2017/3/31  23:56

大同スラグ訴訟…4.14第9回口頭弁論を再来週に控え原告が準備書面(13)と鑑定申立補充書を提出(その2)  スラグ不法投棄問題

■前回2017年1月20日の第8回口頭弁論期日で、原道子裁判長は原告らに対して、次の訴訟指揮をしていました。
(1) 甲53及び54の証拠説明書を提出されたい。
(2) 平成29年3月31日までに、被告準備書面(平成28年12月27日付け)の第2(4頁)に対して認否反論されたい。
(3) 平成29年3月31日までに、原告らの鑑定申立書(平成28年11月30日付け)について、被告の鑑定申立に対する意見書(平成29年1月13日付け)を踏まえ、以下の2点を検討の上、「鑑定申立書の補充書」と題する書面及び鑑定の必要性を裏付ける資料を提出されたい。
ア 裁判所における鑑定とはどのようなことを行うものか。
イ 化学的知見を専門家に相談し、原告らが希望する鑑定結果を得るために、どのような申立てをし、どのような事項を鑑定すればよいか。


 この訴訟指揮に基づいて、原告は、(1)と(2)に加えて、次に示す通り「鑑定申立書の補充書」を作成し、提出しました。

*****鑑定申立書の補充書*****PDF ⇒ o.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                       平成29年3月31日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
            鑑定申立書の補充書
                     原告  小 川  賢  ㊞
                     原告  鈴 木  庸  ㊞

 平成29年1月20日の第8回口頭弁論期日で、裁判所からの指揮に基づき次の事項について陳述する。

第1 平成29年1月13日付の「被告の鑑定申立てに対する意見書」に対する反論

 原告は、被告が本件農道整備工事に使用された有害物質を含む“スラグ混合砕石”と称する路盤材を、本来、原因者の費用で撤去させるべきところ、それを怠ったばかりか、有害物質に蓋をするために施工した本件農道舗装工事は、そもそも不要で違法である、と当初から主張してきている。
 同様に、被告が農道整備工事に使用した有害物質を含む路盤材は、そもそも、日本工業規格にも違反している(原告準備書面(11)3頁参照)。
 このように、当初から原告は、「大同特殊鋼由来のスラグは、廃棄物処理法に則り撤去するべきだ」と指摘してきている。
 被告は、当初はステージコンストラクションにより、本件農道舗装工事は最初から計画されていたものだと主張していたが、大同特殊鋼由来の鉄鋼スラグ(以下「スラグ」という)がブレンド骨材と称して敷設されていることは、否定しておらず、萩生川西地区の農道にはスラグが存在していることに争いは無い。
 被告は、最近になって、土壌汚染対策法の観点からのみ反論するようになったが、原告はスラグが敷設された直下の土壌については、本件訴訟では追及していない。このため、原告は、土壌汚染対策法については、必要な部分のみ指摘する。


 原告らの平成28年11月30日付け鑑定申立てに対する被告の意見は,下記のとおりである。
               記
第1 意見の趣旨
   鑑定の必要を認めない。
第2 意見の理由
 1 はじめに
   原告らの鑑定申立ては,鑑定方法の点において不適切であるという問題があるが,その問題は後述することにして,まず,本件農道の下層路盤材やその下の土壌を鑑定することの要否について説明する。
 2 原告らの申立てに係る鑑定は原告らの請求を何ら基礎付けないこと
被告の平成28年12月27日付け第8準備書面の第2・5項(6頁以下)で明らかにしたとおり,仮に本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材やその下の土壌から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合,以下のようになる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合,被告が乙22号証で示した「土壌汚染ガイドライン」の「1.1.1 土壌汚染対策法の目的」によると、まず「@新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ために、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することになる。(甲58号証)
 今回のスラグは有害物質が基準値を超えていることから、撤去の上、廃棄物処理法第15条第1項および廃棄物処理法施行令第7条第1項第14号イに定める遮断型最終処分場に最終処分しなければならないことになる。
 そのうえで、周辺の土壌が汚染されている場合に、その後、A適時適切に土壌汚染の状況を把握すること、B土壌汚染による人の健康を防止する、ということが土壌汚染対策法の主たる役割となる。
 そもそも被告は、@に示された土壌汚染源たる大同特殊鋼由来のスラグの対処を怠っていることを肝に銘じなければならない。


 地下水を経由した摂取リスクの観点から,本件農道から概ね500メートルの範囲における飲用の井戸の存否を確認し,飲用の井戸が存在する場合は,その範囲に存在する適当な井戸(この井戸は飲用に限らない。)から採取した地下水の水質測定を行い,その結果が地下水に係る基準値を超過していなかったときは,「汚染の除去等のための措置」として,継続的に地下水の水質測定を行うことになる(土壌汚染対策法施行規則別表5・1)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 乙22号証の中のぺージ2にある「図1.1.1−1土壌汚染対策法の概要」(甲58)には、本件農道に下層路盤材として敷設されているブレンド骨材の下の土壌から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合、まず要措置区域に指定及び公示(台帳に記帳)が行われ要措置区域の管理が行われる、とある。
 また、乙22号証の中のページ282と283にある「第5章 汚染の除去等の措置」の「5.1.1基本的な考え方」(甲59)には、「地下水の水質の測定(地下水モニタリング)は、地下水汚染が生じないことを確認するものであることから、措置の期限は定められない。したがって措置実施者が地下水の水質の測定を実施した場合、要措置区域の指定は解除されることがない。」とある。
 要措置区域の指定が解除されない状態で風評被害が防げるのであろうか?もしくは土壌汚染対策法を無視して要措置区域に指定しないのであろうか。被告の主張は支離滅裂で何を言っているのかよくわからない。
 原告は、あらためて論理的でわかりやすい釈明を原告に求めたい。


 A 人体に直接触れるリスクの観点から,舗装等を行うことになるが,これは本件農道舗装工事により,既に施工されている。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 甲60号証に示す現場写真のとおり、舗装は有害スラグや汚染された土壌を完全に覆うものではなく、一部は薄く盛り土した状態なので不完全であると言わざるを得ない、この点からも被告の主張は支離滅裂である。


