関東最大級メガソーラーを2月12日に買い取った東京ガスに出した質問状の回答に滲む上から目線体質  安中市内の大規模開発計画

■2016年秋から造成が開始された群馬県安中市の岩野谷の大谷・野殿地区約130ヘクタールに及ぶ関東地方で最大級とされるメガソーラー施設が2019年12月末に完成し、2020年1月3日に送電が開始されました。約370万立方メートルに上る移動土砂が行われ、それまでオオタカやキツネが生息し、関東地方の平野部では唯一猟銃による水平撃ちも可能で、エビネやヒツジグサが自生していた広大な里山が僅か3年で姿を消し、現地では一面の殺風景なパネルの海となってしまいました。
 ところが、送電開始後わずか1か月余りの2月12日に、このメガソーラーを中国資本も関与するタックスヘイブン会社から東京ガスが買い取ったという衝撃的なニュースが駆け巡りました。
 この余りの素早い電撃的買収劇を目の当たりにした筆者は、近々、各方面にヒヤリングをして今回の突然の外資系SPCの撤退と、東京ガスの進出の顛末を調べてみようと思っていましたが、新型コロナウイルスの蔓延で、しばらく様子見をしていました。
 その後、7月16日に、東京ガスの担当者らが、地元に事務所を置く鹿島建物の現場代理人の案内で、留守中、筆者の自宅に来たと言うので、この機会にかねてから知りたかった質問事項を東京ガスに訊いてみることにしました。

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東京ガスが2020年2月にタックスヘイブンのペーパー会社から買収した関東最大級のメガソーラー施設。

 なお、現時点で稼働中のメガソーラーではおそらく関東圏では最大級のこの大規模太陽光発電施設の今年に入ってからの経緯は次の通りです。
○2020年1月5日:関東最大級の安中ソーラー合同会社のメガソーラーがついに1月3日から送電開始!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3107.html
○2020年3月1日:1月3日に送電開始したばかりの関東最大級の安中ソーラーが早くも東ガスに身売り!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3126.html


■それでは当会が東京ガスに宛てた質問書を見てみましょう。

*****質問書*****ZIP ⇒ j.zip
                    2020年7月23日
〒105−8527
東京都港区海岸1−5−20
東京ガス株式会社 エネルギー需給本部
再生可能エネルギー事業部
再エネ第一グループ
係長 砂田 良知 様
係員 大内ありさ 様

                質問者:〒379−0114
                    群馬県安中市野殿980
                    小川 賢
                    電話090−5302−8312
                    FAX027−381−0364

件名:安中市岩野谷地区の安中ソーラー合同会社メガソーラーにかかるご質問

前略 先日は遠路お越し下さったにもかかわらず自宅を留守にしており大変失礼しました。
 さて、貴社が2020年2月12日にプレスリリースで公表した「群馬県安中市における太陽光発電所の取得について」と題する情報によると、「東京ガス株式会社(社長:内田 高史、以下「東京ガス」)100%出資子会社のプロミネットパワー株式会社(社長:菅沢 伸浩)は、このたび、アジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド社が運営を行ってきた特別目的会社である安中ソーラー合同会社を通じて「安中市太陽光発電所」(以下「本発電所」)を取得しました。固定価格買取制度の適用期間終了後は、自社電源としての活用を想定しており、年間約5.6万トンのCO2削減に寄与する環境価値のある電力をお客さまにお届けしてまいります。東京ガスグループは、経営ビジョン「Compass2030」で掲げた2030年における国内および海外での再生可能エネルギー電源取扱量500万kWの達成に向け取り組んでまいります。」としています。
 このことについて、次の質問がありますので、できる限り、詳しく教えてください。

【質問1】
 この本発電所の土地(借地を除く)は、安中ソーラー合同会社という特別目的会社(SPC)が、日刊スポーツ新聞社の子会社から買い取ったものと認識しております。またこのSPCのバックには、代表社員としてグレート・ディスカバリー・ホールディングLLC社(GDH)という米国デラウエア州ウイルミントン市に登録されたペーパー会社がおり、その職務執行者として、東京都港区赤坂2−10−5にある税理士法人赤坂国際会計事務所の山崎亮雄と、香港に拠点を置く香港九龍大角咀ホイファイロード18ワン・シルバー・シー、ブロック7、21階、ルームBのリュー・シャオ・フィの2名が選任されていました。今回、貴社のプレスリリースによると、「アジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド社(APL)が運営を行ってきた特別目的会社を通じて『安中市太陽光発電所』を取得しました。」と報じています。
 今回の貴社による一連の取得劇において、貴社、貴社子会社プロミネット・パワー社、SPC、GDH、APL、および後述の三菱UFJ信託銀行、さらに、本発電所の運営を請け負っている鹿島建物の各社がどのように関与してきたのか、その結果、現在どのような立ち位置に各社が置かれているのか、わかりやすく説明をお願い申し上げます。

【質問2】
 一方、地元の菩提寺である念称寺が本発電所内に保有する土地については、寺とSPCとの間で、2016年11月7日付で地上権設定予約契約書が交わされ、2016年4月24日付予約権行使の通知書により地上権の設定が為されています。日付が前後しているのは、国土法違反が発覚して、地上権設定予約契約書の正式締結が遅くなったものと思料されます。
 このことに関連して、2020年1月10日付で念称寺にSPCから差し出された書面によれば、SPCは、本件地上権を2019年12月25日付で受託者である三菱UFJ信託銀行に信託譲渡し、地上権設定予約契約書に定めたSPCの地位・権利・義務を三菱UFJ信託銀行に承継したことが明記されています。SPCは承継後も寺の土地を三菱UFJ信託銀行から賃借しながら、事業を継続し、地代もSPCから支払うとしています。
 こうした事実によれば、プレスリリースで「SPCを通じて太陽光発電施設を取得した」と報じた貴社は、本発電所のどのような権利を誰からどのような条件で取得したのか、わかりやすく説明をお願い申し上げます。

