【大同有害スラグ問題】渋川市の控訴は大同のシナリオ?訴訟参加人として準備書面(1)を出した大同の本性!  スラグ不法投棄問題

■大同特殊鋼(株)渋川工場由来の鉄鋼スラグは、有毒物質であり産業廃棄物です。不法に投棄されている廃棄物は撤去し、片づけなければなりません。しかし、群馬県県土整備部や国土交通省、そして渋川市の3者は、「鉄鋼スラグ連絡会議」というおよそ廃棄物とは関係ない怪しげな組織を立ち上げ、撤去はおろか、アスファルト舗装により被覆する工事が行われました。
 大同スラグ問題で当会は、群馬県東吾妻郡萩生川西地区の農道に不法投棄されたスラグについて、提訴し控訴審まで争った結果、「直ちに被害はない」などとして敗訴させられました。そうしたなかで大同特殊鋼の有毒スラグを巡り、当会の萩生スラグ裁判とは別の群馬県渋川市の市道(農道)に不法投棄されたスラグ裁判で判決が8月5日に前橋地裁で言い渡されました。
 この判決では住民側が事実上勝訴しましたが、あろうことか渋川市が控訴しました。そこには大同特殊鋼が補助参加人として名を連ねていました。「訴訟に参加して渋川市にアドバイスするつもりかな」と思いきや、11月6日付で、大同が補助参加人の立場で、渋川市とは別に22ページにわたる準備書面(1)を提出してきました。渋川市民としては、まるで裁判が大同に乗っ取られたかの印象を持ったことでしょう。
 その主張は驚くべきもので、群馬県廃棄物リサイクル課がスラグを廃棄物認定した時には、何の文句を言わず従っておきながら、刑事告発時に、前橋地検が不起訴処分にしたことを奇貨として「スラグは(検察の不起訴により)廃棄物と見なされなかった。だからスラグは廃棄物ではない」などと、とんでもないこじ付けに加えて環境基準についても文句をつけてきました。
 渋川市は一審ではスラグを廃棄物と認めているのに、渋川市を飛び越えて「廃棄物ではない」との主張が許されるのかどうか、いずれにせよ、渋川市は完全に大同のシモベに成り下がってしまったのでしょうか。
 この度、当会は大同の準備書面(1)を入手したので報告します。いかに、大同特殊鋼が、なりふりかまわずスラグ問題を葬り去ろうとしたいのか、文面から読み取ることができます。
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畑の中にある渋川農道のアスファルトでフタをする以前の様子。40ミリの大きさに砕かれた生一本スラグが敷砂利されている。畑の中に天然石以外の敷砂利をするのはいかがなものか、と心配するお役人様はいなかったのだろうか?

 なお、この問題に関するこれまでの情報は当会の次のブログ記事を参考にして下さい。
〇2018年6月6日:【報道】大同有害スラグを斬る!・・・もう一つのスラグ訴訟始まる!
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2661.html
〇2018年6月10日:【報道】大同有害スラグを斬る!・・・もう一つのスラグ訴訟始まる!(その2)
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2665.html
○2018年7月16日:大同有毒スラグを斬る!…毒物入スラグ撤去を求めない県・渋川市と撤去したがらない大同らの共通利害とは
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2698.html
○2020年8月6日:【速報】大同有害スラグ報道・・・スラグにアスファルトでフタすることは違法判決!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3186.html
○2020年8月13日:【大同有害スラグ問題】・・・“スラグにアスファルトでフタすることは違法”と断じた判決文について考察
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3189.html
○2010年10月9日:【大同有害スラグ問題】渋川市が控訴理由書を提出!そこになんと訴訟参加人として大同特殊鋼の名前が!!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3216.html

*****補助参加人準備書面(1)*****ZIP ⇒ qlipj.zip
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令和2年(行コ)第181号
渋川市が産業廃棄物撤去請求等を怠る事実の違法確認請求控訴事件
控 訴 人  渋川市長 高木勉
補助参加人  大同特殊鋼株式会社
被控訴人   角田喜和

         準 備 書 面(1)

                    令和2年11月6日

東京高等裁判所第7民事部 御中
              補助参加人訴訟代理人
                  弁護士  木 曽   裕
              (担当)弁護士  池 野 幸 佑
                  弁護士  日 野 真太郎

 頭書事件(以下「本件訴訟」という)につき、補助参加人は次のとおり弁論を準備する。

第1 本書面の概要
   本件訴訟は、補助参加人によって製造された道路用鉄鋼スラグが商品として販売され、しかる後に、群馬県渋川市(以下「渋川市」という。)が、当該道路用鉄鋼スラグを含む砕石を、平成19年に同市の未舗装市道において敷

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砂利として使用した後、当該道路用鉄鋼スラグが平成25年に改訂されたJIS規格の環境基準を満たさないことを踏まえて、渋川市が平成30年に同市道にアスファルト舗装を施したという事案に関するものである。この事案において、原審は、渋川市の住民が、渋川市が補助参加人に対して、当該道路用鉄鋼スラグを撤去するよう妨害排除請求をしないのは違法である等と主張したのに対し、原審は、渋川市が補助参加人に対して、当該道路用鉄鋼スラグについて妨害排除請求権を有すると判断した。
   原審の判断は、リサイクル製品たる道路用鉄鋼スラグを廃棄物と誤認したうえ、道路用鉄鋼スラグを含む砕石がアスファルト舗装によって市道と一体化しているという現状があるにもかかわらず、かかる市道の整備に関わっていない補助参加人が道路用鉄鋼スラグの製造者というだけで補助参加人に対する妨害排除請求権の行使を認めたものである。かかる判断は、事実認定に誤りを含むとともに、過去の判例や妨害排除請求権の理解と矛盾し、明らかに不当違法である。
   補助参加人は、これらの詳細について、本書面第2において本件訴訟に関する事案の概要を、同第3において原判決の判断の概要を、同第4において原判決が違法であることを述べる。

第2 事案の概要
 1 鉄鋼スラグについて
   本件訴訟は、鉄鋼スラグを原材料として製造された、リサイクル製品たる道路用鉄鋼スラグに関して生じた紛争である。
   まず、鉄鋼スラグとは、鉄鋼製品の製造工程で副産物として生まれるもの であり(丙1−1及び丙1−2)、鉄鋼製品の品種によっては、人体に有害な影響を与える重金属類を含有する場合もある。
   一方で、鉄鋼スラグには水硬性があり、大きな支持力(日常用語でいえば

