連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求の住民訴訟で12.23に棄却判決!  政治とカネ

■参院選をめぐる買収事件で1月21日に有罪判決が言い渡された河井案里被告(47)は、失職する可能性が濃厚となりました。控訴せずに刑が確定すると直ちに当選が無効となりますが、このほかにも、地元の広島で、公選法違反(買収)罪に問われた立道浩・公設第2秘書(55)の昨年6月16日の有罪判決(懲役1年6月、執行猶予5年(求刑懲役1年6月))言渡とその後の判決確定に伴い、連座制適用を求める行政訴訟も、広島高検により昨年12月21日に広島地裁に起こされており、検察側が勝訴すれば、自身の判決にかかわらず失職することになります。
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連座制で当選無効になった南波和憲元県議の選挙公営費の返還無用判決を下した前橋地裁。なお撮影は2020年12月16日。

 このように公選法に違反すると当選しても「当選無効」となります。公正な選挙でルール違反をしたのですから、当然のことです。しかし、この当選無効の定義が曖昧です。

■筆者は、当選無効の定義は、当然得票数がゼロと同義であると考えています。なぜなら、ルールを守らずに得票したのですから、その得票は無効であり、したがって当選無効という結果につながるわけです。そうでなければ、ルールを順守した他の候補者に対して不公平だからです。

 しかし、実際はどうなのでしょう。「当選無効」について、自論を確認するために、ちょうどよいケーススタディとなる事件が、昨年4月に県内で投開票が行われた統一地方選挙の県議会選挙で起きました。

■公営選挙費用を使って2019年4月7日投開票の県議選に当選した自民党の南波和憲県議は、その1カ月半後の5月24日に突然自ら辞職しました。その理由が、県議選で夫の当選後、妻が運動員9名に1箱6千円相当の和菓子を配り、報酬として8名に計80万円現金を渡そうとした(受け取った方があとで返還したと主張)というもので、妻は2019年6月21日に群馬県警に書類送検され、前橋地裁が同年9月6日、懲役1年、執行猶予4年(求刑懲役1年)の判決を言い渡し、有罪が確定したため、同年12月18日に、夫の南波和憲に対する連座制適用に基づく群馬県議選への立候補を今後5年禁止する判決が、東京高裁で言い渡されました。

 このため、当会は12月23日、群馬県監査委員に対して、群馬県選挙委員会が南波和憲のために支出した選挙公営費を本人から返還させるよう求める住民監査請求を行ったところ、県監査委員らは2020年2月18日に棄却通知を出しました。そこで、選挙違反で連座制により当選無効が裁判所から宣告されたのですから、公平・公正な選挙の実施のために投入された血税による選挙公営費は回収されて損害を回避するのが妥当だと考えて、同3月19日に前橋地裁に訴状を提出し、3回の口頭弁論を経て、2020年12月16日に判決言渡しが行われる予定でした。

■ところが、ドタキャンで急遽12月16日は、原告の訴訟適格についての嘱託調査を行った事実が弁論調書に不記載だった為、その旨を確認するための第4回口頭弁論に切り替わり、判決が1週間後の12月23日とされ、判決当日を迎えました。

 この事件に関する当会のブログ記事は次のとおりですので、ご参照ください。
○2019年7月24日:妻が公選法違反で起訴!・・・4.7県議選で南波前県議が血税で使った選挙公営費用158万円の落とし前
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2989.html
○2019年8月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・4.7県議選後5月に辞任の南波前県議の妻に求刑1年
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3008.html
○2019年9月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・妻が執行猶予付き有罪判決を受けた南波元県議が一時県議会臨時議長に!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3034.html
○2019年12月24日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議・・・200万円余の選挙公営費の返還を求め住民監査請求!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3095.html
○2020年2月22日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還の住民監査請求を県監査委員が棄却!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3121.html
○2020年3月20日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求のための住民訴訟を提起!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3139.html
○2020年9月21日:連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求の住民訴訟9.30第1回弁論を前に県から答弁書
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3209.html
○2020年12月21日:連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求の住民訴訟の12.16判決がドタキャンで1週間先送り!
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3256.html

