2018/6/16  22:08

東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…「時代に逆行する事業」大規模木質バイオマス発電への警鐘  東北関東大震災・東電福島原発事故

■群馬県のシンボルである赤城山の南面に東電グループ会社の関電工が設置した前橋バイオマス発電所は、群馬県の山間部から切り出した間伐材等を毎年7万トン(質量基準含水率40%換算)ずつ20年間集荷し燃料として使用し、2018年2月から事実上、運転開始していますが、この事業に際して、大型の火力発電所にもかかわらず環境アセスメントが行政により正当な根拠もなく免除され、放射能汚染された群馬県の山間部からの間伐材等から作られたチップの大量燃焼により発生する焼却灰、排ガス、排水(プレス機で脱水された排液)に高濃度のセシウムが含まれることから、当会は地元住民団体と一緒に計画の白紙撤回を求めてきました。
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当会に寄贈された小冊子「時代に逆行する大規模木質バイオマス発電」。


 その一環として、先日2018年6月4日の前橋バイオマス発電所周辺住民のみなさんとご一緒に前橋市環境政策課と面談し、環境アセスメントの実施や、発電所の稼働による騒音など
生活環境への重大問題の是正について早期に群馬県や事業者に求めました。そのあと、住民団体のメンバーのかたから、前橋バイオマス発電所のような大規模木質バイオマス発電に関する考察をまとめた小冊子を当会に贈呈していただきました。

 この小冊子を執筆された齋藤衛氏は、京都大学理学部教授を経て現在は同大学の名誉教授であり、長年にわたり天文学に携わってこられました。我が国の宇宙物理学、とりわけ銀河物理学の研究でひろく知られており、定年後、ふるさと群馬に戻られて赤城山南麓にお住まいになられていたところ、突然地元に降りかかった関電工の亡国事業に直面したため、地元住民団体の会員として前橋バイオマス発電事業の中止を願い、この亡国事業の理不尽さを世間に知っていただくため活動しています。

 今回寄贈いただいた小冊子のなかで、齋藤名誉教授は、大規模木質バイオマス発電の問題点を、地球規模の視点から指摘されています。転載のご承諾をいただいたので、その内容をご紹介いたします。

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時代に逆行する事業
大規模木質バイオマス発電


                 齋藤衛
                 1936年群馬県生まれ
                 京都大学名誉教授、天文学専攻
                 連絡先メール akagi-mamoru@memoad.jp

はじめに

 著者は長年の勤めを終え、赤城山南麓のこの地に移り住みました。家庭菜園などしてのんびりと暮らしていたところ、2015年、当地からおよそ北5kmの山腹に大規模木質バイオマス発電所が建設される騒ぎが起きましたこの発電所の建設に反対する「赤城南麓の環境と子供たちを守る会」に参加して、いろいろ調べてみると、大規模木質バイオマス発電は地域だけの問題ではなく国民生活や広く地球環境につながることかわかりました。
 第1章では、発電所建設によって周辺住民が受ける被害と危惧について書いています
 第2章は本書の主題で、大規模木質バイオマス発電は大量の炭酸ガスを排出し、また国民に多額の無駄な負担を強いる事業であることを示します。キーワードは、「木、生きもの、炭酸ガス、地球温暖化、再生可能エネルギー、再生可能エネルギー電力促進固定価格買取り制度(FIT)、木質バイオマス発電」です。
 本書は著者がおこなったミニ講演をもとにしています.使われている用語やデータ数値の出典は示していませんが、気になる点は読者の皆さんがWebで調べてください。カッコ内「」は問題をより深く考えるための「参考」なので、読み飛ばしたほうが話の筋が見えやすいかもしれません。いくつかの本を文中で紹介していますが、これらは著者の好きな本です。

第1章 住民無視の大規模木質バイオマス発電所建設

 2015年春、赤城山南麓の静かな住宅地に轟音が響き渡りました。これが大規模木質バイオマス発電所(事業名:前橋バイオマス発電所)建設の地域住民への突然の通告でした。地下水を汲み上げる井戸掘りが始まったのです。
 事業者はビラを地域に配布し、このバイオマス発電事業は「低炭素社会の実現に貢献する」として事業への理解を求めました。これは誤解に基づく宣伝であり、本事業は炭酸ガスを大気中に大量に排出することは第2章で詳しく解説しますが、周辺住民の心配・危惧は差し迫った切実なものでした。
 住民への事業者説明会で示された発電事業の内容は、「発電出力は6700kW」、「原料である木の消費は年間8万トン、地下水の汲み上げ量は12万トン」、「原則1日中24時間稼働する」というものでした。
 木の消費が年間8万トンということは、木の搬入が平均週5日行われるとして、10トン搭載のトラックが1日に約30台も出入りすることになります
 巨大な発電ターピンは深夜も動くし、チップを作る機械(チッパー)もうなり続けます。
 静かな住宅地に突然、大工事現場が出現したようなもので、しかも20年は続くのです。地域の生活環境は極端に悪くなります、
 1年間の地下水の汲み上げ量は、集中豪雨対策として東京渋谷の地下につくられた巨大水槽の30杯分に相当し、この汲み上げによって地下水脈の変動や地盤沈下の危険も予想されます。
 煙突から排出される高温ガスの熱、冷却塔や建物からの赤外線放射は昼夜を問わずおよそ2.6万kW(発電出力の約4倍、2.6kWの電熱器1万個を使う状態)であり、周辺の生態系や農作物に影響し、また局所的異常気象を引き起こす恐れがあります。
 また住民と事業者との話し合い(事業者はあくまで説明会だと言う)で、質疑の時間の多くを費やしたのは「福島第一原子力発電所から放出された放射性物質を処理できるのか」という問題でした。燃料の木は、発電所から50km圏内のものを使うとのことですが、この地域の森林に原発の灰が降り注いだことは周知のことで、赤城山の火口湖である大沼のわかさぎは数年間食べられませんでした(当会注:最近、群馬県内の山間部で採れる山菜のコシラアブラやタラノメに基準値をはるかに超えるセシウムが検出されたことは注目されます。)
 人体に危険な放射性物質であるセシウム137の半減期は30年、ストロンチウム90の半減期は28.8年です。搬入された木に付着した放射性物質は、構内の貯木所に落ちて蓄積し、水分を減らすために絞り出す水に含まれ地下に流され、チッパーによる粉塵と共に大気中にまき散らされ、煙突から排出され周辺の広い地域に拡散します。事業者は、放射性物質は法律や規則に従って処理する、の一点ばりであり、住民の心配は宙に浮いたままです。
 国や県は、住民が建設を知る以前に事業者と打ち合わせをし、総額4億8千万円の補助を決めていました。住民は市当局に対して、住環境悪化の危惧を訴えまた事業者との話し合いの仲介を要請しましたが、市が市民の側に立った対応をしているとは言えません。

第2章 多額で無駄な国民負担

 この章では、大規模木質バイオマス発電は地域住民だけでなく、国民全体にも多大な被害をもたらすことを解説します。

<人間生存の危機とその克服の努力>

 大規模木質バイオマス発電は、国の「再生可能エネルギー電力促進固定価格買取り制度(FIT)」の対象事業として登場しています。FITは、「人類の危機|となっている地球温暖化を克服するために、国民の協力金(電力料金の上乗せ)によって温室効果ガス排出の少ない再生可能エネルギー発電を促進することを趣旨としています。FITは2012年に施行されましたが、ここに至るまでの歴史的な道のりを簡単に紹介します
 人間は18世紀半ばの産業革命以降、化石燃料の大量消費による工業化産業社会を築き上げました_特に20世紀に入ってから人間活動は急速に活発化し世界規模に拡大し、その結果は自然環境を変えるまでになりました「人類の危機」が人々に強く意識されるようになったのは1970年代のことです。1972年には「かけがえのない地球を守ろう」を合言葉に第1回の国連人間環境会議が開かれ、またローマクラブの「人類の危機」研究から「成長の限界」という報告書がだされ反響をよびました。1980年米国政府は資源・環境・人口問題について関係機関をあげて研究した結果を「西暦2000年の地球」として報告しました。いずれも人間活動が地球環境という制約の壁に突き当たったことを認識しなければならないことを強調したものでした。
:1970年代に直面した環境危機の1つは、フロンガスによるオゾン層の破壊でした。オゾン層は対流圏の上にあり太陽からの紫外線を遮ります。この層がなくなると人間には皮膚がんができるなど生物全体に被害がでます。フロンガス製造規制の国際協定が結ばれ効果をあげ、現在ではオゾン層の修復が明らかになっています。)
 1970年以降も化石燃料の大量消費は続き、その結果、「燃料資源の枯渇」より先に「地球温暖化」によって引き起こされる「異常気象」の被害が世界各地で頻発するようになりました。
 短時間に起こる集中豪雨や強風、高潮などの一時的な異常気象による被害が強い印象を与えますが、数か月から数年にわたる異常気象もあります。山に降った雪の量が異常に多く、春にその雪解け水による大洪水が起こる、あるいは長い間の少雨が干ばつや森林火災を起こし、砂漠化がすすむ地域もあります,
:最近でも、大規模森林火災はオーストラリア、米国、ポルトガルなどから報告され、スーパー高潮は南太平洋諸島から、また大洪水は米国、バングラデシュなどから報告されています。)
 地球温暖化は「海水温度の上昇」と、海水体積の膨張・氷河融解などによる「海水位の上昇」をもたらしています(大河内直彦「地球の履歴書」2015年新潮社)。
 さらにこうした異常気象による人間生存環境の破壊は、開発途上国での飢饉、難民、地域戦争などの社会現象の引き金になっていることが知られています(例:中村哲「天、共にあり−アフガニスタン三十年の闘い」2003年NHK出版)。
 1990年代になって、事態は「人類の危機」を克服する方向に急展開をみせました,太陽光発電・風力発電などの実用化がすすみ、温室効果ガスをださない再生可能エネルギーによって人類が必要とするエネルギーを創りだせる見込みがたったのです。これは「エネルギー資源の確保」と「地球温暖化回避」を同時に解決する方向が見えたことを意味しました。
 世界各国は気候変動枠組み条約(COP)を結び、1997年の京都議定書(COP3)を経て2015年のCOP21パリ会議では、地球温暖化の原因である温室効果ガスの削減にほとんどの国が取り組むことになりました

