八ッ場ダム控訴審に向け公金ムダ遣い実態解明のため刑事記録閲覧を東京地検に請求  八ッ場ダム問題

■原告19名で構成する「八ッ場ダムをストップさせる群馬の会」(浦野稔代表)には市民オンブズマン群馬のメンバーも多数参加していますが、遺憾ながら八ッ場ダムの公金支出差止めを求めた住民訴訟は、先月の6月26日に、前橋地裁(松丸伸一郎裁判長)で住民敗訴の判決が下されました。

 しかし、控訴期限の2週間が経過する直前の7月8日に、原告は、前橋地裁の判決を不服として、東京高裁に控訴しました。八ッ場ダムに関する住民訴訟で、控訴は東京地裁訴訟に続き2件目となります。

■市民オンブズマン群馬の鈴木庸事務局長は記者会見で「前橋地裁判決は東京地裁判決の焼き直しだった。高裁ではいい判決が出ることを期待したい」と話しました。利根川流域の1都5県で提起されている同様の訴訟では、すでに東京、前橋、水戸の各地裁で原告側の主張を全面的に退ける判決が出ていますが、原告住民側はこれから巻き返しをはかることにしています。

 この裁判で、原告は、@治水上、利根川流域の各都県にとって八ッ場ダムの必要性がないこと、A各都県は十分な水源を有していること、B八ッ場ダム周辺の地質などは建設に不適で、地滑りの危険性を伴う、などの主張を展開し、支出差し止めに加えて、03〜08年度の群馬県の建設事業負担金のうち約51億円の返還を求めています。

■さて、この巨額の公金を投入している八ツ場ダム事業では、ズサンな公金の管理や、事業の主体である国や県と、土建業者や買収交渉委員長などとの癒着が指摘されています。そのなかでも、2004年11月から2006年4月にかけて、ダムの工事にかかわる測量業務をめぐり、入札情報を業者に漏らし、見返りに710万円の金を受け取ったとして2006年7月5日に逮捕され、2006年10月25日に、東京地裁で懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金710万円(求刑懲役2年6月、追徴金710万円)の判決を言い渡された八ッ場ダム工事事務所(群馬県長野原町)の用地1課長だった斉藤烈容疑者が起した刑事犯罪は象徴的です。

 刑事確定訴訟記録法によると、判決から3年以内は刑事記録の閲覧が可能なため、八ッ場ダムを巡る巨額の公金ムダ遣いのシステムの実態を解明し、控訴審で有利な状況を作り上げるための次の一手として、市民オンブズマン群馬では、敗訴が決まった6月26日に、東京地検の記録担当を訪れ、刑事確定訴訟記録法第4条による刑事訴訟法第53条第1項に定める保管記録の閲覧申請を提出し、受理されました。

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平成21年6月26日
〒100-8903東京都千代田区霞が関1丁目1番1号
中央合同庁舎第6号館A棟・B棟
東京地方検察庁 記録担当 御中
(TEL 03-3592-5611)
    〒371-0801群馬県前橋市文京町1-15-10
    八ッ場ダム住民訴訟群馬原告団事務局
    市民オンブズマン群馬事務局 鈴木 庸
八ッ場ダム工事に係る刑事事件の保管記録閲覧の申請について(お願い)
 このたびの、前橋地方裁判所(民事第2部合議係)平成16年(行ウ)第43号公金支出差止等請求住民訴訟事件の判決を受けて、当原告団として、八ッ場ダム工事が抱える諸問題の大きな要素である税金の無駄遣いについて、控訴審で引き続き主張してゆく所存です。
 そのために、下記の事件について、刑事確定訴訟記録法第4条による刑事訴訟法第53条第1項に定める保管記録の閲覧を、ここに申請したいと存じます。申請手続きについては、刑事確定訴訟記録法施行規則第8条に基づいて、御庁のご指示に基づき進めることにします。
    記
【事件概要】2006年10月25日判決の次の刑事事件。記載内容は翌日の上毛新聞から引用。
「八ッ場ダム元課長に有罪 国交省事務所汚職で判決 東京地裁」
 国土交通省八ッ場ダム工事事務所(長野原町)など発注の測量業務をめぐり、受注側から借金の形で710万円のわいろを受け取ったとして収賄罪に問われた同事務所元用地第一課長、斉藤烈被告(44)=懲戒免職=に対し、東京地裁は25日、懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金710万円(求刑懲役2年6月、追徴金710万円)の判決を言い渡した。
 川本青厳裁判長は「無利息、無担保で金を借りた見返りに指名競争入札の内部資料を繰り返し提供し、連日のように飲み歩いた。動機や経緯に酌量の余地はない。刑事責任は重いが、事実を認め、反省している」と判決理由で述べた。
 判決などによると、斉藤被告は2004年11月から今年4月にかけ、同事務所が発注した測量業務の設計書や仕様書のコピーを郵送した見返りなどとして協立測量(東京)の阿部善宏元専務(47)=有罪確定=から計710万円を借金した。

