2018/11/22  23:02

11月24日(土)の台湾統一地方選挙で東京五輪への「台湾」名義での参加を問う国民投票にもご注目!  国内外からのトピックス

■日本と異なり台湾の投票日は土曜日に行われます。その台湾で、11月24日に「台湾」名義での東京五輪への参加申請の是非を問う国民投票が行われます。統一地方選では、中国の外交および経済面での攻勢により、中国との関係重視を掲げる野党の国民党の支持が強くなっており、台湾独立を掲げる保守の民進党の牙城の南部でも苦戦を強いられており、国民投票の行方も流動性を増しています。
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台湾加油!(台湾、がんばれ!)


 事実、この国民投票の直前に、IOC(国際オリンピック委員会)は「チャイニーズ・タイペイ」という呼び方について変更を認めない方針を台湾側に通達しました。

 投票に影響するタイミングでの報道は大変に遺憾であり、台湾の人たちの民意を純粋に確かめることを妨害するものです。

 そもそも、オリンピックの精神は、その国の国民の主体性を尊重するものであり、他国の人たちのやることに干渉することは、スポーツに政治を持ち込むことになります。

 しかし、中国政府のやり方は、このオリンピック精神をゆがめようとするもので、それ自体、フェアプレーの精神に反する考え方と言うことができます。

■台湾の人たちが国民投票を通じてやりたいことは、東京五輪で「台湾という名前を使いたい。台湾は台湾だから、自分たちの名前を使う」という考えがどの程度国民に支持されているのかどうか、投票で示し、結果を国際社会に示したいだけなのです。