<温室効果ガスの主役「炭酸ガス」の性質>

 地球表面(大気と陸地と海)は太陽光エネルギーと地球内部からの熱によって温められていますが、一方、地表から赤外線を宇宙に放射して冷え、ほぼ一定の温度を保っています。大気中の「水蒸気、炭酸ガス、メタン」は、地表から宇宙へ向かう赤外線放射を反射して地表にもどし、放射冷却効果を和らげるので、温室効果ガスとよばれています。
 空気から水分を除いた乾燥空気は窒素ガスと酸素ガスが99%を占め、平均分子量は約29です。炭酸ガス(分子量44、重い)の割合はわずかで、1900年当時には0.03%(300ppm)程度、現在は約400ppmに増えています。メタン(分子量16、軽い)はさらに少量です。この空気中に水蒸気(分子量18、軽い)が1〜4%含まれるのが普通の大気です。
 大気中の水蒸気量は炭酸ガスに比べて桁違いに多いので、人間活動が排出する水蒸気が大気中の水蒸気量を増やすことはありません。
:大気中の水蒸気の温室効果は、冬の晴れた夜は放射冷却で冷え込み曇った夜は冷え込みが和らぐことや、砂漠地帯での昼夜の大きな温度差などによって、私たちも実感するところです。「地球温暖化により平均気温が高くなる結果」として温室効果をもつ水蒸気量は増え、一方雲も増えます。雲は太陽光を反射して太陽光エネルギーが地表に達する量を減らしますが、水蒸気の温室効果との差し引きでは温暖化をやや増幅するほうに働いていると考えられています。大気中の水蒸気には上限(飽和蒸気圧)があるので水蒸気が温暖化をどこまでも加速するわけではありませんが、水蒸気量の増加が異常気象をもたらしていることは確かです。)
 メタンは、大気中での寿命は12年であり、また大気中の濃度と人間活動による発生量はともに炭酸ガスよりずっと少ないので、温室効果ガスの「主役は炭酸ガス」です。
 大気中の炭酸ガスは安定した壊れにくい分子で、空気より重いので「地表面付近に溜りがちで水に溶けやすい」のが特徴です。しかし、大気の乱流や風は重い炭酸ガスも大気の隅々まで運びます。炭酸ガスの地上での測定点は、ハワイの4000m級高山や南極など人里から離れたところが選ばれていますが、世界各地の測定から、大気中で炭酸ガスの年々の増加と平均気温の上昇の相関が観測されています。
 大気中の炭酸ガスは1年に2−3ppmずつ増え続けています。この増加をゼロに近づけることが温暖化防止の柱になっています。2015年のパリ会議で、2050年までに炭酸ガスの排出量を産業革命まえの水準にすることで各国が合意しました。
(注:炭酸ガスが水によく溶けることは、本書で重要なポイントなので、家庭で簡単な実験をして確かめてください。5円玉、マッチ棒3本、透明なコップ、大きめの皿を用意します。皿に水を1−2cmほど満たします。5円玉の穴に3本のマッチ棒を通し鼎(かなえ)状に皿に立てます。5円玉の穴にでているマッチの頭に火をつけ盛んに燃えている時に、コップをそっとかぶせます。コップ内の水位が瞬時に上がります。コッブのなかの酸素ガスが炭酸ガスになり、あっという間に水に溶けたのです)

<再生可能エネルギー>

 人間活動に必要なエネルギーを確保しつつ、炭酸ガスの排出源である化石燃料の消費を減らすためには、「再生可能エネルギーの利用の促進」と「省エネの推進」が必須です。また「森林の保存」も炭酸ガスを増やさないために重要なことです。
 再生可能エネルギー源の主なものは、水力、風力、地熱、潮力、太陽光で、これらは「使っても枯渇しない」、「地球環境への負荷か少ない」ことを特長としています。
(注:木を含むバイオマスエネルギーは、この基準に照らせば、再生可能エネルギーに相当しません。歴史的には、木の使い過ぎで多くの古代都市が衰退しました。)
 水力でタービンを回す水力発電は、火力発電とともに早くからおこなわれてきました。わが国の電力に水力発電の占める割合は現在10%弱ですが、水力発電の専門家である竹村公太郎氏は、現存のダムに少し手を加えれば2倍もの発電が可能であると提言しています(「水力発電が日本を救う」2016年、東洋経済新報杜)。
 風力発電と地熱発電もタービンを回して発電します。水力と風力は太陽と地球のエネルギーから 作られ、地熱は地球内部の熱エネルギーです。海水の満ち干を利用してタービンを回す潮力発電は地球と月の運動で生じるエネルギーを使っています。再生可能エネルギー利用の中で、人類史上画期的な発明が太陽光発電です。他の発電方法と全く別の(タービンを使わない)発電方式で、太陽光を半導体であるケイ素(英名シリコン)に当て太陽光エネルギーを直接電力に変換する発電方式です。入射するエネルギーの20%程度を電力に変換できます。ケイ素は地表に最も多く 存在する国体元素で、主にガラス材として使われています。世界中どこにでもある太陽光とケイ素から電力をつくれることは人類社会に計り知れない良い影響をもたらすにちがいありません。 :太陽光発電で十分な電力量を得るためには、広い土地面積が必要です。日本の平均的日照時間では、土地面積1平方メートルあたり年間およそ100kW時の電力が得られます。日本の消費電力は年間約1兆kW時で、この電力の半分を太陽光発電でまかなうとすると、約50億平方メートルの土地が必要になります。現在、日本の耕地面積はおよそ444億平方メートルなので太陽光発電に必要な土地面積は耕地の11%に相当します。しかし太陽光発電所は農耕地以外の土地(原野、傾斜地、運動場、屋上など)に造れるし、今後の発電効率の向上も期待できるので、太陽光発電のための農地転用はあっても数%でしよう。)
 人類は太陽と地球のエネルギーを再生可能エネルギーとして利用することによって、自然環境と調和する永久ともいえるエネルギー源を獲得できる見込みがたったのです。

<木質バイオマス発電は炭酸ガスの排出源>

 植物由来のエネルギー(バイオマスエネルギー)の量は、太陽光・水力・風力エネルギーに比べてとても少ないのです。
(注 :1つの例を考えてみます。太陽光発電は
1年間で1平方メートル当たり約1 0 0kW時の電力をつくりだすので、これを熱源として5kWのストーブを使うと20時間使えます。一方、同じ1平方メートルから1年で収穫できる植物を、5kWのストーブの燃料とすると20分ともたないでしよう。原始の時代から長い間、人類は木を燃やして、食べ物の調理、暖房、照明のエネルギーとして利用してきました。人類の科学技術の成果である太陽光発電は、同じ太陽光エネルギーから木の50倍以上もの再生可能エネルギーを生み出すことができるようになったのです。)