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重さに耐える力)が期待できることから、有効利用できる素材として、日本のみならず世界各国において、後述する道路用路盤材のほか、様々な工業製品の原料として利用されているのである(丙2−1及び丙2−2)。

 2 道路用鉄鋼スラグについて
   鉄鋼スラグに対し、破砕、整粒、エージングといった工程を経て製造されるリサイクル製品として、道路用鉄鋼スラグがあり、敷砂利や路盤材として世界中で 広く利用されている(丙3−1及び丙3−2)。
   路盤材とは、舗装道路において、舗装の表面(表層・基層)と路床(地盤 面)との間の路盤に敷き詰める部分の素材をいい、道路用鉄鋼スラグの他、天然砕石等の路盤材料が素材として用いられる。一般的なアスファルトの舗装道路工事においては、整地した路床の上に路盤材を敷き詰め、均ーに敷きならし固めたうえで、基層工事としてアスファルト混合物を上から敷きならし、最後に 表層工事として 、より密度の高 いアスファルト混合物を敷きならすという工程で施工される(丙4−1及び丙4−2)。つまり、路盤材とは、アスファルト舗装の構成層(構成要素)である。
   路盤材として用いられる道路用鉄鋼スラグには、わが国では昭和54年にはJIS規格(JIS A 5015。以下「本件JIS規格」という。)が設けられるなど路盤素材として、長期かつ広く一般的に道路舗装工事において使用されてきた。

 3 本件JIS規格の改訂
   平成25年に、本件JIS規格が改訂され、新たに環境安全品質基準(以下「新環境基準」という。)が加わった(以下当該改訂を「新改訂」という。)。新環境基準は、カドミウム、鉛、六価クロム、ひ素、水銀、セレン、ふっ素及びほう素の溶出量(真水に溶け出す量のこと。含有量ではない。)等が、一

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定の値以下でなければならないというものであった。
   この点、新改訂前に施工された道路用鉄鋼スラグの中には、新環境基準を充足していないものがあることになった。そのため、路盤材等としてすでに敷設されている道路用鉄鋼スラグが、新改訂後の本件JIS規格を充足していない可能性や、それゆえに人体に与える影響が懸念されるようになり、補助参加人の製造・販売してきた道路用鉄鋼スラグについても同じ懸念があっ た。補助参加人としては、製品販売後の事後的な状況の変化とはいえ、後記4のとおり、一定の道義的・社会的責任を有するという考えの下、これらの問題に真摯に対応してきた。
   なお、群馬県知事は、平成27年9月に、補助参加人の 渋川工場から製鋼工程の副産物として排出された鉄鋼スラグについて、廃棄物と認定されるとして、補助参加人が子会社に対してリサイクル工程を製造委託していたことを廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)違反(無許可業者に対する処理委託)で刑事告発し 、群 馬県岩の捜査がなされ送検された。しかし、前橋地方検察庁検察官は、平成28年12月22日、そもそも当該鉄鋼スラグは廃棄物にあたると認定できないとして、不起訴処分とし(丙5−1)、群馬県知事は、検察審査会への申し立てもしなかった(丙5−2)。当該鉄鋼スラグが廃棄物に該当しないと判断することは当然であると解される。なぜならば、鉄鋼スラグは道路用鉄鋼スラグ(鉄鋼スラグを使用し た製品)の原料であり、この原料を加工して製品に製造する事業は廃棄物の処理に該当せず、製造業に該当するからである。
   なお、群馬県はリサイクルされた後の製品である道路用鉄鋼スラグも廃棄物であると認定していない。その背景には、廃棄物該当性は後述のとおり総合判断説によって決定されるため、リサイクル製品である道路用鉄鋼スラグを廃棄物と認定することは到底無理であるとの判断があったものと推測される。

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 4 本件訴訟について
   本件訴訟は、新改訂前に製造された道路用鉄鋼スラグが、新改訂後に問題となった事案である。本件訴訟の事案においては、補助参加人が、自らが製 造した道路用鉄鋼スラグを補助参加人の子会社である大同エコメット株式会社(以下「大同エコメット」という。)に譲渡し、その後の流通経路は不明であるが、最終的には、平成19年に、当該道路用鉄鋼スラグを含む砕石は、渋川市市道1−4265号線( 以下「本件市道」という。丙6)において敷砂利として使用されたと同市から指摘を受けたものである。本件訴訟は、かかる道路用鉄鋼スラグ(以下「本件道路用鉄鋼スラグ」という。)を含む砕石が本件市道の敷砂利として用いられていることが、新改訂後である平成26年に問題とされたものである。なお、補助参加人は、大同エコメットから渋川市までの譲渡経緯を承知していない。大同エコメットが販売したのはその他の砕石を含まない道路用鉄鋼スラグであったので、その後他者によって他の砕石の補充、混合などの処理が行われ、道路用鉄鋼スラグを含む砕石が本件市道の敷砂利として使用されたものと思われる。
   補助参加人は、道義的・社会的責任の観点から、渋川市との間で、平成27年12月11日に、本件道路用鉄鋼スラグを含む補助参加人が製造した道路用鉄鋼スラグが用いられている道路等への対応について合意し、協定(乙4。以下「本件協定」という 。)を締結した。そして、渋川市が、本件市道について、本件道路用鉄鋼スラグが含まれる砕石から、新環境基準を超えるふっ素が含有されているのが判明したことを理由に、これらの物質の溶出を防ぐため表面被覆工事(以下「本件工事」という。)をすることを決定し、本件協定に従って平成29年8月9日に渋川市と補助参加人との間で個別契約書を締結して、補助参加人が本件工事費用を負担することとした(乙5)。
   しかし、被控訴人(原告)は、道路用鉄鋼スラグが本件市道で用いられて

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いることを問題視し、本件道路用鉄鋼スラグは産業廃棄物であるから、これを撤去すべきと考え、本件訴訟を提起し、渋川市が補助参加人に対して、本件道路用鉄鋼スラグを撤去しないことが違法であることの確認を求めたものである。

