2019/11/1  21:49

東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…原告住民全面敗訴判決のこれが全文!  前橋Biomass発電問題・東電福一事故・東日本大震災

■それでは、10月31日に渡邉和義裁判長ら判事が言い渡した判決文の全文を見てみましょう。
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どこの裁判所でも掲げられている注意書き。裁判所の権威主義の象徴の一つでもある。


*****10/31判決文*****ZIP ⇒ 20191031n.zip
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令和元年10月31日 判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 小野将成
平成28年(行ウ)第27号 住民訴訟によるバイオマス補助金支払差止請求事件
口頭弁論終結日 令和元年7月17日
             判          決
   群馬県安中市野殿980番地
       原        告     小  川     賢
                      (以下「原告小川」という。
   前橋市鼻毛石町1991−42     羽  鳥  昌  行
                      (以下「原告羽鳥」という。
   前橋市大手町一丁目1番1号
       被        告     群 馬 県  知  事
                      山  本  一  太
       同訴訟代理人弁護士      石  原  栄  一
       同              関     夕 三 郎
       同              織  田  直  樹
       同訴訟復代理人弁護士     安 カ 川  美  貴
       被告指定代理人        住  谷  親  介
       同              佐 々 木  俊  一
       同              笛  木  元  之
       同              生  方  宏  久
       同              浅  見     淳
       同              原  澤  徳  衛
            主          文
    1 原告らの請求をいずれも棄去する。
    2 訴訟費用は原告らの負担とする。

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            事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 主位的請求
   被告は,前橋バイオマス燃料株式会社に対し,4億8000万円及びこれに対する平成29年5月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を群馬県に支払うよう請求せよ。
 2 予備的請求
   被告が,前橋バイオマス燃料株式会社に対して交付した平成28年7月4日付け平成27年度(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金交付決定に基づく4億8000万円につき,上記補助金交付決定を取り消して返還請求することを怠る事実が違法であることを確認する。
第2 事案の概要
   本件は,群馬県の住民である原告らが,群馬県の執行機関である被告が前橋バイオマス燃料株式会社(以下「前橋バイオマス燃料」という。)が行う木質バイオマス発電燃料製造施設等整備事業(以下「本件事業」という。)のために群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金(以下「本件補助金」という。)4億8000万円を前橋バイオマス燃料に対して交付したことは違法である旨を主張して,被告に対し,主位的に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,前橋バイオマス燃料に対して,不当利得として本件補助金4億8000万円及びこれに対する本件補助金交付日である平成29年5月29日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による利息の支払を請求するように求め,予備的に,地方自治法242条の1第1項3号に基づき,被告が,本件補助金の交付決定を取り消した上で,不当利得として,前橋バイオマス燃料に対する本件補助金4億8000万円の返還請求することを怠る事実が違法であることの確認を求めた事案である。
 1 関係法令等の定め

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 (1) 補助金に関する定め
  ア 地方自治法2条14項は,地方公共団体は,その事務を処理するに当たっては,住民の福祉の増進に努めるとともに,最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない旨を,同法232条2項は,普通地方公共団体は,その公益上必要がある場合においては,寄附又は補助をすることができる旨をそれぞれ定める。
  イ 地方財政法4条1項は,地方公共団体の経費は,その目的を達成するための必要且つ最少の限度をこえて,これを支出してはならない旨を定める。
  ウ 群馬県補助金等に関する規則(以下「補助金規則」という。甲61)
   (ア) 補助金規則2条2項は,補助事業等とは,県が県以外の者(国,他の都道府県及びこれらの機関並びにこれらに類似する者を除く。)に交付する補助金等の交付の対象と なる事務又は事業をいい,補助事業者等とは,補助事業等を行う者をいう旨を定める。
   (イ) 補助金規則2条の2第1項には,補助事業者等は,補助金等が県民から徴収された税金その他の貴重な財源で賄われるものであることに留意し,法令,条例,他の規則の定め及び補助金等の交付の目的に従って誠実に補助事業等を行うように努めなければならない旨の定めがある。
   (ウ) 補助金規則5条1項は,知事は,補助金等の交付の申請に基づき,当該申請に係る書類の審査,現地調査等により,当該補助金等を交付すべきものと認めたときは,交付の決定(契約の承諾の決定を含む。以下同じ。)をするものとする旨を定める。
   (エ) 補助金規則7条1項は,補助事業等の完了に係る成果の報告を受けた場合においては,知事は,報告書等の書類の審査,現地調査等により,その成果が当該補助金等の交付の決定の内容及びこれに付した条件に適合するものであると認めたときは,交付すべき補助金等の額を確定し,当該額を交付するものとする旨を,同条2項は,補助金等の額の確定前

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においても,相当の理由があるときは,知事は,補助事業者等に対し,前金払又は概算払をすることができる旨をそれぞれ定める。
   (オ) 補助金規則13条1項本文は,補助事業者等が不正な手段によって補助金等の交付を受けたとき(同項1号),補助金等を他の用途に使用したとき(同項2号),交付の決定の内容若しくはこれに付した条件又は法令,条例,規則若しくはこれに基づく処分に違反したとき(同項3号),補助事業等を予定の期間内に完了しなかったとき,又は完了することが不可能若しくは著しく困難であると知事が認めたとき(同項4号)は,知事は補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる旨を定める。
     また,同規則14条は,補助事業者等は,補助金等の交付の決定が取り消されたときは,当該取消しに係る補助金等を知事の定める期限内に返還しなければならない旨を定める。
  エ 森林整備加速化・林業再生基金事業実施要領の運用について(最終改正平成27年2月3日付け26林整計第751号林野庁長官通知。乙2)別表1III3は,林業成長産業化総合対策における木質バイオマス利用施設等整備事業につき,機能要件等に関する採択基準及び事業主体等に関する細則を定める。
  オ 群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金交付要綱(以下「本件要綱」という。乙4)
   (ア) 本件要綱第1には,知事は,間伐材等の効率的な生産体制を確立し,森林資源を活用した林業・木材産業の再生を目的に,地域関係者の創意工夫により実施する高性能林業機械の導入,製材施設,バイオマス利用施設等の整備,間伐材流通の円滑化に必要な経費に対して,予算の範囲内で補助金を交付するものとする旨の記載がある。
   (イ) 本件要綱第3の1は,本件要綱の事業メニュー,事業種目,事業実施

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主体,補助率及び補助対象経費については,本件要綱別表1のとおりとする旨を定める。
     そして,本件要綱別表1には,林業成長産業化総合対策事業のうち,本質バイオマス利用施設等整備事業について,交付対象経費を事業費及び指導等事業費,補助率を森林整備加速化・林業再生基金が2分の1,県が10分の1以内等とする旨の定めがある(別表1−1)。
  カ 群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業補助金事務取扱要領(以下「本件要領」という。乙3)
   (ア) 本件要領第3の1には,補助事業の事業主体の長は,事業実施に当たり,事業実施設計書を事業の施行地を管轄する環境森林事務所長又は森林事務所長に提出するものとする旨の定めがある。
   (イ) 本件要領第3の3は,事業の施行地を管轄する環境森林事務所長又は森林事務所長は,補助金の交付決定を行うものとする旨を定める。
 (2) 環境影響評価に関する定め
  ア 群馬県環境影響評価条例(以下「環境影響評価条例」という。乙18)
   (ア) 環境影響評価条例2条1項は,同条例における「環境影響評価」(以下「条例アセスメント」という。)とは,事業(特定の目的のために行われる一連の土地の形状の変更(これと併せて行うしゅんせつを含む。)並びに工作物の新設及び増改築をいう。)の実施が環境に及ぼす影響(当該事業の実施後の土地又は工作物において行われることが予定される事業活動その他の人の活動が当該事業の目的に含まれる場合には,これらの活動に伴って生ずる影響を含む。)について環境の構成要素に係る項目ごとに調査,予測及び評価を行うとともに,これらを行う過程においてその事業に係る環境の保全のための措置を検討し,この措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価することをいう旨を定める。
   (イ) 環境影響評価条例2条2項は,同条例における「第一種事業」とは,