【質問3】
 プレスリリースで貴社は「固定価格買取制度の適用期間終了後は、自社電源としての活用を想定しており、年間約5.6万トンのCO2削減に寄与する環境価値のある電力をお客さまにお届けしてまいります。」と言明しています。このことは、FIT制度の適用期間が終了する2040年1月3日(要確認)以降は、引き続き自社電源として本発電所を保有し運用していくことが想定されます。具体的には、本発電所内の土地の所有権、借地の地上権、施設・設備等の管理について、どのようにお考えなのか、わかりやすく説明をお願い申し上げます。

【質問4】
 質問者は、本発電所に取り巻かれている山林を所有し、そのアクセスとして市道を利用しています。しかし、道路の両側が本発電所の所有地となっていることから、道路管理面で支障の出ることが予想されます。道路管理者である安中市は、認定道路として道路に番号を付与していますが、実際の管理面ではなんの対策も講ずる意図が見られず、やむをえず、唯一の利用者である質問者が道路里親制度等を活用して管理するほかはありません。この件については、本発電所の運営管理業務を貴社が鹿島建物に委託していると思われますが、どのような条件で業務委託をしているのか、分かりやすく説明をお願い申し上げます。
 とりわけ、質問者の所有する山林および道路管理者である安中市が保有するアクセス用市道との境界付近の管理責任について、所掌範囲や責任の明確化等はどうなっていますでしょうか、

【質問5】
 本発電所の設置及び稼働に関連して2017年(平成29年)2月24日付で、安中市(群馬県安中市安中―丁目23番13号)、地区住民(安中市岩野谷地区第6区および第7区区長)および事業者の安中ソーラー合同会社(東京都港区赤坂二丁目10番5号赤坂国際会計事務所内)の3者による協定書が締結されました。さらに同日、FIT制度終了後を想定した撤去費の積立及び支出の仕組を構築することを約すとして、安中ソーラー合同会社と安中市の間で覚書が交わされました。この覚書に基づき、安中ソーラー合同会社では、三井住友信託銀行株式会社との間で信託契約が締結され、その具体的な条件は、別途三井住友信託銀行株式会社の指定金銭信託約款及び金銭信託契約特約申込書に従とされました。この覚書に基づき、発電事業(売電)開始日から毎年3000万円ずつが積み立てられ、20年間で6億円の累積積立金が確保されることになります。これらの協定書や覚書は、現在どのように承継されているのか否か、その内容についてわかりやすく説明をお願い申し上げます。

【質問6】
 質問者の知る限り、SPCは三井住友信託銀行から150億円の資金を借り入れ、そのうち20億円を日刊スポーツ新聞社に支払い、土地を取得し、残りの130億円を投じて、造成工事と施設・設備設置工事を東芝プラントシステムに請け負わせて、2020年1月18日に完成した本発電所の施設・設備がSPCに引き渡されました。貴社はその僅か25日後に、本発電所を何らかの形で取得されました。
 つきましては、貴社は本発電所の取得のために資金としていくら投じたのでしょうか。また、本発電所の取得について、いつ頃から会社として方針を立て、取得に向けた計画を策定してきたのでしょうか。分かりやすく説明をお願い申し上げます。

【質問7】
 本発電所の建設に当たり、地元を対象とした説明会で、本発電所の稼働により年間17億円の売電収入が見込めるとの発言が、SPC側からありました。今回、本発電所を取得した貴社として、本発電所の取得を決断された理由にはどのようなものがありますでしょうか。さまざまな理由があると思いますが、それらをすべて教えてください。また、それらの理由について、優先度を付してください。

 以上が質問者からの質問事項です。
 本発電所が設置された場所は、岩野谷地区の南部の広大な丘陵地帯です。ご案内の通り、岩野谷地区の北部には、カドミウム公害でしられる東邦亜鉛安中製錬所が位置しており、これまでに80年間に及ぶ操業により、周辺にカドミウムをはじめ重金属を含む降下煤塵が降り注ぎ、深刻な土壌汚染が発生し、今でも製錬所周辺半径1キロメートル以内は、汚染土壌が手つかずのまま放置された状態にあります。
 現在、製錬所周辺の北野殿地区や岩井地区では、公害防除特別対策事業として区画整理方式による汚染土壌の排客土計画が行政主導で進められていますが、遅々として進展を見せておりません。その過程で、本発電所の造成工事中に発生する山土を汚染土壌対策のための客土用への利用を行政にもSPCにも働きかけましたが、ことごとく無視されてしまった経緯があります。
 質問者が本発電所計画に対して、終始慎重な対応を、関係筋に一貫して求めてきた理由や背景には、地元の事情を無視して、経済的論理で開発が為されることへの戒めがありました。以下にかいつまんで、これまでの経緯を記してみました。
【経緯概要】
 岩野谷地区南部の水境および大谷にまたがる約130haの丘陵地帯については、バブル期に日刊スポーツ新聞社による朝日新聞グループ専用のゴルフ場計画が進められてきましたが、バブル崩壊により、同社の社有林として維持されてきたところ、東日本大震災を契機に2012年7月1日にスタートしたFIT制度(再生可能エネルギー固定価格買い取り制度)のため、太陽光発電施設業者によるメガソーラー設置計画の動きが活発化し、日刊ゴルフ場もその動きの中で、2013年になると数社から日刊スポーツに買取り要請が寄せられ、日刊スポーツはその中で最も高額の買取価格を提示したタックス・ヘイブンで知られるグレート・ディスカバリー・ホールディングスLLCに約20億円で2015年12月に売却しました。その後2016年10月までに群馬県の大規模開発許可がおり、造成工事に着手、2019年末までに完成し、2020年1月3日に運転開始となりました。

 事実、地元説明会でも、広大な森林伐採による周辺への気象変化(温度上昇)や、鳥獣が棲み処を失うことによる周辺農業への鳥獣害も懸念され、さらに調整池が設置されるとはいえ、下流に流出する水量の変化によりとくに集中豪雨の際の下流への出水被害を懸念する声が多数出されました。このうち、獣害や水害については、実際に周辺や下流に被害がでたことも事実です。
 とりわけ、これまでSPCの実態が素性のしれない外資系のタックスヘイブンのペーパー会社であったことは、いつ転売されて、FIT制度終了後は産業廃棄物中間処理ないし最終処分場施設にかかわる事業者の手に渡ってしまうのではないか、との強い不安がありました。
 今回、事情はともかく、結果的に日本を代表する企業のひとつである貴社が本発電所を取得したことについて、これまでの不安は解消したと判断してもよいのかどうか、近日中に貴社と面談の機会を持たせていただければ、質問者としても幸いと存じます。
 その際、上記の質問事項についても、あらかじめ書面でご教示願えれば、無用な誤解や不明事項を最小限化することができ、効率よく情報共有ができると思います。
 つきましては、誠に恐縮ですが、盆明けの8月17日(月)までに上記質問へのご回答を書面で質問者の連絡先あてにお願いいたします。そして、その後、適当な時期に、直接ご面談できる機会を希望しております。
 貴社におかれましては、こうした事情を拝察いただき、今後とも本発電所の事業を通じて地元と良好な関係を保持していただけるよう、ご理解ご協力を賜りたくお願い申し上げます。
                    草々
**********