第3 原判決の判断の概要
   原審で審理された争点は4つである。すなわち、本案前の争点として、@補助参加人に対する本件道路用鉄鋼スラグの撤去請求が財務会計上の行為に該当するか、A本件協定書3条1項の措置が財務会計上の行為に該当するか、本案の争点として、B控訴人の補助参加人に対する本件道路用鉄鋼スラグの撤去請求権の有無及びCかかる撤去請求を行わないことの違法性の有無がある。
   原判決は、争点@については、財務会計上の行為に該当すると判断し、一方、争点Aについては、財務会計上の行為に該当しないとした。
   次に、原判決は、争点B について、所有権に基づく妨害排除請求は、所有権を侵害し、或いは侵害するおそれのある物の所有権を有する者に限らず、現に存する侵害状態を作出した者もその排除の義務を負うとした東京高裁の判決(東京高判平成8年3月18日)を引用し たうえで、補助参加人が排出した鉄鋼スラグにより本件市道の所有権の侵害状態を作出したので、補助参加人は、渋川市の所有権に基づく妨害排除請求権の相手方になると判断した。
   最後に、原判決は、争点Cについて、控訴人は、地方公共団体の財産について、常に良好な状態において管理する義務(地方財政法8条)を負うが、控訴人が補助参加人に対して鉄鋼スラグの撤去請求権を行使しないことを正当化する事実は認められないので、かかる不行使は違法であると判断した。
   原審は、以上の判断の結果、本件市道に存在する補助参加人排出に係る産業廃棄物について撤去請求をしないことが違法であることを確認する判決を

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した。
   しかし、かかる判断は、第4で述べる通り、事実誤認、最高裁判例の判断基準への違背、法解釈の誤り及び法適用の誤りを含むものと言わざるを得ず、極めて不当である。なお、補助参加人は、争点@Aについては、控訴人が令和2年10月6日付控訴理由書において主張するところ以上に主張をするものではないので、以下では主に争点Bについて主張をし、争点Cに関して若干補足をするものである。

第4 原判決が違法であること
 1 争点Bに関する原判決の判断について
 (1)原判決の争点Bに係るロジック
    原判決の争点Bに係るロジックは、(i)本件道路用鉄鋼スラグは産業廃棄物であり、(ii)かかる産業廃棄 物が本件市道上に存在する以上、(iii) 渋川市は、これを排出した補助参加人に対し、本件市道 の所有権に基づく妨害排除請求権を有するというものである。以下、これらのロジックの不当性について述べる。

 (2)(i)(本件道路用鉄鋼スラグが産業廃棄物であるかどうか)について
   ア 原判決の判断内容
     原判決は、本件道路用鉄鋼スラグから土壌汚染対策法における溶出量基 準及び本件JIS規格の新環境基準における含有量基準を超過したふっ素が検出されたことを理由として、本件道路用鉄鋼スラグが商品価値の認め られない産業廃棄物であると認定した。
   イ 原判決の判断が不当であること
   (ア)事実関係に誤解があること
      原判決は、「大同特殊鋼の排出した本件スラグが本件市道上に存在し」

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(原判決18頁)と述べ、あ たかも産業廃棄物が路上放置されているかのように表現しているが、本件市道に存在しているのは、補助参加人が平成19年当時に製造した本件道路 用鉄 鋼スラグという工業製品が敷砂利として使用された上でアスファルト舗装された道路である。
   補助参加人は本件道路用鉄鋼スラグを製品として販売していたに過ぎず、渋川市が自らの判断で本件道路用鉄鋼スラグを含む砕石を本件市道の敷砂利として使用したものであり、補助参加人はかかる使用に何ら関与していない。さらに、平成 30年3月30日には、渋川市が 本件市道にアスファルト舗装工事(基層工事及び表層工事)を施したことで、物理的にも舗装道路の一部となっている(丙7)。
   原判決は、このような事実関係を認識せずに判断をしたものと考えられ、事実関係に誤解があるとしか思われない。
   (イ)「産業廃棄物」該当性について最高裁判所の判断基準に違背した判断がされたこと
      (ア)で述べた通り、本件市道に路盤材として使用されているのは道路用鉄鋼スラグであり、原審が判断するべきは「道路用鉄鋼スラグが産業廃棄物か否か」であるところ、原判決の判断は判例に従った判断をしていない。
      すなわち、最高裁判所第二小法廷平成11年3月10日決定(刑集53巻3号339頁。以下、「最決平成11年」という。)は、「産業廃棄物」(廃掃法2条4項)にあたる 「不要物」(廃掃法 施行令(平成5年政令第385号による改正前のもの)2条4号)とは、「自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になったものをいい、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無、占有者の意思を総合的に勘案して決するのが相当である。」と判示し、産業廃棄物に該当するか否かについ

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て、いわゆる総合判断説を採用した(丙8)。つまり、最決平成11年は、産業廃棄物であるか否かは総合的に判断すべきと判示しているのである。
      最決平成11年が採用する総合判断説とは、複数の客観的事実及び主観的要素を総合的に判断するものであり、たとえ同一のもの(当該判決の対象物は「おから」)であっても、具体的な排出状況、利用状況及び当事者の意思等を総合判断し、廃棄物に該当するか否かを具体的に判断するというものである。すなわち客観説を否定するものである。
      上記事件は、豆腐製造業者から排出される「おから」の廃棄物該当性 が問われた事件である。
      上記事件の高裁判決(広島高裁岡山支部平成8年12月16日判決)は、廃棄物該当性の判断基準について「産業廃棄物としての不要物というのは、同法が廃棄物の排出を規制し、その適正な処理等を目的とするものであることからすると、排出段階の物を捉えていうものであって、事業活動によって排出された物で、事業者が不要として処分する物をいうものと解すべきであり、その物の性状、排出の状況、取扱形態及び取引的価値の有無等から排出業者が社会的に有用物として取り扱わず、有償で売却できる有価物ではないとして、対価を受けないで処分する物をいうと解するのが相当である。」と判断していた。上記は、客観的性状及び対価性を菫視しており、いわゆる客観説に該当する。
      最高裁は、廃棄物該当性の結論については上記高裁判決を正当であると認めたが、判断基準については誤りがあるとして、職権で、上記のように判断し た(甲70の1)。
      高裁の判断と最高裁の判断の違いは、まず「自ら利用」しているものは廃棄物に該当しない点を明確にしている点、有償売却を具体的な要素にせず取引価値を里視している点、事業者の意思等を重視している点で