 それを妨害する中国政府は、国際ルールを平然と破るという体質が備わっており、その弊害は、外交や貿易など、さまざまな面で国際的な軋轢を生みだしています。

 東京五輪開催まで2年を切ったこの時期にこそ、私たちは、台湾のかたがたの願いを表すこの国民投票を温かく見守り、その結果を尊重したいと思います。

【11月25日追記】
 台湾の行方を占う統一地方選挙の投開票が11月24日に行なわれ、同日夜、大勢が判明し、与党・民進党の大敗という結果に終わりました。とくに本省人の台湾独立派がこれまで勢力を占めてきた南部での敗北は衝撃的で、直轄市である台湾第2の高雄市と第3の台中市でいずれも最大野党・中国国民党に敗れてしまいました。
 国民党はこのほかにも中南部や離島の県や市の首長を民進党から奪還し、現有6から2倍半の15に躍進を遂げました。
 このため、2016年5月の就任後、中台関係の「現状維持」を掲げ、内政では年金制度改革やインフラ整備、脱原発などに取り組んできた台湾の蔡英文総統は、11月24日深夜、統一地方選での与党・民主進歩党の大敗の責任を取り、同党主席から辞任することを表明しました。
 この結果を見て、さっそく中国共産党は、軍事・外交面での台湾への圧力が奏功したとして、今後ますます台湾への締め付けに自信を深めるとみられます。
 我が国としても、民進党が政権を奪還した2016年からは、国交のない台湾に対して平成28年度版外交青書で「自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人である」と、他の国には見られない表現を用いて、東日本大震災で200億円を超える義援金を寄せてくれた台湾の人々への感謝と配慮を反映した記述となっていますが、2020年予定の次回台湾総統選で中国国民党が再び政権を掌握した場合、今後の日台関係にも中国の影が色濃くなる懸念があります。
 台湾の台中市、彰化県及び高雄市と友好協力協定を締結し、観光の相互PRや人的交流、日台文化の理解の促進など様々な分野で交流を進めている群馬県としても、これらの県・市の首長がいずれも国民党に代わったことから、戦略の見直しが必要になるとみられます。
 今回の統一地方選挙では、中国共産党が背後でさまざまな工作を働いていたとみられ、台湾の選挙民の投票行動を大きく変えたという見方もあります。
 台湾では、中国共産党(中共)の傀儡ともいうべき中国国民党は、4年前の2014年3月18日に、前日の与党国民党が中国との「サービス貿易協定」(2013年6月調印)を立法院(一院制国会に相当)の内政委員会で審議終了・本会議送付を強行したことがあります。その時は、これを契機に抗議する学生が立法院本会議場に突入、議場占拠を続け、「両岸(中台)協議監督法令制定前にサービス貿易協定審議についての政党間協議を招集しない」との王金平立法院長(国会議長に相当)の調停を引き出して同4月10日議場を退去するという、いわゆる「ひまわり」学生運動が巻き起こりました。それはその後の政局にも影響し、2年後の2016年1月の総統選で民進党による政権奪取に繋がりました。
 その後、一敗地にまみれた中国国民党が、中国の台湾への締め付けを背景に、民心の動揺をあおり、中共とは一線を画しながら台湾の自主性を重んじた蔡英文政権への不満を助長して、巻き返しを図り、裏では中共の支援を得て、今回の結果に結びつけたと言えます。
 今回の統一地方選挙では、11月24日の朝8時から始まった投票所では、同時に同じ場所で10件の「住民投票」(国民投票に相当)も実施されたため、どのような手順で投票をするのか、各地で混乱を招き、遅延が発生したため、午後4時までの投票締め切りまでに長い列ができてしまいました。そのため、中央選挙委は投票締め切り時点で並んでいる有権者に投票を認めたため、台北市のように接戦で決着がついた選挙区では、僅差で落選した中国国民党が「民進党が現職無所属候補の丁氏の当選を阻止するため、あえて支持者に民進党候補ではなく柯氏への投票を促す投票調整をした」と主張し、投票結果の無効を主張しています。
 こうした中共による圧力の結果、住民投票の目玉の一つである「台湾」名称で東京オリンピック参加申請について、賛成は約476万票、反対は約577万票という結果が出ました。
 今回選挙前にIOC(国際オリンピック委員会)から「名称変更を認めない」と台湾側への通達があり、「台湾」名義ならオリンピックの出場資格を失うという脅迫的なものでした。
 本来、独立国である台湾が「チャイニーズタイペイ」ではなく「台湾」という名称で五輪に参加したいといえば、当然、それが受け入れるはずですが、IOCは中共による圧力に屈して、こうした脅迫的な通達を行いました。
 残念ながら、実利を重んじて反対票を投じた台湾人が多かったわけですが、中共の圧力に屈せず、賛成票を投じた約476万の人たちの存在はまぎれもない事実です。
 たとえ、チャイニーズタイペイで台湾選手団が2020年東京五輪に参加した場合でも、台湾の旗を持って台湾選手を応援している人たちがオリンピック委員会の職員や警察に追い出されるようなことが決して起きてはなりません。
 2020年東京五輪で、持ち物や服装、声援まで規制されることがあれば、それは個人の自由を奪うことになり、中共と異なり民主主義国家を実践する我が国では、「やり過ぎだ」という声が巻き起こり、直ちに規制が撤廃されるはずです。
 「ルールを守れ」と言われても、そのルールが中共主導で作られ、中共を利するのでは、ルールとは言えません。中国政府による政治ルールがオリンピックに持ち込まれれば、主催国である我が国は黙っていられるわけがありません。
 このほか住民投票として、福島、茨木、千葉、栃木、群馬の5県産食品の禁輸の賛否が問われました。その結果、賛成が779万票余りと、反対のおよそ223万票を大きく上回った上、有権者の25%(約494万票)以上の得票が必要という条件を満たして禁輸が継続されることになりました。少なくとも、輸入再開は2年間禁じられる見通しとなりました。
 日本側は繰り返し輸入再開を台湾側に求めてきましたが、反原発を既に国の方針として決定している台湾の人達にとって、放射能汚染食品に対する関心は、事故を起こした我々日本人よりも数段敏感です。実際、群馬県でも、タラの芽やコシアブラなど、山菜に含まれるセシウムは未だに高濃度であり、海外に向けて、食材の安心・安全をPRできるような状況にはありません。当会としては、この件に関しては、台湾の皆さんが依然として正しい判断をしていることに、評価をしています

