り民事訴訟を起こし、1993年2月以降の横領額全額の賠償を命じる判決が出ました。

 さらに、同公社は、千田受刑者が横領を重ねていた1992年度から2001年12月まで在職した旧役職員22人中、賠償請求を拒否した19人を相手どって、総額9億円余の損害賠償を求めた民事訴訟を2002年5月に提訴しました。しかし、同年7月の第一回口頭弁論後、非公開の弁論準備手続きが長期化、口頭弁論が再開したのは、約3年後の2005年10月で、その後証拠調べが行われました。2006年2月28日、青森地裁での判決言い渡しでは、公社側が求める総額約9億円の損害賠償請求に対し、認められたのは元職員の直属の上司5人に対する4230万円だけでした。そこで、公社は、判決を不服として仙台高裁に控訴し、同年6月9日の控訴審初公判で裁判所が双方に和解を勧告。結局、同年9月12日に、被告9人が総額1850万円を支払うことで決着したのでした。和解額は全体の僅か1.2%に過ぎませんが、公社の上司の監督責任をはっきりさせたことは評価されます。

■このように、同公社は、14億円を超す損金の穴埋めをするために、元職員の千田郁司を相手どり損害賠償請求を起こすとともに、元役職員22人に対しても、一人当たり15万円から1億円を超える範囲で、総額約9億円の損害賠償を求め、うち損害賠償に応じなかった19人を相手取り、民事訴訟で最終的に直属上司5名に計4230万円の支払を命じる判決が出ましたが、公社はこれを不服として控訴までしたのです。最終的には、裁判所の和解勧告で1850万円しか回収できませんでしたが、安中市のタゴ事件での公社関係者の対応とは雲泥の差です。

 しかし、合計して総額9億円を超えるカネをチリに送らせたチリ人の妻アニータは、善意の第三者の立場を主張して、被害金の返還を拒みました。そこで同公社は国際取引問題に詳しい弁護士を起用して、チリのアニータの豪邸などを処分しましたが、結局高い弁護士料で相殺され、実際の回収額はわずかな額に留まりました。

■そうしたなかで、今年の4月1日に青森県住宅供給公社が、3月31日付で解散したというニュースが駆け巡りました。安中市土地開発公社のタゴ事件と背景が異常に似ていることから、当会は、2001年12月に公になった、このアニータ事件に多大な関心を寄せてきましたが、この解散の報道には大変ショックを受けました。

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“アニータ事件”青森の住宅供給公社が解散
 東北地方整備局は3月31日、地方住宅供給公社法に基づき、元職員による14億円横領事件が起きた青森県住宅供給公社が同日付で解散することを認可した。事件に加え、住宅需要が一段落したことなどが理由という。
 整備局などによると、3月31日付で岩手、福島、富山の住宅供給公社も解散認可を受け、住宅供給公社解散は青森を含めた4社が全国初という。
 事件は、元経理担当主幹の千田郁司受刑者(51)が大金をチリ人妻アニータ・アルバラードさん(36)に渡したことなどが発覚して注目された。
 公社は4月1日から清算法人に移行し、今後3年かけて残った財産の処理を進める。財産は県内7市町にある土地(簿価約20億円)と預金約40億円の計約60億円。千田受刑者に対する約14億5000万円の債権は清算終了後に青森県に譲渡するという。
 公社はアニータさんの豪邸を競売にかけ、民事訴訟で歴代役員に損害賠償を請求するなどして被害金の回収を進めたが、費用もかかり実質的な回収額は5300万円程度にとどまった。千田受刑者への賠償請求は続けるが、公社は「回収は難しい」とし、めどは立っていない。
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■この記事の内容を確認するため、当会情報部では急きょ特別調査班を立ち上げて、現地に赴きました。

 青森県で2001年に発覚したアニータ事件とよばれる巨額横領事件の舞台となった青森県住宅供給公社は、青森県の県庁所在地である青森市の新町にあります。青森駅から東に向かって10分ほど歩くと、県庁があり、その東隣の公園の北隣りに青森県の関係団体機関の建物が並んでいますが、その一角に8階建ての県合同ビルが見えます。このビルの1階ロビーに掲示されている各階案内板には、最上階の8階に青森県住宅供給公社の名前があります。
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↑青森市新町2-4-1にある県共同ビルの外観。8階の右側に住宅供給公社がある。↑

 さっそく、関係者の話を聴取するためにエレベーターで8階に上りました。8階には道路公社などもありましたが、住宅供給公社には、まだ6名くらい事務員がいました。入口に近い席にいた女子事務員に「群馬県安中市から来ました。いわゆるアニータ事件で有罪となった千田服役囚に対する損害賠償請求権の取り扱いについてお聞きしたい」と声をかけたところ、怪訝そうな顔で、奥にいた上司らしい別の女子職員に取り次ぎました。間もなく、上司の職員が出てきて「ここは清算業務だけなので、損害賠償の裁判のことであれば、県庁の庶務課が担当です」というので、「では別の建物ですか?」と聞くと、同じ階にあるというので、案内していただきました。

 エレベーターの出口から右手の奥の北側の部屋が庶務課でした。部屋に通されて、担当の女子職員を紹介してもらって、改めて、来訪の目的を告げたところ、「とりあえず会議室でお待ちください」と、入口の左手の部屋で待たされました。まもなく、一人の男性が部屋に入ってきました。青森県住宅供給公社事務長で、青森県土地開発公社と青森県道路公社の総務部長も兼務されている方でした。