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同条例別表に掲げる事業であって,規模(形状が変更される部分の土地の面積,新設される工作物の大きさその他数値で表される事業の規模をいう。)が大きく,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものとして群馬県環境影響評価条例施行規則(以下「環境影響評価規則」という。乙19)が定めるものをいう旨を,同条3項は,同条例における「第二種事業」とは,同条例別表に掲げる事業であって,第一種事業に準ずる規模を有し,環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものとして環境影響評価規則で定めるものをいう旨をそれぞれ定める。そして,同条例別表の6は,同条例2条2項及び3項の事業として「工場又は事業所の新設又は増設の事業」を定める。
   (ウ) 環境影響評価条例は,第5条以下で第一種事業の条例アセスメントに関する手続を,第25条以下で第二種事業の条例アセスメントに関する手続をそれぞれ定め,いずれも事業者において第一種事業または第二種事業に該当するか判断することが前提とされている。
  イ 環境影響評価規則
   (ア) 環境影響評価規則3条は,環境影響評価条例における第一種事業は,同規則別表第1の第一欄に掲げる事業の種類ごとにそれぞれ同表の第二欄及び第二欄に掲げる要件に該当する一の事業等である旨を,同規則4条は,環境影響評価条例における第二種事業は,同規則第一の第一欄に掲げる事業の種類ごとにそれぞれ同表の第二欄及び第四欄に掲げる要件に該当する一の事業等である旨をそれぞれ定める。
   (イ) 環境影響評価規則別表第1の6は,第一欄に「工場又は事業場の新設又は増設の事業」と,第二欄に「製造業(物品の加工修理業を含む。),ガス供給業,熱供給業又は電気供給業に係る工場又は事業場であって,大気汚染防止法2条2項のばい煙発生施設又は水質汚濁防止法2条2項の特定施設を有するものの新設の事業」と,第二欄に対応した第三欄に

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「排出ガス量(温度が零度で圧力が1気圧の状態に換算した1時間当たりの湿り排出ガスの最大量をいう。以下,上記計算方法により算出される排出ガスの単位を「ノルマル立方メートル」という。)が4万ノルマル立方メートル以上(ガスタービン(温度が零度で圧力が1気圧の状態に換算した湿り排出ガス1立方メートルにつき,窒素酸化物35立方センチメートル程度以下のものに限る。)にあっては,燃料等が完全燃焼した時の排出ガス量中の二酸化炭素が4千キログラム以上)又は排出水量(1日当たりの平均的な量をいう。)が 1万立方メートル以上であるもの(配慮地域内にあっては,排出ガス量が1万6千ノルマル立方メートル以上,(ガスタービンにあっては燃料等が完全燃焼した時の排出ガス量中の二酸化炭素が1600キログラム以上)又は排出水量が4千立方メートル以上であるもの)」 とそれぞれ定め,上記第二欄に対応した第四欄は空欄となっている。
 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)
 (1) 当事者等
  ア 原告らは,群馬県の住民である。
  イ 被告は,群馬県の執行機関である。
  ウ 前橋バイオマス燃料は,間伐材等の森林資源を有効活用してのバイオマス発電用燃料チップヘの加工業,供給業等を目的とする株式会社であり(以下,前橋バイオマス燃料におけるバイオマス燃料製造事業を「本件燃料事業」という。),前橋バイオマス発電株式会社(以下「前橋バイオマス発電」という。)は,バイオマス発電及び売電事業等を目的とする株式会社である(以下,前橋バイオマス発電における発電事業を「本件発電事業」といい,本件燃料事業と本件発電事業を併せて「本件前橋バイオマス事業」という。)。(甲5,6)

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 (2) 本件前橋バイオマス事業の経緯
  ア 株式会社関電工(以下「関電工」という。)は,平成25年12月頃,株式会社トーセン(以下「トーセン」という。)と共同して群馬県内で木質バイオマス燃料製造,発電及び売電事業を行うことについて検討を開始した。(乙16,証人福本雅邦(以下「福本」という。))
  イ 平成26年2月28日,群馬県安中市松井田町において本質バイオマス燃料製造,発電及び売電事業を行うことを目的として,トーセンの出資により株式会社松井田バイオマスが設立された。
    しかしながら,群馬県安中市松井田町における上記事業計画は,地域住民が反対し,事業地を確保できなくなったため頓挫した。
    (甲3,62,乙14)
  ウ 関電工とトーセンは検討を進め,前橋市所在の電力中央研究所赤城試験センター敷地内が本質バイオマス燃料製造,発電及び売電事業の候補地として浮上し,平成26年7月に関電工が単独で,同年9月には関電工とトーセンが合同で同所を視察した。
    その後,株式会社松井田バイオマスは,同年10月27日,商号を株式会社前橋バイオマスに変更した。
    (甲3,乙16,証人福本)
  エ 関電工の担当者は,平成27年1月頃,群馬県環境森林部環境政策課(以下「環境政策課」という。)を訪問し,本件前橋バイオマス事業を前橋市内で行う予定であること 等を説明した。(甲86,乙16,17,証人福本,証人唐澤素子(以下「唐澤」という。))
  オ 平成27年3月31日,木質バイオマス発電施設建設事業に関する環境影響評価規則別表第1を適用させる場合,化石燃料等との性質の違いを勘案し,未利用の木質バイオマスを燃料とする工場又は事業場については,排ガス量を計算するにあたっては,含水率(乾量基準含水率)を20パー

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セントとして算出できるものとする旨の運用(以下「本件運用」といい,本件運用が記載された決裁文書(甲29)を「本件運用文書」という。)をすることについて,環境政策課長により決裁がされたとされる。(甲29)
  カ 前橋バイオマス発電は,平成27年6月22日,関電工とトーセンとの共同出資により設立された。また,株式会社前橋バイオマスは,同年9月25日,商号を「前橋バイオマス燃料株式会社」(前橋バイオマス燃料)に変更した。(甲3,5,6)
  キ 前橋バイオマス燃料は,平成28年7月頃,本件事業を開始し,前橋バイオマス発電も,同時期に本件発電事業で用いるための発電所の工事を開始した。(甲38,乙11)
  ク 本件前橋バイオマス事業に係る発電所は,平成30年3月頃,稼働を開始した。(16)
 (3) 本件補助金交付の経緯
  ア 被告は,平成27年9月14日,群馬県議会に対し,本件補助金の交付を含む補正予算案を提出し,同予算案は,同年10月7日,同県議会において可決・成立した。
  イ 前橋バイオマス燃料は,平成28年6月29日,渋川森林事務所長に対し,本件事業の総事業費を8億円(税抜き)として本件補助金の交付を申請したところ,渋川森林事務所長は,同年7月4日,本件補助金の交付を決定した。(甲15,16)
  ウ 前橋バイオマス燃料は,平成28年8月5日,渋川森林事務所長に対し,本件補助金の一部である2億2230万円の概算払請求を行い,これを受けた渋川森林事務所長は,同月16日,前橋バイオマス燃料に対し,同額を支払った。
    また,前橋バイオマス燃料は,同月19日,渋川森林事務所長に対し,