※参考情報「11.24台湾統一地方選挙の結果分析」
**********Radio Taiwan International 25 November, 2018
統一地方選挙終了、与野党勢力図逆転
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2018年統一地方選挙の与野党の勢力分布図
 台湾では24日に統一地方選挙の投開票が行われた。この統一地方選挙は2020年に行われる次期総統選挙の前哨戦と見なされ、2016年5月に発足した蔡英文政権の「中間選挙」ともいわれている。
 開票の結果、現在22の県と市のうち、13の県と市で政権を握っている与党・民進党は、今回の選挙で当選を果たした県と市が半減し、屏東県(台湾南部)、台南市(同南部)、嘉義県(同南部)、新竹市(同北部)、桃園市(同北部)、基隆市(同北部)の六都市しかとらなかった。政権を握って20年の高雄市(同南部)さえも国民党に譲った。
それに対して国民党は15の県と市を握ることになり、勢力図が大きく変わった。各界が注目している台北市では現職の柯文哲・市長(無所属)は3254票の僅差で再選を果たした。
 行政院直轄市六都市のうち、国民党は新北市で再選を果たしたほか、台中市と高雄市でも勝った。20年も政権を失った高雄市での勝利は民進党へのダメージが特に大きくなっている。台中市は政権奪還だ。
 過去20年の県・市長選挙を見てみると、県と市の首長選挙は次期総統選挙の前哨戦だといえることが分かる。1997年、当時の23の県と市のうち、民進党は12の県と市、国民党は8の県と市で勝った。民進党は初めて県と市の首長選挙で過半数をとった。全国レベルの選挙で国民党の得票率を上回ったのも初めて。
 2005年、23の県と市のうち、国民党は彰化県(同中西部)、南投県(同中部)、花蓮(同東部)以北のすべての県と市の首長、および嘉義市、離島の澎湖県で勝利を収めた。全部で14のポストをとった。民進党は嘉義市を除く、雲林県(同南部)以南のすべての県と市(六都市)で勝った。濁水渓を境に、「濁水渓以北は国民党、濁水渓以南は民進党」という勢力分布図となっていた。
 2006年の行政院直轄市の首長選挙では、台北市は国民党の郝龍斌が、高雄市は民進党の陳菊が当選した。
 2009年、台北県が新北市に、台中市と台中県が合併して新たな台中市に、台南市と台南県が合併して新たな台南市になった。行政院直轄市が三つ増えたため、その首長選挙は2010年に延期され、台北市、高雄市と共に行われることになった。残りの17の県と市では国民党は2008年の総統選挙で勝利を収めた勢いで一気に12のポスト(基隆市、桃園市、新竹県、苗栗県、彰化県、南投県などの濁水渓以北の県と市、および嘉義市、台東県、離島の澎湖県、金門県、連江県)をとった。
 民進党は宜蘭、雲林、嘉義県、屏東県などの濁水渓以南の四つの県と市で勝利を収めた。今回の選挙では依然として、「濁水渓以北は国民党、濁水渓以南は民進党」という勢力分布図となっていた。
 2010年の直轄市の市長選挙で国民党は3ポスト(台北市の郝龍斌、新北市の朱立倫、台中市の胡志強)、民進党は2ポスト(台南市の頼清徳、高雄市の陳菊)とった。
2014年の統一地方選挙では、民進党は基隆市、桃園市、新竹市、台中市、彰化県、雲林県、嘉義県、嘉義市、台南市、高雄市、屏東県、宜蘭県、離島の澎湖県などの13席をとって1997年の栄光を取り戻した。国民党は新北市、新竹県、苗栗県、南投県、台東県、連江県などの6席をとった。
 13の県と市で政権を握っている民進党は2018年の統一地方選挙で2つの行政院直轄市と4つの県と市になった。
 今回の選挙戦の焦点は南台湾にある。現職の駐日代表、謝長廷・代表が1998年に高雄市の市長選挙で勝利を収めて以来、高雄市はずっと民進党の支配下にある。今回国民党は韓国瑜・候補が巻き起こした「『韓』流」という旋風が追い風となって当選を果たした。この「『韓』流」の影響で韓国瑜・候補が応援演説をした台中市、雲林県でも政権交代が行われたほか、民進党の票田と言われている台南市でも接戦だった。民進党が2005年から政権を握っている雲林県さえも「『韓』流」の影響で逆転され、みなを驚かせた。
(王淑卿)