■当日は、午前10時10分前に地裁に着き、さっそく1階ロビーに貼ってある開廷表をチェックしたところ、午後1時10分から4件の事件の弁論が予定されていました。

*****開廷表*****
第21号法廷(本館2階)開廷表
令和2年12月23日 水曜日
●開始/終了/予定:10:00/弁論
○事件番号/事件名:令和元年(行ウ)第23号、令和2年(行ウ)第14号/登記抹消請求事件、独立当事者参加申出事件
○当事者:大日方墓地管理組合 外/国 外
○代理人:     −         /栗本博之
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 浅川浩輝
             書記官 橋本勇一
●開始/終了/予定:10:20/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ワ)第465号/損害賠償等請求事件
○当事者:株式会社スタイルプランニング/吉井友哉
○代理人:池末登志博/中村信行
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 谷山暢宏
             書記官 橋本勇一
●開始/終了/予定:10:25/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(ワ)第466号/損害賠償等請求事件
○当事者:株式会社スタイルプランニング/勅使川原厚
○代理人:池末登志博/中村信行
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 谷山暢宏
             書記官 橋本勇一
●開始/終了/予定:10:30/11:00/第1回弁論
○事件番号/事件名:令和2年(レ)第26号/貸金請求控訴事件
○当事者:本郷澄枝 外/高橋敏之
○代理人:   −   /石橋克郎
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 谷山暢宏
             書記官 橋本勇一
●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(行ウ)第3号/選挙公営費不正支払損害賠償請求事件
○当事者:小川賢/群馬県知事 山本一太
○代理人:−  /関夕三郎
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 浅川浩輝
             書記官 橋本勇一

●開始/終了/予定:13:10/弁論(判決言渡)
○事件番号/事件名:令和2年(レ)第20号/損害賠償請求控訴事件
○当事者:佐藤泰山/大日向墓地管理組合
○代理人:  −  /   −
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 浅川浩輝
             書記官 橋本勇一
●開始/終了/予定:13:10/17:00/弁論(本人及び証人尋問)
○事件番号/事件名:平成30年(行ウ)第18号/療養補償給付等不支給処分取消請求事件
○当事者:杉山英司/国
○代理人:池末登志博/島崎伸夫
○担当:民事第1部合議係 裁判長 渡邊和義
             裁判官 杉浦正典
             裁判官 浅川浩輝
             書記官 橋本勇一
             書記官 橋本勇一
**********

■このように午後1時10分から第21号法廷で3件の事件の弁論が行われる予定になっていました。午後1時過ぎにドアのカギが開けられ、3件の関係者がぞろぞろと入っていきました。

 それに先立ち、当会の担当者が午後1時10分くらい前に第21号法廷に着くと、当会の会員の佐藤氏が居ました。上記の開廷表を見ると、まさに本日10時に補助参加した裁判があり、午後1時10分の事件は、土地区画整理事業を巡る墓地の所有権を巡り組合を相手取って係争してきた控訴事件の判決言渡しだと言うことでした。

 とりあえず出頭カードに氏名を書いて待機していると、間もなく他の事件の関係者もやって来ましたが、本件事件の被告群馬県の訴訟代理人や、いつもは公務をさぼって傍聴に来ている群馬県職員の姿はなく、書記官に声を掛けられて、開廷5分前に法廷に入りました。

■定刻になり渡辺裁判長が陪席の杉浦裁判官と浅川裁判官を率いて入廷してきました。そして、本件の事件番号が書記官に読み上げられると、渡辺裁判長が口を開きました。

「主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。」

 いつも聞き慣れた判決文です。そそくさと法廷から傍聴席に異動し、最前列で次の佐藤氏の控訴事件の判決を聞きました。佐藤氏の控訴事件の判決も「主文 1 控訴人の請求をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。」でした。

 そのあと、3件目の事件がすぐに開始されたので、書記官がそのまま法廷に留まっていたことから、しばらく佐藤氏と二人で3件目の傍聴をしていました。会社における女性上司によるパワハラ事件でした。

 通常は男性上司によるパワハラ事件がもっぱらですが、部下が女性上司のパワハラを訴えたことから、最近の世相を表すような裁判で、思わず長居をしてしまいました。このままもう少し傍聴していたかったのですが、佐藤氏に促されて証人尋問の合間を見計らって退室し、3階の地裁民事第1部の書記官室に行き、判決文を受け取りました。