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ある。最高裁がこのように、明確に客観説を否定した根拠は、全ての物には一般的に利用価値があり、利用者が利用する意思をもって自らの責任において有効活用しているものは、廃棄物に該当せず、廃棄物処理法を適用することは不適切であることを明確にしたものである。これは常識から考えて当然である。他人からみれば価値がないものであっても、 大切に利用されているものを廃棄物として認定することは、資源の有効利用の観点及び国民の財産権の保障という観点から妥当ではない。したがって、廃棄物処理法の解釈として客観説は取り得ないのである。
      原判決は、産業廃棄物が廃掃法上の概念であることを前提にしつつも(原判決2頁)、本件道路用鉄鋼スラグが敷設された時点における品質基準、これ を前提とした当時の社会通念、渋川市は平成19年の施工後10年以上安全に敷砂利として使用していたこと、今後も渋川市が使用する意思を有していること等の客観的・主観的要素を無視している点で、最高裁の判断基準に違反している。
      後述のとおり新環境基準等への超過の有無のみを理由に安易に廃棄物 性を肯定したものであり、最決平成11年が挙げる各要素を仔細に考慮し、総合的に判断した形跡はない。したがって、判例違反及び審理不尽の違法があることは明らかである。
      なお、第2で述べた通り、道路用鉄鋼スラグは路盤材として広く用いられていることや、補助参加人は現在も自社の知多工場(愛知県東海市) において道路用鉄鋼スラグを有用物である商品として取り扱っていること、また、平成29年8月9日に渋川市と補助参加人との間で締結した個別契約書(乙5)においても、「鉄鋼スラグ製品」という表現が使用されていることからすれば、最決平成11年の示した総合判断説によれば、本件道路用鉄鋼スラグが産業廃棄物でないと判断すべきことは明らかである。

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   (ウ)土壌汚染基準の超過を「産業廃棄物」に該当する根拠にしていること 原判決は、本件道路用鉄鋼スラグから、本件JIS規格とはまた別の、土壌汚染対策法におけるふっ素の溶出量基準(以下、「土壌汚染基準」 という。)を超過するふっ素が検出されたことを理由に、本件道路用鉄鋼スラグを産業廃棄物に該当するとする(原判決18頁)。
      しかし、土壌汚染対策法における環境基準である溶出量基準とは、汚染された土壌から特定の物質が地下水に溶出し、その地下水を飲用することによる健康リスクに関し、70年間、1日2リットルの地下水を飲用した場合であっても健康に対する影響がない濃度として設定されたものであり、自然界にも元々存在するふっ素についても同様の基準を定めている(丙9・5頁)。
      このように、そもそも、土壌汚染基準とは土壌が汚染されているかどうかという基準であって、製品そのものに適用される基準ではない。
      環境省中央環境審議会は、「土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等 について (答申)平成12年12月26日」(丙10)の8頁において、士壌環境基準は再利用物へ適用されないことを以下のとおり、明確に記載している。
      「イ 再利用物への適用再利用物については、
      (I)セメントや石膏ボード等の原材料として利用され構造物の一部となっている場合には、これらに適用しない。
      (II)道路用等の路盤材や土木用地盤改良材等として利用される場合には、再利用物自体は周辺の土壌と区別できることから適用しない。
      (III)肥料のように土壌に混ぜ合わせて使用する場合には、肥料を混 合させた土壌に対しては適用する。」

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      これは、製品は土壌ではないため、当然の結論である。土壌環境基準 は、毎日2リットルの地下水を70年飲用した場合に、健康影響が発生するリスクを考慮して定められている。セメントや路盤材は、土壌のように中に水が浸透することはなく、その表層に地下水が接したとしても 地下水の接する表面積や滞留時間が短いため、同様の健康影響が発生する可能性はほとんどない。また、セメント、路盤材、肥料等の機能は、土壌とは異なり、同一の品質を求める根拠はない。
      本件JIS規格も「環境」安全品質基準という用語を用いているが、本件JIS規格自体は、製品に適用される基準であり、製品が環境に対して及ぼす影響として満たすべき基準を設けているものであるから、土壌汚染対策法に係る「環境」基準とは本質的に異なるものである。
      それにもかかわらず、原判決は、製品に対し、全く別の適用基準であ る土壌汚染基準を突如適用して見せ、上記判例(最決平成11年)の各検討要素の判断を省略し、直ちに本件道路用鉄鋼スラグが産業廃棄物であると判断したものであり、原判決の判断は明らかに不当である。
   (エ)新環境基準の超過を「産業廃棄物」に該当する根拠としていること
      原判決は、本件道路用鉄鋼スラグから、本件JIS規格の新環境基準を超過するふっ素が検出されたことを理由に、本件道路用鉄鋼スラグを産業廃棄物に該当するとする( 原判決18頁)。
      しかし、第2で述べたとおり、本件JIS規格において新環境基準が盛り込まれたのは平成25年3月21日のことである(丙11)。つまり、本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上で敷砂利として使用された平成19年当時、本件JIS規格において新環境基準は 存在しなかった。
      この点、廃掃法上、事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を 自らの責任において 適正に処理しなければならないとされていること( 同法3条1項)、処理した後の時点の基準で廃棄物性が判断されるの

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は明らかに不当であること、最決平成11年が判示する考慮要素(その物の性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無、占有者の意思)を踏まえれば、廃棄物であるか否かは、その処理時に判断されることは明らかである。そして、本件道路用鉄鋼スラグが出荷された当時、新環境基準は存在しなかったものであるから、新環境基準の超過が本件道路用鉄鋼スラグの廃棄物性に結びつかないことは明らかである。
      加えて言えば、そもそも、JIS(日本産業規格)は任意の国家規格であり、法的拘束力もなく、JISを採用するか否かは事業者が自ら決定すべきものであって、事業者は、JISに適合する製品を市場に流通させるべき法的義務を負うものではないことから(丙12)、時期の問題を措くとしても、本件 JIS規格における新環境基準の超過は、本件道路用鉄鋼スラグの廃棄物性に直ちに結びつく根拠たり得ない。
      以上のように、原判決が、新環境基準の超過を根拠に本件道路用鉄鋼スラグを産業廃棄物と認定したのは明らかに不当である。
   ウ 小括
     以上で述べた通り、原判決が、本件道路用鉄鋼スラグが産業廃棄物に該当するとした判断は、最高裁判例(最決平成11年)を踏まえたものではなく、かつ、不当である。原判決の理屈によれば、現在、日本中に存在している道路工事に用いられた道路用鉄鋼スラグは、新改訂後の本件JIS規格における新環境基準を満たさない場合は、遡ってすべて産業廃棄物であるとの結論となるが、このような判断は明らかに不当である。