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【ひらく会情報部】

※参考情報1「台湾呼称の五輪参加を問う国民投票」についての台湾メディアの報道
**********フォーカス台湾2018年11月22日18:49
「台湾」名義での五輪参加目指す国民投票間近 外交部「結果を尊重」
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(台北 22日 中央社)外交部(外務省)の李憲章報道官は22日、投開票が今週末に迫った「台湾」名義での東京五輪への参加申請の是非を問う国民投票について、人民が政治権力を行使する重要な一環であると述べ、結果を尊重する同部の姿勢を示した。台湾選手の権益については、教育部や中華オリンピック委員会と協力し合って出場権確保に全力を注ぐとした。
 国民投票をめぐっては、国際オリンピック委員会(IOC)から、場合によっては中華オリンピック委員会の資格停止や除名の措置に及ぶとする旨の書簡が16日に送られてきており、複数のスポーツ選手が出場権への影響を懸念して反対を訴えるなど動揺が広まっている。
 行政院(内閣)は選手の権利を守る立場を明確にしており、中華オリンピック委員会の処置やIOCの関連規定を尊重する姿勢を表明している。
 国民投票は24日、統一地方選挙と併せて実施され、賛成票が反対票を上回り、かつ有権者数の4分の1以上となれば成立となる。
(侯姿瑩/編集:塚越西穂)

**********フォーカス台湾2018年11月21日19:51
五輪名義めぐる国民投票に反対 選手ら訴え「出場の機会を」/台湾
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東京五輪をめぐる国民投票への反対を表明する選手ら
 (台北 21日 中央社)「台湾」名義での東京五輪への参加申請の是非を問う国民投票をめぐり、台湾のスポーツ界が揺れている。重量挙げ女子の五輪2大会連続金メダリスト、許淑淨やジャカルタ・アジア大会陸上男子200メートル銀メダルの楊俊瀚らを含む複数の選手や元選手が21日、国民投票への反対を訴える記者会見を台北市内で開催した。「チャイニーズタイペイ」とプリントされた青いTシャツに身を包んだ選手らは「われわれに出場の機会を」と声を上げた。
 国民投票は24日、統一地方選と併せて実施される。五輪での名義に関する国民投票をめぐっては、国際オリンピック委員会(IOC)からこれまで3回にわたって書簡が寄せられており、今月16日の書簡では、場合によっては台湾のオリンピック委員会の資格停止や除名の措置をとる姿勢が示された。投票を推進する市民団体はこれに対し、資格停止処分を受けても選手の出場は可能だと主張。投票への反対を示す台湾のオリンピック委員会を批判した。
 会見に出席したバドミントン男子シングルス世界ランキング3位の周天成は、国民投票が選手の出場権に影響を与えないとする市民団体の主張について、歯医者が歯を抜くとき、患者に痛くないと言うのと同じだと訴える。「歯医者が痛くないのは当たり前。痛いのは患者なのだから」。人々が投じる一票一票に選手たちの未来がかかっているとし、感情的に投票しないよう呼び掛けた。
 東京五輪の出場権をすでに手にしている射撃女子の田家榛は、大会でチャイニーズタイペイや台湾の栄誉のために頑張りたいとの考えを示した。
 また、台湾のプロ野球リーグ、中華職業棒球大連盟の呉志揚会長も「出場に不利になるいかなる行動にも反対だ」との立場を示している。東京五輪を目指し、これまでさまざまな取り組みを行ってきたと説明し、選手たちが国際舞台で活躍できるチャンスへの重視を訴え掛けた。
 台湾は1981年、「チャイニーズタイペイ」の名義と旗、エンブレムを使うことで諸外国のオリンピック委員会と同等の権利を得られるとするIOCとの協定にスイスのローザンヌで調印している。
(龍柏安、謝静ブン/編集:楊千慧)
**********