【この事件と、原告が係争中の訴訟との関係】
 八ッ場ダム工事には最終的に1兆円を超える公金が投入されると見られている。ところが、実際には、入札談合による公示価格の水増しや、この事件のような用地買収関係者による不正支出が頻発しており、公金の無駄遣いは目に余るものがある。そのため、今回発覚したこの事件の内容を検証することにより、公金の無駄遣いの実態と不正の手法を把握し分析することにより、今後東京高裁で展開される控訴審で、有利な立場を得ることが原告にとって不可欠である。
 とりわけ、この事件の被告は、国土交通省関東地方整備局直属の八ッ場ダム工事事務所の用地買収交渉の責任者である用地第一課長の職にあり、測量発注業務で、指名競争入札の内部資料を繰り返し外部に漏らしている。
 地元関係者によると、被告が課長を務めていた八ッ場ダム工事事務所用地第一課は、水没五地区のうち長野原、林、横壁の三地区の代替地交渉などを行っており、公私ともに接触があった地元民は「代替地の地主との話し合いに奔走していた。住民ですら業者からの接待の申し出があるほど。課長ならなおさらだろうが、贈収賄とは夢にも思わなかった」と驚いており、公人として、買収交渉で巨額の金銭を扱い、巨額工事の入札情報を知り得る立場にありながら、さらに業者との癒着により多額の賄賂を手中にしていたことは、工事事務所の体質がそのような不祥事の発生を許したことになり、公金の無駄遣いの根源を知る格好の事件である。
 ダム建設の計画浮上から半世紀余りにもなるのに、いまだに行政がこの大工事を中止したがらない理由は、こうした巨額の利権が背景にあることを原告団は指摘しており、この事件は業者との癒着の典型事例として、ほかにも日常的に行われてい様子がうかがえる。
 原告団は、買収交渉において、八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長の誕生日に開催される丸岩会と称する、買収交渉委員長、工事事務所長、群馬県知事、工事業者約70社が一堂に会する組織の存在を確認しており、入札案件で実際に行われた不正の手口を詳細に検証することにより、工事事務所と業者との癒着の実態を明らかにし、控訴審で、公金の無駄遣いの実例として、摘示していきたい。  以上
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■東京地検では、市民オンブズマン群馬の閲覧申請の内容をよく検討して、回答を同会代表でもある当会の事務局長あてに連絡してくることを約束してくれました。

 当会では、八ッ場ダム工事事務所を舞台にしたこの収賄事件を斉藤烈事件と呼んでいます。この事件の裏には、巨額利権をめぐるアブク銭に群がる役所、業者、政治家、地元有力者などの存在があり、刑事記録のなかには、そうした背景をうかがわせる情報が豊富に含まれているに違いないと考えています。まさに、情報の宝庫だと、地検による閲覧許可を大いに期待したいものです。一方、裁判所と同じく、検察庁も政治的な圧力に敏感なところがあるため、手放しで期待できるのかどうか、一抹の心配もあります。