 植物のもつエネルギー量は、太陽光などに比べて少ないとはいえ、地球上のすべての動物、昆虫、菌類まで、植物のエネルギーに頼って生きています(肉食動物も草食の生き物を餌にしています。)植物は大気中の炭酸ガスと水を使って光合成により成長し、すべての生き物は植物を食糧(エネルギー源)とし排気ガスとして炭酸ガスを大気中にもどします。炭酸ガス(の中の炭素)は地球上の命をつないで循環しています
 木は水・炭酸ガス・太陽光から数十年かけて成長します。間伐材や枯れ木を森の中に放置した場合、それは菌や虫、鳥の糧となり「数十年」かけて分解され、次代の木を育てる有機土をつくります。生き物たちによって排出された炭酸ガスは(重く、水に溶けやすいので)森の地面近くに留まる間に一部は雨・露・霧によって水・上に吸収され、また一部は森の木々の光合成にふたたび使われ森林の肥料となります。この過程で森林は大気中の炭酸ガスを減らし酸素を増やすのです。
(注:地球の長い歴史をみると、原始大気は現在の金星大気と同じように炭酸ガスが主成分でしたが、海ができ炭酸ガスを溶かし、植物が生まれ大気中の炭酸ガスを酸素ガス(現在の含有量21%)に変え、長い歳月を経て炭酸ガス含有量わずか0.03%の大気が創られたのです。現在でも森は大気中の炭酸ガスを減らしていますが、火山が同じくらいの量の炭酸ガスを人気に供給しています。)
 一方、間伐材を森から取り出し木質バイオマス発電のために燃やすと、発生した炭酸ガスは煙突から一気に100%排出され、大気中の温室効果ガスとなります。木質バイオマス発電の発電効率はわずか20%(80%のエネルギーは熱として逃げていく)しかなく、石炭発電の半分、ガス発電の4分の1という低さです、世界では、石炭発電でさえ炭酸ガスの発生源とみなされ廃止される方向にある中で、木質バイオマス発電は時代遅れというより時代に逆行する発電です。
(注:北海道下川町のように、木質バイオマスを暖房や温水づくりの燃料として使う場合、エネルギー利用効率は灯油やガスを燃料とした場合と同程度であり、木質バイオマスの有効利用になります。)

<前橋バイオマス発電所の炭酸ガス排出量とその国民負担額>

 火力発電1kW時あたりの排出炭酸ガス量をkg単位で示したときの数値を「炭酸ガス排出係数」としており、日本の化石燃料による火力発電の平均係数は0.464(2011年原発停止後)です。前橋バイオマス発電所の事業者は、煙突からの排出ガスの体積は発表していますが(当会注:ただし、その計算根拠はつい最近まで秘匿されており、当会と「赤城南麓の環境と子供達を守る会」メンバーによる住民訴訟で2018年6月6日にようやく開示され、現在内容を精査中)炭酸ガスの排出重量も排出係数についても口をつぐんでいるので、これらの値を概算します。
 木は水と3つの分子(セルロース、リグニン、ヘミセルロース)からできており、これら分子の成分は炭素・酸素・水素で、そのうち炭素の占める割合は重量比で約50%です。燃焼により炭素1つは2つの酸素と結びついて炭酸ガスになりその重量は炭素の3.67倍(分子量比44対12)になるので、3つの分子が燃えて発生する炭酸ガスの重さは分子の重さの約1.8倍(=0.5×3、67)になります。
 木の含水量はふつう40%くらいなので、この木を燃やすときに発生する炭酸ガスの重さは、木の重さの1.8×(1−0.4)=1.1倍ほどになります。つまり、木を燃やすと「木の重さとほぼ同じ重さの炭酸ガスを排出する」のです。
 従って、前橋バイオマス発電所は年間8万トンの木を燃やし、8万トンの炭酸ガスを排出します、出力6700kWで年間稼働率85%とすると、年間生産電力は約5000万kW時で、「炭酸ガス排出係数」は炭酸ガス8万トン÷生産電力5000万kW時=1,6となります。化石燃料による排出係数0.464の3.4倍です。逆にいえば、5000万kW時の電力を化石燃料でつくれば、炭酸ガス排出は2、3万トンですむのです。
 前橋バイオマス発電所に対して、私たちはどれくらいの金額を負担しているでしょうか。
 FITによる2017年の賦課金(電気料金への上乗せ額)は1kW時あたり2.64円です。FIT対象の再生可能エネルギー電力が電源構成に占める割合を15%とすると、再生可能エネルギー電力1kW時=あたりの賦課金額は2、64円÷0.15=17.6円になります。前橋バイオマス発電所が生産する電力の買取り単価は32円+税であり、これは再生可能エネルギー電力の平均的な買取り金額なので賦課金額緊価として17.6円(20年固定)を採用すると、年間生産電力5000万kW時に対する「賦課金総額」は8.8億円、20年で176億円です。年間8万トンもの炭酸ガスをまき散らす発電所に対するこのような多額の賦課金負担は、FITの趣旨に照らして納得できるものではありません。
 私たちの負担はこれにとどまりません,大気中に排出する炭酸ガスを減らすために、私たちはFITの賦課金を払うほかに、いろいろの負担をしています。例えば、エコ車や省エネ器具に買い替えるなどです。また排出した炭酸ガスの後始末のために支払うお金もあります。例えば、古い車にかかる税金は上がるし、異常気象による災害復旧に私費・税金を使わなければなりません。これらの負担は、排出炭酸ガス1トンあたりの金額に換算され「炭素価格」として世界中で通用しています。価格見積もりには幅がありますが年々高くなると考えられています。ここでは1トンあたり30米ドル(1ドル105円)=3150円を採用すると、前橋バイオマス発電所がだす年間8万トンの「炭素価格」は2.5億円になります。賦課金との合計金額は年間約11.3億円、20年で226億円です。前橋バイオマス発電所1つが200億円超の無駄な負担を国民に負わせるのです。

<全国の大規模木質バイオマス発電、特にアブラヤシ火力発電について>

 前橋バイオマス発電所のような国産の木を燃やし出力も同じ規模の発電所は全国で20ほどあり、これらによる賦課金負担は20年で数十億円です。
 しかしこれらは序の口だったのです。2018年2月の毎日新間報道よると、大規模木質バイオマス発電のFIT認定量は、2017年9月時点で1278万kWに達しており、このうち輸入アブラヤシを燃料とする火力発電が80%を占めています。
 アブラヤシ(パーム泊)火力発電がFIT対象とされる理由は、「今年にとれた植物(果実)をその年に燃やすのだから大気中の炭酸ガスを増やすことにならない(カーボンニユートラル)」、「発電効率が化石燃料並み」ということでしょう。この理由が浅はかなものであることは後で考察するとして、その基礎データとして、FIT認定の大規模木質バイオマス発電が実行された場合のいろいろな数値をまず示します。
1)認定された1278万kWの発電が稼働率85%で実行されるなら年間発電量は951億kW時であり、その賦課金国民負担額は1.67兆円で、20年間(FIT認定期間)では実に約「33兆円」です。この金額は燃料がアブラヤシでも普通の木でも変わりません、
2)(Web検索の結果)アブラヤシの実から採れるパーム油やパーム核油はすに食用に利用されています。そのエネルギーは1トン1たり約3700万kJ=1万kW時です。実の収量は1ヘクタール(1万平方メートル)当たり最大で年間4トンです。従って、アブラヤシは「1平方メートル当たり年間最大4kW時」の実を光合成により生産しています。
3)この実を燃やす火力発電の発電効率を50%(普通の木質バイオマス発電の2.5倍)とすると、得られる電力は年間1平方メートル当たり2kW時です。同じ太陽光エネルギーで得られる「太陽光発電電力(年間100kW時)のわずか2%」にすぎません。
4)FIT認定大規模木質バイオマス発電の年間生産電力951億kW時の燃料の80%を、アプラヤシで確保する場合には約380億平方メートル(「日本の耕地面積の86%」)以上のアプラヤシ畑が必要です。
5)炭酸ガスの排出係数を0.5(化石燃料並み)と見積もっても、FIT認定大規模木質バイオマス発電(年間951億kW時)が「排出する炭酸ガスは年間4750万トン」になります。

まとめ

 以上の数値をもとに、大規模木質バイオマス発電をFIT対象事業とするべきではない理由を「まとめ」ます。
a)アブラヤシ火力発電が化石燃料並みの発電効率なら、営利事業として成り立つはずで、FIT対象事業には当たりません。26兆円もの賦課金を営利事業のために国民が負担する必要はありません。
b)大規模木質バイオマス発電で太陽光発電と同じ電力量をつくるには、太陽光発電所の100倍もの広い土地から燃料を集め続けなくてはならず、さらにそれを長距離運搬しなければなりません。大規模木質バイオマス発電は多大な労力とエネルギーを要する非効率的な発電事業です。
c)炭酸ガスはすべての生きものが存在できるための基礎物質です。植物は大気から炭酸ガスを吸収して成長し、生きものは植物からエネルギー(食糧)を得て生き炭酸ガスを排出します。炭酸ガス(中の炭素)は、大気→植物→「菌・昆虫・動物などの生きもの」→大気と循環しています。これが自然です。木質バイオマス発電での炭酸ガスの循環は、大気→植物→大気でしかありません。生きものの糧をつくる炭酸ガスを年間5000万トン(炭素価格1600億円相当)以上無力化するFIT認定大規模木質バイオマス発電は自然破壊そのものです。
d)国民からの33兆円の賦課金は、人類と自然が調和する真の再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱)発電促進のために使われるべきです。(当会注:ただし、砂漠や土漠ではなく、里山など森林を大規模に皆伐し造成するメガソーラーについては、一定の規制による歯止めが必要です)