(2)以上の説明では若干分かりにくいと思われるので,以下,鑑定を実施した場合に,その結果によって明らかになることや,論理的に帰結されることについて,場合を分けながら整理する。
 ア まず,鑑定の結果,土壌汚染対策法所定の基準値を超えていなかった場合は,その時点で,原告らの請求に理由がないことが明らかになる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 土壌汚染対策法所定の基準値を超えていなかった場合でも、廃棄物処理法所定の廃棄物の適正処分を原因者に行わせなければならない。廃棄物は廃棄物処理法施行令第7条に定められている処理施設に適正処分しなければならない。


 イ 他方,鑑定の結果,土壌汚染対策法所定の基準値を超過していた場合は,次に概ね500メートルの範囲に飲用の井戸があるかを調査することになる。
  (ア)概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在しない場合は,地下水を経由した摂取リスクの観点からの措置は求められず,求められるのは,人体に直接触れるリスクを除去するための舗装等の措置のみとなる。したがって,この場合は,結果的に本件農道舗装工事の正当性を裏付ける帰結となり,原告らの請求に理由がないことが明らかになる。
  (イ)他方,概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在する場合は,更に適当な井戸を選定して地下水の水質測定を行うことになる。
   i 水質測定の結果,地下水に係る基準値を超過していなかった場合は,地下水を経由した摂取リスクを除去するための水質測定を継続することになる一方,人体に直接触れるリスクを除去するために舗装等が求められることになる。すなわち,この場合も,結果的に本件農道舗装工事の正当性が裏付けられることになり,原告らの請求には理由がないことが明らかになる(なお,水質測定を継続するか否かは,原告らの本件請求とは関連性がなく,本件訴訟の審理の対象外である。原告らの請求を離れて継続的な水質測定の要否の判断に踏み込むことは,住民訴訟の制度趣旨を逸脱するものであり,許されない。)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 原告は、ブレンド骨材なるスラグを「廃棄物だ」と被告群馬県が指摘したので、廃棄物処理法に則り適正に処分してもらいたい、と考えた。そのため、本件訴訟に踏み込んだ。
 水質測定を継続するか否かなどは,原告らの本件請求とは関連性がなく、原告は請求を離れて、継続的な水質測定の要否の判断に踏み込むことはしない。
 被告は、本件訴訟の途中で、自ら土壌汚染対策法について主張し始め、原告を巻き込もうとしている、大変迷惑な話であり、群馬県が認定した廃棄物「鉱さい」の適正処理について、原点に戻って考えてもらいたい。


   ii 他方,水質測定の結果,地下水に係る基準値を超過していた場合は,遮水工封じ込めや土壌汚染の除去等の措置(乙21・5頁以下参照)が求められることになる。この場合に限って,本件農道舗装工事の正当性に疑義が生ずる。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 土壌汚染源たる大同特殊鋼由来のスラグを廃棄物である「鉱さい」と認定しておきながら、しかも土壌と接する方法で使用した場合、フッ素による土壌汚染の可能性がある(甲57号証)、と指摘しておきながら、地下水まで基準値を超過してした場合、萩生川西地区は農地として壊滅的であり、風評被害どころではないのではないか。被告は県民農業者の生活及び営農環境の安全・安心を担保するのが責務のはずである。


(3)要するに原告らの請求が基礎付けられるのは,上記2(2)イ(イ)iiの場合に限られるから,結局,@下層路盤材その下の土壌が土壌汚染防止法上の基準値を超えていること,A概ね500メートルの範囲に飲用の井戸が存在すること,B概ね500メートルの範囲から選定した適当な井戸から採取した地下水が地下水に係る基準値を超過していることの3つが全て証明されなければならない。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 甲58号証の「土壌汚染対策の目的@新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ため、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することを、被告は全く無視している。被告が主張する下層路盤材が土壌環境基準を超過している場合、土壌汚染源として萩生川西地区の農道に厳然と存在することになる。

   しかるに被告は,大同特殊鋼株式会社から排出された鉄鋼スラグが用いられた群馬県内の地点について,土壌汚染対策法所定の手順に従って水質測定を実施しているところ,平成28年9月末現在,地下水に係る基準値を超過した結果が出た地点はない(添付資料参照)。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
被告の鑑定申立書への意見書の添付資料「【12月15日】大同特殊鋼鰹a川工場から排出された鉄鋼スラグに関する使用箇所の解明等の状況について(廃棄物・リサイクル化)」を参照すると、群馬県廃棄物・リサイクル課が「大同特殊鋼株式会社渋川工場から排出された鉄鋼スラグについて、平成27年9月11日に廃棄物処理法に基づく調査結果を公表後、使用箇所の解明及び環境調査を進めてきたところですが、現在の状況は次のとおりです。」として「(3)環境への影響調査について」を示している。廃棄物処理法に基づく調査があれば、法律に則った対策が示されるのが通常である。
 この報告を見ると、廃棄物処理法に基づく調査の延長として「使用箇所の解明及び環境調査を進めてきたところ」と説明しているのであり、その中の現在の状況として「地下水への影響は認められない」としているのである。
 土壌汚染対策法なる法律名はどこにも示されていないばかりか、廃棄物処理法上どのように対策していくのかも示されていない。
 被告群馬県農政部のみが、土壌汚染対策法所定の手続きによる水質調査と勘違いしているのではないか。
 群馬県廃棄物・リサイクル課は「今後とも鉄鋼スラグの使用箇所の解明を進め」ている状況であり、とりあえず環境への影響についての監視をおこなっていく、として今後の対応方針を示しているのである。
 被告には、いつまでもこのような現在の状況の報告だけに留まっていないで、なるべく早く廃棄物処理法に則った対策を示すことが求められているのである。