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本件補助金の一部である1620万円の概算払請求を行い,これを受けた渋川森林事務所長は,同月26日,前橋バイオマス燃料に対し,同額を支払った。
 (4) 本件訴えに至る経緯
  ア 原告らは,平成28年9月23日,群馬県監査委員に対し,本件事業が補助金交付事業として不適格である旨を主張して,本件補助金の交付を含む補正予算案を可決した群馬県議会の議決の撤回及び本件補助金の交付の差止めを求める旨の監査請求をした。群馬県監査委員は,同年11月28日,同監査請求のうち,議会の行為を目的とする部分は不適法であるとして却下し,本件補助金の交付の差止めを求める部分には理由がないとして棄却する旨の裁決をし,原告らは,同月29日,監査請求結果の通知を受領した。
    (甲1,34)
  イ 原告らは,平成28年12月27日,本件補助金の交付の差止めを求め,本件訴えを提起した。
 (5) 本件訴え提起後の経緯
  ア 前橋バイオマス燃料は,平成29年5月24日,渋川森林事務所長に対し,本件事業に係る平成27年度(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業実績報告書を提出した。(乙11)
  イ 渋川森林事務所長は,平成29年5月24日,本件補助金の金額を4億8000万円と確定し,同月29日に本件補助金から既払額を控除した残額2億4150万円を支出する旨の支出命令を発令し,同月31日に前橋バイオマス燃料に対し,2億4150万 円を支払った。(甲66,乙1,11)
  ウ 原告らは,平成29年12月25日に開催された第6回弁論準備手続期日において,本件訴えに係る請求を前記第1の請求に変更した。

<P11>
 3 争点
 (1) 本件事業の補助事業としての適格性(争点1)
(2) 条例アセスメント不履行の違法性(争点2)
(3) 本件補助金の金額の妥当性(争点3)
 4 争点に対する当事者の主張
 (1) 争点1(本件事業の補助事業としての適格性)
  ア 原告らの主張
   (ア) 前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電は,どちらかが欠けても事業が成立しないこと,両者とも交渉窓口が関電工であること,本件燃料事業の施設と本件発電事業の施設は,同一敷地内で隣接して建設され,ベルトコンベアによりつながっていること,本件発電事業で使用する木質チップは,前橋バイオマス燃料が全量提供していることから,本件燃料事業と本件発電事業は一体であり,本件発電事業にかかる違法不当事由も,本件事業の補助事業としての適格性を失わせる。
   (イ) 本件発電事業では,放射能汚染された木くずや廃材を用いて製造された燃料を利用している可能性がある 。
     前橋バイオマス発電は,廃材を利用する計画はないとしているが,同社の定款には「廃材等の加工業」と明記されており,廃材や剪定枝等を利用しないという保証はされていない。
   (ウ) 前橋バイオマス燃料が導入しているトラックスケール式の線量測定システムでは,前橋バイオマス燃料における木材の自主管理基準値である1キログラム当たり40ベクレル以下の数値を絶対に検出で きないこと,貯木スペースに風雨などによる放射性物質の敷地外への拡散防止策が採られていないこと,木材の木質チップヘの加工時の放射性物質の空気中への拡散防止策が採られていないこと,木質チップの脱水時に生じた放射性物質を含んだ廃液を未処理のまま地下浸透させることになるこ

<P12>
とから,本件事業における放射能汚染防止対策は不十分であり,補助事業として不適格である。
   (エ) 前橋バイオマス燃料は,「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」を逸脱し,認定されていない事業者から多くの木質チップを不正に調達しており,補助事業の事業者として不適格である。
   (オ) 前橋バイオマス燃料及び前橋バイオマス発電は,以下のとおり,環境配慮計画を遵守するつもりがなく,補助事業の事業者として不適格である。
     a 本件前橋バイオマス事業に関する説明が,地域住民に十分に行われていない。
     b 本件補助金を用いて購入されたチッパー(以下「本件チッパー」という。)が,ほとんど他企業で使用されている。
     c 本件発電事業における夜間の騒音が騒音規制法や環境配慮計画の自主管理基準値を超えており,違法操業となっている。
     d 前橋バイオマス発電は,発電施設の冷却水として環境配慮計画に記載された量の10倍もの地下水を必要以上に搾取し,浪費している。
  イ 被告の主張
   (ア) 前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電は,会社の本店所在地や取締役が異なること,出資者及び出資比率が異なること,燃料供給契約上,必ずしも前橋バイオマス燃料が前橋バイオマス発電に全ての燃料を供給しなければならないものではないことから,別個の法人であり,本件発電事業及び前橋バイオマス発電の不適格性の主張は,前橋バイオマス燃料に対する本件補助金の交付決定の違法性を根拠づける主張にはならない。
   (イ) 前橋バイオマス発電は,電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成28年法律第59号による改正前のもの。

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以下「FIT法」という。)による再生可能エネルギー固定価格買取り制度を活用して売電を行う発電所として経済産業省の認定を受けたものであるところ,同認定における使用燃料は,「木質チップ(間伐材由来)」及び「木質チップ(製材端材由来)」であり,廃材由来は認められていない。同制度では,燃料の種類により売電価格が異なるため,その燃料の由来はガイドラインに基づき適切に管理されるから,廃材を使用することはできない。
   (ウ) 本件発電事業で利用される木質バイオマス燃料を製造する本件燃料事業では, 木材受入れ時の放射能自主管理基準(以下「本件自主管理基準」という。)として,農林水産省が認定した「調理用の薪及び木炭の当面の指標値」と同等である1キログラム当たり40ベクレル以下(以下「本件自主管理基準値」という。)に設定している。
     また,本件燃料事業では,本件自主管理基準を担保するため,本件発電事業の発電所へ供給される木質チップをサンプリング調査し,本件自主管理基準値以下であることを確認するとともに,トラック用線量モニタで搬入トラック全数を計測することとし,空間線量率がバックグラウンド値の3倍を超えた場合,当該トラッ クに積載された木材について詳細調査を行い,本件自主管理基準を超過した木材は受け入れないことにしている。
     そして,前橋バイオマス燃料及び前橋バイオマス発電は,周辺住民の不安の声を受け,環境配慮計画のとおり,自主管理基準を定め,バグフィルター,浄化槽,観測装置を設置し,自主管理基準を満たす施設の整備を行っている。
     さらに,排ガス及び廃液については,排出前のモニタリングにより自主管理基準値内であることを確認した上で排出し,焼却灰については,飛散防止措置を取った上で, 自主管理基準値内であることを確認し,産