 おわりに、本書の原稿を検討してくださった「赤城南麓の環境と子供たちを守る会」のみなさん、木のことを教えてくださった相田義郎さんに感謝します。
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■自然エネルギーとして太陽光、風力、水力(潮汐差、潮流を含む)、地熱はすぐに理解できますが、バイオマスはそれらとは本質が少し異なる気がしていました。その違和感が、この小冊子を読んでより明確になりました。

 関電工は、植物の光合成で固定された炭素を燃焼させることで再び炭酸ガスとして大気に戻し、それが再び光合成により酸素が分離され炭素が固定されるのだから、いわゆる「カーボンニュートラル」なので、再生可能エネルギーと位置付けられたようです。

 しかし、考えてみれば石油も石炭も年月のスパンは格段に異なるものの、木質バイオマスは何十年もの年月を経て蓄積された炭素を一気に炭酸ガスとして大気中に放出させるわけです。しかも、石油や石炭とことなり、燃焼効率は格段に低く、成分や性状にもばらつきが大きく、高温高圧蒸気に変えてタービンを回して電力を得ることは、きわめて効率がわるい方法です。

 こうした疑問点、不明点をこの小冊子ではわかりやすく解説しています。

 大規模木質バイオマスに対する幻想を排除し、本質を見極めるための参考にしていただければ幸いです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※参考情報「海外から輸入してまでも燃料を調達しなければならないバイオマス発電の欺瞞」
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 斎藤名誉教授が小冊子の中でも触れていますが、最近、FIT制度を利用したバイオマス発電計画が我が国の臨海部で目白押しです。これは東南アジア諸国で大規模に栽培されているアブラヤシの実の搾りかすを大規模に輸入してバイオマス発電燃料として利用するというものです。
 本来は、現地で適正に処分されるべきもので、わざわざ長い距離を運運するのは営利事業の観点からありえないはずですが、FIT制度によって成り立つという異常事態のもとで、国内外の資本が参入しています。
 2017年9月に海事プレス社が特集した記事のなかに、この実態が詳しく報じられています。

**********海事プレスニュース2017年9月15日
バイオマス、20年に輸入急増 長期輸送商談が今年度後半から具体化
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 日本の木質バイオマス燃料輸入量が2020年以降急増する見通しで、邦船社はその輸送商談が長期契約を中心に今年度後半から具体化していくと見ている。再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)を追い風に、国内では同年以降、新規の木質バイオマス発電所が多数稼働する見込み。これに伴い20 年の燃料輸入は、木質ペレットが16年比10倍の300万トン程度、PKS(パームヤシ殻)が同2.5倍の200万トン程度まで拡大するとの見方が大勢だ。邦船社にはその輸送の見積もり依頼が寄せられており、木質ペレットは期間10年が主流で、PKSも期間5年超の引き合いが増えている。バイオマス燃料は長期契約が見込める数少ない成長カーゴで、邦船各社が取り込みに動いている。
 石炭との混焼を含め、木材チップ、木質ペレット、PKSのいずれかを燃料とする国内の木質バイオマス発電所は現在、20カ所程度が稼働済みとみられる。これが、2019〜20年に新規の発電所が一斉に商業運転を開始する結果、20年には「60〜70カ所程度に増える」(船社関係者、以下同じ)との予測が多い。輸入ペレットを燃料とする発電所に限っても「最低40カ所にはなる」とみられている。
 FIT制度を定めた法律の改正に伴い、来月1日から木質バイオマス燃料を使用する発電所で発電した電力の調達価格が、1キロワット当たり24円から21円に引き下げられる。引き下げ前の価格適用を受けるべく、駆け込みで申請するバイオマス発電プロジェクトが急増し、その総数は「400件程度に膨らんだようだ」。事業主はプロジェクト全体の採算を早期に把握する必要があり、邦船各社にこの海上輸送部分の見積もり依頼が多く寄せられている。
 バイオマス燃料の輸送船は、木材チップがチップ専用船、木質ペレットがハンディサイズ・バルカー、PKSが近海船と品目ごとに異なる。このうちチップ専用船は5万〜6万5000重量トン型と大型のため、「チップ船で調達するほど燃料のロットがまとまる大規模なバイオマス発電所は国内では限られる」。一方、日本の輸入量が今後大きく伸びそうなのが、木質ペレットとPKSだ。
 木質ペレットの16年の輸入実績は約 33万トン。邦船関係者の間では、これが新規の発電所が立ち上がる20年に「300〜400万トンまで拡大する」との見方でほぼ一致している。同年の輸入見通しについては「確度が高いプロジェクトだけを積み上げても、200〜300万トンは堅い」「受領している見積もり分が仮に全て稼働すれば500万トン規模もあり得る」との声もある。
 木質ペレットは発電所の燃料として安定的に調達する必要があり、FIT制度の期間は20年に及ぶため輸送契約の長期志向が強くなり、「期間10年が主流で、最近は期間15年も増えてきている」。邦船社が受領している見積もり依頼は現時点では、大まかな海上運賃の提 示を求められる「インディケーション」が多く、有効期限付きの最終的な運賃を提示する「ファームオファー」に至った案件は数件にとどまるもよう。ただ、比較的規模の大きい新規のバイオマス発電所は20年の稼働が多く、燃料輸送は商業運転前の19年後半には始まる。「今秋から来年にかけて、ファームオファーに至る案件が増えていくのは間違いない」とみられている。
 木質ペレットの輸入先は現状、カナダが約75%、残りの大部分がベトナムで、主に3万2000〜8000重量トン型のハンディサイズ・バルカーで輸送されている。邦船関係者は「スポット・短期契約の比率が高いハンディサイズで、長期契約が見込める木質ペレットの輸送案件は貴重」と今後の輸入需要の増大に期待している。
 PKSは木質ペレットに先立ち既に輸入量の増加傾向が鮮明だが、邦船関係者は今後もう一段の拡大を見込んでいる。16年の輸入実績は前年比2倍増の80万トン弱で、これが新規発電所の稼働で20年に「200万トン程度まで増加する」と予想されている。
 PKSはバイオマス発電所で燃料として使用される際、「より安定した調達が可能な木質ペレットにスポットで混ぜて使われるケースが多く、荷主もペレットに比べると小規模な社が多い」ため、輸送契約期間は木質ペレットより短い。現状では「数量輸送契約(COA)の期間は、数カ月から1年が大半」だ。ただ、20年以降に稼働予定の新規発電プロジェクト向けの引き合いでは「期間3〜5年が増えており、期間10年の案件も複数ある」といい、PKSも契約期間が長期化していく可能性がある。
 PKSはインドネシア、マレーシアから主に邦船社がアジア域内で運航する1万2000〜3000重量トン型の近海船で輸送される。PKS輸送量の大幅な増加が見込まれる中、将来的に船腹不足が起こるとの見方もある。
 邦船社が運航する1万2000〜3000重量トンの近海船の隻数は現在100隻弱とみられる。PKSの輸入量が20年までに100万トン増加した場合、「近海船1隻が1航海で1万トンのPKSを輸送するとして、10〜15隻分の需要が見込まれる」。海運ブローカーによると、今後数年のうちに建造される邦船社の近海船は全船型で10隻程度にとどまるため、船腹需給が締まるとみられる。