したがって,現時点で鑑定を進めても,上記Bの事実が証明される可能性すなわち,本件農道から概ね500メートルの範囲から選定した適当な井戸から採取した地下水が地下水に係る基準値を超過している可能性は,極めて低い。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 被告がブレンド骨材と称する大同特殊鋼由来のスラグは、群馬県が廃棄物と認定しているものである。萩生川西地区の農道に敷設された状況は不適切であるので、原因者の負担で撤去の上適正に処分しなければならない。その際、有害物質が基準値を超えて含まれていれば、廃棄物処理法施行令第7条第1項第14号イに定める遮断型最終処分場に最終処分することになる。


(4) 以上の次第であるから,原告らの申立てに係る鑑定によりどのような結果がでても,それによって原告らの請求が基礎付けられる見込は極めて乏しいから,鑑定の必要性はないと言わざるを得ない。
   なお,現時点で,地下水に係る基準値を超過している可能性が皆無と言い切れるものではないので,原告らにおいて,私的に測定を実施するなどして地下水に係る基準値を超過している可能性があることを疎明した場合(例えば,基準値は超過していないが,相当程度の有害物質が検出された場合など)は,別途検討する余地はある。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する
 以上、縷々反論してきたが、本件農道に被告が主張する下層路盤材として敷設されているブレンド骨材から土壌汚染対策法所定の基準値を超える六価クロムやフッ素が検出された場合,被告が乙22号証で示した「土壌汚染ガイドライン」の「1.1.1 土壌汚染対策法の目的」(甲58)によると、まず「@新たな土壌汚染の発生を未然に防止する」ために、廃棄物の処理及び清掃に関する法律により対処することになる。今なお萩生川西地区の本件舗装工事を施した現場の農道には、廃棄物が敷設されたままになっている。これらの廃棄物が土壌汚染源としてどのくらいの有害物質を含んでいるのかを確認することは重要であり、「鑑定の必要性はないと言わざるを得ない」とする被告の主張は失当である。

3 鑑定の方法について
  以上のとおり,そもそも鑑定の必要性は認められないが,念のため,原告らが提案する鑑定の方法について意見を述べておく。
  原告らは,ブレンド骨材の中から鉄鋼スラブのみを抽出して検査を行う方法を提案している。
  しかし,地下水を経由した摂取のリスクの除去の観点からは,一定の広がりのある範囲内に有害物質がどの程度含有されているかが環境に与える影響の程度を左右するから,鉄鋼スラブを抽出して検査することには全く合理性がない。むしろ,環境負荷の程度を判断する上で誤りを生ずる恐れが高く,不合理な検査方法である。

 原告は、上記の被告の主張に対して、次のとおり反論する。
 常温・常圧では大同特殊鋼由来のスラグは天然石とブレンドしても、混ざり合う事は無いのでスラグのみを抽出して検査を行わなければ、誤った数値が検出されてしまうのは明らかである。
 学校で理科を履修してきて当然そのことに気付いている被告は、よほどスラグのみを抽出して検査を行われるのが嫌であるらしい。もっとも支道27号線などは、ほぼスラグ100%の状況であったことを原告は確認しているし、県会議員もそのように証言をしている(甲32号証)。


第2 裁判所における鑑定とはどのようなことをおこなうものか、について

1 鑑定とは
 一般的に「鑑定」とは,専門性の高い分野について,特別の学識経験を有する第三者に意見を求める手続のことをいうようである。世間では、とくに医療分野の訴訟でこの手続きが多用されるようだ。この背景としては,医学という専門性の高い分野がハードルとなるため,専門知識と経験の豊かな医師に意見を求めなければ,適切な判断をすることが困難であるという事情があると思われる。
 この専門性の観点から言えば、今回の事案は、中学校の理科や高校の物理・化学の基礎知識があれば、鑑定作業において困難はさほど問題にならないと思われる。
 鑑定の手続きは、「鑑定の申出」⇒「鑑定事項の作成・鑑定人の選任」⇒「鑑定事項の確定、鑑定の実施(鑑定人による鑑定書の作成)」⇒「(場合によっては)補充の質問」という手順を踏むようである。