<P14>
業廃棄物処理をしている。
     その他,前橋バイオマス燃料及び航橋バイオマス発電は,敷地内にモニタリングポストを設け,放射能の常時監視を行い,安全性の確認体制を整える等の対策を行うなど,周辺環境に対する徹底した配慮策を講じている。
 (2) 争点2(条例アセスメント不履行の違法性)
  ア 原告らの主張
   (ア)a 本件運用は,関電工の圧力に屈した環境政策課が,前橋バイオマス発電が条例アセスメントを実施することなく本件発電事業を開始できるようにするために,策定したものである。
      他の自治体に対するアンケート結果では,木質バイオマスの水蒸気について,条例アセスメントの基準を緩和しておらず,環境政策課は,始めから緩和ありきで取り組んでいた。
      本件運用文書には,公印押印もなく,施行年月日も一切書かれていない。また, 原告小川が平成28年4月22日,被告に対し,情報公開を求めた際には同年5月8日付けで本件運用文書は不存在である旨の回答がされたにもかかわらず,原告羽鳥が同年9月13日に改めて情報公開を求めたところ,本件運用文書が開示されている。このことからすると,本件運用文書は,本件運用を定めたとされる平成27年3月31日より後の日である平成28年5月8日以降に,作成日付を遡って付して作成した文書であり,偽造文書である。
     b 本件運用は,その根拠があいまいである。
   (イ) 本件発電事業による排ガス量は1時間当たり6万ノルマル立方メートルであり, 同4万ノルマル立方メートルを超えており,条例アセスメントを行う必要があった。それにもかかわらず,条例アセスメントを行っていないため違法である。
  イ 被告の主張
   (ア)a 群馬県では,平成24年頃から,県内の豊富な森林資源の活用や再生可能エネルギー促進のため,木質バイオマス発電の活用を推進してきた。
      環境政策課は,平成26年の初め頃, 木質バイオマス発電施設の建設事業への条例アセスメントの適用に関し,関電工を除く複数の事業者から問合せを受けていたことから,木質バイオマス発電について,条例アセスメントの規模要件の検討を開始した。
      環境政策課は,各都道府県,関係市に対し,木質バイオマス発電に関するアンケートを行い,その結果を踏まえて,本件運用を策定した。また,本件運用において,日本における気乾含水率が平均で15パーセント程度とされ,JASに適合する木材の含水率が概ね15パーセント又は20パーセントであったことから, 含水率を20パーセントとしており,その内容も適正である。
     b 関電工が環境政策課に対して木質バイオマス発電施設建設事業の条例アセスメントの規模要件につき問合せを行ったのは, 平成 2 6 年秋頃であり,その当時,環境政策課では,本件運用についての検討を開始していたのであるから,本件運用は関電工の不当な働きかけにより策定されたものではない。
   (イ) 関電工は,平成27年3月31日に本件運用が決裁された旨を環境政策課から伝えられ,本件運用を前提に本件発電事業の排ガス量を計算したところ,排ガス量は3万8483ノルマル立方メートルであり,条例アセスメントの規模要件以下であった。
     そのため,本件発電事業は条例アセスメントの対象とならず,それを履行しなかったことは問題にはならない。
 (3) 争点3(本件補助金の金額の妥当性)

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  ア 原告らの主張
    補助事業者が意図的に過剰な事業費の見積もりで補助金の交付を受けた場合には,偽りその他不正の手段により補助金等の交付を受けたことになる。
    前橋バイオマス燃料は,本件事業の事業費を8億円として本件補助金の交付を申請しているが,以下のとおり,事業費が2倍近く水増しされていると推察され,本件補助金の金額は過大である。
   (ア)a 本件事業の事業費に言十上されているチッププレス機(以下「本件プレス機」という。)は,前橋バイオマス燃料及び前橋バイオマス発電の出資者であるトーセンが川重商事株式会社及び川崎油工株式会社と共同開発したものである。
      本件プレス機の価格は,3億7800万円とされているが,同規模のプレス機の相場は,2000万円程度であり,相場と比べて十数倍も高い価格である。また,トーセンの子会社である株式会社日光バイオマスが日光市に提出した事業計画では,本件プレス機と同型のプレス機の価格が1億7500万円とされており,本件プレス機の価格と異なっている、
      これは,上記のとおり,トーセンが本件プレス機を共同開発したため,価格が事業者の言い値となっているからである。
     b 木質チップは,間伐材等の自然乾燥により製造するのが一般的であり,巨大なプレス機で強制的に脱水するというのは世界初である。また,本件燃料事業において,本件プレス機による木質チップ製造量は年間2万トン程度とされていたにもかかわらず,本件プレス機の能力は年間5万トンであり,明らかな過剰設備である。
      また,本件プレス機は,実態として稼働しておらず,不要な設備であった。

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   (イ) 前橋バイオマス燃料は,相場価格が1000万円程度であるトレーラートラックを1600万円で購入している。
     また,トレーラートラックに付属しているローダークレーンを1000万円で購入しているが,価格はどうみてもせいぜい500万円程度である。
   (ウ) 前橋バイオマス燃料は,本件チッパーを1億0152万円で購入しているが, どうみても,購入された機種の価格帯は5000万円程度である。
  イ 被告の主張
   (ア)a 前橋バイオマス燃料は,含水率等の品質を満たした木質チップを年間約7万トン前橋バイオマス発電に供給しなければならず,そのため,自然乾燥と人工乾燥の併用による安定供給を計画している。
      本件プレス機による脱水方式は,木質チップの含水率を瞬時に下げることが可能であり,燃料の安定供給を行う上で有効な施設となるため,本件プレス機の整備費用を補助対象としている。
      本件プレス機の有効性は,被告が本件補助金の交付決定の前に山形県で既に稼働している同機種の状況,実績で確認している。
     b 原告が意図的で過剰な見積もりであるとする根拠である株式会社日光バイオマスが日光市に提出した資料では,事業者の購入金額である事業費は黒塗りされているし, プレス機の「1億7500万円」は,栃木県の補助金額であって,プレス機の購入金額ではないから,前橋バイオマス燃料の購入金額の不当性の根拠とはならない。
   (イ) 原告らの主張(イ)及び(ウ)のうち,本件チッパーの購入金額については認め,その余は否認ないし争う。
   (ウ) 被告は,補助金の精算に際して,契約書や支払実績を確認した上で本件補助金の金額の確定を行っており,過大な補助金の支出がないことを

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確認している。
第3 当裁判所の判断
 1 認定事実
   前記前提事実,証拠(認定に供した証拠は末尾に摘示)及び弁論の全趣旨によれば, 次の事実が認められる。
 (1) 当事者等
  ア 前橋バイオマス燃料は,前橋市苗ヶ島町2550番地2に本店を置く株式会社であり,その出資比率は,トーセンが65.8パーセント,関電工が25パーセント,群馬県森林組合連合会及び群馬県素材生産流通協同組合がそれぞれ4.6パーセントである。(甲5,乙14)
  イ 前橋バイオマス発電は,前橋市古市町215番地6に本店を置く株式会社であり, その出資比率は,関電工が70パーセント,トーセンが30パーセントである。(甲6,乙14)
 (2) 本件前橋バイオマス事業計画の経緯
  ア 関電工は,平成25年12月頃,木質バイオマス燃料製造,発電及び売電事業を行うことについてトーセンと共に検討を開始し,前橋市所在の電力中央研究所赤城試験センター敷地内が候補地として浮上したことから, 関電工の担当者が平成26年7月頃に同所を視察した。
    その際,関電工の担当者は,一般的に大規模事業を進めるに当たっては,関係する行政機関へ事前の相談を行うことが必須とされていたことから,上記視察後,環境政策課を訪問し,群馬県の条例アセスメントの要否を判断する規模要件などについて質問をした。
    (甲25の1,甲86,乙16,17,証人福本,証人唐澤)
  イ 関電工及びトーセンは,平成26年9月に上記アの候補地を合同で視察した上で検討を進め,平成27年1月,本件前橋バイオマス事業を同所で行う計画を具体化させ,関電工の担当者は,同月頃,環境政策課を訪れて