**********海事プレスニュース2017年10月11日(水)
《連載》バイオマス燃料物流の胎動@、輸入急増で中継基地構想浮上
 ドライバルクで数少ない日本向けの成長カーゴとして、木質バイオマス燃料が脚光を浴びている。新規のバイオマス発電所が2020年以降に相次ぎ稼働し、輸入量は急増する見通し。日本への燃料輸入を手掛ける総合商社は近い将来、その物量が1000万トン規模に達すると予測する。邦船各社はその輸送商談が長期契約を中心に今後具体化していくと見て、積極的に取り込みに動いている。将来の輸送量の拡大を見据え、石炭と同様に、大水深バースを持つ港湾に輸入の中継基地を構築する構想も出てきた。
★新規発電計画が急増
 石炭との混焼を含め、木材チップ、木質ペレット、PKS(パームヤシ殻)のいずれかを燃料とする国内の木質バイオマス発電所は今年9月末時点で、約30カ所が稼働済みとみられる(表参照)。これが、2019〜20年に新規の発電所が一斉に商業運転を開始する結果、20年には「60〜70カ所程度に増える」(邦船関係者)との予測が多い。輸入ペレットを燃料とする発電所に限っても「最低40カ所にはなる」(同)とみられている。
 このバイオマス発電所の急増を後押ししているのが、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)だ。同制度はバイオマス発電、風力発電、水力発電など、再生可能エネルギーで発電した電気を電力会社が一定期間、固定価格で買い取るもの。木質バイオマスの期間は原則20年。
 このFIT制度を定めた法律が今年4月に改正されたことに伴い、木質バイオマス発電のうち出力2万キロワット以上の大規模発電所では、1キロワット時当たり24円だった買い取り価格が、10月1日以降の認定分から21円に引き下げられることが確定した。これを機に引き下げ前の価格適用を受けるべく、駆け込みでバイオマス発電プロジェクトの申請が急増。その総数は「400件程度まで膨らんだようだ」(同)。
 バイオマス燃料を海外から調達する場合の輸送船は、木材チップがチップ専用船、木質ペレットがハンディサイズ・バルカー、PKSが近海船と品目ごとに異なる。このうちチップ専用船は5万〜6万5000重量トン型と大型のため、「チップ船で調達するほど燃料のロットがまとまる大規模なバイオマス発電所は国内では限られる」(同)。現時点で輸入チップを燃料としているバイオマス発電所は「今夏に本格稼働した2カ所のみ」(商社関係者)。住友商事が100%出資する電気事業会社サミットエナジーが運営する愛知県半田市の発電所と、丸紅の電気事業会社である丸紅火力100%出資の敦賀グリーンパワーが運営する福井県敦賀市の発電所だ。それでも、16年に約10万トンだったバイオマス燃料用チップの輸入量は「半田・敦賀の運転開始で17年には約60万トンまで増加する見通し」(同)。一方、これ以上に大幅に日本の輸入量が今後伸びるとみられているのが、木質ペレットとPKSだ。
★輸入1000万トン規模へ
 現在、国内のバイオマス発電所向けに輸入されている燃料の主体はPKS。邦船関係者によると、16年の輸入実績はPKSが約76万トン、木質ペレットが約33万トン。PKSは13年の輸入量が10万トン強だったが、14年以降は前年比2倍増で推移し、17年は100万トン超となる見通し。さらに前述の新規発電所の相次ぐ稼働により、「20年には200万トン規模に達する」。これが、邦船社や商社関係者の一致した見方だ。
PKSはこれまで木質ペレットに先行して輸入が増加し、今後もう一段の拡大が見込まれる貴重な日本向けの成長カーゴだ。ただ、バイオマス燃料の輸入事業を手掛ける商社関係者は「両者の数量は21年以降、間違いなく逆転する」と断言する。木質ペレットの海外調達が、それ以上に爆発的に伸びると見ているからだ。
 「PKSは200万トン程度まで増え、供給力の制限や国際的な認証がないことなどから、その後は頭打ちになる公算が大きい。一方、木質ペレットは21年頃に200〜300万トン、25年頃に少なくとも500万トン規模に拡大し、30年頃には1000万トンに達する可能性がある。これが業界の一般的な見立てだ」。商社関係者はこう話す。
 「バイオマス発電所はまず19年、20年に一斉に立ち上がるが、そこに向けて輸入燃料を供給する販売契約は概ね締結済み。木質ペレット、PKSとも21年頃までの物量はほぼ固まっている」(商社関係者)。邦船関係者には、急増する新規のバイオマス発電計画の海上輸送部分の見積もり依頼が多く寄せられており、その木質ペレットの21年の輸入見通しは「確度が高いプロジェクトだけを積み上げても、200〜300万トンは堅い」と、商社関係者の見立てと一致する。
 邦船関係者が見通しにくいのが、それ以降の輸入量がどこまで伸びるか。「申請されたプロジェクトの数は膨大だが、そのうちどの程度が具体化するかが不透明」(邦船関係者)だからだ。こうした中、ペレット輸入で5割超のシェアを持ち、より需要家に近い商社関係者はこう話す。
 「現在交渉中の案件は21年、22年の運転開始が多く、特に21年は大規模な発電所がまとまって稼働することもあり、ペレット輸入量は25年頃に向けてもう一段増えていくだろう。それ以降は具体的な数字の積み上げが困難だが、先物の輸入案件の交渉をしている感触では、石炭との混燃需要が引き続き高まり、30年頃には1000万トンをうかがう物量になる公算が大きい」。
 輸入量1000万トン時代の到来はもっと早い、と見る向きもある。別の商社関係者は「チップ、ペレット、PKSの木質バイオマス燃料全体の輸入需要は、2020〜21年に1000万トン超に達すると考えている」と語った。
(この連載は全4回。松下優介、小玉悠平が担当します)

=====稼働中の国内バイオマス発電所=====
 事業者および需要家/所在地(揚港)/発電規模(KW)/燃料種/運用開始
●紋別バイオマス発電/北海道門別市(紋別港)/5万/チップ、PKS、石炭/2016年12月
●王子グリーンエナジー江別/北海道江別市(苫小牧港)/2万5,000/未利用、一般、石炭/2015年5月
●ユナイテッド計画/秋田県秋田市(秋田港)/2万/未利用材、PKS/2016年7月
●相馬共同火力/福島県相馬郡(相馬港)/200万/石炭、ペレット/2015年4月
●常磐共同火力/福島県いわき市(小名浜港)/170万/石炭、ペレット/2016年4月
●東京電力フュエル&パワー常陸那珂火力発電/茨城県常陸那珂郡(常陸那珂港)/200万/ペレット/2003年12月
●昭和シェル石油(京浜バイオマス発電所)/神奈川県川崎市(川崎)/5万/ペレット、PKS/2015年10月
●市原グリーン電力/千葉県袖ヶ浦市(袖ヶ浦港)/5万/一般、廃材、PKS/2015年10月
●レンゴー(八潮工場内)/埼玉県八潮市/9,000/建築廃材チップ、PKS/2016年3月
●サミット明星パワー/新潟県糸魚川市(姫川港)/5万/石炭、ペレット、PKS/2005年1月
●バイオパワーステーション新潟/新潟県新潟市(新潟港)/5,750/未利用材、PKS/2016年6月
●SGETグリーン発電三条/新潟県三条市(新潟港)/5,750/未利用材、PKS/2017年8月
●敦賀グリーンパワー(丸紅火力)/福井県敦賀市(敦賀港)/3万7,000/チップ、PKS/2017年4月
●福井グリーンパワー/福井県大野市(福井港)/7,000/未利用、一般、PKS/2016年4月
●グリーンエネルギー北陸/富山県射水市/5,750/未利用材、PKS/2015年3月
●サミット半田パワー/愛知県半田市(衣浦港)/7万5,000/未利用材、PKS/2017年5月
●グリーンエナジー津/三重県津市/2万1,000/未利用材、PKS/2016年7月
●日本海水(赤穂第1発電所)/兵庫県赤穂市(赤穂)/1万6,530/未利用材、PKS/2015年1月
●日新林業/鳥取県境港市(境港)/6,000/国内一般、PKS/2015年3月
●三洋製紙/鳥取県鳥取市(鳥取港)/1万6,700/未利用材、PKS/2016年10月
●合同会社しまね森林発電/島根県江津市/1万2,700/間伐材、PKS/2015年7月
●日本製紙 岩国工場/山口県岩国市(岩国港)/―/国内一般、PKS/2008年12月
●トクヤマ/山口県周南市(徳山港)/7万8,000/PKS/2012年
●イーレックスニューエナジー土佐発電所/高知県高知市(高知港)/2万9,500/PKS/2014年10月
●イーレックスニューエナジー佐伯発電所/大分県佐伯市(佐伯港)/5万/PKS/2016年11月
●中国木材 伊万里工場/佐賀県伊万里市(伊万里港)/1万/未利用、一般、PKS/2016年2月
●シグマパワー有明 三川発電所/福岡県大牟田市(三池港)/4万7,500/PKS+石炭(補助燃料)/2017年3月
●中国木材 日向工場/宮崎県日向市(細島港)/1万8,000/未利用、一般、PKS/2015年4月
●王子グリーンエナジー 日南/宮崎県日南市(志布志港)/2万5,000/未利用材、一部輸入/2016年5月
※2017年9月現在稼働済で、木材チップ、木質ペレット、PKSのいずれかを燃料として利用している発電所
※各事業主体の発表資料や船社関係者への聞き取りを基に本紙作成
※未利用木材:森林の立木竹の伐採・間伐に伴い生じる未利用木材
※一般木材:製材等残材、その他由来の証明が可能な木材