2 本請求事件における鑑定の意義
 前項の視点から、原告らが所属する市民オンブズマン群馬と関係のある弁護士にアドバイスを乞うたところ、次の見解を聴取した。その結果は次のとおりである。
 はじめに「目的」としては、「路盤の下にスラグが埋まっていることを証明すること」そして「採取したスラグの化学的性質について専門性を有する分析機関に測定させ、分析結果について化学的な解析をし、環境への影響について客観的な鑑定人に求めること」とする。
 そのための「方法」としては、「検証の申立て(採掘手続;業者の手配,採掘作業,原状回復,道路占用許可などはこちらが費用負担する)」⇒「そこで採掘した土砂についての鑑定を申立て」という手順を踏む。
 原告は上記が正論と考える。
 ただし、当該弁護士によれば、仮に原告の上記の申立てが採用されない場合、次善の策として、原告は「現地での進行協議手続の申立て」⇒「進行協議期日において採掘手続を行う」⇒「採取した土砂について鑑定を申立て」という方法を取ってもよいとのことである。
 ここで、本請求事件のこれまでの経緯を振り返ることにする。
 本請求事件は、群馬県東吾妻町萩生川西地区の圃場整備事業で農道に鉄鋼スラグが不法投棄されてしまったわけだが、それを撤去してくれと原告は何度も電話で吾妻農業事務所に要請したにもかかわらず、舗装で蓋をされてしまった事案である。舗装工事の費用を公金から支出したのは違法だから、工事の決裁をした吾妻農業事務所長に費用請求せよというのが、本事件の端緒である。
 そのため、舗装されてしまった農道において、舗装の下に、本来であれば敷砂利として使用してはならないスラグが存在すること(このためこれまで被告群馬県は、敷砂利ではなく、ステージコンストラクションだとして、過渡的に下層路盤材として使ったと主張してきたが、この期に及び、土壌汚染対策法を持ち出し、周辺の井戸の地下水を汚染した証拠はないから、舗装で蓋をしたことには合理性がある、などと主張しはじめたわけだ)を証明することがこの度の鑑定申立ての目的である。
 また、下層路盤材として再生砕石の使用は認められているが、今回使用されたのは、産業廃棄物であるスラグを天然砕石と任意に混ぜて「再生砕石」を偽装して使ったものであり、しかも有毒物質(フッ素、六価クロム)を環境基準の10倍まで含むスラグを使用していることから、廃棄物処理法に違反するとともに、JIS(日本工業規格)の観点からも本来使用してはならない有毒スラグが土木資材として使用されていることを証明することもこの度の鑑定申立ての目的である。
 被告が、不法投棄されたスラグの存在をなかなか認めないまま、やれ下層路盤材だのステージコンストラクションなど、根拠のない言い逃れの主張を続けてきたが、平成28年12月27日付で被告が提出してきた乙20号証により、スラグが投棄された農道工事は、もともと「敷砂利工」として施工されていたことが明らかとなった。
 と同時に被告は、乙21号証と乙22号証で「仮に、本件舗装工事に先立って下層路盤材を敷設した地点の土壌から基準値を超えるフッ素や六価クロムが検出されていたとしても、土壌汚染対策法により、本件舗装工事と同等の舗装工事が実施されていたものと認められる」などと新たな主張を繰り出してきた。
 これと前後して、裁判所から「鑑定」という手段で、鉄鋼スラグの存在を第三者機関に証明してもらうという手続きがある、との指揮があったことから、原告は平成28年11月30日付で鑑定申立書を提出した。
 こうしたやりとりに呼応するかのように、平成28年12月22日に前橋地検により大同スラグ告発事件に対する不起訴処分決定(嫌疑不十分)が行われた。被告は、さっそく同年12月27日付の乙22号証で、この検察の決定を所掌として裁判所に提出してきた。
 原告は、乙20号証により、敷砂利に、廃棄物処理法で定める「鉱さい」である有毒スラグが使われたのは明らかであるから、ただちに撤去しなければならないとここに主張する。そもそも原告は、スラグを撤去しないまま農道舗装工事でスラグに蓋をしたのは廃棄物処理法による不法投棄を看過したことになり、舗装工事で蓋をした費用は、原因者(支出決裁者)が負担すべきだとして本件請求事件を提起しているのである。
 訴外大同特殊鋼、大同エコメットそして佐藤建設工業は、廃棄物処理法により産業廃棄物として認定されている「鉱さい」であるスラグを、しかも有毒物質を含んだままのスラグを、天然砕石とまぜて「再生砕石」として偽装して不法投棄をしでかした。
 被告はこれを廃棄物だと認めているのだから、廃棄物処理法により適正に撤去措置を原因者に命じればよいところ、あろうことか、土壌汚染対策法にからめて不法投棄から目をそらそうとする画策する始末である。
 こうした言い逃れを許さないためにも、被告は原告の鑑定申立の必要性を認めて、実態の把握に協力しなければならない。
 しかも被告は、萩生川西地区の本件農道整備工事において、大同特殊鋼由来のスラグがブレンド骨材と称して敷設されていることは、認めているのであるから、鑑定の必要性については当然理解できているはずだ。

3 科学的知見を有する専門家の見解

 原告は、裁判所からの「化学的知見を専門家に相談し、原告らが希望する鑑定結果を得るために、どのような申立てをし、どのような事項を鑑定すればよいか」という指揮に基づき、専門家に化学的知見を相談したところ、専門家から平成29年3月24日付で「東吾妻町萩生川西地区にみられる有害スラグの取り扱いに関する意見書」を書面で取得した(甲64号証)。
 これによれば、基準を超えたフッ素が含まれている可能性が高く、環境汚染のリスクが高いこと、強アルカリの毒性による健康面への影響も危険度が高いこと、アスファルトの被覆状況も完全な水系の遮断とは程遠く周辺農地への土壌汚染の脅威が無視できないことが、問題視されている。
 こうした観点から、現場の萩生川西地区の農道において投棄されたスラグの賦存状況とフッ素の残留状況を測定し、その環境負荷について、得られたデータをもとに専門的見地から分析および解析を行う必要があると結論付けることができる。
                       以上
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■そして上記の準備書面と補充書に関係する証拠説明書その他も提出しました。