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本件前橋バイオマス事業の計画を伝え,条例アセスメントに関する具体的な要件などについて質問した。
    環境政策課内で条例アセスメントに関する事務を担当していた唐澤は,関電工の担当者の質問に対し,1時間当たりの排ガス量4万ノルマル立方メートルが基準となっていること,環境政策課内で木質バイオマス発電施設建設事業の条例アセスメントの要否を判断する規模要件の検討を行って いること,検討の結果がどうなるのか,また,いつ頃その検討の結果が明らかになるかは分からないことなどを伝えたところ,関電工の担当者は, 唐澤に対し,関電工が考えていた最大サイズの発電所では,上記条例アセスメントの基準は厳しい数字であり,発電所の建設に時間がかかるかもしれない旨の説明をした。(甲25の1,乙16,17,証人福本,証人唐澤)
  ウ 関電工は,上記イの後も環境政策課と条例アセスメントの要否を判断する規模要件に関して意見交換を行い,平成27年1月から3月までの間に唐澤に対して本件前橋バイオマス事業において考えられる設備の概要書を交付した。(甲86,乙16,17,証人福本,証人唐澤)
  エ 唐澤は,平成27年3月31日,本件運用が環境政策課内で決裁されたことを受け,関電工の担当者に対して電話で本件運用の内容を伝えた。(甲29,86,乙16,17,証人福本,証人唐澤)
  オ 関電工は,唐澤からの上記エの説明を受け,本件運用を適用して本件発電事業の発電施設の排ガス量を計算したところ,1時間当たり3万8483ノルマル立方メートルであったことから,平成27年4月頃,唐澤に対し,本件発電事業は条例アセスメントの対象とならない旨の連絡をした。(乙12,16,17,証人福本,証人唐澤)
  カ 関電工は,前橋市市民部宮城支所地域振興課と協議した上,平成27年

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5月25日以降,事業地の近隣住民に対し,本件前橋バイオマス事業に関する個別説明を実施した。
    また,関電工は,平成27年10月3日,同月17日,同年12月20日及び平成28年3月27日に事業地の近隣住民に対して説明会を実施し,本件前橋バイオマス事業の概要を説明した。(甲25の1,甲34)
  キ 関電工は,平成27年8月以降,本件前橋バイオマス事業の具体化を行う過程で本件発電事業に用いる発電施設及び本件燃料事業に用いる燃料製造施設の具体的な設計,発電施設のボイラーの選定を行った。(甲69の2,証人福本)
  ク 本件前橋バイオマス事業は,当初,トーセンが本件前橋バイオマス事業に先行して手掛けていた那珂川バイオマス発電事業の事業形態(発電会社と燃料供給会社を分離した事業形態)をモデルとし,トーセンが出資して設立された株式会社前橋バイオマスに関電工が出資した上で,株式会社前橋バイオマスを発電会社とし,トーセンを燃料供給会社とする予定であった。
    しかしながら,関電工及びトーセンは,本件前橋バイオマス事業において,燃料の安定供給は事業成功に当たっての重要事項であり,燃料となる群馬県内の木材の生産者も事業に参画してもらうことが望ましいと判断し,群馬県森林組合連合会,群馬県素材生産流通協同組合及び関電工が株式会社前橋バイオマスに追加出資を行って同社を燃料供給会社とし,発電会社を別に設立することとした。そして,平成27年6月22日,関電工とトーセンの共同出資により前橋バイオマス発電が設立され,株式会社前橋バイオマスは, 同年9月25日,群馬県森林組合連合会,群馬県素材生産流通協同組合及び関電工から追加出資を受け,「前橋バイオマス燃料株式会社」(前橋バイオマス燃料)に商号変更した。

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(甲3,5,6,乙16,証人福本)
  ケ 前橋バイオマス燃料は,平成28年7月4日,本件前橋バイオマス事業の具体的な内容が定まったことから,本件事業に着手した。
    本件事業は平成29年5月19日に完了し,本件前橋バイオマス事業に係る発電所は,平成30年3月頃,稼働を開始した。(甲38,乙11,16,証人福本)
 (3) 本件前橋バイオマス事業の概要
  ア 本件燃料事業
   (ア) 前橋バイオマス燃料は,平成29年12月13日,前橋バイオマス発電との間で,概要,次の内容の燃料供給契約を締結した。
     a 本契約において,木質バイオマス燃料とは,間伐材等由来燃料(森林における立木竹の伐採又は間伐により発生する未利用の木質バイオマス(輸入されたものを除く。)であって,「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」(平成24年6月林野庁)2(1)に規定されるものであり,同ガイドライン3(1)に規定する証明を完全に具備するもの)若しくは製材端材由来燃料(木質バイオマス又は農産物の収穫に伴って生じるバイオマス(当該農産物に由来するものに限る)であって,同ガイドライン2(2)@に規定されるものであり,同ガイドライン3(2)に規定する証明を完全に具備するもの))又はその双方をいう。
     b 木質バイオマス燃料の供給量は,年間8万トンを基本として,詳細は両者協議のうえ定める。
     c 前橋バイオマス燃料は,少なくとも上記bに定める供給量の木質バイオマス燃料を,前橋バイオマス発電に対して本契約で定めた供給期間にわたり継続的に供給することに最大限の努力を払う。なお,前橋バイオマス燃料は,前橋バイオマス発電が必要とする数量の木質バイ

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オマス燃料を前橋バイオマス発電に供給できない限り,第三者に対し て木質バイオマス燃料又は木質バイオマス燃料を製造するための木材等の原料を供給しないことを約束する。
     d 前橋バイオマス燃料は,前橋バイオマス発電に提供する木質バイオマス燃料を,群馬県において発生したものに限定することを保証する。(乙15)
   (イ) 前橋バイオマス燃料は,平成30年3月頃,木質バイオマス燃料の製造(群馬県内で伐採され,前橋バイオマス燃料以外の加工施設で加工された木質チップ及び群馬県内で伐採された原木を前橋バイオマス燃料の本件チッパーで加工した木質チップを,本件プレス機により人工乾燥及び天然乾燥させて製造する。)及び同燃料の前橋バイオマス発電への供給を開始した。(甲25の1,乙16,証人福本)
   (ウ) 本件燃料事業において使用される本件チッパーは,基本的に前橋バイオマス燃料の燃料製造施設構内において使用されており,構外に持ち出されたのは,保守点検のための1回,前橋バイオマス発電に供給する木質バイオマス燃料を製造する目的で群馬県内の土場で原木を破砕するための1回の合計2回であった。(証人福本)
  イ 本件発電事業
   (ア) 前橋バイオマス発電は,上記ア(ア)の契約に基づき前橋バイオマス燃料から供給される木質バイオマス燃料をBFBバブリング流動層式ボイラーで燃焼させ,発電を行う。
     前橋バイオマス発電は,平成28年3月11日,経済産業大臣からFIT法による再生可能エネルギー固定価格買取り制度を利用するための再生可能エネルギー発電設備(バイオマス)を用いた発電の認定を受けており,同認定における使用燃料は,「木質チップ(間伐材由来)」及び「木質チップ(製材端材由来)」である。