 さっそく、安中市土地開発公社の巨額詐欺横領事件について説明しました。そのあと、いわゆるアニータ事件について、同公社の対応等を質問してみました。しかし、同事務長は、4月1日に就任したばかりで、前任者から裁判については詳しい引き継ぎを受けておらず、事情がわからないとして、「詳しい者を呼んできます」と言って、事件の事情をよく知る実務担当者を呼びに行きました。

 ほどなく、事務長は一人の中堅職員を連れて戻って来ました。同じく青森県住宅供給公社・青森県土地開発公社・青森県道路公社の総務部庶務課の主査のかたです。そこで、挨拶もそこそこに、当会から次の事情説明をしました。

@安中市土地開発公社では、単独犯とされた元職員に対して、損害賠償請求訴訟を起こし、初公判から僅か4日目の平成11年5月31日に被告元職員が欠席のまま、勝訴判決が出たこと。

A元職員は刑事事件で、平成8年4月8日に懲役14年、未決勾留200日の判決を受け、刑期はおそらく今年の9月21日ごろ正式出所となると思われるが、別の情報では数年前にすでに仮出所したという情報もあること。

Bそのため当会は、仮出所した場合の居場所を千葉刑務所を管轄する法務省に問い合わせたが、安中市とは別法人の土地開発公社の事件に対して、安中市民は直接の被害者ではないため、服役囚の出所情報は教えられないと言われたこと。

C一方、安中市では、元職員は刑務所で服役中であると議会答弁しておきながら、元職員の居場所を突き止めて請求するなどと市民に説明しており、既に出所している場合には、損害賠償の民事判決後10年間で、債務が履行されないまま、請求権を行使しないでおくと、民法で言う消滅時効にかかってしまう恐れがあること。

D元職員は、公金から3億円余りを横領していたほか、群馬銀行から総額49億円を、公社理事長印を自由に使って、さらに債務保証の市長印さえも友達の秘書係長を使って借用書に押印させ、騙し取ったが、そのうちの10億円は、借り換えだったため、実際に群馬銀行側のいう損害は39億円だったが、そのうち、6億円を、群銀などの金融機関にあった家族名義の預金や、骨董品、株券、会員権の公売等による現金化により損害額に充当させ、残り33億円を巡って、群銀が安中市土地開発公社と、連帯保証人の安中市を相手取って3年近く民事訴訟が行われ、その結果、裁判所の和解勧告により、群銀が9億円を減額し、残り24億5千万円を103年かけて和解金として、土地開発公社と安中市が連帯して、群馬銀行に返済することになったこと。

Eしかし、この10年間、安中市と土地開発公社は総額1488万円しか、元職員の財産処分による換価等で回収できなかったこと。また、土地開発公社は安中氏と連帯保証人にして、今後さらに10年間、毎年12月25日に2000万円ずつ群馬銀行に返済する約束をいち早く行ったが、肝心の元職員や、事件の関係者らからの詐欺横領金の回収努力をまったく行わないまま、徒に消滅時効の到来を待っている観があること。

■こうした背景と実情を説明したあと、アニータ事件での青森県住宅供給公社の対応について、説明を求めました。お二人とも、当会の説明に大変関心を持って聞いていただき、さかんにこちらの説明内容を聞いて、メモも取っていただきました。そして、実務に詳しい同主査の話によると、同公社の最近の動きや、今後の動向はつぎのとおりです。

@青森県住宅供給公社の場合、このたび、解散したことにより本来の事務事業は行わないが、残余の財産の処分のため清算事業のみを3年間ほど継続すること。

A元職員の千田郁司に対する損害賠償請求権は、住宅供給公社から青森県が引き継ぐことになったこと。

B元職員に対する14億5千万円の債権は、元職員が山形刑務所に服役していることから、服役している限りは時効が中断すると判断していること。

Cしかし、安中市の場合と同様に、刑事事件で懲役14年の実刑判決を受けた元職員が、初犯で、服役態度が良好などという理由で、いつ仮出所となるかわからない可能性もあるため、毎年1回は、債務履行を求めて書面で元職員に対して請求確認を欠かさずに行ってきていること。

D清算業務機関3年間のうちに、千田郁司への損害賠償請求権を得た判決から10年が経過すること。上記のように、服役中であれば、時効の針はストップすると思っているが、仮出所しているとなると話は別。毎年、千田には損害金の請求をしているが、いずれにしても、10年が経過するこの3年間に提訴すべきかどうか決定する予定であること。

E公社としては、損害額の回収のため、元職員の千田郁司からの賠償金と、歴代公社の役員・監事の責任による賠償金、それに、千田から高級腕時計などをプレゼントされた事件関係者から任意に品物を返納してもらい、それらを公売に掛けて現金化したこと。

 このように、安中市土地開発公社の無責任な対応と異なり、あくまでも、損害回収を一義的に考える青森県住宅供給公社の真摯な対応姿勢がひしひしと伝わってきました。これにくらべると、我らが安中市の対応のいい加減ぶりがますます際立って感じられます。

 当会では、3月末に安中市長のことについて安中市監査委員あてに監査請求書を提出しました。しかし、当会の監査請求書が受理されたかどうかはまだ、安中市から何も連絡がありません。

【ひらく会情報部・アニータ事件特別調査班】

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↑青森県庁。今後、アニータの夫である千田郁司への損害賠償請求権は公社から県へと引き継がれる。↑
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