 担当書記官が法廷で執務中でも同僚が、原告、被告用の判決文を用意していて、受領書にサインと押印をすると、すぐに手渡されました。

■受領した判決文は次のとおりです。

*****判決文*****ZIP ⇒ 20201223.zip
<1>
令和2年12月23日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 橋本勇一
令和2年(行ウ)第3号 選挙公営費不正支払損害賠償請求事件
口頭弁論終結日 令和2年12月16日
             判         決
   群馬県安中市野殿980
       原       告    小  川     賢
   前橋市大手町一丁目1番1号
       被       告    群 馬 県 知 事
                    山  本  一  太
       同訴訟代理人弁護士    関     夕 三 郎
       被告指定代理人      笠  木  淳  司
       同            清  水  直  之
       同            千  明  祐  介
       同            中  澤  優  友
             主         文
     1 原告の請求をいずれも棄却する。
     2 訴訟費用は原告の負担とする。
             事 実 及 び 理 由
第1 請求
 1 被告は,南波和憲に対し,207万6293円及びこれに対する平成31年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
 2 被告は,浦部賢徳に対し,207万6293円及びこれに対する平成31年4月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求せよ。
第2 事案の概要
   本件は,群馬県民である原告が,平成31年4月7日に行われた群馬県議会議員選挙(以下「本件選挙」という。)において当選した後,親族の公職選挙

<2>
法(以下「法」という。)違反により連座制の適用を受けた南波和憲(以下「和憲」という。)に対して群馬県選挙管理委員会が選挙公営費合計207万6293円を支給したのは違法である旨を主張して,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,県の執行機関である被告に対し,@和憲に対して不当利得返還請求権に基づき 207万6293円及びこれに対する本件選挙の日である平成31年4月7日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金を,A群馬県選挙管理委員会書記長である浦部賢徳(以下「浦部」という。)に対して不法行為による損害賠償請求権に基づき207万6293円及びこれに対する本件選挙の日である平成31年4月7日から支払済みまで上記同様の割合による遅延損害金をそれぞれ請求するように求めた事案である。
 1 関係法令の定め
  (1) 権限に関する定め
群馬県財務規則(令和元年規則第18号による改正前のもの。乙1)3条1項には,群馬県知事は,群馬県選挙管理委員会書記長に対し, 群馬県選挙管理委員会において処理する事務に係る契約に関すること,歳入の調定に関すること,支出負担行為及び支出命令に関すること,歳計外現金(職員の給与に係る法定控除金を除く。)の管理に関すること,物品の管理及び処分に関すること,寄附物品(負担付のものを除く。)の取得に関すること,並びに債権の管理に関することの権限を委任する旨の定めがある。
  (2) 選挙公営に関する定め
   ア 選挙運動用自動車の使用に関する定め
    (ア) 法141条7項本文は,衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院議員の選挙においては,公職の候補者は,政令で定めるところにより,政令で定める額の範囲内で,同条1項の自動車を無料で使用することができる旨を,同条8項は,都道府県の議会の議員又は長の選挙について,都

<3>
道府県は,市の議会の議員又は長の選挙について,市は,それぞれ,前項の規定に準じて,条例で定めるところにより,公職の候補者の自動車の使用について,無料とすることができる旨をそれぞれ定める。
    (イ) 群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙用自動車の使用等の公営に関する条例(乙2。以下「本件条例」という。)2条は,群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における候補者は,当該候補者に係る供託物が法93条1項(同条2項において準用する場合も含む。)の規定により群馬県に帰属することとならない場合に限り,本件条例6条に定める額の範囲内で選挙運動用自動車を無料で使用することができる旨を定める。
   イ 選挙運動用通常葉書及びビラの使用に関する定め
    (ア) 法142条1項4号は,都道府県の議会の議員の選挙にあっては,候補者一人について,通常葉書8000枚,当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出た二種類以内のビラ1万6000枚のほかは頒布することができない旨を,同条5項は同条1項の通常葉書は無料とする旨を,同条11項は,都道府県の議会の鏃員又は長の選挙について,都道府県は,条例で定めるところにより, 同条1項4号のビラの作成について,無料とすることができる旨をそれぞれ定める。
    (イ) 本件条例11条は,群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における候補者は,当該候補者に係る供託物が法93条1項(同条2項において準用する場合も含む。)の規定により群馬県に帰属することとならない場合に限り,本件条例14条に定める額の範囲内で法142条1項4号のビラを無料で作成することができる旨を定める。
   ウ 選挙運動用ポスターに関する定め
    (ア) 法143条15項は,都道府県の議会の議員及び長の選挙について,都道府県は,条例で定めるところにより,候補者の同条1項5号のポス