**********海事プレスニュース2017年10月12日(木)
《連載》バイオマス燃料物流の胎動A 長期安定調達へ上流に投資も
★供給ソースを押さえる
 バイオマス燃料の輸入需要が急増しても、海外から安定的に調達できるのか。その答えのヒントは、住友商事の動きにありそうだ。今年7月、カナダ2位の生産 能力を持つ木質ペレット製造会社 パシフィック・バイオエナジー・コーポレーションの株式の47.6%を取得し、同国における木質ペレット製造事業に参入したのだ。カナダは国際的な認証を取得した森林の面積が世界最大で、中でも 同社が本拠を置くブリティッシュコロンビア(BC)州は世界有数の木質ペレットの供給地だ。 住友商事関係者は「数百万トン規模の木質ペレットの長期安定調達に向けては、上流への投資を行い、我々が供給ソースを一定程度押さえていく必要がある。これを皮切りに今後、上流への投資を他の地域に横展開していく戦略だ。長期安定調達の観点から、候補地はカナダBC州、米国、 オセアニ アになる」と話した。
 日本の木質ペレットの輸入先は現在、カナダが約75%で、残りの大部分がベトナム。米国も南東部が木質ペレットの供給地だが、日本は地理的に近いカナダBC州が最大の調達先となっている。一方、米国南東部の主な供給先は欧州だ。グローバルに事業を展開する邦船社や商社は、日本市場の伸び代に期待する。
「欧州の発電用木質ペレット燃料需要は先行して拡大し、既に年間1100万〜1200万トン程度の輸入量があるため、今後の伸び代は限られるだろう。日本は年間輸入量が足元の50万トン程度から 今後一気に数百万トン、場合によっては1000万トン規模まで増大する可 能性が十分あるため、成長市場として世界的に注目されている」(商社関係者)。
 木質ペレットの輸入量が将来的に数百万トン規模に拡大していけば、「輸入ペレットを国内のユー ザーに安定供給するために、中継基地を設置するニーズが高まる公算が大きい」(商社関係者)との見方も出てきた。イメージ は石炭のコールセンターの小規模版だ。住友商事は木質ペレットの輸入中継基地が将来的に設置されることを念頭に、愛知県半田市内にペレット専用倉庫を構え、輸 入ペレットの外航・内航の一貫輸送を一部で手掛けている。
★輸送契約さらに長期化
 木質ペレットは発電所の燃料として安定的に調達する必要があり、FIT制度の期間は20年におよぶため、輸送契約の長期志向が強くなる。木質ペレットは主に3万2000〜3万8000重量トン型のハンディサイズ・バルカーで輸送されるが、邦船関係者は「スポット・短期契約の比率が高いハンディサイズで、長期契約が見込める輸送案件は貴重」と、今後の長期安定収益源として期待している。
 邦船社が受領している見積もり依頼は9月末時点で、大まかな海上運賃の提示を求められる「インディケーション」が多く、有効期限付きの最終的な運賃を提示する「ファームオファー」に至った案件は数件にとどまるもよう。ただ、比較的規模の大きい新規のバイオマス発電所は20年以降の稼働が多く、燃料輸送は商業運転前の19年後半には始まる。「今秋から来年にかけて、ファームオファーに至る案件が増えていくのは間違いない」(同)とみられている。輸送契約の期間は10年が主流だが、「最近は期間15年・20年の引き合いが増えてきている」(邦船関係者)。
 商社関係者はそれに関連してこう話す。「輸送契約の期間は、基本的に燃料供給の本契約に合わせるため、輸送契約の期間も今後より長期化していくだろう。バイオマス発電事業者との燃料供給の契約期間はこれまで10年が主流だったが、ここ半年ほどで、15年、20年の契約が増えてきた」。FIT制度の期間は原則20年だが、その間に電力の販売価格が暴落するリスクもあるため、これまではまず10年の契約を結び、満了後に仕切り直すケースが多かった。これが現在では、「バイオマス発電は再生エネルギーの中で唯一ベース電源になり得ることもあり、販売価格が今後大きくは下がらないだろうとのコンセンサスが形成されてきた」(商社関係者)。加えて、発電所の建設コストが上昇傾向にあり、原料価格と輸送費用は低減に限界がある中、「金融機関から割安の融資を受けてプロジェクト全体のコストを抑えるには、為替予約の期間をより長期化する必要がある。そこで15年、20年の長期契約が増えてきたのが実情」(同)という。
★近海船の船腹不足も
 PKSは主に邦船社がアジア域内で運航する1万2000〜1万3000重量トン型の近海船で輸送される。PKSは「木質ペレットと異なり国際的な認証がないため大手企業が供給事業を手掛けづらく、長期安定供給には課題がある」(同)との指摘もあり、輸送契約期間は木質ペレットより短い。現状では「数量輸送契約(COA)の期間は、数カ月から1年が大半」(邦船関係者)という。ただ、20年以降に稼働予定の新規発電プロジェクト向けの引き合いでは「期間3〜5年の輸送契約が増えており、期間10年の案件も複数ある」(同)といい、PKSも将来的に契約期間が長期化していく可能性がある。
 PKSでは輸送量の大幅な増加が見込まれる中、数年内に船腹が不足するとの指摘がある。市場関係者の集計によると、邦船社が保有・運航する1万2000〜1万3000重量トン型の近海船は現在100隻弱とみられる。PKSの輸入量が20年までに想定どおり現状の倍の200万トン規模になった場合、「近海船1隻が1航海で1万トンのPKSを輸送するとして、10〜15隻分の需要が見込まれる」(市場関係者)。今後数年のうちに建造される邦船社の近海船は全船型で10隻程度にとどまるため、船腹需給が締まるとみられる。