*****証拠説明書(甲55〜64)*****PDF ⇒
5564170331.pdf
事件番号 平成27年(行ウ)第7号 住民訴訟事件
原告  小 川  賢 外1名
被告  群馬県知事 大澤正明
                    平成29年3月31日
前橋地方裁判所民事2部合議係 御中
          証拠説明書(甲55〜62)
                  原告  小 川  賢  ㊞
                  原告  鈴 木  庸  ㊞
 号証/標目/原本・写しの別/ 作成年月日/作成者/立証趣旨
●甲55/第187回国会 経済産業委員会 第8号会議録(抜粋)/写し/ 平成26年11月12日/衆議院/鉄鋼スラグが廃棄物に該当するか否かについての委員の質問に対して、環境省の政府参考人が、個別具体的な判断は、群馬県が適切に判断すると答弁したことを示す議事録。
●甲56/環廃産発第1303299号 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長 行政処分の指針について(通知)(抜粋)/写し/平成25年3月29日/環境省大臣官房/法が定めたルールをみだりに破り不法投棄された廃棄物について「違反行為」を把握した 場合には、生活環境の保全上の支障の発生又はその拡大を防止するため速やかに行政処分を行うこと。特に、廃棄物が不法投棄された場合には、生活環境の保全上の支障 が生ずるおそれが高いことから、速やかに処分者等を確知し、措置命令により原状回復措置を講ずるよう命ずること。」と地方自治法第 245 条の4第1項の規定に 基づく技術的な助言を行っている。
●甲57/大同特殊鋼(株)渋川工場から排出された鉄鋼された鉄鋼スラグに関する廃棄物処理法に基づく調査結果について/写し/平成27年9月11日/群馬県環境森林部廃棄物・リサイクル課 平成29年3月29日日現在、大同特殊鋼由来のスラグは廃棄物に認定されていることが、群馬県のホームページにより確認できる。
●甲58/土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)ページ1、2/写し/平成24年8月/環境省 水・大気環境局 土壌環境課/乙22号証と同じ文書の一部抜粋。土壌汚染対策法の目的として、@〜Bまで記載があり、@の有害物質を含む廃棄物の適正処分は廃棄物処理法で実施され、残るABが土壌汚染対策法で実施されることを定める。
●甲59/土壌汚染対策法に基づく調査及び措置に関するガイドライン(改訂第2版)ページ282、283/写し/平成24 年8 月/環境省 水・大気環境局 土壌環境課/乙22号証と同じ文書の一部抜粋。汚染の除去等の措置における基本的な考え方を示していて、「地下水の水質の測定(地下水モニタリング)は、地下水汚染が生じないことを確認するものであることから、措置の期限は定められない。したがって措置実施者が地下水の水質の測定を実施した場合、要措置区域の指定は解除されることがない。」とある
●甲60/乙24号証で示された舗装措置概念図と支道27号線の実際の舗装の様子の対比/写し/平成29年3月29日/原告/被告が提示した舗装措置概念図は、基準不適合土壌を覆うように舗装するとなっているが、実際の支道27号線の舗装の現場写真が基準不適合土壌を完全に覆い切れていない様子を写し取っている。
●甲61/土地汚染対策法の施行について/写し/平成15年2月4日/環境省環境管理局水環境部長/同文書の33ページ目。土壌含有量基準を超える指定区域において封じ込め措置(原位置、遮水工、遮断工)を行い、その上を50cm以上の汚染されていない土壌により覆う場合も盛土措置として位置づけられることになる旨記載あり。
●甲62/廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条第一項第三号イ(6)に掲げる安定型 産業廃棄物として環境大臣が指定する産業廃棄物/写し/平成18年7月27日/環境省/告示第105号。同じ「鉱さい」の分類である石綿含有廃棄物を溶融したことにより生じた「鉱さい」にフッ素の基準値が示されていることからも裏付けられる、基準値を超えるおそれのある「鉱さい」は特別管理産業廃棄物として処理しなければならないことを示す。
●甲63/鉄鋼スラグの撤去工事について/写し/平成26年6月11日/(独法)水資源機構/有毒スラグが埋め込まれた現場からスラグを撤去し、きちんと原状回復を実践した事例。
●甲64/東吾妻町萩生川西地区に見られる有害スラグの取り扱いに関する意見書/原本/平成29年3月24日/東京農工大学環境毒性学教授 渡邉泉教授/スラグにはフッ素が土壌環境基準を超えて含まれており、天然砕石と混ぜても汚染可能性があること、甲アルカリ物性は健康に有毒で、アスファルト舗装も不十分で浸み込んだ水は周辺農地を汚染するリスクを有することを示す。
                    以 上

*****甲号証*****
●甲55 PDF ⇒ b55.pdf
●甲56 PDF ⇒ b56.pdf
●甲57 PDF ⇒ b57qnypahrosxop.pdf
●甲58 PDF ⇒ b58yi.pdf
●甲59 PDF ⇒ b59il.pdf
●甲60 PDF ⇒ b60to.pdf
●甲61 PDF ⇒ b61ys.pdf
●甲62 PDF ⇒ b62ypbwyp.pdf
●甲63 PDF ⇒ j.pdf
●甲64 PDF ⇒ b64wniwj.pdf

*****送付書兼受領書*****
●送付書兼受領書(原告準備書面(11)、鑑定書の補充書、証拠説明書(甲55〜64)、甲号証) PDF ⇒ tei13j2017.3.31.pdf
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■今回原告が前橋地裁に提出した裁判資料は、昨年2016年12月22日に前橋地裁が、大同スラグ不法投棄問題の原因者である大同特殊鋼ら3社に対して、突如として不起訴処分を発表してから年を越して間もなく今年2017年1月20日に開かれた第8回口頭弁論における原道子裁判長の訴訟指揮に基づき、原告が準備してきたものです。

 ここでもう一度、前橋地検が下した衝撃的な不起訴処分について、昨年12月23日前後の報道内容をもとに、その概要をまとめてみました。

1.はじめに
 環境基準を超える有害物質を含んでいたスラグの処分を無許可の業者に委託していたとして、大同特殊鋼(名古屋市)、大同エコメット(愛知県東海市)、佐藤建設工業(渋川市)の法人3社と大同特殊鋼の役員(57)、大同エコメットの役員(66)と元従業員(68)、佐藤建設工業の役員(73)と従業員(65)ら計5人は、2016年4月26日に群馬県警から廃棄物処理法違反容疑で書類送検されていましたが、前橋地方検察庁は、2016年12月22日、「鉄鋼スラグを廃棄物と認定するのは困難で、立証には疑義が残った。関係者の故意を認定することも証拠上、困難だ」などとして嫌疑不十分で不起訴にしてしまいました。

2.送検の経緯
 スラグは鉄を生成する際に発生する副産物で、有害物質が含まれていなければ再生利用ができます。群馬県は関係先を調査した結果、大同がスラグに環境基準を超えるフッ素が含まれていることを把握していたことや、その取引形態から、再生資材を装った廃棄物処理だったと判断し、処理に必要な許可を受けていない会社に処理を委託した、などとして2015年9月7日に3社を刑事告発し、県警が2016年4月26日に書類送検をしていました。一方、大同は「製品としての再生資材だ」と主張していました。

3.リサイクル材かサンパイか
 「再生資材」か「産業廃棄物」なのか、大同特殊鋼渋川工場から排出されたスラグについて、群馬県や県警は「廃棄物」と認定しましたが、大同側は「再生資材だ」と主張し、前橋地検の判断が注目されました。
前橋地検は判断のポイントとして、@スラグは廃棄物と認められるのか否か、A仮に廃棄物だとして、関係者が廃棄物であると、それぞれ認識していたのか否か、を挙げた上で、いずれの点も刑事事件として裁判において十分な証拠をあげて立証していくことは困難であり、「嫌疑不十分」と不起訴の理由を説明する一方で、「廃棄物では絶対ないという言い方はしない」という歯切れの悪さが目立ちました。