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 (3)(ii)(本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上に存在するかどうか)について
    原判決は、本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上に存在するとする。その根拠として、本件道路用鉄鋼スラグは、@自然物ではないこと、A産業廃棄物に該当すること及びB本件市道の土壌部分と区別が可能であることから、本件市道の土壌に付合していないことを挙げる(原判決17頁及び18頁)。しかし、かかる判断は、まず、前提事実を誤解したものである。すなわち、Bについて、原判決は、本件道路用鉄鋼スラグを含む砕石が、本件市道の土壌の上に敷砂利として設置されたことを根拠に、本件道路用鉄銅スラグが本件市道の土壌部分と区別が可能であるとする(原判決18頁・第3の3(2)ア(イ)は 、(1)イ(ア)を引用している。)。しかし、これは原判決自身に明記されているとおり、平成19年以降・平成30年の本件工事実施までの状態についての記載であるところ、現在本件市道は、本件工事の実施により、アスファルト舗装道路となっており、本件道路用鉄鋼スラグは視認すらできない。 そして、第2の2で触れたアスファ ルト舗装道路の工事過程も踏まえると、かかる工事がなされた後は、本件道路用鉄鋼スラグはアスファル卜舗装道路となった本件市道と 一体化しており、物理的な意味でも、法的な意味でも独立した動産として存在しない。そのため、原審は、本件市道のか かる現状を前提に判断をしておらず不当である。
    また、一般に付合とは、分離復旧が事実上不可能ないし社会経済上著しく不合理な場合、具体的には、分離が過分の費用を要するか、毀損をもたらす場合を言うところ(丙13)、本件工事によってアスファ ルト舗装道路における路盤材となった本件道路用鉄鋼スラグは、表面から路盤まで一体化しているため重機により各層を区別して掘削することができず、本件市道からの分離はできないものと考えられるが、仮に本件市道から分離をすることができるとしても、そのためには大掛かりな工事が必要であって、分離するのに 過分な費用または毀損をもたらすものであるから、本件市道に付合していないとは考えられない(丙14・41頁)。
    原判決は、付合しない理由として、本件道路用鉄鋼スラグが自然物でないことや、産業廃棄物に該当することを挙げる。しかし、自然物でないものが付合しないというのは理解できない。たとえばアスファルト舗装道路のアス

<P15>
ファルトは自然物ではないが、これが自然物でないから付合しないというのは不合理である。また、本件道路用鉄鋼スラグが産業廃棄物に該当しないのは既に述べた通りであるが、産業廃棄物かどうかは、上に述べた付合の要件とは関係ないと思われる。以上から、これらが付合を否定する理由になるとは考えられず、明らかに不当な判断である。

 (4)(iii)(渋川市が補助参加人に対し妨害排除請求権を有するかどうか)について
   ア 原判決の判断
     原判決は、本件市道上に本件道路用鉄鋼スラグが存在することをもって、 本件市道の所有権が侵害されていると認定し、補助参加人が妨害排除請求の相手方になるとして、補助参加人に対する妨害排除請求権を認めた。
   イ 原判決の判断が不当であること
   (ア)所有権に基づく妨害排除請求権の要件
      一般に所有権に基づく妨害排除請求権が認められるには、@請求権の主体は所有者であって、その所有権の内容の実現が占有の喪失以外の事情によって妨げられているものであること及びA請求権の相手方は現に妨害を生じさせている事実をその支配内に収めているものであることが権利発生要件事実であり、B所有者と妨害者との間に妨害を正当化するような法律関係がないこと(つまり、妨害に客観的違法性がないこと)が権利発生障害事由と考えられている(丙15−1及び丙15−2)。
      この点、本件訴訟の事案では、以下に述べる通り、@及びAは肯定されず、また、Bが肯定されると考えられるところ、原判決は、かような判断を全く行うことなく、不当な判断をしたものである。
 (イ)要件@(所有権侵害)が認められないこと
    原判決は、本件市道上に本件道路用鉄鋼スラグが存在することをもっ

<P16>
て、本件市道の所有権が侵害されていると認定する。そもそも、本件市道上に本件道路用鉄鋼スラグが独立した動産として存在するとは言えないことは(3)で述べた通りであるが、その点を措くとしても、原判決が、本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上に存在すること(事実としては、本件市道の一部たる路盤材となっていること)によって、いかなる意味において本件市道の所有権の内容の実現が妨げられているとしたのかは、不明である。
    すなわち、本件市道は、通行の用に供されるものであるが、本件道路用鉄鋼スラグは、いかなる意味においてもこれを妨げていないし、むしろ路盤材として通行の便に資している。
    また、原判決の趣旨が、仮に本件道路用鉄鋼スラグが存在することで、本件市道の利用者等の健康に悪影響を及ぼしたり、周辺環境を汚染したりする危険性があるという事実認定に基づき、所有権の内容の実現が妨げられているということであるとしても、それは事実誤認である。すなわち、本件市道はアスファルト舗装により被覆措置が講ぜられており、本件道路用鉄鋼スラグに含まれるふっ素を理由として具体的な健康被害等がもたらされる蓋然性は極めて低いものであり、かつ、本件道路用鉄鋼スラグが地下水等の環境に影響を与えないように地下水等は常時監視されており、仮に地下水に溶け出すなどの問題が発生した場合には、控訴人と補助参加人との間で合意した費用負担の下、控訴人は直ちに対策を購じることが可能である(乙4)。
    加えて、原判決は、過去の裁判例との関係でも誤った判断をしている。すなわち、東京地裁平成24年1月16日判決(以下「東京地判平成24年」という。)は、昭和43年10月から昭和45年9月頃までの間に、焼却灰や耐久消費財などの廃棄物を埋め立てたことが原因で、土地が汚染されていたとして、物権的妨害排除請求権に基づく費用償還請求