※参考情報2「台湾統一地方選挙の投票前分析」に係る我が国マスコミ記事
 いずれも与党民進党の苦戦を報じていますが、台湾南部の大都市である高雄市長選挙では、現地で11月23日夜、民進党候補の巻き返しの為、一大決起集会が開かれる予定です。こうした住民レベルの投票行動については、日本のマスコミでも取り上げられていません。台湾の統一地歩選挙の投票結果の大勢は、明日の土曜日の午後11時ごろまでに判明する見込みです(ちなみに投票締め切りは午後4時です)。
**********日経2018年11月18日18:00
【中国・台湾】台湾統一地方選、与党が苦戦 地盤・高雄で野党旋風
【台北=伊原健作】24日に投開票が迫る台湾の統一地方選挙で、蔡英文総統が率いる与党・民主進歩党(民進党)が苦戦している。有力地盤である南部の高雄市で、最大野党・国民党の市長候補が支持率で与党候補を逆転する異例の事態が生じている。勢いは台湾全体にも波及しており、2020年の総統選の前哨戦となる今回選挙で敗北すれば、蔡氏の総統再選に黄信号がともる。
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野党・国民党の高雄市長候補、韓国瑜氏の人気は社会現象に(11日、台湾南部の高雄市内)
 統一地方選は全22県市の首長や議員らを選ぶ4年に1度の大型選挙。与野党とも不人気で勢力図は変わらないとの下馬評だったが、選挙戦終盤で覆った。シンクタンク「台湾民意基金会」が13日に発表した政党支持率の調査では、国民党が民進党に一気に12ポイント近い差を付けた。異変を起こしたのが国民党の高雄市長候補、韓国瑜氏(61)だ。
 17日夜、高雄市内での韓氏の集会は支持者が振る赤い旗で染まり、異様な熱狂に包まれた。「貧困の日々は終わり。台湾一の金持ちにするぞ」。韓氏が叫ぶと「そうだ!」との反応が地鳴りのように広がった。
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与党・民進党の高雄市長候補、陳其邁氏は巻き返しを急ぐ(17日、南部の高雄市内)
 「ディズニーランドを誘致する」「人口を500万人(高雄市は現在277万人)に増やす」。
 実現が疑わしい主張が多いにもかかわらず、10月ごろから人気が急騰。民放TVBSの11月上旬の世論調査では民進党新人候補の陳其邁氏(53)を支持率で10ポイント上回った。台湾メディアは「韓流」と呼び社会現象として集中的に報道している。
 高雄は20年にわたり民進党が執政を握る牙城。北部出身の落下傘候補である韓氏は当初泡沫(ほうまつ)と見なされた。だが「高雄は老いて貧しくなった」と現状を否定し変化を叫ぶ姿が不満を持つ層の共感を広げる。
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 対する陳氏は「高雄を信じよう」と民進党の実績を強調し地に足がついた経済対策を訴える。ただ立法委員(国会議員)を務めた父親を持つ民進党のエリートであり、韓氏が反骨で挑む構図を際立たせた面がある。
 ネット上では「韓粉」と呼ばれる熱烈な支持層が出現し、韓氏を批判する人物のSNSに数十万〜100万件超の批判コメントが殺到する例が相次ぐ。民進党は「中国がネットを通じ選挙介入している」と懸念を表明するが勢いは止まらない。
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 地元の鉄工所で働く林佳蓉さん(35)は韓氏に「不可能を可能にしようと立ち向かう姿に希望を感じる」という。友人が台北など発展した北部に移住したと嘆き、「現状を変える期待を持てる人に投票したい」と話す。
 不満や失望を取り込む韓氏は「この選挙は民進党への不信任投票だ」と主張して政権与党を揺さぶる。蔡政権は労働条件の改善や年金改革を進めたが、既得権層の反発で妥協を迫られ、若者ら支持層の失望を招いた。対外的にも中国の圧力で5カ国との外交関係を失うなど展望が見えず、選挙戦で防戦に回っている。
 「私は韓国瑜。この優秀な候補を落としてはいけない」。台北など各地の路上では国民党の選挙カーが韓氏の応援演説を流す。選挙ポスターは各地の候補者と韓氏が並ぶ構図に差し替わった。国民党への批判につながる親中路線は、地方選を理由に表に出さず、韓氏個人を前面に立て民進党への批判票を取り込む戦略が奏功しつつある。
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蔡英文総統が主席を務める与党・民進党は苦戦している(14日、台湾中部の台中市)=民進党提供
 民進党は中部の台中など複数の県市で劣勢と報じられている。特に地盤の高雄で敗北すれば蔡氏の責任問題となり、総統と兼ねる党主席の辞任を迫られる可能性がある。
 14年の前回選挙では「対中傾斜」との批判を浴びた国民党が大敗し、22県市のうち首長ポストは15から6に激減。馬英九・前総統が国民党主席を引責辞任した。党勢を立て直せないまま16年の総統選でも敗れ、民進党に政権交代を許した。
 民進党は今回、高雄を決戦の地と位置づける。失えば20年の総統選で政権を維持するシナリオが揺らぐ。同党関係者は「予想外の事態」と危機感をにじませ、「投票までまだ1週間あり、巻き返しは可能」と強調した。