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(甲52,乙7,16,証人福本)
   (イ) 本件発電事業において発生する1時間当たりの排ガス量は,本件運用を前提とすると,3万8483ノルマル立方メートルである。(乙12)
  ウ 放射能対策
   (ア) 前橋バイオマス燃料は,木材受け入れ時の放射能の本件自主管理基準値を,調理加熱用の薪及び木炭の当面の指標値(農林水産省平成23年11月2日)である1キログラム当たり40ベクレルを参考にして1キログラム当たり40ベクレル以下と定め,木材を搬入するトラックについてトラック用線量モニタで常時監視するなどし,本件自主管理基準値を超過する木材があった場合には,当該木材を含むロットの木材の全量を受け入れていない。
     また, 本件プレス機による脱水時の廃液を水モニタ検出器において24時間連続測定をすることで廃液に含まれる放射性物質が管理基準値(134Cs測定値(Bq/L)/60(Bq/L)+137Cs測定値(Bq/L)/90(Bq/L)≦1)内であるかを監視している。
     さらに,製造された木質バイオマス燃料は前橋バイオマス発電に供給する前の時点でサンプリング調査を行い,本件自主管理基準値(1キログラム当たり40ベクレル以下)を超過していた場合には,当該木質バイオマス燃料を含むロットは全量,発電施設に搬入しないとの対策を採っている。
   (イ) 前橋バイオマス発電は,管理基準値 (134Cs測定値(Bq/㎥)/20(Bq/㎥)+137Cs測定値(Bq/L)/30(Bq/㎥)≦1)内になるように排気ガスの測定の検査を行っている。また,焼却灰については,自主管理基準値を,指定廃棄物の指定に係る基準(平成23年12月14日環境省令第33号)の基準値である1キログラム当たり8000ベクレル及び管理された状態での災害廃棄物(コンクリートくず

<P24>
等)の再生利用について(平成23年12月27日環境省)の基準値である1キログラム当たり3000ベクレルを参考にして1キログラム当たり3000ベクレルと定め,産業廃棄物として搬出する前にサンプリング調査を行っている。
   (ウ) 前橋バイオマス燃料及び前橋バイオマス発電は,本件前橋バイオマス事業の事業地内に簡易型モニタリングポストを設置し,敷地内の空間線量率の常時監視を行っている。
   (甲52,乙16,証人福本)
 (4) 本件運用策定の経緯
  ア 群馬県は,平成24年頃から,群馬県内の木質バイオマスの活用について,再生可能エネルギー推進や豊富な森林資源活用の観点からこれを推進する立場にあり,環境政策課内でも木質バイオマス発電の取扱いについて問題意識を持っていた。(甲21,乙17, 証人唐澤)
  イ 平成26年3月から4月頃,本件前橋バイオマス事業には関わっていない複数の事業者から,環境政策課に対し,群馬県内における木質バイオマス発電施設建設事業の条例アセスメントに関する問合せがされた。
    環境政策課は,上記の問合せを契機として,木質バイオマス発電施設建設事業における条例アセスメントの要否を判断する規模要件について具体的な検討を開始した。そして,唐澤は,同年7月10日,上記検討の一環として他の地方自治体の条例アセスメント担当課長に宛てて,上記規模要件等に関する照会を行った。(甲86,乙5,17,証人唐澤)
  ウ 上記照会に対する回答を整理したところ,条例アセスメントにおいて木質バイオマス発電施設建設事業に関する特段の規定及び運用を行っている地方自治体は存在しな いものの,群馬県における1時間当たりの排ガス量4万ノルマル立方メートルという規模要件が他の地方自治体と比較して厳

<P25>
しいものであることが判った。
    そこで,環境政策課は, 上記の経過を踏まえて,平成26年9月以降,木質バイオマス発電施設建設事業に関する条例アセスメントの要否を判断する規模要件の取扱いに関し,独自に対処する方法を検討することになった。(甲43,乙6,17,証人唐澤)
  エ 環境政策課は,群馬県環境森林部の関係部署とも議論を行った結果,条例アセスメントの要否を判断する規模要件である排気ガス量について,その規制対象となる燃料が化石燃料や既利用材を想定したものであるのに対し,木質バイオマス燃料は,化石燃料や既利用材よりも水分を多く含むため,排気ガス量全体のうち環境への影響が少ない水蒸気量が多いことから, 排気ガス量の計算において木質バイオマス燃料の含有する水分を控除する方向で検討を加えることになり,日本における平均気乾含水率が一般的に乾量基準含水率15パーセント程度とされていること,JAS規格に適合する製材は乾量基準含水率が15パーセント又は20パーセント以下であることを参考に,本件運用とすることの協議が整った。
    そこで,唐澤は,平成27年3月30日,本件運用文書を起案した。
    本件運用文書は,同月31日に決裁され,本件運用は,同日に開始された。(甲29,43,乙17,証人唐澤)
 (5) 本件補助金交付の経緯
  ア 関電工は,平成27年4月以降,同年3月31日に唐澤から伝えられた本件運用を前提として,本件発電事業が条例アセスメントの対象事業に該当しないことを確認し,その後,本件前橋バイオマス事業の内容を具体化させ,同年7月頃,環境政策課等の関係部署に対し, 本件前橋 バイオマス事業の発電規模,燃料製造設備等に関する事業概要に関する資料を提出し

<P26>
た。(甲25の1,乙16)
  イ 被告は,関電工からの資料の提出を受け,平成27年9月14日,群馬県議会に本件補助金の交付を含む補正予算案を提出し,同予算案は,同年10月7日に可決されて成立した。(前記第2の2(3)ア,甲2,41)
  ウ 群馬県環境森林部環境保全課及び林業振興課の職員は,平成28年5月17日, 本件燃料事業において使用される予定のチッププレス機を実際に使用して燃料製造事業を行っている山形県鶴岡木質バイオマス発電所を視察し,チッププレス機の稼働実績を確認した。(乙10)
  エ 前橋バイオマス燃料は,平成28年6月29日,渋川森林事務所長に対し,本件補助金の交付を申請したところ,渋川森林事務所長は,同年7月4日,上記ウの視察結果を踏まえて補助金交付申請に係る本件事業の内容を審査した上,その内容を適当と認めて本件補助金4億8000万円の交付決定をした。(前記第2の2(3)イ,甲15,16)
  オ 前橋バイオマス燃料は,渋川森林事務所長に対し,本件補助金について,平成28年8月5日に2億2230万円の,同月19日に1620万円の概算払請求を行い,これを受けた渋川森林事務所長は,同月16日に2億2230円を,同月26日に1620万円を前橋バイオマス燃料に対して支払った。(前記第2の2(3)ウ)
  カ 前橋バイオマス燃料は,平成29年5月24日,本件事業に係る平成27年度(繰越)群馬県林業・木材産業再生緊急対策事業実績報告書を提出した。
    渋川森林事務所長は,同日,上記報告書等を添付された契約書等の資料を含めて確認した上で,本件補助金の額を4億8000万円と確定し,同月29日に本件補助金から既払額を控除した残額2億4150万円を支出する旨の命令を行い,同月31日に前橋バイオマス燃料に対して2億4150円を支払った。