■こうして、8月17日(月)期限で回答を待っていたところ、8月13日付で東京ガスから封書で回答が郵送されてきました。わずか2ページ(実質的に1頁強)でした。回答内容は次の通りです。

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*****東京ガスからの回答*****ZIP ⇒ 20200813kx2.zip
                           2020年8月13日
小川 賢 様
                     東京ガス株式会社
                     群馬安中太陽光発電合同会社

              回答書

 平素より、弊社太陽光発電事業への格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
 2020年7月23日付「安中市岩野谷地区の安中ソーラー合同会社メガソーラーにかかるご質問」につきまして、以下の通り回答申し上げます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

【ご質問1への回答】
 東京ガスの100%出資子会社であるプロミネットパワー株式会社が100%出資する群馬安中太陽光発電合同会社(群馬GK) が安中ソーラー合同会社(安中GK) の出資持分を取得しております。その後、群馬GKが安中GKの権利義務を承継しており、当社グループの群馬GKが事業運営を行っております。

【ご質問2への回答】
 安中GKより群馬GKが取得し、現在はプロジェクトに関連する契約は群馬GKが承継し履行しております。地上権設定者への地代お支払いは群馬GKより実施いたします。

【ご質問3への回答】
 本発電所内の土地の所有権、地上権、施設・設備等の管理については事業期間を通して、法令等を遵守し、事業者として適切に運営・管理する所存です。施設・設備の管理については、専門の第三者に委託しております。

【ご質問4への回答】
 第三者との契約内容については大変恐縮ではございますが、秘密保持義務を負っていることから回答を差し控えさせていただきます。貴殿の所有地及び安中市道との境界付近の 管理責任については、地権者として適切に管理し、法令遵守に努めて参ります。

【ご質問5への回答】
 安中GKの発電事業は会社分割により群馬安中GKに承継されており、契約は群馬GKにて履行致します。撤去費は契約に従い、群馬GK によって積み立てられており、今後も継続して参ります。

【ご質問6への回答】
 取得に要した金額がいくらであるかは、秘密保持義務により、大変恐縮ではございますが、回答を差し控えさせていただきたく存じます。本発電所の取得を計画した時期についても同様です。

【ご質問7への回答】
 CO2削減に向けて取り組むことはエネルギー事業者の責務であり、環境に優しい天然ガスの普及拡大と合わせて、再生可能エネルギーの開発を通じた安定的な電力供給も当社の使命と考えております。このような背景の下、本太陽光発電所の取得を決定しております。

                               以上
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■ご覧のとおり、当方ができる限り詳しくお答えいただきたいと5ページにわたり7項目の質問への回答を要請したにもかかわらず、たった1ページ半しか答えてくれません。それも、当方が時系列に沿って、わかりやすく、概要を説明したうえで質問しているのに、「秘密保持義務」を連発したり、わざと当方の質問の趣旨をはぐらかしたり、端折ったりしています。

 これでは、まるで、2009年から2013年にかけて地元安中市の磯部から高崎市の下小塙町まで、高圧ガス導管を敷設した際の、横柄な東京ガスの対応を彷彿とさせます。まさに、東京ガスの体質そのものと言えます。

 上記の回答内容だけでは質問との兼ね合いが把握しにくいため、個々の項目の質問と回答を対比させてみましょう。

*****各質問・回答ごとの対比*****
【当会の質問1】
 この本発電所の土地(借地を除く)は、安中ソーラー合同会社という特別目的会社(SPC)が、日刊スポーツ新聞社の子会社から買い取ったものと認識しております。またこのSPCのバックには、代表社員としてグレート・ディスカバリー・ホールディングLLC社(GDH)という米国デラウエア州ウイルミントン市に登録されたペーパー会社がおり、その職務執行者として、東京都港区赤坂2−10−5にある税理士法人赤坂国際会計事務所の山崎亮雄と、香港に拠点を置く香港九龍大角咀ホイファイロード18ワン・シルバー・シー、ブロック7、21階、ルームBのリュー・シャオ・フィの2名が選任されていました。今回、貴社のプレスリリースによると、「アジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド社(APL)が運営を行ってきた特別目的会社を通じて『安中市太陽光発電所』を取得しました。」と報じています。
 今回の貴社による一連の取得劇において、貴社、貴社子会社プロミネット・パワー社、SPC、GDH、APL、および後述の三菱UFJ信託銀行、さらに、本発電所の運営を請け負っている鹿島建物の各社がどのように関与してきたのか、その結果、現在どのような立ち位置に各社が置かれているのか、わかりやすく説明をお願い申し上げます。
【東京ガスの回答1】
 東京ガスの100%出資子会社であるプロミネットパワー株式会社が100%出資する群馬安中太陽光発電合同会社(群馬GK) が安中ソーラー合同会社(安中GK) の出資持分を取得しております。その後、群馬GKが安中GKの権利義務を承継しており、当社グループの群馬GKが事業運営を行っております。

←(当会注:この度の突然の買収劇において、有象無象のペーパー会社がどのような役割で蠢いて、その最終的なかたちが東京ガスによる取得という結果になったのか、その過程も訊いているのに、完全無視!)