【11月23日追記】
**********東洋経済2018年11月23日 7:00
東京五輪も争点となる台湾「住民投票」の行方
統一地方選で渦巻くポピュリズムとフェイク

劉 彦甫 : 東洋経済 記者
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台湾の高雄市長選で善戦する国民党の韓国瑜候補(写真:ロイター/アフロ)
 11月24日に行われる台湾の統一地方選挙が大混戦の様相を呈している。2014年の前回選挙で圧勝した蔡英文総統率いる民主進歩党(民進党)が苦戦を強いられており、早くも蔡総統の2020年の再選を危ぶむ声が出る。
 今回の選挙が今までとは異なるのが、同日に実施される10件の住民投票だ。これまでも国政選挙に合わせて住民投票が行われたことはあったが、10件も乱立するのは初めて。過去の住民投票では「国際連合加盟」の是非や「対中政策」などがテーマだったが、いずれも投票率が成立条件の50%に満たず成立しなかった。
★同性婚から大気汚染までテーマが乱立
 ところが今回は住民投票が成立する可能性が高まっている。2017年に住民投票に関する法律が改正され、25%以上の投票率で賛成が過半数を超えれば成立することになったからだ。そもそも10件も住民投票が乱立することになったのも、法改正で住民投票実施に必要な署名数が有権者の5%(約94万人)から1.5%(約28万人)に大幅に緩和されたためだ。
野党の国民党や社会団体など、蔡政権に不満のあるグループがここぞとばかりに署名集めを展開した。署名に関しては、複数の提出案件で亡くなった人の名前が約1万人も含まれていたことが発覚し、投票業務を管轄する中央選挙委員会が刑事告訴を検討する騒ぎもあった。
 住民投票にかけられたテーマは多様だ。10件のうち同性婚にかかわるテーマが5件を占める。ほかにエネルギー政策と環境について問うものが3件。
 特に同性婚をめぐっては、論理的に相反する住民投票が同時に成立する可能性がある。推進案のひとつが「民法に同性婚の規定を盛り込むことに賛成か」と問い、反対案のひとつが「民法に婚姻は男女のものだと規定することに賛成か」と問う。現地では「どの案が何に賛成で反対かよくわからない」といった声も出ている。
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 日本が関係し、国際的な注目を集めている住民投票もある。東京五輪への「台湾」名義での参加是非を問う案だ。
 台湾は現在、国際オリンピック委員会(IOC)との取り決めで、「チャイニーズタイペイ(中華台北)」としてオリンピックに参加している。その一方で「台湾は台湾だ」として、スポーツの国際大会参加時の名称に不満を持つ人は少なくない。今回の住民投票を後押しした団体は、東京五輪では名前を変えて「台湾」として参加することに賛同するよう求めている。
★日本への期待と日本側のいらだち
 名義変更を訴えるグループの一部には、日本に対する期待もある。「台湾と関係が深く、親台湾の人が多い日本で開催される五輪開催ならば、台湾名義での参加も可能ではないか」(投票を支持する独立急進派)。
 これに対し、日本の親台派の与党国会議員は、「台湾の気持ちはわかるが、安倍(晋三)首相訪中のように、中国との関係改善が進んでいる現状で、日本として必ず成功させないといけない五輪で揉めたくはない」と話す。日本の台湾研究者からも、「日本はスポーツと政治を切り離して考える傾向が強い」と否定的な声が上がる。
 国際的な問題である台湾の参加名義は、住民投票が成立したからといって変えられるわけではない。16日には、IOCが台湾当局に対して書簡を送付。名義使用を取り決めた協定に違反した場合、資格停止や除名処分が行われると警告した。
 台湾でスポーツ行政を担当する体育署は、「選手の出場権利を守ることが最優先である」と表明。台湾のオリンピック委員会も、有権者に名称変更を問う住民投票で反対票を投じるよう求めている。複数の台湾のスポーツ選手が、オリンピックに参加できなくなることを危惧している状態だ。