■当会が掴んだ、かみつけ信用金庫の萩原理事長の誕生日を祝う丸岩会では、ゴルフ場を借り切っての大ゴルフ大会に、群馬県を代表する土建業者の重鎮や、群馬県庁のOBら80名ほどが参加し、その晩に伊香保温泉の有名ホテルの大宴会場に、小寺群馬県知事や八ッ場ダム工事事務所長の国交省キャリア役人も参加し、現在では数少ない巨額公金をジャブジャブ使える一大浪費プロジェクトの継続を宣言し、業者との癒着を確認しあったのです。(このあたりの詳しい情報は当会の2009年2月28日のブログhttp://pink.ap.teacup.com/ogawaken/197.html#readmore
他をご覧ください)

■東京地検への刑事記録閲覧申請書のなかでも触れていますが、斉藤烈事件を報じた3年前の記事から、事件の概要をもう少し詳しく見てみましょう。

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 国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所(長野原町)が発注する用地調査業務などをめぐり、便宜を図った見返りに無利子、無担保で業者から約600万円を借りたとして、警視庁捜査二課は2006年7月5日、収賄容疑で千葉県流山市中野久木、同事務所前用地第一課長(現同省首都国道事務所用地第二課長)、斉藤烈容疑者(44)を逮捕、同事務所などを家宅捜査した。
 捜査二課は贈賄容疑で東京都練馬区、協立測量(東京)の元専務、阿部善宏被告(46)=別の収賄罪で起訴=を任意で調べており、同容疑で書類送検する方針。
 共立測量は、国道の用地測量業務をめぐる別の贈収賄事件で、国交省の出先事務所の元副所長に賄賂を渡していたことが判明したが、その捜査の過程で、八ッ場ダム工事事務所の課長が、入札情報を漏らした見返りに賄賂を受け取っていたという本件の容疑が浮上したもので、阿部善宏被告は別の事件でも起訴されている。
 同課は、斉藤容疑者が関東地方整備局内の入札予定価格を算出できる内部資料などを入手できる立場にいたことから、阿部被告がこの資料を受け取り、入札に利用したとみて参加した入札の特定を急ぐ。
 調べによると、斉藤容疑者は八ッ場ダム工事事務所用地第一課長だった2004年11月から今年3月にかけ、協立測量に便宜を図った見返りとして、阿部被告から数回にわたり無利子、無担保で約600万円を借りた疑い。調べに対し、斉藤容疑者は「容疑事実に間違いありません」と供述。 阿部被告も容疑を認めているという。
 斉藤容疑者は1991年から阿部被告と面識があり、02年ごろから融資を受けていた。これまでに2千数百万円を借りたが、返済したのはわずかで、残りは飲食費や借金返済に充てていたという。
○再発防止努める
 門松武・関東地方整備局長の話 職員が収賄容疑で逮捕されたことは、行政の信頼を裏切るもので極めて遺憾。厳正かつ適正に対応するとともに、このようなことが二度と起こらないよう再発防止に努めたい。
○ダムの町”に動揺 「交渉に影響」懸念の声
 ”ダムの町”に動揺が広がった。国土交通省関東地方整備局発注の用地調査業務をめぐる贈収賄事件。警視庁に収賄容疑で逮捕された斉藤烈容疑者(44)=千葉県流山市=は今年三月まで2年間、八ッ場ダム建設に伴う長野原町の水没地区住民との交渉を担当していた。関係者は「あのまじめな人がなぜ」と驚く一方、「交渉に影響が出る」と今後を懸念する声も上がった。
 関係者の話を総合すると、斉藤容疑者が課長を務めていた八ッ場ダム工事事務所用地第一課は、水没五地区のうち長野原、林、横壁の三地区の代替地交渉などを行っていた。
 公私ともに接触があった地元の男性は「代替地の地主との話し合いに奔走していた。 住民ですら業者からの接待の申し出があるほど。課長ならなおさらだろうが、贈収賄とは夢にも思わなかった」と驚く。勤務態度や風ぼうなどから、「堅物」のイメージが定着していたという。
 斉藤容疑者は同事務所勤務時代、町内の寮で単身生活をしていた。町役場関係者は「派手には見えなかった。ここで一人暮らしでは、お金の使いようがない」と話す。
 ダム建設の計画浮上から半世紀余り。町内で代替地の分譲やまちづくりの計画が着々と進む中、不祥事は発覚した。関係住民でつくる八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「今でもダムを造ることに批判している人もあり、打撃が大きい」とショックを受けた様子。
 同町の高山欣也町長は「大変心外で、今後の交渉がやりにくくなるだろう。一期分譲者の取得面積、農地などの交渉が控えていて重要な時。こんなことは絶対にあってはならない」と語った。
 関東地方整備局によると、贈賄側とされる阿部善宏被告(46)が専務を務めていた協立測量は2004年4月から今年4月末までに、同局発注の業務27件を指名競争入札で発注。八ッ場ダム工事事務所の業務の落札はなかった。
 警視庁は同事務所の指名競争入札への同社の参加状況についても調べていく。
 警視庁は7月5日、長野原町与喜屋の同事務所を約6時間にわたり家宅捜査し、捜査員8人が段ボール箱3箱分の資料を押収した。
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■上記の報道情報から、次の事項が浮き彫りになります。