<P27>
(前記第2の2(5)ア及びイ,甲66,乙1,11)
 2 事実認定の補足説明
 (1) 本件運用の策定について
  ア 本件運用の検討の契機
   (ア) 原告らは,上記1(4)アないしエの認定に対し,まず,本件運用は,関電工の圧力に屈した環境政策課が,前橋バイオマス発電が条例アセスメントを実施せずに本件発電事業を開始できるようにするために策定したものである旨を主張する。
   (イ) しかしながら,条例アセスメントの要否を判断する規模要件につき,自己に有利に働くように圧力をかけようとするためには,その前提として,実際に行う自らの発電事業の規模を把握した上でどの程度の要件緩和を要するかを事前に把握しておく必要があるところ,上記1(2)ア及びイで認定したとおり,関電工が平成26年6月頃に環境政策課を訪問した時点では,本件前橋バイオマス事業の事業地や具体的な事業規模等が定まっておらず,事業地等の具体的な事業内容が具体化したのは,平成27年1月頃であって,環境政策課が木質バイオマス発電施設の条例アセスメントの要否を判断する規模要件に関するアンケートを各地方自治体に対して行うなど,木質バイオマス発電施設に関する条例ア セスメントの検討を行っている平成26年7月10日よりも後の時点である。
   (ウ) 上記に加え,関電工が環境政策課に対して圧力をかけたことをうかがわせる事情が認められないことからすると,関電工が,環境政策課に対し,前橋バイオマス発電が条例アセスメントを実施せずに本件発電事業を開始できるように圧力をかけたなどという事実は認められず,上記経緯に照らして合理的かつ自然な唐澤の供述に依拠し,上記1(4) イないしエのとおり認めるのが相当であり,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。

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  イ 本件運用文書の作成日について
   (ア) 次に,原告らは,本件運用文書は,公印押印もなく,施行年月日も一切記載されていないこと, 原告小川が平成28年4月22日に被告に対し開示を請求した際には不存在とされていたのにもかかわらず,原告羽鳥が同年9月13日に開示請求をした際に開示されたことから, 本件運用を定めたとされる平成27年3月31日よりも後の時点で作成された偽造文書である旨を主張する。
   (イ)a しかしながら,証拠(甲30)によれば,原告小川が開示を請求した公文書は,環境政策課が本件発電事業について条例アセスメントの対象事業ではないと判断した根拠資料等であるところ,条例アセスメントの対象事業か否かは,事業者において判断すべき事項である(前記第2の1(2)ア(ウ))から,群馬県において,環境政策課が本件発電事業について条例アセスメントの対象事業ではないと判断した根拠資料は存在しないと判断されているにすぎない。他方,原告羽鳥が開示を請求した公文書は,本件運用に関する技術的な根拠,決定までの議論経過や議事録などの資料であり(甲44),本件運用文書はかかる資料に含まれるものである。
      これらのことからすれば,原告小川の開示請求の際に本件運用文書が開示されなかったことをもって,平成27年3月31日に本件運用文書が作成されていなかったことを裏付けるものではない。
     b また,本件運用文書に公印が押印されておらず,日付欄も空白となっているのは,本件運用文書が決裁文書であるために決裁の過程で修正の可能性があり,また,文書作成時に決裁の完了する日付も不明であるからであって(証人唐澤),作成日付を遡らせたことを裏付けるものではない。
   (ウ) そして,本件運用文書の起案者である唐澤が環境政策課に勤務してい

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たのは, 平成25年4月から平成28年3月までの3年間であり,原告小川が開示請求をした平成28年4月22日には,既に環境政策課に所属する職員ではないこと(乙17,証人唐澤),上記ア(イ)のとおり,関電工による圧力は存在せず,本件運用文書の作成日付を改ざんする必要がないことも併せて考慮すれば,本件運用文書の記載のとおり,唐澤が平成27年3月30日に本件運用文書を起案し,同月31日に決裁されたと認めるのが相当であり,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
 (2) 排ガス量について
  ア 上記1(3)イ(イ)の認定は,「前橋バイオマス発電所における排ガス量の算定について」(以下「本件計算文書」という。乙12)に依拠するものであるところ,原告らは,本件発電事業による排ガス量が,1時間当たり6万ノルマル立方メートルであり4万ノルマル立方メートルを超えている旨を主張する。
  イ しかしながら,原告らが上記主張の根拠として提出する廃棄物焼却炉木屑専焼計算書(甲70の)は,空気比(実際空気量の理論空気量に対する比のこと。以下同じ。甲83)を2.0として計算をしているところ,証拠(乙13)によれば,本件発電事業において用いられるBFBバブリング流動層式ボイラーの空気比に関する性能は「1〜1.5」であり,排ガス星の計算の前提となる空気比の設定を誤っているため,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
  ウ 本件計算文書は,排ガス量の計算に当たって,空気比をBFBバブリング流動層式ボイラーの性能の範囲内である1.3としていること,計算過程に誤りが介在していることがうかがわれないことからすると,その記載内容は信用できるものというべきである。
 3 争点1(本件事業の補助事業としての適格性)

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 (1) 前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電について
  ア 上記1(1)ア及びイで認定したとおり,前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電は,本店所在地及び株主構成が異なっていること,代表取締役及び取締役の役員構成が異なっていること(甲5,6)からすれば,前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電は,別の事業主体であると認められる。
    そのため,前橋バイオマス発電及び本件発電事業の不適格性は,本件補助金の交付決定の違法性を基礎づけるものではない。
  イ(ア) これに対し,原告らは,前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電の交渉窓口がいずれも関電工であること,本件燃料事業の施設と本件発電事業の施設が同一敷地内で隣接して建設され,ベルトコンベアによりつ ながっていること,本件発電事業で使用する木質チップを罰橋バイオマス燃料が全量提供していることからすると,前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電は,一体である旨を主張する。
   (イ) しかしながら,前記第2の2(2)ア並びに上記1(2)ア及びイで認定したとおり,本件前橋バイオマス事業は,関電工及びトーセンが共同して実施している事業であることからすれば,前橋バイオマス燃料と前橋バイ オマス発電の交渉窓口がいずれも関電工であること,本件燃料事業の施設と本件発電事業の施設が隣接し,ベルトコンベアによりつながっていることは,本件前橋バイオマス事業を円滑に運営するための措置であると認められ,また,両社は本件燃料事業と本件発電事業という別個の事業を行っているのであるから,上記の事情は,前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電 が一体であることを示す事実であるとはいえない。
     さらに,上記1(3)ア(ア)aないしdで認定したとおり,前橋バイオマス燃料は,前橋バイオマス発電との間で,前橋バイオマス発電に対して優先的に木質バイオマス燃料を供給する旨の燃料供給契約を締結しているところ,同契約において,前橋バイオマス燃料は,前橋バイオマス発電

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の必要とする木質バイオマス燃料を供給してもなお木材や木質バイオマス燃料に余剰が生じている場合にはこれらを第三者に供給することが想定されるのであり,また,前橋バイオマス燃料が本件前橋バイオマス事業以外の事業活動を行うことがありうることからしても,前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電は一体であるとはいえず,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
 (2) 放射能汚染について
  ア 上記1(3)ウ(ア)ないし(ウ)のとおり,本件燃料事業においては,放射能汚染された木材を使用しないための対策が十分講じられていると認められる。
  イ(ア) これに対し,原告らは,本件燃料事業について,前橋バイオマス燃料が導入しているトラックスケール式の線量測定システムでは,前橋バイオマス燃料における本件自主管理基準値である1キログラム当たり40ベクレル以下の数値を絶対に検出できないこと,貯木スペースに風雨などによる放射性物質の敷地外への拡散防止策が採られてないこと,木質チップ加工時の放射性物質の空気中への拡散防止策が採られていないこと,木質チップの脱水時に生じた放射性物質を含んだ廃液を未処理のまま地下浸透させていることなどを理由に,本件燃料事業における放射能汚染防止対策が不十分である旨を主張する。
   (イ) しかしながら,本件の全証拠によっても,トラックスケール式の線量測定システムにより,本件自主管理基準値(1キログラム当たり40ベクレル以下)を超える放射能を含有する木材の搬入を防止できないとはいえない。また,前橋バイオマス燃料は,本件自主管理基準値を超えた放射能を含有する木材を受け入れていないこと(上記1(3)ウ(ア)からすれば,貯木スペースにおける拡散防止策や 木質チップ加工時の拡散防止策をしていないことをもって放射能汚染対策が不適切であるとは認められない。仮に放射能汚染された木材を前橋バイオマス燃料が受け入れて