【当会の質問2】
 一方、地元の菩提寺である念称寺が本発電所内に保有する土地については、寺とSPCとの間で、2016年11月7日付で地上権設定予約契約書が交わされ、2016年4月24日付予約権行使の通知書により地上権の設定が為されています。日付が前後しているのは、国土法違反が発覚して、地上権設定予約契約書の正式締結が遅くなったものと思料されます。
 このことに関連して、2020年1月10日付で念称寺にSPCから差し出された書面によれば、SPCは、本件地上権を2019年12月25日付で受託者である三菱UFJ信託銀行に信託譲渡し、地上権設定予約契約書に定めたSPCの地位・権利・義務を三菱UFJ信託銀行に承継したことが明記されています。SPCは承継後も寺の土地を三菱UFJ信託銀行から賃借しながら、事業を継続し、地代もSPCから支払うとしています。
 こうした事実によれば、プレスリリースで「SPCを通じて太陽光発電施設を取得した」と報じた貴社は、本発電所のどのような権利を誰からどのような条件で取得したのか、わかりやすく説明をお願い申し上げます。
【東京ガスの回答2】
 安中GKより群馬GKが取得し、現在はプロジェクトに関連する契約は群馬GKが承継し履行しております。地上権設定者への地代お支払いは群馬GKより実施いたします。

←(当会注:これも当会の質問にまともに応えようとせず、焦点をはぐらかせています。SPCはこの施設の地上権を三菱UFJ信託銀行に信託譲渡した、と言っているのに、東京ガスはこの施設の何の権利義務を承継したというのか、判然としません。想像するに、どうやら、地上に設置したパネル装置とその下の土地について、三菱UFJ信託銀行が安中ソーラー合同会社から買い取り、それを東京ガスに賃貸で使わせ、FIT制度により高値で売れた電力の販売利益は東京ガスが得るという構図のようです。東京ガスは、それを源資に、念称寺の土地の地代を支払っているということのようです)

【当会の質問3】
 プレスリリースで貴社は「固定価格買取制度の適用期間終了後は、自社電源としての活用を想定しており、年間約5.6万トンのCO2削減に寄与する環境価値のある電力をお客さまにお届けしてまいります。」と言明しています。このことは、FIT制度の適用期間が終了する2040年1月3日(要確認)以降は、引き続き自社電源として本発電所を保有し運用していくことが想定されます。具体的には、本発電所内の土地の所有権、借地の地上権、施設・設備等の管理について、どのようにお考えなのか、わかりやすく説明をお願い申し上げます。
【東京ガスの回答3】
 本発電所内の土地の所有権、地上権、施設・設備等の管理については事業期間を通して、法令等を遵守し、事業者として適切に運営・管理する所存です。施設・設備の管理については、専門の第三者に委託しております。

←(当会注:ここでも東京ガスの回答は曖昧というか、故意に分かり難くさせている感じがします。どうやら土地の所有権はSPC、地上権は三菱UFJ信託銀行、施設・設備等の管理は鹿島建物というくくりのようですが、あらためて確認する必要があると思います)

【当会の質問4】
 質問者は、本発電所に取り巻かれている山林を所有し、そのアクセスとして市道を利用しています。しかし、道路の両側が本発電所の所有地となっていることから、道路管理面で支障の出ることが予想されます。道路管理者である安中市は、認定道路として道路に番号を付与していますが、実際の管理面ではなんの対策も講ずる意図が見られず、やむをえず、唯一の利用者である質問者が道路里親制度等を活用して管理するほかはありません。この件については、本発電所の運営管理業務を貴社が鹿島建物に委託していると思われますが、どのような条件で業務委託をしているのか、分かりやすく説明をお願い申し上げます。
 とりわけ、質問者の所有する山林および道路管理者である安中市が保有するアクセス用市道との境界付近の管理責任について、所掌範囲や責任の明確化等はどうなっていますでしょうか、
【東京ガスの回答4】
 第三者との契約内容については大変恐縮ではございますが、秘密保持義務を負っていることから回答を差し控えさせていただきます。貴殿の所有地及び安中市道との境界付近の管理責任については、地権者として適切に管理し、法令遵守に努めて参ります。

←(当会注:第三者とは鹿島建物のことでしょうが、あえて固有名詞を出さず、隣接地権者である当方に対して、できる限り情報を教えないという東京ガスの徹底した方針を痛感させます。ここで、東京ガスは自ら地権者と明言しています。東京ガスはSPCを買い取ったから土地は自ら所有し(念称寺の土地のように地上権設定された場所は、SPCが支払い、上物のソーラーパネルは、三菱UFJ信託銀行から賃借しているということだと思われます。であれば、東京ガスと当方は隣接地権者同士ということになります。また、本件メガソーラー計画では、三菱UFJ信託銀行が裏で主要なプレーヤーとして動いていたことが今回ハッキリしました)

【当会の質問5】
 本発電所の設置及び稼働に関連して2017年(平成29年)2月24日付で、安中市(群馬県安中市安中―丁目23番13号)、地区住民(安中市岩野谷地区第6区および第7区区長)および事業者の安中ソーラー合同会社(東京都港区赤坂二丁目10番5号赤坂国際会計事務所内)の3者による協定書が締結されました。さらに同日、FIT制度終了後を想定した撤去費の積立及び支出の仕組を構築することを約すとして、安中ソーラー合同会社と安中市の間で覚書が交わされました。この覚書に基づき、安中ソーラー合同会社では、三井住友信託銀行株式会社との間で信託契約が締結され、その具体的な条件は、別途三井住友信託銀行株式会社の指定金銭信託約款及び金銭信託契約特約申込書に従とされました。この覚書に基づき、発電事業(売電)開始日から毎年3000万円ずつが積み立てられ、20年間で6億円の累積積立金が確保されることになります。これらの協定書や覚書は、現在どのように承継されているのか否か、その内容についてわかりやすく説明をお願い申し上げます。
【東京ガスの回答5】
 安中GKの発電事業は会社分割により群馬安中GKに承継されており、契約は群馬GKにて履行致します。撤去費は契約に従い、群馬GK によって積み立てられており、今後も継続して参ります。

←(当会注:会社分割とあるので、額面通りに受け止めると、発電専業のはずの安中ソーラー合同会社が、会社分割により発電事業が群馬安中太陽光発電合同会社に引き継がれたということなのでしょうか。となると、他にもパートナーがいることをうかがわせます。なお、事業終了後のパネルの撤去費はこのSPCが積み立てているとしています。)