(1)国交省の地方整備局と業者との癒着は、全国的な現象であり、賄賂が一般化しているため、当利権にまみれた八ッ場ダム工事事務所で買収交渉の責任者だった課長も、裏金づくりに精を出しており、運悪く別の事件の捜査で芋づる式に犯罪がバレた。

(2)入札情報を業者に漏らすということは、土地買収に際しての予算情報も、地権者代表に漏らしていたことになり、前述の丸岩会を主宰する八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員長の萩原昭朗と、被告の斉藤烈との癒着関係も当然疑われてしかるべきであること。

(3)したがって、上記の報道で、八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長が「打撃が大きい」とショックを受けた様子なのは、至極当たり前の反応と見られること。

(4)この事件で、警視庁は2006年7月5日、長野原町与喜屋にある八ッ場ダム工事事務所を約6時間にわたり家宅捜査し、捜査員8人が段ボール箱3箱分の資料を押収したので、その成果が、刑事記録に反映されているわけで、閲覧で数々の違法行為の実態が明確になることが期待されること。

(5)斉藤烈は、八ッ場ダム工事事務所用地第一課長として、業者に便宜を図った見返りとして、業者から無利子、無担保でカネを借りた容疑でつかまったが、なぜ返すつもりもないカネなのに、賄賂として発表したがらない役所やマスコミの体質も問題。しかも、これだけ多額の賄賂をもらったのに、実刑を受けず、執行猶予とされていること。(これが一般市民の場合なら、果たして執行猶予になるだろうか)。

■この贈収賄事件を受けて、国交省の各地法整備局は、2006年8月に共立測量梶i杉並区上荻1-15-1)の指名停止措置を行いました。指名停止期間は、2006年5月26日〜2007年5月25日(12ヶ月)でした。

 しかし、国交省のこの措置は、トカゲの尻尾切りです。八ッ場ダム工事事務所の課長の斉藤烈と共立測量の専務だけが逮捕起訴され、共立測量だけが指名停止措置をうけたからです。なぜなら、斉藤烈の上司である八ッ場ダム工事事務所の安田所長や地元の買収交渉連合委員会の萩原委員長は、当然斉藤烈の業務がどうだったのか精通しているはずだからです。

■また、地元群馬県や、首都圏を代表する土建会社等の幹部らと、住民代表の買収交渉委員長、県知事、そして工事事務所長が、毎年少なくとも一回、丸岩会と称する萩原委員長のための誕生会イベントの開催時に、一同に会してゴルフや宴会をやっていたことから、関係者で巨額利権から垂れ流れおちる甘い汁を、皆で味わう体制が構築されていたことが分かります。これでは、いくら税金を投入しても、八ッ場ダムが一向に前進しないのも無理はありません。時間をかければかけるほど、甘い汁が長く吸えるからです。

 これ以上、八ッ場ダム事業継続を口実にした税金の無駄遣いは困るので、ぜひ東京地検には、斉藤烈事件の刑事記録閲覧を許可していただき、控訴審で原告が有利な立場に立てるよう期待したいものです。

【ひらく会情報部】
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