<P17>
が争われた事案において、「本件廃棄物(特定有害物質を含む。)は、本件土地に埋め立てられることによって、同土地の構成部分となっているものであるから、これについて、原告による妨害状態が継続して存在していると解することはできない。」と判示し、廃棄物であっても、土地に埋め立てられることによって同土地の構成部分になっており、妨害状態が存在していると解することはできないことを明らかにしている(以上、丙16)。この点、本件訴訟の事案においても、本件道路用鉄鋼スラグは本件市道のアスファルト舗装のドに、本件市道の構成部分となっていることから、妨害状態が存在しないことは明らかである。
 (ウ)要件A(妨害排除請求権の相手方)が認められないこと
    妨害排除請求権の相手方は現に妨害を生じさせている事実をその支配内に収めている者であることを要する。
    この点につき、原判決は、東京高裁平成8年3月18日判決(以下「東京高判平成8年」という。)が、所有権に基づく妨害排除請求権の相手方は、その所有権を侵害する物の所有権を有する者に限られず、現に存する侵害状態を「作出」した者もその排除の義務を負うとした判示を引用したうえで、補助参加人が侵害状態を「作出」した者であると認定し、補助参加人が妨害排除請求権の相手方となるとした(原判決18頁)。
    しかし、東京高判平成8年は、複数の産業廃棄物業者が長年にわたり自ら山林に投棄を続けていた事案である。確かに、このような事案であれば、産業廃棄物の山林への投棄行為が侵害状態の「作出」と評価することは容易であろう。一方、本件訴訟の事案では、補助参加人は 、適法な商行為として、商品たる本件道路用鉄鋼スラグを製造・販売したのみであり、その後の本件道路用鉄鋼スラグの本件市道における使用に関与しておらず、本件市道整備の一環として補助参加人の本件道路 用鉄鋼ス

<P18>
ラグを使用したのは、渋川市の判断によるものであるところ、補助参加人のかかる製造・販売行為をもって侵害状態の「作出」と評価できるとはおよそ考えられない。また、そのような事実関係を前提にすると、仮に本件道路用鉄鋼スラグが何らかの意味で妨害を生じさせているとしても、補助参加人が、本件市道の路盤材としてアスファルト舗装の下で舗装と一体化している本件道路用鉄鋼スラグを支配内に収めているとは考えられない。言い換えれば、補助参加人は、本件道路用鉄鋼スラグに対して何らの権利も事実上の支配も有しておらず、これを排除せよと求められても法的にも事実上もそのようなことは不可能である。
    この点、原判決の判断によれば、補助参加人が本件道路用鉄鋼スラグを製造・販売し、渋川市が平成19年に本件道路用鉄鋼スラグを含む砕石を敷砂利として使用した後、平成25年に本件JIS規格に新環境基準が追加された瞬間から又はその瞬間に敷砂利として使用された時点に遡って、補助参加人が侵害状態を作出したことになると思われる。しかし、仮にかかる行為が侵害状態の作出と評価できるのであれば、あらゆる商品の売買契約において、事後的にJIS規格を含む強行法規性のない基準を満たさなくなると、製造者はユーザーから妨害排除請求権を行使されることになりかねない。かかる結論は明らかに不当であるから、このことからも原判決が不当であることは容易に理解される。
    以上を要するに、原判決は、東京高判平成8年と、本件訴訟の事案がおよそ異なることを看過し、補助参加人が侵害状態を「作出」した者で あると安易に判断しているが、かかる判断は不当である。
    なお、補助参加人は、補助参加人が理論的に妨害排除請求の相手方となり得ないことについて、現在、民法学者が作成した意見書を書証として提出を準備している。
 (エ)要件B(客観的違法性)が認められないこと

<P19>
    妨害排除請求権は、所有者と妨害者との間に妨害を正当化するような法律関係がある場合、その効力が阻止され、所有者は妨害を受忍しなければならないとされている。
    この点、渋川市と補助参加人との間では、平成27年12月11日に本件協定書が締結され(乙4)、その後、両者の間で本件市道上に存在する本件道路用鉄鋼スラグについては被覆措置をした上で撤去しないことを合意している(乙5)。すなわち、これらの合意により、 渋川市と補助参加人との間で、本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上に存在するこ との問題は既に解決済みである。
    控訴人が補助参加人に対して妨害排除請求権を有するものではないことはこれまで述べたとおりであるが、仮にこれが肯定されるとしても、上記のとおり、本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上に存在することを正当化する法律関係があるといえるから、渋川市が補助参加人に対して本件道路用鉄鋼スラグの撤去を求めることができない。原判決は、かかる法律関係を看過したものであり、不当である。

 (5)小括
    以上のとおり、争点Bに関する原判決の判断は明らかに不当である。

 2 争点Cに関する原判決の判断について
 (1)原判決の判断内容
    原判決は、地方公共団体の執行機関は、当該地方公共団体の事務を、自ら の判断と責任において、誠実に管理し及び執行する義務を負担し(地方自治法138条の2)、地方公共団体の財産については、常に良好の状態においてこれを管理する義務(地方財政法8条)を負っているところ、控訴人が補助参加人に対して本件道路用鉄鋼スラグの撤去請求権を行使しないことを正

<P20>
当化する事実は認められないとして、控訴人が補助参加人に対し、本件道路用鉄鋼スラグの撤去請求権を行使していないことは違法であるとした。また、控訴人が、本件工事は土壌汚染対策法等の関連法令及び本件対応方針からすると適正である以上、補助参加人に対して本件道路用鉄鋼スラグの撤去請求をすることができない旨、及び本件工事によってふっ素の健康被害を防ぐことができるため、廃棄物処理法19条の5第1項が定める生活環境の保全上支障及びそのおそれがないという主張に対して、かかる公法上の適合性をもって、直ちに、既に発生している本件市道の所有権に基づく妨害排除請求権としての本件道路用鉄鋼スラグの撤去請求権を行使しないことが正当化されないとした(原判決19及び20頁)。

 (2)原判決の不当性
    原判決の不当性は、控訴人が令和2年10月6日付控訴理由書の第2で詳細に述べるところであるので、補助参加人は、詳細は主張しない。補助参加人としても、控訴人同様、公法上の適合性を担保し、ふっ素の健康被害を防ぐことができる被覆工事をしたにもかかわ らず、それが私法上の妨害排除権を行使しない正当な理由にならないというのは不当と考える。ただし、本件で問題となっているふっ素の健康被害に関して以下補足する。
    まず、ふっ素は自然界に通常存在する自然由来の物質であり、市販のペットボトル飲料や歯磨き粉にも含まれている物質であるうえに、市販のペットボトル飲料においては、新環境基準のふっ 素の溶出量基準(0.8mg/リットル)を超えて いるものもある(丙17)。
    そして、本件JIS規格の新環境基準は、溶出量基準と含有量基準を含むところ、まず、ふっ素の溶出量基準(0.8mg/リットル)は、道路用路盤材に含有されるふっ素が地下水等を汚染し、飲料水として長期的に摂取されることを念頭に置いた基準であり、これを超える0.9〜1.2mg/リ