<4>
ターの作成について,無料とすることができる旨を定める。
    (イ) 本件条例7条は,群馬県議会諧員及び群馬県知事の選挙における候補者は,当該候補者に係る供託物が法93条1項(同条2項において準用する場合も含む。)の規定により群馬県に帰属することとならない場合に限り,本件条例10条に定める額の範囲内で法143条1項5号のポスターを無料で作成することができる旨を定める。
  (3) 供託物没収に関する定め
    法93条1項本文には,候補者の得票数が,その選挙において,次の各号の区分による数に達しないときは,前条1項の供託物は,都道府県の議会の議員又は長の選挙にあっては当該都道府県に帰属する旨の定めがあり,同項3号は,都道府県又は市の議会の議員の選挙に係る同項本文の得票数について,当該選挙区内の鏃員の定数(選挙区がないときは,議員の定数)をもって有効投票の総数を除して得た数の10分の1とする旨を定める。
    同条2項は,前項の規定について,同項に規定する公職の候補者の届出が取り下げられ,又は公職の候補者が当該候補者たることを辞した場合及び前項に規定する公職の侯補者の届出が法86条9項又は86条の4第9項の規定により却下された場合に,準用する旨を定める。
  (4) 連座制に関する定め
   ア 法251条の2第1項は,同項各号に掲げる者が法221条,222条,223条又は223条の2の罪を犯し刑に処せられたとき(法251条の2第1項4号及び5号に掲げる者については,これらの罪を犯し禁錮以上の刑に処せられたとき)は,当該公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者(以下「公職の候補者等」という。)であった者の当選は無効とし,かつ,これらの者は,法251条の5に規定する時から5年間,当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは,選挙の行われる区域)において 行われる当該公職に係る選挙において公職の候補者となり,又は公職の候

<6>
補者であることができない旨を定める。そして,法251条の2第1項4号は,公職の侯補者等の父母,配偶者,子又は兄弟姉妹で当該公職の侯補者等又は同項1号若しくは前号に掲げる者と意思を通じて選挙運動をしたものと定める。
   イ 法251条の5は,前3条の規定による当選無効及び立候補の禁止の効果は,法210条1項の規定による訴訟についての原告敗訴の判決(訴状を却下する命令を含む。)が確定した時,当該訴訟を提起しないで同項に規定する出訴期間が経過した時若しくは当該訴訟についての訴えの取下げがあった時又は同条2項若しくは法211条の規定による訴訟についての原告勝訴の判決が確定した時において,それぞれ生ずるものとする旨を定める。
   ウ 法211条1項本文は,法251条の2第1項各号に掲げる者又は法251条の3第1項に規定する組織的選挙運動管理者等が法221条,222条,223条又は223条の2の罪を犯し刑に処せられたため,251条の2第1項又は251条の3第1項の規定により公職の候補者等であった者の当該選挙における当選が無効であり,当該公職の候補者等であった者が当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは,選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において公職の候補者となり若しくは公職の候補者であることができず,又は当該公職の候補者等であった者で衆議院(小選挙区選出)議員の選挙における候補者であったものの当該選挙と同時に行われた衆議院(比例代表選出)議員の選挙における当選が無効であると認める検察官は,前条に規定する場合を除くほか,当該公職の候補者等であった者を被告とし,その裁判確定の日から30日以内に,高等裁判所に訴訟を提起しなければならない旨を定める。
 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨によって容易に認められる事実)