**********海事プレスニュース2017年10月13日(金)
《連載》バイオマス燃料物流の胎動B丸紅、新規発電計画検討
バイオマス発電、新規計画検討 丸紅、敦賀向け燃料輸入は年32万トン
 丸紅は国内では同社初となるバイオマス発電所を福井県敦賀市で今夏稼働させ、今後も新規の投資を複数検討している。敦賀発電所向けの燃料の年間輸入量は、木質チップが約28万トン、PKS(パームヤシ殻)が約4万トンの計約32万トンを計画。チップの大半を7〜10年、PKSを3年程度の契約期間で押さえ ている。チップ、ペレット、PKSを合わせたバイオマス燃料の日本の輸入需要は、発電所が稼働し始める2020〜21年に1000万トン超に達すると予測する。国内電力プロジェクト部の山本毅嗣副部長(写真中央)、チップ・パルプ部の織本裕之部長代理(写真左)らに国内バイオマス発電事業の概況と戦略を聞いた。
 敦賀バイオマス発電所の事業主体となる敦賀グリーンパワー社長を兼務する山本副部長、製紙チップ課長・バイオマス課長を兼務する織本裕之部長代理との主なやり取りは次のとおり。国内電力プロジェクト部の椎橋航一郎企画チーム長(同右)が補足した。
― 国内のバイオマス発電事業における体制は。
 「社内16本部のうち、電力本部と紙パルプ本部が連携して事業を展開している。事業会社を通じてバイオマス発電所を運営し、発電・売電などの電力事業を手 掛けるのが、電力本部の国内電力プロジェクト部。その燃料となる木質チップ、木質ペレット、PKSの調達・輸入・販売を担当するのが、紙パルプ本部のチッ プ・パルプ部だ。社内の5つのカンパニー(グループ)のうち、電力本部は電力・プラントグループに属している」
― 敦賀市のバイオマス発電所が稼働した。燃料構成は。
 「事業会社の丸紅火力が100%出資する敦賀グリーンパワーを事業主体に7月1日から、当社として国内初のバイオマス発電所が商業運転を開始した。主燃料は木質チップで、助燃剤としてチップより重量当たりの熱量が多いPKSを使っている。チップの調達先は豪州、北米、ベトナムで、年間の輸入量は約28万トンだ。PKSは年間約4万トンを輸入する。燃料調達では、チップの大半を7〜10年、PKSの大半を3年程度の契約期間で押さえている。輸送契約期間もこれに合わせており、いずれも邦船社を起用した。チップはチップ専用船、PKSは近海船で輸送する。4月から試運転を始め、3月にはチップ専用船が発電所最寄りの敦賀港に初入港した」
― 燃料構成をそう決めた背景は。
「チップとペレットは計画的に生産できるため、いずれも長期の安定調達 が可能な燃料だ。が、敦賀のバイオマス発電事業を計画した当時は、日本のペレット輸入量がまだ限られていたことから、日本向けにまとまった物量が輸入されるチップを主燃料に決めた。一方、PKSはパーム油を生産する過程で発生する副産物であるため、長期の調達が難しい。このため、PKSは物量が多少変動しても支障がない助燃剤として使うことにした」
― 燃料構成は発電所ごとに変わるのか。
 「そうだ。バイオマス発電所の規模や立地、ボイ ラーの種類など、複数の条件を踏まえて燃料を決めるため、構成はケースバイケースになる。当社では国内のバイオマス発電事業で新規の投資を複数検討しており、環境負荷の低減に資する同事業を今後、積極的に拡大していく方針だ。バイオマス発電所の工期は一般的に2〜3年のため、仮に年内に投資を決めれば、早いものは2019〜20年に立ち上がる可能性がある。ペレットはチップより重量当たりの熱量が多いが、敦賀の発電所を計画した当時と違い、現在では長期契約の見積もりも取りやすくなっている。新規の発電計画の中では、ペレットを主燃料とする方向で検討している案件もある。チップとPKSが野積みで保管できるのに対し、ペレットは雨に濡れると変形してしまうため、専用のサイロや倉庫に保管する必要があり、設備投資が発生する。そのコストも踏まえ、事業計画の段階で最も条件に合う燃料を選定することになる」
★燃料輸入1000万トン超へ
― 日本のバイオマス燃料の輸入量の見通しは。
 「チップ、ペレット、PKSの木質バイオマス燃料全体の輸入需要は、2020〜21年に1000万トン超に達すると見ている。16年の輸入実績はチップが 約10万トン、ペレットが約33万トン、PKSが約76万トンで、総量が約120万トンだった。増加のペースは相当速い」
― 予測の背景は。
 「経済産業省が掲げる2030年度のエネルギーミックスでは、13年度に13%だった日本の電源構成における再生可能エネルギーの比率を22〜24%まで引き上げ、このうち2割をバイオマスでまかなう計画が示されている。この計画達成に必要なバイオマス燃料の総量は、2000万〜3000万トンに上る計算だ。バイオマス燃料には、今後さらに国産材が最大限に利活用されていくが、それでも輸入材との共生が不可欠であり、その輸入需要は1000万トン超になると予想している」
― 輸入量1000万トン超の内訳は。
 「各発電所で異なる条件に沿って燃料が決まるため、内訳は何とも言えない。ただバイオマス発電所で発電された電力の買い取り価格は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)により、20年間の長期にわたって円建てで固定される。このため、発電事業者には燃料を極力長期で調達し、為替予約を行ってコストを固めたいという共通のニーズがある。従って、計画的な生産が可能で長く安定調達できるチップとペレットが、中長期的に輸入燃料の主流になっていくだろう。PKSも有効なバイオマス燃料で、輸入需要はさらに伸びていくと見ているが、パーム油の副産物という成り立ちから、安定供給という点でチップ・ペレットに比べて蓋然性が低い。輸入量はどこかの段階で頭打ちになるのではないか」
★船社起用、問題解決力を重視
― バイオマス発電プロジェクト全体における海上輸送の位置付けは。
 「非常に重要との位置付けだ。発電所は当然ながら燃料の安定調達が必須で、必要な時に船腹を押さえられない事態は避けねばならない。FITの期間は20年で燃料調達も長期のため、輸送契約もできるだけ長期で結びたい。ただ、電力の買い取り価格はFIT制度で決まっており、発電所の建設コストも上昇傾向にある中、プロジェクトに占める燃料の海上輸送費のポーションは自ずと限られてくる。バイオマス燃料は日本の輸入が中長期的に増えていくのは確実で、船会社にとっても、長期の輸送契約が見込める貨物としてメリットがあるだろう。が、バイオマス燃料は鉄鉱石やLNGなどのコモディティと異なり輸入事業自体が薄利のため、運賃負担力が高いとは言えないのが実情だ」
― 船社起用に当たってのポイントは。
 「10年などの長期契約が主体のため、非常 時の対応や柔軟性といった問題解決能力を最も重視している。長期の輸送契約であっても天候の問題で船に遅延が生じたり、港の混雑で定刻に入港できなかったり、海上輸送は契約どおりにいかないケースが多いからだ。敦賀のバイオマス発電所はチップ、PKSとも邦船社を起用したが、PKSについては特に邦船社にこだわる考えはない。最近は日本からの復航貨物を確保している海外船社が、日本向けのPKS輸送で競争力の高い運賃を提示してくるケースが目立つ」
― 新規のバイオマス発電計画の申請が急増し、発電量が増え過ぎるとの懸念も出ている。
 「バイオマス発電は簡単に手掛けられる事業ではない。確かに申請は急増しているが、実際に着工に至る案件はある程度限られてくると見ている。例えば太陽光 発電事業は、用地さえあれば太陽光パネルを設置するだけで比較的容易に参入できる。一方、バイオマス発電事業は、発電所建設の難易度が火力発電所並みに高い。加えて燃料の安定的な調達も、供給ソースをしっかり押さえていない限り難しい。燃料の長期安定調達のめどが立っていない案件は、金融機関から融資を受けられない。この点で当社は、発電事業を海外22カ国で52案件、国内で19案件手掛けており、持分発電容量は全世界で1万1713MWと日系の独立系発電業者(IPP)として最大で、各種の発電所建設プロジェクトのノウハウを持つ。また、チップ・パルプ部で製紙原料用チップの調達を長らく大規模に手掛けており、豪州に自社の生産設備を持つほか、チップ輸出国・地域のほとんどと取引があるため、信頼できる燃料調達ソースが豊富だ。今後も電力本部と紙パルプ本部が連携し、環境負荷の低減につながるバイオマス発電事業に積極的に取り組んでいく」
(聞き手:松下優介)