<P21>
ットルの範囲の飲料水中のふっ素濃度は、軽度の斑状歯を12%から46%のヒトに発生させるとの報告があることを根拠としている(丙18)。しかし、ここでいう斑状歯のうち軽度のものは専門家でないと検知できないようなものである。したがって、溶出量基準である0.8mg/リットルを超過したふっ素を摂取したとしても、直ちに人体に悪影響を及ぼすようなものではない。実際に、WHOの飲料水ガイドラインは1.5mg/リットルとされており、アメリカ環境保護庁(EPA)の暫定飲料水基準では2mg/リットルとさ れている(丙18)。
    また、含有量基準は、ふっ素の直接経口による摂取(主に幼児が直接口に することを想定) に留意し、斑状歯発生予防の観点から4000mg/kgという数値が設定されている。また、この濃度レベルであれば、年間1、2回程度見られるといわれる幼児の非意図的な土壌の多量の摂食に伴う急性影響の観点からも問題ないとされている(丙19・24頁)。つまり、ふっ 素の含有量基準は、ふっ素を含む道路用路盤材からふっ素を直接摂取する場合 に提供される基準であり、4000mg/kgという数値も、上記(1)と同様、軽度の斑状歯を予防するという観点から算出されている。
    以上を要するに、新環境基準のうち溶出量基準とは、道路用路盤材に含有されるふっ素が地下水を経て人体に摂取することを念頭に置いた基準で、含有量基準とは、直接の経口摂取を念頭に置いた基準である。本件では、本件道路用鉄鋼スラグが新環境基準を超えていても、溶出量基準については、本件市道から250メートル以内に井戸を利用している住民がいないことから、実質的に問題にならないし、超えたとしても直ちに人体に悪影響を及ぼさすものではない。含有量基準については、本件工事によってアスファルトで被覆され、直接経口により摂取できない状態にすることで、経口摂取を防ぐことができるので、同じく実質的に問題にならない(以上については原判決16頁も参照)。

<P22>
第5 結語
   以上の補助参加人の主張をまとめると以下のとおりである。
   @ 渋川市が本件市道に敷砂利として敷設していた本件道路用鉄鋼スラグは産業廃棄物ではない。
   A 本件道路用鉄鋼スラグはそもそも物理的にも法的にも本件市道上に独立した動産として存在しない。
   B 仮に何らかの意味で本件道路用鉄鋼スラグが本件市道上に存在するとしても、それによって本件市道の所有権の実現には何ら欠けるところはないことから、そもそも渋川市に対する所有権侵害が存在しない。
   C 仮に本件市道の所有権侵害が存在するとしても、渋川市は市道腋備の一環として自ら本件道路用鉄鋼スラグを本件市道に使用したものであり、補助参加人は、単に本件道路用鉄鋼スラグを製造して出荷したに過ぎず本件道路用鉄鋼スラグが本件市道に使用されたことに一切関与していないし、既にいかなる意味においても本件道路用鉄鋼スラグに対して支配を有していないから、補助参加人は本件道路用鉄鋼スラグに係る妨害排除請求の相手方となり得ない。
   D 仮に補助参加人が妨害排除請求の相手方になりうるとしても、渋川市と補助参加人との間では、本件協定書等の合意がされ、本件道路用鉄鋼スラグが本件市道に存在する問題は解決済みであるから、渋川市は補助参加人に対して妨害排除請求はできない。
   原判決の判断は、多くの事実誤認、最高裁判例の判断基準への違背、法解釈の誤り及び法適用の誤りを含む。また、そもそも判断の根拠となる説明が不足しており、理解に苦しむ箇所が多くある。そのため、本件訴訟は、補助参加人が産業廃棄物を本件市道上に投棄したかのような事実誤認に基づきなされたのではないかという印象すら与える。
   しかし、事実としては、補助参加人は、鉄鋼スラグを加工して本件道路用鉄鋼スラグを製造し、市場で流通された後、渋川市がこれを含む砕石を自らの判断で本件市道の敷砂利として使用したというものであって、補助参加人が本件市道上に鉄鋼スラグを排出又は投棄したというような事実は存在しない。原判決は、このような基本的な事実関係を誤認し、道路用鉄鋼スラグをして産業廃棄物と誤解し、法的に認められるとは考えられない妨害排除請求権を肯定し、本件訴訟の結論を大いに誤ったものと言わざるを得ない。
   したがって、原判決には、審理不尽、理由不備の違法があるので、破棄を免れない。
                             以 上
**********

■今回の補助参加人としての大同特殊鋼の準備書面(1)を提出した訴訟代理人の名前を見ると、次の3名の弁護士が関与していることがわかります。いずれも北浜法律事務所の東京事務所に所属しています。北浜法律事務所は1973年4月設立、2020年10月1日現在、所属メンバーは弁護士88名、外国法事務弁護士2名、中国律師1名、弁理士1名、司法書士1名から構成されています。

【木曽裕】
スペシャルカウンセル / 弁護士
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<概要>
「いかに隠すか」よりも「いかに出すか」という目線こそが不祥事を起こした企業の命運を左右する時代です。
そのためには、適切な調査活動によって裏付けのある事実を特定することが大前提ですが、ここを正常化のバイアスによって矮小評価する企業が、企業価値を毀損します。
また、事実を認識しているのに、その影響度を矮小化することで外に出すタイミングを逸し、隠ぺいに次ぐ隠ぺいを繰り返してしまう企業もあります。
日本において理屈だけではない、現場の問題点も踏まえた実務経験に裏付けされている弁護士は、そう多くない中、当事務所はその答えを提示できることでしょう。
<主な案件実績>
・厚生労働省、いわゆる「消えた年金事件」
・検査データ改ざん事件
・食品偽装事件
・大型談合事件
・役員個人不正事件
・企業刑事弁護
・その他、企業研修、講演、執筆多数
<経歴>
1997年10月 司法試験合格
2000年03月 司法修習修了(第52期)
2000年04月 東京地方検察庁検事を拝命
2000年06月 大阪地方検察庁に配置換
2001年04月 同庁堺支部に異動
2003年04月 東京地方検察庁公判部に配置換
2004年04月 千葉地方検察庁刑事部(風紀係)に配置換
       横浜地方検察庁特別刑事部検事兼任
2005年04月 奈良地方検察庁(指導、風紀及び暴力係)に配置換
2007年04月 京都地方検察庁特別刑事部(財政経済・公安労働係)に配置換
       大阪地方検察庁特別捜査部検事兼任
2008年01月 北浜法律事務所・外国法共同事業に入所
2009年01月 パートナー弁護士に就任
2009年07月 公認不正検査士資格取得
2012年01月 弁護士法人北浜法律事務所東京事務所に移籍(第一東京弁護士会)
2016年06月 パートナー辞任、スペシャルカウンセル就任
<公職・役職など>
2008年05月 立命館大学(朱雀キャンパス)協力弁護士
2008年05月 国土交通省近畿地方整備局発注工事にかかる不正事案再発防止検討委員会委員
2008年10月 厚生労働省標準報酬遡及訂正事案等に関する調査委員会調査チーム調査員
2010年03月 総務省有線音楽放送事業の正常化に関する検討チーム委員
2011年08月 奈良市ガバナンス監視委員会委員長
2015年06月 株式会社王将フードサービス監査役(独立社外監査役)
2016年06月 株式会社王将フードサービス常務取締役執行役員
       総務本部長兼総務部長 海外事業部長 デリバリー事業担当役員
2020年08月 滋賀県「文化財保護不適切事案検証会議」会長
・一般社団法人日本公認不正検査士協会 理事
・特定非営利活動法人広報駆け込み寺 正会員
・特定非営利活動法人デジタル・フォレンジック研究会 会員