【当会の質問6】
 質問者の知る限り、SPCは三井住友信託銀行から150億円の資金を借り入れ、そのうち20億円を日刊スポーツ新聞社に支払い、土地を取得し、残りの130億円を投じて、造成工事と施設・設備設置工事を東芝プラントシステムに請け負わせて、2020年1月18日に完成した本発電所の施設・設備がSPCに引き渡されました。貴社はその僅か25日後に、本発電所を何らかの形で取得されました。
 つきましては、貴社は本発電所の取得のために資金としていくら投じたのでしょうか。また、本発電所の取得について、いつ頃から会社として方針を立て、取得に向けた計画を策定してきたのでしょうか。分かりやすく説明をお願い申し上げます。
【東京ガスの回答6】
 取得に要した金額がいくらであるかは、秘密保持義務により、大変恐縮ではございますが、回答を差し控えさせていただきたく存じます。本発電所の取得を計画した時期についても同様です。

←(当会注:今回の質問の中でも核心に触れる質問なのに、東京ガスはあっさりと秘密保持義務を盾に情報秘匿を決め込んでいます。おそらく取得には200億円は優に投じられたと当方では見ています。あるいは、地上権を設定している三菱UFJ信託銀行から賃借しているので、運転資金面では、さほど一時的に巨額の投資は必要なかったのかもしれません。となると、日刊スポーツ事業から朝日新聞グループ専用ゴルフ場計画跡地を、三井住友信託銀行から150億円(うち20億円が土地代、130億円が発電施設代)の融資を受けて購入し、造成し、設備を設置した安中ソーラー合同会社から、東京ガスの再生エネルギー事業本格参入の為、200億円(当会推測)で取得したのは三菱UFJ信託銀行で、東京ガスはその土地の所有権を買い取り、設備である地上権は三菱UFJ信託銀行から賃借していることが考えられます。ここで思い当たるのは、この事業の為の造成工事が始まったころ、匿名で、この事業の裏にはメガバンクが関与している、との情報提供があったことです。そのため、メガバンク3行に公開質問状を出して、本件事業に関与しているかどうか尋ねましたが、顧客との守秘義務を理由に一切回答拒否をされたことがあります。しかし、そこには三菱UFJ信託銀行の名前が記載されていました。安中ソーラー合同会社には三井住友信託銀行が資金面で関与していましたが、実際には匿名情報が言っていた三菱UFJ信託銀行がこの事業を主導していたことになります。ということは、このメガソーラー発電所計画では、造成工事に着手した時点で、三菱UFJ信託銀行が東京ガスの意向を受けて、完成後早期に取得するシナリオができていた可能性が濃厚だったことになります。まさにマネーゲームに翻弄された日刊スポーツによる朝日新聞グループ専用ゴルフ場計画の構図を彷彿とさせます)

【当会の質問7】
 本発電所の建設に当たり、地元を対象とした説明会で、本発電所の稼働により年間17億円の売電収入が見込めるとの発言が、SPC側からありました。今回、本発電所を取得した貴社として、本発電所の取得を決断された理由にはどのようなものがありますでしょうか。さまざまな理由があると思いますが、それらをすべて教えてください。また、それらの理由について、優先度を付してください。
【東京ガスの回答7】
 CO2削減に向けて取り組むことはエネルギー事業者の責務であり、環境に優しい天然ガスの普及拡大と合わせて、再生可能エネルギーの開発を通じた安定的な電力供給も当社の使命と考えております。このような背景の下、本太陽光発電所の取得を決定しております。

←(当会注:これも、当会の質問に対してまともに答えていません。東京ガスが、関東最大級のこのメガ―ラー施設の完成直後に土地と施設の使用権を取得した背景には、たしかに再生エネルギーを活用した企業イメージ向上と電力事業参入の方針もあるのでしょうが、その一方で、得体のしれないタックスヘイブンのペーパー会社を隠れ蓑にした、いかがわしい香港=中国のファンドマネージャーを巻き込んだマネーゲームに加担し、彼らに多額の利益を与えたことになります。形を変えたハゲタカ・ファンドに我が国の国土を利用され、搾取されたわけですが、東京ガスはそのことをどう考えているのでしょうか)
**********

■ところで東京ガスの100%出資子会社であるプロミネットパワー株式会社が100%出資する群馬安中太陽光発電合同会社(群馬GK) について、調べてみましょう。

○群馬安中太陽光発電合同会社
https://pps-net.org/ppscompany/72722
発電実績:8594千kWH(2020年4月)
住  所:東京都港区赤坂二丁目10番5号 税理士法人 赤坂国際会計事務所内
電話番号:03-4560-8891

○群馬安中太陽光発電合同会社
https://presspage.biz/corporation/3010403021647/
群馬安中太陽光発電合同会社は2019年10月21日に法人番号が指定されました
本店所在地 〒105-0022 東京都港区海岸1丁目5番20号
<基本情報>
称号または名称:群馬安中太陽光発電合同会社
法 人 種 別:合同会社
法人番号指定日:2019年10月21日
更 新 年 月 日:2019年10月25日
代 表 者 名:代表者名はまだ登録されていません
ホームページ :まだ登録されていません
変 更 履 歴:群馬安中太陽光発電合同会社は2019年10月25日に法人番号が公開(一部の情報が更新)されました

○経産省資源エネルギー庁発表「発電事業届出事業者一覧(令和2年7月31日時点)」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/004/list/
番  号:754
事業者名:安中ソーラー合同会社(法人番号 3010403011920)
住  所:東京都港区赤坂二丁目10番5号 税理士法人赤坂国際会計事務所内
電話番号:03-4560-8891
届 出 日:令和元年6月24日

○国税庁「法人番号公表サイト」/安中ソーラー合同会社
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/henkorireki-johoto.html?selHouzinNo=3010403011920
法人番号:3010403011920
商号又は名称:安中ソーラー合同会社
商号又は名称(フリガナ):アンナカソーラー
本店又は主たる事務所の所在地:東京都港区海岸1丁目5番20号
最終更新年月日:令和2年2月4日
<変更履歴情報>公表以後の変更履歴について表示しています。
No.1
事由発生年月日:令和2年1月30日
変更の事由:本店又は主たる事務所の所在地の変更
旧情報:東京都港区赤坂2丁目10番5号税理士法人赤坂国際会計事務所内
No.2 新規
法人番号指定年月日:平成27年10月5日