**********海事プレスニュース2017年10月16日(月)
《連載》バイオマス燃料物流の胎動C住友商事、輸入中継基地も視野
ペレット輸入中継基地も視野 住友商事、長期安定調達へ「上流」に積極投資
 住友商事は国内の木質バイオマス発電所の相次ぐ稼働で燃料の木質ペレットの輸入が急拡大していくと見ており、将来的な輸入中継基地の構築も視野に入れている。それを見据えて既に愛知県半田市の大型専用倉庫に木質ペレットを保管し、同倉庫を基点に外航・内航の一貫輸送を一部手掛ける。輸入ペレットのシェアで5割超を握る同社は、今後の輸入量について21年頃に200万〜300万トン、25年頃に500万トン規模、30年頃には1000万トンに達する公算が大きいと予測。まとまった物量の長期安定調達に向けて7月、カナダの木質ペレット製造会社に資本参加したが、今後は上流の供給ソースへの投資を他地域に横展開していく方針だ。高光克典・生活資材事業推進部長(写真左)にバイオマス燃料調達の戦略を聞いた。
 高光・生活資材・不動産本部長補佐兼生活資材事業推進部長との主なやり取りは次のとおり。岡本恭長・同部バイオマスチームリーダー(同右)が補足した。
― バイオマス関連事業における生活資材事業推進部の役割は。
 「国内の木質バイオマス発電事業者向けに、その燃料となる木質ペレット、木質チップ、一部PKS(パームヤシ殻)を国内外のソースから供給している。中でも環境負荷低減の観点から、火力発電所で石炭との混焼効率が高い木質ペレットの需要が今後急増するのは確実と見ており、その輸入に特に力を入れている。バ イオマス発電所の電力には、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT制度)が適用されるが、同制度では再エネ賦課金として国民に負担を強いており、期間は20年と長い。これを踏まえ、国際的な認証を得たしっかりとしたソースの商品を、長期で安定的に供給していくことが大方針だ。トレーサビリティ(生産履歴の追跡)、リーガリティ(適法性)、安定供給、この3つを満たすソースからの調達を徹底している」
― 日本のバイオマス燃料の輸入量の見通しは。
 「現在、国内のバイオマス発電所向けに輸入されている燃料の主体はPKS。2017年の輸入量は、PKSが80万〜100万トン程度、木質ペレットが55万〜60万トン程度になる見通しだ。ただ、両者の数量は21年以降に間違いなく逆転するだろう。PKSはそれまでに200万トン程度まで増え、その後は頭打ちになると見ている。一方、木質ペレットは21年頃に200万〜300万トン、25年頃に少なくとも500万トン規模に拡大し、30年頃には1000万トンに達する可能性がある。これが業界の一般的な見立てだ」
― 予測の背景は。
 「木質チップ、木質ペレット、PKSを燃料として使用するバイオマス発電所はまず19年、20年に一斉に立ち上がるが、そこに向けて輸入燃料を供給する契約は概ね締結済みで、木質ペレット、PKSとも21年頃までの物量はほぼ固まっている。木材ペレットの輸入需要が中長期的に高まっていくのは、石炭との混焼効率が高いからだ。21年以降に運転開始となる発電 所でも、バイオマス燃料との混焼を計画する案件が相次いで具体化しており、同年のペレット輸入量は、当社だけで約100万トンがほぼ確定している。今後、 現在交渉中の案件をどれだけ上乗せできるかだが、当社の日本向けの輸入ペレットのシェアは足元で5割超ある。21年頃の全体の輸入量が200万〜300万トンに達するシナリオは蓋然性が高いと考えている」
 「現在交渉中の案件は21年、22年の運転開始が多く、特に21年は大規模な発電所がまとまって稼働することもあり、ペレット輸入量は25年頃に向けてもう一段増えていくだろう。それ以降は、具体的な数字の積み上げが困難で確たることは言えないが、先物の輸入案件の交渉をしている感触では、石炭との混焼需要が引き続き高まっていき、30年頃には1000万トンをうかがう物量になる公算が大きいと見ている。我々の狙いは今後急激に拡大する混焼需要であり、国内では供給出来ない数量を補完する目的で輸入ペレットの調達に注力していく」
★供給ソース押さえる
― 物量が急増する中で安定調達できるのか。
 「数百万トン規模の木質ペレットの長期安定調達に向けては、上流への投資を行い、我々が供給ソースを一定程度押さえていく必要がある。この考えから今年7月、カナダ2位の生産能力を持つ木質ペレット製造会社パシフィック・バイオエナジー・コーポレーションの株式47.6%を取得し、同国における木質ペレット製造事業に参入した。カナダは国際的な認証を取得した森林の面積が世界最大で、中でも同社が本拠を置くブリティッシュコロンビア(BC)州は世界有数の木質ペレットの供給地だ。これを皮切りに今後、上流への投資を他の地域に横展開していく戦略だ。長期安定調達の観点から、候補地はカナダBC州、米国、オセアニアになる」
「米国は南東部が木質ペレットの供給地だが、日本の調達先としては地理的に近いカナダBC州が現在も最大シェアで、米国南東部 は欧州への供給がメーンになる。欧州の発電用木質ペレット燃料需要は先行して拡大し、既に年間1100万〜1200万トン程度の輸入量があるため、今後の伸び代は限られるだろう。日本は年間輸入量が足元の50万トン程度から今後一気に数百万トン、場合によっては1000万トン規模まで増大する可能性が高いため、成長市場として世界的に注目されている」
― PKSの位置付けは。
 「PKSに関しては前述の3つの方針、トレーサビリティ、リーガリティ、安定供給を満たすソースがなかなかないのが実情だ。我々は特にリーガリティを重視しており、PKS以外のバイオマス燃料においては、国際的な森林認証を受けた商品しか扱わない。PKSはパーム油の最後の搾りかすという成り立ちもあり、国際的な認証がない。確たるサプライチャネルが確立されない状態で出荷され、価格は安いが出荷元がよく分からないものも多い」
 「パーム油自体が環境上の問題を指摘されており、PKSに早晩それが波及する可能性もある。このため当社では、PKSは中身を精査した上で一部を輸入で調達してはいるが、量は追わず慎重に対応している。例えば東南アジアの大手財閥など、本気でPKSの供給に取り組む大手企業が出てくれば、日本の輸入が中長期的に伸びる余地はあるだろう。ただ前述のリスクから大手には手掛けづらいビジネスで、日本向けの輸入量も200万トン程度で頭打ちになるのではないかと見ている」
★輸送契約さらに長期化
― ペレット輸入が急増すると何が変わるか。
 「木質ペレットの輸入量が将来的に数100万トン規模に拡大していけば、輸入ペレットを国内のユーザーに安定供給するために、中継基地を設置するニーズが高まる公算が大きいと考えている。石炭のコールセンターの小規模版というイメージだ。バイオマス発電所の最寄り港は、大型船を受け入れ可能な水深を有する公共バースが限られる。こうした状況下で今後、発電所の数が増えていけば、大水深バースを持つ港に母船を寄港させて荷揚げし、中継基地で保管後、小型の内航船に積み替え、各発電所の最寄り港まで小口輸送する、というニーズが出てくるだろう」
― それを見据えた取り組みは。
 「木質ペレッ トの輸入中継基地が将来的に設置されることを念頭に、愛知県半田市内にペレット専用倉庫を構え、輸入ペレットの外航・内航の一貫輸送を一部で手掛けている。具体的には、ハンディ・バルカーで輸送する輸入ペレットを愛知県北部の衣浦港で荷揚げし、保管能力3万3000トンの倉庫に保管。それをIPP(独立 発電事業者)が運営する近郊のバイオマス発電所向けに、必要な時にバージで小口輸送している。半田をモデルケースとして、将来的に同様の取り組みを国内他地域に展開できないか様々な角度から検討していく。中継基地を持てば小ロットの輸入案件の引き合いにも対応できる。200万〜300万トン規模の輸入量が見込まれる2021年頃には、輸入中継基地の設置が具体化する可能性は十分あると考えている」
― 燃料供給の契約期間に変化はあるか。
 「バイオマス発電事業者との燃料供給の契約期間はこれまで10年が主流だったが、ここ半年ほどで、15年、20年の契約が増えてきた。FITの期間は20年だが、その間に電力の販売価格が暴落するリスクもあるため、これまではまず10年の契約を結び、満了後に仕切り直すケースが多かった。これが現在では、バイオマス発電は再生エネルギーの中で唯一ベース電源になり得ることもあり、販売価格が今後大きくは下がらないだろうとのコンセンサスが形成されてきた。 加えて発電所の建設コストが上昇傾向にあり、原料価格と輸送費用は低減に限界がある中、金融機関から割安の融資を受けてプロジェクト全体のコストを押さえるには、為替予約の期間をより長期化する必要がある。そこで15年、20年の長期契約が増えてきたのが実情だ。輸送契約の期間は、基本的に燃料供給の本契約に合わせるため、輸送契約の期間も今後より長期化していくだろう」
― バイオマス燃料の輸送・保管上のポイントは。
 「木質チップとPKSは野積みできるのに対し、木質ペレットは水濡れが厳禁で屋外に蔵置できないため、専用のサイロ・倉庫が必要になる点が保管上のポイントになる。3種に共通する輸送上の最大の注意点は、コンタミネーション(異物混入)だ。例えば荷役中に何かの拍子で鉄などが混入してしまうと、混焼の場合は石炭ボイラーを痛めてしまい、ケタ違いに大きなクレームになり得る。また安定調達が必須な発電用の燃料は本船が遅れたでは済まされないため、輸送の安定性が当然重要になる」
(この連載は松下優介、小玉悠平が担当しました)

***********2017年10月30日東京新聞11版総合
パーム油でバイオ発電急増
買い取り制度の半数 環境破壊懸念
 環境負荷が少ない電力の拡大を図る「固定価格買い取り制度」の中で、海外から輸入するパーム油を使ったバイオマス発電が急増、認定を受けた事業の半数以上に上ることが、経済産業省の調査で分かった。
★経産省、価格見直し検討
 パーム油を作るアブラヤシ農園は東南アジアで森林破壊を招いているとの批判が根強い。日本の消費者の負担が支える買い取り制度が環境破壊を悪化させる恐れがあり、経産省も買い取り価格の見直しや環境配慮のための基準作りなど対応策の検討を始めた。
 バイオマス発電は、木材や植物素材を燃料に使う。経産省によると、今年三月末時点で買い取り制度の対象に認定されたのは八百四十五件、千二百四十二万キロワット。このうち燃料にパーム油を含むものは件数の54%、出力ベースで38%に上る。四〜九月の間、さらに百三十一万キロワットが認定を受け、12%がパーム油燃料だった。一部は既に運転を始めている。
 パーム油は燃料のほか、食品や化粧品などに使われ、マレーシアやインドネシアなどで近年、生産農場が急拡大。熱帯林破壊の最大の原因とされ、オランウータンなど希少生物の絶滅の危険を高めていると批判される。
 NPO法人バイオマス産業社会ネットワークの泊(とまり)みゆき理事長は「パーム油の生産は森林減少や生物多様性消失の原因とされ、二酸化炭素の排出量が多いと指摘される。『環境負荷の低減』という固定価格買い取り制度の趣旨に反するので、対象から外すべきだ」と指摘。経産省新エネルギー課は「環境を破壊しない安定的な燃料調達をどう実現すべきか検討したい」としている。
 制度の認定を受けたバイオマス発電の電気は、大規模な設備からは一キロワット時当たり二十一円、小規模な設備は同二十四円という有利な価格で、電力会社が二十年間買い取る。そのコストは賦課金として電力料金に上乗せされる。
●制度の趣旨考えて
買い取り制度に関する国の調達価格等算定委員会委員の高村ゆかり・名古屋大教授の話
 パーム油生産のためのアブラヤシ農場の拡大は環境保全の観点から世界的に批判され、二酸化炭素の排出削減につながらないケースがあると指摘される。地球温暖化防止など環境保全に貢献するエネルギーを普及されるという制度の趣旨にのっとり、燃料の持続的な調達に関する基準を作るなどの対策が必要だ。
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