4.県と県警の判断
 廃棄物処理法で扱う「不要物」の定義をめぐっては、過去の最高裁の判例で、その物の性状▽排出の状況▽通常の取り扱い形態▽取引価値の有無▽事業者の意思、などを総合的に勘案して決めるのが相当と示されていました。
 群馬県は、廃棄物処理法を所管する環境省と1年以上協議を重ねた上で、大同側が、スラグを環境基準を超える有害物質「フッ素」が含まれていると知りながら出荷▽販売額以上の金額を「販売管理費」名目で支払う「逆有償取引」だった、などの観点から「廃棄物」と認定し、2015年9月7日に大同など3社を刑事告発していました。
 県警も、これら2要素のほか、「製品」にもかかわらず流通経路が送検された3社間のみで完結していた点などから「廃棄物」と認定し、2016年4月に書類送検したものです。

5.地検の判断
 群馬県や県警は有害性や取引形態に着目したのに対し、地検の築雅子次席検事は会見で、「鉄鋼スラグを廃棄物と認定することや、関係者の故意性(廃棄物との自覚)の認定は、証拠上、困難だ」とし「刑事裁判で求められる合理的な疑いを超すだけの立証をするには、(証拠が)不十分だと判断した」と述べました。さらに、副産物の有効利用などを促す資源有効利用促進法に言及し、「有用な副産物は材料として利用できる、という視点もある。法が定めた生活環境の保全の重要性や、再生資源の必要性など、それらの法の趣旨に鑑みて、総合的に考慮して判断した」と述べました。

6.大同の行状
 名古屋市に本社がある大手鉄鋼メーカーの「大同特殊鋼」は、2011年(平成23年)3月1日から翌年2012年3月31日まで、およそ1年間にわたって、渋川市にある工場から鉄鋼の製造工程で出た有害物質を含む鉄鋼スラグおよそ2万8300トンの処分を、廃棄物処理の許可を受けていない無許可の関連会社である大同エコメットに委託処理をし、佐藤建設工業も同様に約1万8500トンを収集したなどとして、関連会社など2社やそれぞれの会社の役員らあわせて5人とともに廃棄物処理法違反の疑いで2016年4月26日に書類送検されました。


7.地検の不起訴処分への反応
(1)大同
 大同特殊鋼の本社広報室は、マスコミ取材に対して、「弁護人を通じて全員の不起訴の連絡を受けた。皆様のご心配やご懸念に対して引き続き誠実に対応したい」とのコメントを発表しました。
(2)群馬県
 群馬県の大沢知事は「県警は『被疑事実あり』として検察官に送致しており、不起訴処分は意外だ、不起訴の理由をよく確認し、今後の対応を決めたい。県としては引き続き、鉄鋼スラグの使用場所や環境への影響について調査を進め、県民の安全と安心の確保に努めたい」というコメントを発表しました。
 群馬県の廃棄物・リサイクル課は「不起訴処分は意外だ。今後よく理由を確認したい」としたうえで、「刑事罰と、環境面のことは別の問題だ」として、スラグの使用状況と、土壌や地下水への影響調査を続ける方針を示しました。
(3)群馬県警
 スラグを廃棄物と認定し、書類送検した県警生活環境課の幹部は「検察の判断について何も話すことはない」と言葉少なに語るのみでした。ある捜査関係者は「地検が疑義があるとしたのは、大同など当事者が故意性を否定していることが大きかったのではないか。残念だが仕方がない」と無念そうに言いました。

8.スラグ汚染の実情
 群馬県は、2014年1月27日の大同特殊鋼渋川工場などへの立ち入り検査で、同工場から鉄鋼スラグを廃棄物と認定し、2016年9月現在で、県内の公共工事337カ所、民間70カ所の計407カ所で、道路舗装などの工事現場で大同のスラグの使用が発覚しており、うち318カ所の環境調査の結果、スラグ134カ所、土壌86カ所から環境基準を超えるフッ素や六価クロムが検出されています。大同は「不良製品への対応」との名目で、調査や被覆工事の費用を負担しています。

9.これまでの時系列
 2002年4月   大同特殊鋼が大同原料サービス(現大同エコメット)と鉄鋼スラグの委託加工、売買契約を締結
 2009年7月   大同特殊鋼、大同エコメット、佐藤建設工業の3社で鉄鋼スラグを混ぜた路盤材の製造・販売契約
 2013年10月  渋川市が市スラグ砕石対策調査委員会を設置
 2014年1〜2月 県が3社の立ち入り検査を開始
 2014年8月   大同特殊鋼が内部調査の結果などを公表
 2014年8月   国交省が調査に着手
 2015年1月   鉄鋼スラグ協会が再発防止ガイドラインを改正
 2015年9月7日 県が3社を県警に刑事告発
 2015年9月11日 県警が3社の本社や工場を家宅捜索
 2016年4月   県警が書類送検


■ところで、明日から新年度ですが、これまで本件訴訟を指揮してきた原道子裁判長の異動の可能性に注目が集まっています。たまたま、3月23日発売の週刊文春に関連記事が掲載されていました(本項末尾掲載参照)。