【池野幸佑】
アソシエイト / 弁護士
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<概要>
中国業務を得意としております。3年間の中国(上海市)駐在経験があり、中国企業との取引契約、紛争解決、ジョイントベンチャーの設立及び解消、中国からの撤退に関するアドバイス等に従事して参りました。日本国内業務についても、訴訟・紛争解決、コーポレート関連業務、M&A等、幅広く行っております。日本国内のコンサルティングファームにおけるM&Aアドバイザリー業務経験、中国大手法律事務所での執務経験も生かし、クライアントの皆様に最適なリーガルサービスを提供できるよう、日々自己研鑽に励んでおります。
<主な案件実績>
・国内中堅企業の中国南京市の企業に対する債権回収案件
・国内大手企業の中国上海市の政府系企業との合弁解消案件
・国内中堅企業の中国天津における従業員整理案件
<経歴>
2004年03月 静岡県立富士高等学校卒業
2008年03月 横浜国立大学経済学部卒業
2010年03月 中央大学法科大学院修了
2011年12月 司法修習修了(新第64期)、弁護士登録(東京弁護士会)
2012年01月 民間企業(コンサルティング)にてM&Aアドバイザリー業務に従事
2014年05月 中国上海市の法律事務所勤務
2018年03月 北浜法律事務所入所

【日野真太郎】
アソシエイト / 弁護士
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<概要>
取扱業務の種類は、紛争解決、投資・M&A、国際商取引全般、損害保険であり、特に企業間紛争解決を得意としています。また、業務の過半は、国際法務に関わるものであり、特に中国帰国子女であることを活かし、中華圏(中国大陸・香港・台湾)に関わるものを多く扱っています。顧客は、日本・中華圏の上場企業からベンチャー企業まで幅広く、業種は製造業、損害保険業、IT、投資業、商社、小売を中心とします。業務に臨んでは、顧客の企業文化や御要望を踏まえ、最善の経営判断をしていただくための解決策の提案ができるよう最大限努めております。
<主な案件実績>
・製造物責任・損害保険・情報漏洩・営業秘密侵害等の企業が関わる交渉・訴訟の代理人
・日中両国に跨る紛争に関して日中両国において提起された訴訟に係る日本の訴訟における代理人
・工場機械の売買契約に係る紛争に関する国際仲裁における申立代理人
・日本企業のグローバル事業再編に係るリーガルカウンセル
・日本企業の中華圏への投資・企業買収・技術提携・撤退等の日本側リーガルカウンセル
・中華圏企業の日本への投資・企業買収・技術提携・撤退等の中華圏側リーガルカウンセル
・日本企業の中華圏における子会社のリストラクチャリングに関するリーガルカウンセル
・日本企業による原産地偽装問題に対する外部委員会による調査における、中国現地の生産拠点における文書調査・ヒアリングの実施
・日本企業の中国におけるリコール問題に関するリーガルカウンセル
・ベンチャー企業による資金調達に関する企業側リーガルカウンセル
<経歴>
1985年09月 福岡県田川郡生まれ
2004年03月 青雲高等学校卒業
2009年03月 東京大学法学部卒業
2011年03月 東京大学法科大学院修了
2012年12月 司法研修所修了(新第65期)、弁護士登録(第一東京弁護士会)、北浜法律事務所入所
2015年06月 中華人民共和国遼寧省大連市の弁護士事務所にて研修
<公職・役職など>
・第一東京弁護士会総合法律研究所会社法部会所属

■大同特殊鋼が訴訟参加のために起用した上記弁護士らは、やはり1名がヤメ検弁護士で、あとの2名は中国での弁護士業務経験を持つ弁護士登録後10年未満の若手弁護士のようです。

 この補助参加というのは、「他人間の訴訟の結果について利害関係のある第三者が当事者の一方を補助するために訴訟に自発的に参加すること」で、民法42条の「訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる」に基きます。

 補助参加の要件は、@訴訟係属中であること、A他人間の訴訟であること、B訴訟の結果について利害関係を有する第三者となっています。

 補助参加人ができる訴訟行為は、民訴法45条に定める「補助参加人は、訴訟について、@攻撃又は防御の方法の提出、A異議の申立て、B上訴の提起、C再審の訴えの提起Dその他一切の訴訟行為をすることができる。ただし、補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないものは、この限りでない」となっており、今回、大同特殊鋼は、一審でまさか敗訴になるとは思わず、敗訴になったため、とりいそぎ補助参加してきたのでしょうか。

 控訴審は霞ヶ関の東京高裁で争われます。クロをシロにすることは、本来、社会正義の実践が原則の弁護士としては、あってはならないことですが、なぜか、報酬のためには、法律を曲解して裁判のあるべき方向を歪めることが、有能な弁護士と言われるのは、一般市民としてどうにも理解できないことです。

 大同が起用したヤメ検弁護士と、横国大と東大卒の弁護士歴10年未満の若手弁護士が、渋川市を押しのけて、果たしてどのような主張を展開するつもりなのでしょうか。弁護士の矜持とはどんなものなのか、併せて注目したいと思いますs。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
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