 もう一つ、日本が直接関係する住民投票がある。2011年の福島第一原発事故によって始まった、日本産食品の輸入規制を継続するかを問うものだ。現在、台湾は福島とその周辺の計5県からの食品輸入を禁止。台湾社会では「核食」として、安全性に対する疑念がいまだに強く、禁輸解除が行われていない。
★住民投票が成立すれば、2年間は禁輸を解除できない
 もともと国民党の馬英九前政権時代に、「友日」という方針で日本との関係発展のために禁輸措置を解除する議論はあった。だが、世論や当時野党だった民進党の一部が反対し、断念した経緯がある。今度は民進党の蔡政権が日本との関係を重視する中で禁輸措置解除を目指したが、世論と国民党の反発に遭い、決められない状態が続いている。
 禁輸解除は台湾国内の問題であり、仮に住民投票が成立すれば、事実上2年間は解除できないことになる。日本の対台湾窓口機関・日本台湾交流協会の沼田幹男代表(駐台大使)は、「失望している」との声明を出しており、日台関係への影響が懸念される。
 いずれの住民投票も社会課題や台湾の人たちの問題意識に根ざすものだが、現状は政権への不満を訴える場となっている。たとえば禁輸解除に関する住民投票は国民党が主導した案件。国民党には住民投票を統一地方選と連動させて、政権批判票を取り込みたい思惑がある。
 蔡政権への不満の現れは、住民投票に限らない。もっとも顕著なのが、台湾南部の中心都市、高雄市長選だろう。
 高雄市は歴史的に民進党が強い地盤を持ち、20年間、同党が市政を担い続けている。当初は、民進党の候補者選びとなる党内予備選挙が実質の「市長選」だとされた。地元出身で前国会議員の陳其邁氏が候補者になると、市長選は「寝てても勝てる」と言われた。
 ところが9月中旬になると、情勢が大きく変わる。国民党の韓国瑜候補の人気が急上昇したのだ。
 韓氏は「カネもない、人もない、命だけある」と訴える姿などがネット上で話題を呼び、自虐ネタを披露してバラエティ番組に出るなど、これまでの政治家とは違うイメージが広く受け入れられた。そこに20年に渡る民進党市政や蔡総統への不満、陳氏らエリートに対する反発が合わさった。
 SNS上には韓氏を礼讃するコメントが目立つ。民進党からは韓氏の人気がネット上のフェイクニュースによって支えられていて、中国による選挙干渉があるとの指摘すら出始めた。
 民進党が19日に公開した選挙用宣伝動画では、「中国のネット部隊が台湾に侵入している」と、中国による世論誘導に惑わされないよう注意を促した。ただし、中国が干渉しているという具体的な証拠は示されておらず、民進党内でも「苦し紛れに反中国の票をかき集めようとしているだけ」(民進党の地方議員立候補者)との白けた見方もある。
★与党が北と南の重要都市を落としてしまう危機
 台湾の統一地方選挙は4年に1回行われる国政選挙の2年後に行われ、現政権への中間評価の意味合いもある。そのため、与野党ともに国政選挙なみの選挙活動を展開。民進党は2014年選挙の圧勝の勢いが2016年の政権への返り咲きにつながっただけに、2020年の総統選挙の前哨戦として今回の選挙への注目度は高い。
 高雄以外でも台湾の中心都市・台北では、前回勝利した無所属の現職・柯文哲候補が民進党と国民党の候補をリードしており、民進党は北と南の重要都市を落としてしまう危機に直面している。すでに現地では民進党の敗北によって蔡総統の民進党主席辞任は確実との見方も浮上し、「結果次第では総統も辞任すべき」との声が一部の民進党関係者から出ている。
 台湾の行く末はもちろん、日本、台湾、中国の東アジアの国際関係がどのように展開していくのか。統一地方選と住民投票で台湾が下す選択に注意が必要だ。
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