 これによると原裁判長は59歳で間もなく定年を迎える年齢となります。別件の前橋バイオマス訴訟でも、自身の所属する民事第2部から民事第1部にシフトした経緯もあり、4月15日の裁判に姿を見せるかどうか注目されます。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「59歳の原道子裁判長が下した原発避難者訴訟判決に関わる記事」
*****週刊文春3月30日号「This Week」*****PDF ⇒ 20170323ttthisweekliqj.pdf
【社会】「国と東電は三千八百万支払え」 原発訴訟「想定外」の地裁判決
 福島第一原発事故は、東京電力が巨大津波を予見できたのに対策を怠ったため起きた。国も「同罪」――。前橋地裁は三月十七日、原発事故の原因を人災と断定し、国と東電に対して避難者ら六十二人に総額三千八百五十五万円を賠償するよう命じる判決を言い渡した。福島県からの原発避難者ら約一万二千人が全国二十カ所の裁判所で起こした集団訴訟で初めての判決だった。
 司法担当記者が解説する。
大規模な訴訟では通常、口頭弁論は二〜三か月に一回程度しか開かれませんが、原道子裁判長(59)は月一回という異例のハイペースで裁判を進めました。『自分が裁判長であるうちに判決を下したい』という意図が明確に読み取れたため、記者の間では『原告が何らか喝のだろう』とは予想されていました。
 判決は、国の地震調査機関が〇二年に三陸沖大津波を予測する見解を出し、東電は実際に十五メートル超の津波を試算していたのに、非常用電源の高台設置といった対策を講じなかったとして「東電は安全性より経済的合理性を優先した」と責任を認めた。
 だが、国の賠償責任まで認めた点は「想定外」と受け止められた。
「原子力損害賠償法は、原発事故が起きた際の賠償責任は、一義的に電力会社が負うと規定しています。国も同様の主張をしてきましたが、判決は『国の責任は東電に比べ補充的とは言えず、賠償額は同額だ』と指摘した。国策として原発を推進してきたのだから、責任も同じだという考え方が根底にあるようです」(同前)
 もともと集団訴訟は、福島からの避難者が「加害者側が決めた基準に従った補償しか得られないのはおかしい」と疑問を抱いたことから、各地で起こされてきた。判決はこの疑問に応える形となったが、「従来の司法判断から逸脱している」との批判もある。
 国家賠償訴訟に詳しい元裁判官は言う。
「国の不作為が違法と認められた裁判は、過去にじん肺被害、アスベスト被害などの例があります。これらは実際に被害が生じているのに、国が対策を講じなかった点が違法とされました。今回は震災前に原発事故が起きていたわけではなく、高裁で取り消される余地は大いにあります」
 未曽有の事故の責任を巡る議論はしばらく続きそうだ。
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■この原発避難者訴訟の判決について、原告側からは国の賠償責任を指摘した点は評価の声があるものの、被害者認定や賠償額が限定的だったという落胆の声もあり、原告には厳しい判決となりました。

**********毎日新聞2017年3月17日 21時20分(最終更新 3月18日 01時41分)
原発避難者訴訟 原告、笑顔なき勝訴…苦労報われず落胆
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前橋地裁判決を受け、報告集会でメモを取りながら弁護士の解説に耳を傾ける人たち=前橋市で2017年3月17日午後3時53分、徳野仁子撮影
 笑顔なき「一部勝訴」だった。17日の原発避難者訴訟の判決で、前橋地裁は東京電力と国の賠償責任は認めたものの、命じられた賠償額は原告の請求からは程遠かった。古里を奪われた代償を求めて3年半。大半の原告が周囲に知られないように名前も伏せ、息をひそめるようにして闘ってきた。「もっと寄り添ってくれる判決を期待していたのに」。苦労が報われなかった原告の顔には落胆の表情が浮かんだ。【尾崎修二、山本有紀、鈴木敦子】
★認定、137人の半分以下
 「国と東電の責任を認めさせた。心からうれしいのは間違いない」。判決後の集会で壇上に立った原告の丹治(たんじ)杉江さん(60)はこう言った後、言葉に詰まった。「この6年間つらいことばかりだった。納得できるかな……」
 原発事故当時、福島県いわき市に住んでいた。夫の幹夫さん(63)はワープロ修理業を営み全国から注文を受けていたが、事故後、「福島にワープロを送るのは……」と敬遠され、注文が激減した。
 事故の4カ月後、夫と群馬県へ自主避難した。私たちだけ逃げる選択をした−−。福島にとどまった人たちへの後ろめたさは消えない。それでも「原発事故を繰り返してはいけない」との思いから、群馬県内で脱原発の集会や街頭活動に積極的に参加し、避難者訴訟の原告にも加わった。
 原告は45世帯137人。丹治さんを含めほぼ全世帯の代表が法廷に立ち、避難の苦しみや東電と国への怒りを訴えた。しかし、原告の中に名前を公にしている人はほとんどいない。「裁判をしていると周囲に知られたら、子どもが差別を受け、仕事へ影響することを恐れている」ためだ。丹治さん自身も「裁判すれば金(賠償金)がもらえるんでしょ」と、心ない言葉を受けたことがある。
 国の指針に基づくと、自主避難の場合、東電からの慰謝料は生活費との合算で総額8万円。原告たちを突き動かしてきたのは「ふるさとを奪われた苦しみへの賠償が不十分」という思いだったが、判決で賠償が認められたのは原告の半分以下の62人だけだった。
 「もっと温かい判決を期待していたのに」。喪服姿で傍聴した原告の50代女性は、判決の内容を知って肩を落とした。いわき市で暮らしていたが、事故の影響でパート勤めしていた会社が業績不振に陥り、解雇された。
 被ばくへの不安もあり、夫と共に群馬県へ避難したのは2カ月後。翌年、県の借り上げアパートに入居できて生活が落ち着いた後に夫が悪性脳腫瘍で倒れ、14年秋に52歳で帰らぬ人となった。
 いまだに働く元気も出ない。頼りは貯金と夫の遺族年金だけ。今月末には福島県による住宅補助も打ち切られる。地裁が認めた賠償額は「想像できないぐらい低い額」だった。この6年間の苦しみは何だったのか。「これでは主人にも報告できない」。女性はそう言って涙をぬぐった。
「国と東電が断罪された」福島訴訟の原告
 前橋地裁は、各地で起こされている同様な原発避難者訴訟の中で最初に判決を言い渡した。各地で同様の訴訟を起こしている原告や弁護団も17日は前橋市を訪れて見守った。
 福島県いわき市の訴訟の原告で、「原発被害者訴訟原告団全国連絡会」の佐藤三男事務局長(72)は「国と東電が断罪された。両者の責任が明らかになったことは大きい」と話しつつ、「私たちの被害の実態や苦しみが分かっていないのではないか。お金のために裁判をやっているのではないが、損害認定には納得できない」と不満をもらした。【杉直樹】
原告の自宅検証…原裁判長
 原発避難者訴訟で国と東電に賠償を命じた前橋地裁の原道子裁判長(59)は1985年に裁判官となった。千葉、東京、宇都宮地裁を経て2013年から前橋地裁で裁判長をしている。
 今回の訴訟では積極的な訴訟指揮を執り、月1回のペースで口頭弁論や争点整理の期日を設定。昨年5月には福島第1原発の30キロ圏内にある原告4世帯の自宅を検証した。福島地裁を除き、各地の集団訴訟では初の現地検証だった。【尾崎修二】(当会注:原道子裁判長には、大同スラグ問題でも、東吾妻町萩生川西地区のスラグ不法御つき現場を現地検証してほしかった。)
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■さらに遅れて3月30日発売の週刊新潮のP148に、妙な記事が掲載されました。「原道子は女の敵」というタイトルを見て、最初は女優のスキャンダル記事かと思いきや、読んでみると前橋地裁の原道子裁判長のことでした。一体どんな記事が見てみましょう。