○国税庁「法人番号公表サイト」/群馬安中太陽光発電合同会社
https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/henkorireki-johoto.html?selHouzinNo=3010403021647
法人番号:3010403021647
商号又は名称:群馬安中太陽光発電合同会社
商号又は名称(フリガナ):グンマアンナカタイヨウコウハツデン
本店又は主たる事務所の所在地:東京都港区海岸1丁目5番20号
最終更新年月日:令和元年10月25日
<安中ソーラー合同会社の登録履歴>
日付:2020年01月30日
内容:【住所変更】国内所在地が「東京都港区海岸1丁目5番20号」に変更されました。
日付:2015年10月05日
内容:【新規登録】名称が「安中ソーラー合同会社」で、「東京都港区赤坂2丁目10番5号税理士法人赤坂国際会計事務所内」に新規登録されました。
<変更履歴情報>公表以後の変更履歴について表示しています。
No.1 新規
法人番号指定年月日:令和元年10月21日

■上記のとおり経産省のHPには、群馬安中太陽光発電合同会社の住所として未だに「東京都港区赤坂2丁目10番5号 税理士法人赤坂国際会計事務所内」などと記載があります。東京ガスが買い取ったとしていますが、本当にそうなのでしょうか、単に経産省のHPの「群馬安中太陽光発電合同会社」のデータが更新されていないだけなのでしょうか。このあたりも全く明らかになっていません。

 ここはやはり東京ガスに確かめ続けるしかありませんが、一方で東京ガスは地元岩野谷地区の区長会が8月7日に開催されるのに合わせて、10分間ほど、2月に外資から買収したこのメガソーラーの概要について、地元区長らに説明をしました。その内容についてはまだ当会に区長会から報告が来ていません。

 おそらく10分間では詳しい説明は期待すべくもありません。かつて地元岩野谷地区の生活道路の下に東京ガスが高圧ガス導管を強引に敷設した当時、東京ガスは地元の代表区長と結託して協定を交わしていたことが後で発覚しました。

 その当時を彷彿とされる今回の誠意の見えない回答書を読み返すほどに、同社の情報秘匿体質をあらためて痛感しました。それだけに、今後、半永久的に東京ガスとは隣接地権者の関係を強いられることから、先の見えない長い苦労と困難が予想されます。
※参考情報;「東京ガス高圧パイプライン問題」
https://pink.ap.teacup.com/applet/ogawaken/msgcate11/archive

【岩野谷の子ども達の明日を想う会】

※参考記事「東京ガスの群馬安中太陽光発電合同会社」
**********日経BP 2020年08月03日05:00
国内外で「再エネ5GW」、東京ガスのCO2ネット・ゼロ戦略
太陽光、風力、バイオマス電源を開発、獲得へ