<P32>
いたとしても,上記1(3)ウ(ウ)で認定したとおり,本件前橋バイオマス事業の事業地内では,常時,空間線量率の監視が行われており,放射性物質の拡散等の防止策が採られていると認められる。
     さらに,本件プレス機による脱水時の廃液について,管理基準値内であるかにつき,水モニタ検出器において24時間連続監視をしていること(上記1(3)ウ(ア))からすれば,放射性物質を含んだ廃液を未処理のまま地下浸透させているとはいえない。
     以上によれば,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
  ウ(ア) また,原告らは,本件発電事業について,放射能汚染された木くずや廃材を用いて製造された燃料を利用する可能性がある旨を主張する。
   (イ) 上記(1)アのとおり,本件発電事業の不適格性は,本件補助金の交付決定の違法性を基礎づけるものではないものの,事案に鑑みて判断すると,本件発電事業において用いられる木質バイオマス燃料は間伐材及び製材端材由来のものに限定されていること(上記1(3)イ(ア)),前橋バイオマス燃料から供給される木質バイオマス燃料は間伐材及び製材端材由来のものに限られていること(上記1(3)ア(ア)a),前橋バイオマス燃料において放射能対策が十分に講じられていること(上記ア)からすれば,本件発電事業において,放射能汚染された木くずや廃材を用いて製造された燃料を利用する可能性があるとは認められず,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
 (3) 木質チップの調達について
   原告らは,前橋バイオマス燃料が「発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドライン」を逸脱し,不正に多くの木質チップを調達している旨を主張する。
   しかしながら,本件全証拠によっても,前橋バイオマス燃料が不正に多く

<P33>
の木質チップを調達している事実は認められず,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
 (4) 環境配慮計画について
  ア 原告らは,地域住民に対して本件前橋バイオマス事業に関する説明が十分にされていない旨を主張する。
    しかしながら,上記1(2)カで認定したとおり,関電工は,平成27年5月25日以降,本件前橋バイオマス事業の事業地の近隣住民に対し,個別説明を実施した上,同年10月3日,同月17日,同年12月20日及び平成28年3月27日の4回にわたって説明会を催して,本件前橋バイオマス事業の概要等を説明していることからすれば,地域住民に対する説明は行われたと認められ,その説明内容について原告らが不満を抱いていたとしても,そのことのみをもって説明が不十分として本件事業が不適格であることを基礎づけるものではない。
    よって,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
  イ 原告らは,本件事業により整備された本件チッパーが,ほとんど他企業で使用されている旨を主張する。
    しかしながら,本件全証拠によっても,本件チッパーが前橋バイオマス燃料以外の企業のために用いられた事実は認められない。また,本件チッ パーが本件燃料事業の事業用地の外で使用されたのは1回のみであるところ(上記1(3)ア(ウ)),その際に製造された木質チップは全量,前橋バイオマス燃料の事業用地に搬入されていること(証人福本)からすれば,本件チッパーは,本件燃料事業のために使用されていると認められ,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
  ウ 原告らは,本件発電事業における夜間の騒音が騒音規制法及び環境配慮計画の自主管理基準値を超えている旨を主張する。
    上記(1)アのとおり,本件発電事業の不適格性は,本件補助金の交付決定

<P34>
の違法性を基礎づけるものではないものの,事案に鑑みて判断すると,確かに,本件発電事業における夜間の騒音が騒音規制法の定める基準値を超えていた事実は認められる(甲78)。
    しかしながら,証拠(証人福本)によれば,本件発電事業による夜間の騒音が騒音規制法の基準値を超えることとなったのは,前橋市による騒音の測定基準が変更されたためであり,前橋バイオマス発電は,平成31年1月から2月頃,前橋市から騒音の指摘を受け,騒音規制法の基準値内となるように対策を行っていることが認められ,騒音規制法違反の状態は是正されていることからすれば,本件発電事業が違法操業状態であるとは認められず,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
  エ 原告らは,前橋バイオマス発電が発電施設の冷却水として環境配慮計画に記載された量の10倍もの地下水を必要以上に搾取し,浪費して いる旨を主張する。
    上記(1)アのとおり,本件発電事業の不適格性は,本件補助金の交付決定の違法性を基礎づけるものではないものの,事案に鑑みて判断すると,本件全証拠によっても,前橋バイオマス発電が発電施設の冷却水として地下水を過剰に汲み上げている事実は認められず,原告らの上記主張は,その前提において理由がないから採用することができない。
 (5) 以上によれば,本件事業の内容は,補助金交付事業として不適格であるとは認められない。
 4 争点2(条例アセスメント不履行の違法性)
 (1) 上記3(1)アのとおり,本件発電事業の不適格性は,本件補助金の交付決定の違法性を基礎づけるものではないものの,事案に鑑みて判断する。
 (2) 上記1(3)イ(イ)で認定したとおり,本件発電事業において発生する1時間当たりの排ガス量は,3万8483ノルマル立方メートルであり,条例アセスメントの要否を判断する規模要件である1時間当たりの排ガス量が4万ノル

<P35>
マル立方メートル以上であることを満たさず,本件発電事業は,条例アセスメントの対象となる事業に該当しない。
   そのため,前橋バイオマス発電が本件発電事業に関して条例アセスメントを行っていないことに違法性は認められない。
 5 争点3(本件補助金の金額の妥当性)
 (1) 上記1(5)エないしカで認定したとおり,渋川森林事務所長は,本件事業の事業費に係る資料を確認した上で,本件補助金の交付決定を行い,事業の完了後に本件補助金の金額を確定するという手続を経ていることからすれば,本件補助金の金額が妥当であると認められる。
 (2)ア これに対し,原告らは,本件事業により整備された本件プレス機は稼働しておらず,不要な設備である旨を主張する。
  イ しかしながら,上記1(3)ア(イ)で認定したとおり,本件プレス機は,平成30年3月頃,本件燃料事業の操業開始と共に稼働していることから,原告らの上記主張は理由がないから採用することができない。
 (3)ア また,原告らは,本件事業の事業費は,本件プレス機や本件チッパー,トレーラートラック,ローダークレーン等の費用を過剰に計上することにより水増しされており,水増しされた事業費を基準とする本件補助金の金額は過大である旨を主張する。
  イ しかしながら,本件各証拠によっても,本件事業の事業費が過剰に計上された事実は認められず,原告らの上記主張は,その前提において理由がないから採用することができない。
 6 まとめ
   以上によれば,前橋バイオマス燃料に対する本件補助金の交付が違法であるとは認められない。
第4 結論
   よって,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費

<P36>
用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

  前橋地方裁判所民事第1部

    裁判長裁判官  渡邊和義(自署)
       裁判官  高橋浩美(自署)
       裁判官  浅川浩輝(自署)

<P37>
これは正本である。
 令和元年10月31日
  前橋地方裁判所民事第1部
    裁判所書記官 森 山 ひとみ
**********

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告・この項続く】
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