**********週刊新潮2017年4月6日号(3月30日発売)PDF ⇒
20170404034128.pdf
連載 変見自在 「原道子は女の敵」 高山正之
 米国の遺伝子学者ハーマン・マラーは1890年にニューヨークで生まれた。コロンビア大に入って、ここで生涯の遺伝子研究の伴侶となる猩々蠅(しょうじょうばえ)に出会った。
 猩々蠅は遺伝子の数も少なく、10日間で産卵し、すぐ交尾できるから実に手っ取り早い研究素材だった。
「研究に近道はない」が科学の鉄則だが、実は猩々蠅こそ禁断の近道だったことが、ずっと後に分かる。
 マラーはあるとき猩々蠅にX線を照射してみた。結果は凄かった。ほんの2週間で100例の突然変異体を生み出せた。これは過去7年間の研究で見つけた変異体数と同じだった。
 平たく言えばX線を当てれば面白いように突然体ができた。奇形は子孫にも遺伝した。
 1928年、大恐慌の前年にベルリンであった国際遺伝子学会での彼の発表は世界に衝撃を与えた。
 彼の研究は各機関で追認された。さらにスズメバチとか別の素材で実験が行われたが、なぜかそっちはうまくいかなかった。
 大恐慌が起きてマラーは忘れられた。覚えていてくれたのはスターリンだけで、彼は思想もこっちだったから喜んでソ連に移り住み、ソ連科学アカデミー所長のニコライ・ヴァヴィロフの下で研究を進めた。
 しかしソ連はヘンな国だ。遺伝子は環境でも変えられるというルイセンコが出てきた。春蒔き小麦も育て方で秋蒔きになり得ると。
 スターリンはそれが気に入った。共産主義にぴったりだ。突然変異―適者生存のメンデル遺伝学は「退廃した西側の思想」と見做され、レーニン賞も受賞したヴァヴィロフは逮捕され、監獄で食事も与えられずに餓死した。
 後ろ盾を失ったマラーは命からがら米国に逃げ帰った。折あたかも日米開戦前夜のことだった。
 赤い国から戻った男は冷や飯を食べ続けたが、米国が原爆を完成させてから境遇は大きく変わった
 広島と長崎に落とされた核爆弾は20万人を殺し、被爆地は草も生えないと言われた。被災者は放射線を浴びたことで遺伝子が異常をきたし、奇形を産むだろう。それは末代まで遺伝するというマラーの発見がここで蘇ったのだ。
 そんな恐怖の兵器を米国のみが持つ。逆らう国などあるわけもない。米国は世界の絶対的な覇者になった、と思われた。
 その恐怖を科学的に実証したことになるマラーは再び脚光を浴び、広島原爆の翌年、ノーベル賞を受賞した。彼は言う。「核兵器が生む放射線は将来にわたって人類の危機となる」
 米国が最も高揚した瞬間だった。
 しかしそれから間もなく人類はDNAの存在を知る。その研究でDNAには自己修復力があって遺伝子がX線で傷ついてもすぐ直すことが分かってきた。
 ではなぜ猩々蠅に奇形が生まれたか。実は猩々蠅はその自己修復力がない例外的存在だった。
 道理でスズメバチなどのほかの実験で奇形が出にくかったかの説明がつく。マラーは近道しすぎた。手っ取り早い研究ぐらいいい加減なものはない。
 しかしマラーの猩々蠅研究は国際放射線防護委の許容基準にもなっている。例の人体の年間許容量1ミリシーベルトがそれだ。
 だから今ではその250倍でも安全とされ、むしろ生命体の活性を助けるという説も支持されている。
 ただ東電福島の事故ではマラーのウソをもとにしたミリシーベルトが基準に使われ、避難地域が決められた。危険地域とされたところでイノシシや豚が元気にやっているのは見ての通りだ。
 そんな常識を朝日新聞だけは書かなかった。逆に放射能はコワいと風評を煽った、そんな朝日を信じる裁判官がいた。
 前橋地裁判事の原道子はマラーも知らず、朝日の言う「見えない放射線」に覚えて自主避難した住民の訴えを丸ごと認めた。
 女三宮は男に漢籍を教えた。清少納言は噂の害を1章仕立てで指摘した。
 あほな判決を出した原道子は「聡明な日本女性」の面汚しと言っていい。
(当会注:朝日新聞を批判する姿勢はさておき、この高山正之というジャーナリストは原道子裁判長の下した判決をきちんと読んだのだろうか。筆者も読んだわけではないが、「『見えない放射線』に怯えて自主避難した住民」にどのような非があるというのか。しかも原道子裁判長は「住民の訴えを丸ごと認めた」わけではない。物事の事象の上っ面だけ取り上げて「あほな記事」を書いたこのジャーナリストは、ジャーナリズムの面汚しと言っていい。そんなえせジャーナリストの戯言を連載する週刊新潮の編集方針も疑問だ。だからいつまでたっても週刊文春に追いつけない)
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