■関東最大のメガソーラー
 今年1月、群馬県安中市大谷に関東地方で最大規模となるメガソーラー(大規模太陽光発電所)「安中市太陽光発電所」が運転を開始した。
 ゴルフ場の計画が頓挫した開発跡地を活用し、出力63.2MW分の太陽光パネルを設置した。事業区域約137haのうち約3割を森林とし、残りを造成してパネルを敷き詰めた。東京電力パワーグリッドの系統に送電する最大出力は42.8MWで、固定価格買取制度(FIT)により売電している(図1)。
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図1●関東最大のメガソーラー「安中市太陽光発電所」(出所:東京ガス)
 安中市は、世界遺産・富岡製糸場のある富岡市に隣接するなど養蚕業で栄え、いまでも安中市には国内最大の製糸工場が操業している。市内にはかつて多くの桑畑があった。メガソーラーのあるエリアも、かつては桑園に囲まれた小高い丘陵だった。
 完成した「安中市太陽光発電所」には、北側に複数の調整池があり、緩やかな北向き斜面になっている。そこにパネル4段(枚)のアレイ(パネルの設置単位)を整然と並べている。パネルを設置できない急な法面を極力減らして緩斜面を段状に造成し、巧みに設置枚数を増やした。造成面積は約92haとなり、盛土と切土による土量は327万7000m3に達した。
■5GWの再エネ獲得を目指す
 大掛かりな造成を伴うことが多い大規模なメガソーラー開発は、相対的に用地コストの低い北海道や東北、中国、九州地方がほとんど。現在、国内で稼働済みのメガソーラーの設備規模で、関東地方にある60MWを超えるサイトは「安中市太陽光発電所」だけだ。
 一方、FITを利用する再生可能エネルギー電源は、買取期間が終了した後、発電電力を相対契約で販売することになる。将来まで見通すと、巨大な首都圏の需要地に地域間連系線を経ずに売電できる関東地方のメガソーラーの価値は高い。
 東京ガスは今年2月、「安中市太陽光発電所」が運転を始めてから約1カ月後、こうした将来性などを評価して、同発電所を取得したことを発表した(図2)。
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図2●東京ガスが取得した「安中市太陽光発電所」(出所:東京ガス)
 「安中市太陽光発電所」を開発したアジア・パシフィック・ランド・(ジャパン)・リミテッド(東京都港区)の運営してきた特別目的会社(SPC)安中ソーラー合同会社を通じ、東京ガスグループのプロミネットパワー(東京都港区)が取得した。
 東京ガスは、これにより関東圏で大規模な再生可能エネルギー電源を持つ、数少ないエネルギー企業の1社になった。同発電所の取得により、東京ガスの国内における再エネの運営規模は100MWを超えた。
 それでも、今回の再エネプロジェクトの買収は、同社の掲げる再エネ戦略のほんの序の口に過ぎない。
 同社グループは、2019年11月に発表した中期経営計画「Compass2030」の中で、再エネ電源に関する目標を掲げ、国内外で「5GW(5000MW)」とした。2022年度までに2GW、そして2030年度までに5GWの再エネ電源を確保することを目指す。この目標を達成するには、関東最大の「安中市太陽光発電所」規模の発電所が実に80個も必要になる(図3)。
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図3●2030年度までに再エネ電源「5GW」を目指す(出所:東京ガス・中期経営計画「Compass2030」)
 同社では、メガソーラーのほかバイオマス発電、そして、洋上も含めた風力発電を主体に、「安中市太陽光発電所」のような稼働済みプロジェクトの獲得のほか、開発段階から関与して新規案件を発掘することで、「5GW」の達成を目指している。
■CO2ネット・ゼロ戦略
 こうした再エネ電源の積極的な獲得戦略の背景には、同社が「Compass2030」で掲げた「CO2ネット・ゼロ」への挑戦という経営ビジョンがある。具体的には、「東京ガスグループの事業活動全体で、お客さま先を含めて排出するCO2をネット・ゼロにすることに挑戦し、 脱炭素社会への移行をリードする」と明記した。
 「ネット・ゼロ」とは、再エネなどの環境価値を使って化石燃料によるCO2排出を相殺(カーボンオフセット)することを意味する。同社では、基幹商品である都市ガスなどガス体エネルギーそのものが「脱炭素」に移行できるのは2050年頃と見ており、それまでは、天然ガス由来のガス販売事業で客先から発生するCO2を、自社の持つ再エネなどの環境価値(CO2クレジット)で相殺することで脱炭素を達成するとの道筋を描いている(図4)。
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図4●東京ガスが掲げる「CO2ネット・ゼロ戦略」(出所:東京ガス・中期経営計画「Compass2030」)
 ここ数年、世界では風力と太陽光発電の低コスト化によって、電力事業の脱炭素化が急速に進み始めた。一方で、残された化石燃料として、ガス体エネルギーの脱炭素化への模索が始まっている。欧州などで注目されている「P2G」(パワー・ツー・ガス)もその1つで、再エネで水を電気分解して製造した水素や、CCS(CO2回収・貯留)を組み合わせて化石燃料から取り出した水素を活用したり、それを原料にメタンを製造したりするメタネーションの実証的なプロジェクトが動き始めている。
 東京ガスでは、P2Gによる水素製造やメタネーションなどの技術が商用ベースに乗り、ガス体エネルギーの脱炭素が進む前に、環境に配慮する先進企業による「脱炭素」のニーズが顕在化すると予想する。こうした動きに対応し、環境価値によるCO2排出の相殺という「ネット・ゼロ戦略」を打ち出した(図5)。
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図5●東京ガスが掲げる「CO2ネット・ゼロ」へのロードマップ(出所:東京ガス・中期経営計画「Compass2030」)
 7月21日に米アップルは、2030年までに同社製品のサプライチェーン、ライフサイクル全体を含めて、CO2「ネット・ゼロ」を達成すると発表した。こうした動きが、国内外の先進企業に広がった場合、再エネ電源やその環境価値を巡り争奪戦になる恐れもある。そうなれば、自社で大量の再エネ電源を持っていることが有利になる。エネルギー企業にとって、再エネ電源を大量に獲得しておくことが、経営リスクに先手を打つことになる。
■カーボンニュートラル都市ガス
 東京ガスは今年3月、初めて「カーボンニュートラル都市ガス」の販売に乗り出した。地域熱供給会社である、丸の内熱供給(東京都千代田)を通じて、都内のオフィスビル2棟(丸の内ビルディング、大手町パークビル)に提供し始めた。
 「カーボンニュートラル都市ガス」とは、東京ガスが英蘭国際石油資本・シェルグループから購入した「カーボンニュートラルLNG(液化天然ガス)」を原料に製造したもの。天然ガスの採掘から燃焼に至るまでの工程で発生するCO2を、シェルの保有する環境価値で相殺している。
 両ビルでは、ガスを燃料にしたコージェネレーション(熱電併給)システムによって電気と熱を供給している。東京ガスは、それぞれで使用する都市ガスの全量について、「カーボンニュートラル都市ガス」を使用する(図6)。
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図6●都心の2つ商用ビルに「カーボンニュートラル都市ガス」を供給(出所:東京ガス)
 さらに今年4月から、工業用向けにも初めて「カーボンニュートラル都市ガス」の供給を始めた。堺化学工業の小名浜事業所・松原工場で使用する都市ガスの全量を「脱炭素」製品に切り替えた。
 また、東京ガスは、ガスに並ぶ柱として参入し、着実にシェアを上げている小売電気事業でも、今年7月に環境価値を活用したサービスに乗り出すと発表した。
 大東建託グループの首都圏における56事業所に「トラッキング付FIT非化石証書を用いた実質再生可能エネルギー電気」を供給する。8月までに切り替えを完了する予定。
 「トラッキング付FIT非化石証書」とは、FITによる再エネの環境価値を特定の再エネ電源と紐づけした形で活用できる仕組みで、再エネ利用を促す国際イニシアチブ「RE100」など国際的な基準にも適合して「実質的に再エネ利用」と認められる。
■FIT後の再エネ市場を牽引
 昨年12月、再エネ発電事業者の新しい業界団体として一般社団法人・再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(=REASP・東京都港区)が設立された。発起メンバーは、再エネ開発ベンチャーのリニューアブル・ジャパン(東京都港区)のほか、東急不動産、ENEOS、オリックス、そして東京ガスが名を連ねた。
 同協会の会長理事である、リニューアブル・ジャパンの眞邉勝仁社長は、「国内の再エネ市場は、FIT後を見据えて、新たな段階に入りつつある」とし、大きな変化として、「旧・一般電気事業者や石油・ガス分野の大手企業が、再エネの新部署や新会社を立ち上げて急速に再エネに投資し始めている」ことを挙げる。
 「こうしたエネルギー大手の再エネへの取り組みは、単なる『投資』ではなく、発電事業者として設備を持ち続け、FIT後の長期運用を前提にしている。企業規模も大きく経営力もあるこうした大手資本が、本気で再エネに乗り出したことで、もう1段、もう2段の再エネ拡大が十分に可能になりつつある」と見ている。
 そして、「本気で再エネに乗り出した大手エネルギー企業」の1社が東京ガスだ。REASPの発起メンバーになったのも、同協会の趣旨である、「FITを乗り越えて、さらに再エネを大量導入し、長期安定電源として運営していく」という方向性と一致しているからだ(図7)。
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図7●再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)のホームページ(出所:REASP)
■提携戦略でキャッチアップ
 2012年7月にFITがスタートして以降、国内でメガソーラー開発を中心的に担ってきたのは、ICT(情報通信)系企業や商社、リース、ベンチャーなど、これまで直接、エネルギー事業に携わっていなかった異業種からの参入組だった。
 逆に言うと、国内エネルギー大手企業は、再エネ大量導入の不可逆的な流れを読み切れず、FITを追い風にしたメガソーラー開発合戦に乗り遅れたとも言える。東京ガスは、こうした再エネ開発の第1ステージでの後れを取り戻すべく、再エネで先行する企業との提携によって「時間を買う」戦略を進めている。
 2017年2月に自然電力(福岡市中央区)に出資したうえで、業務提携契約を締結し、太陽光発電事業を共同で開発すると発表した。契約に基づき、可能な限り早期に合計出力60MWを目標に、太陽光発電所の開発を目指すと公表した。
 さらに2018年5月には、東京ガスと、東京センチュリー、九電工の3社共同で再エネ事業を取得・開発・運営することで基本合意書を締結した。最初の取り組みとして、九州にあるメガソーラー6カ所・約10MWの稼働済み案件を共同で所有した。
 自然電力との連携の成果は、2019年12月に公表した。東ガス子会社のプロミネットパワーが、石川県にメガソーラー2件を建設し、商業運転を開始した。契約に基づく最初のプロジェクトで、東京ガスグループが建設から手掛ける初の太陽光発電所になった。
 同県志賀町の「志賀町猪之谷貯水池太陽光発電所」は出力約2.6MW。また、羽咋市の「羽咋市新保町太陽光発電所」は約2.7MW。両発電所ともEPC(設計・調達・施工)サービスは自然電力グループのjuwi自然電力(東京都文京区)が担い、JAソーラー製のパネルと、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー(PCS)を採用した(図8)(図9)。
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図8●「志賀町猪之谷貯水池太陽光発電所」(出所:東京ガス)
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図9●「羽咋市新保町太陽光発電所」(出所:東京ガス)
  東京ガスでは、プロジェクト開発や買収にあたっては、20年のFITによる売電期間が終了した後も、十分に事業を継続できるだけの耐久性や信頼性を条件としている。冒頭紹介した「安中市太陽光発電所」は、東芝プラントシステムがEPC(設計・調達・施工)サービスを務め、太陽光パネルは東芝製、PCSはABB製を採用している。
 東芝プラントシステムのほか、再エネ開発で連携している九電工、juwi自然電力は、国内メガソーラーのEPCサービスでは、いずれもトップクラスの実績を持っている。
 東京ガスは、こうした提携企業と連携しつつ、今後ともメガソーラープロジェクトの開発案件を積み重ねていく方針だ。
■洋上風力、海外事業で飛躍
 太陽光以外では、すでにバイオマス発電事業への参画を発表している。3月24日にレノバが宮城県石巻市で計画している木質バイオマス発電事業に出資すると公表した。
 定格出力約75MWで、FITにより売電する。主燃料に北米産の木質ペレットを、補助燃料にインドネシアおよびマレーシア産のパーム椰子殻(PKS)を利用する。EPCサービスは、日揮ホールディングスが受注している。2023年5月に運転を開始する予定(図10)。
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図10●石巻ひばり野バイオマス発電所の完成予想図(出所:レノバ)
 さらに7月21日には、食品残渣を利用したバイオガス発電に参画すると発表した。JFEエンジニアリングの子会社であるJ&T環境(横浜市)とJR東日本、東京ガス、JR東日本の関連会社である東北鉄道運輸(仙台市)の4社による共同事業になる。
 1日最大40tの食品廃棄物をメタン発酵させ、発生する可燃性ガスを燃料に、出力780kWの発電設備を稼働させる。2022年春に営業を始める予定だ。
 バイオマス発電は、太陽光に比べると安定的に発電できるという利点があるものの、開発できる規模に限界がある。「5GW」の達成に柱になるのは、国内では洋上風力、そして、海外での大規模な再エネプロジェクトへの参画になりそうだ。
 東京ガスはすでに茨城県鹿島港の港湾区域での洋上風力開発プロジェクトに参画し、運営会社に15.6%出資している。洋上640haの面積に36基もの風力発電設備を設置し、合計出力187MWを予定している。
 洋上新法(再生可能エネルギー海域利用法)による開発プロセスが動き出した一般海域での洋上風力に関しても取り組んでおり、特に遠浅海域の少ない日本で潜在的な開発ポテンシャルの大きい浮体式洋上風力の可能性を積極的に探っている。
 今年5月27日には、洋上風力向けの浮体基礎システムの技術を開発・保有するプリンシプル・パワーに20億円を超える出資を行ったと発表した(図11)。
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図11●プリンシプル・パワーの洋上風力向けの浮体基礎システム(出所:東京ガス、提供:プリンシプル・パワー)
 一方、海外では、2019年4月にフランスのエネルギー事業者Engieと共同で、メキシコの再エネ開発を推進すると発表した。100%子会社の東京ガスアメリカを通じて、Engieが設立した共同開発運営会社の株式を50%取得した。共同会社は、2つの陸上風力と4つの太陽光発電プロジェクトに取り組んでおり、6プロジェクトの合計出力は900MWに達する(図12)(図13)。
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図12●東京ガスが関与するメキシコでの風力発電(出所:東京ガス)
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図13●東京ガスが関与するメキシコでのメガソーラー(出所:東京ガス)
 さらに東京ガスは7月29日、東京ガスアメリカが、米再エネ開発事業者のヘカテエナジーがテキサス州で開発を進めている出力630MWのメガソーラープロジェクト「アクティナ太陽光発電事業」を取得すると発表した。
 同事業は、2020年度上期に着工し、2021年度中に段階的な商業運転を開始する予定で、建設から運転開始後の事業運営までを東京ガスグループ主導で手掛ける初めての海外太陽光発電事業となる。
 これにより、海外と国内の再エネ事業を合わせると、これまでに1.2GWを超える規模になる予定という。
 国内の大手再エネ開発事業者は、FITによって再エネプロジェクトの開発を積み重ね、シェア上位企業は1GWの水準に達している。「ギガプレーヤー」が再エネ業界のリーディングカンパニーの目安になる中、5GWを目標に着々と布石を打っている東京ガスの存在感が増していくことになりそうだ。
(金子 憲治=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ)
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