<6>
  (1) 当事者等
   ア 原告は,群馬県の住民である。
   イ 被告は,群馬県の執行機関である。
   ウ 浦部は,本件選挙当時の群馬県選挙管理委員会書記長である。(乙5)5)
   エ 和憲は,本件選挙により,群馬県議会議員に当選した後,辞職した者で ある。
  (2) 事実経過
   ア 本件選挙は,平成31年3月29日に告示され,同年4月7日に行われた。(甲3)
   イ 和憲は,本件選挙の際,吾妻郡選挙区で立候補し,9807票を獲得して当選した。なお,本件選挙における吾妻郡選挙区での法93条1項3号に係る票数は1501.850票であった。(乙4)
   ウ 群馬県選挙管理委員会は,令和元年5月9日,日本郵便株式会社から本件選挙に係る選挙運動用通常葉書の郵送料金2676万5834円の請求を受けた。 (甲3)
   工 群馬県選挙管理委員会は,令和元年5月21日,以下のとおり,和憲の本件選挙の選挙運動に係る選挙公営費の請求を受けた。
    (ア) 選挙用自動車の使用
     a  株式会社八洲(自動車の借入れ)   13万7700円
     b  吾妻総業株式会社(燃料供給)     5万6781円
     c  運転手               11万2500円
    (イ) 選挙用ピラの作成
      宮下印刷所              12万0160円
    (ウ) 選挙用ポスターの作成
      宮下印刷所              11万3152円(甲3ないし8)

<6>
   オ 和憲は,令和元年5月24日,群馬県議会議員を辞職した。
   力 群馬県選挙管理委員会は,令和元年5月27日,日本郵便株式会社に対し,本件選挙に係る選挙運動用通常葉書の郵送料金として2676万5834円を支払った(以下,本件選挙に係る選挙運動用通常葉書の郵送料金の支払のうち,和憲の選挙運動に係る選挙運動用通常葉書の郵送料金部分 の支払を「本件支払1」という。)。(甲3)
   キ 群馬県選挙管理委員会は,令和元年6月12日,株式会社八洲に対して自動車の借入費用として13万7700円,吾妻総業株式会社に対して燃料供給の費用として5万6781円,上記エ(ア)c の運転手に対して報酬として11万2500円,宮下印刷所に対して選挙用ビラ及び選挙用ポスター作成費用として合計127万3312円をそれぞれ支払った(以下,「本件支払2」といい,本件支払1と併せて「本件各支払」という。)。(甲3ないし8)
   ク 和憲の妻である南波久美子(以下「久美子」という。)は,令和元年7月22日,法221条1項1号,3号違反として前橋地方裁判所に在宅起訴された。
   ケ 久美子は,令和元年9月6日,前橋地方裁判所から法221条1項1号,3号に該当する罪により懲役1年執行猶予4年の判決を受け,同判決は,同月21日に確定した。(甲3)
   コ 東京高等検察庁検察官は,令和元年10月11日,東京高等裁判所に対し,法211条1項本文に基づき,和憲を被告として,立候補禁止を求める旨の訴えを提起した。(甲3)
   サ 東京高等裁判所は,令和元年12月18日,和憲に対し,判決確定日から5年間は群馬県識 会議員選挙の公職の候補者等であることができない旨の判決をした(以下「本件連座判決」という。)。
   シ 本件連座判決は,令和2年1月7日に確定した。

<7>
  (3) 本件訴えに至る経緯
   ア 原告は,令和元年 I 2 月 2 4 日, 群馬県監査委員に対し, 群馬県選挙管理委員会に対して, 和憲の選挙運動に係る選挙公営費 2 0 7 万 6 2 9 3 円について,和憲から返還させる等,群馬県の被った損害を補填するための
5 措置をとるように求める旨の監査請求をした。(甲1,2)
   イ 群馬県監査委員は,令和2年2月17日,上記アの監査請求について理由がないとして棄却する旨の裁決をし,原告は,同月18日,監査請求結果の通知を受領した。(甲3, 調査嘱託の結果)
   ウ 原告は,令和2年3月19日,本件訴えを提起した。
 3 争点
  (1) 本件各支払が違法か(争点1)
  (2) 浦部の本件各支払に係る損害賠償責任の有無(争点2)
  (3) 群馬県の損失又は損害の額(争点3)
 4 争点に対する当事者の主張
  (1) 争点1(本件各支払が違法か)
   ア 原告の主張
    (ア) 選挙公営制度は金のかからない選挙の実現と候補者間の選挙運動の機会均等を図るための手段である。
      金のかからない選挙の実現のため,法を守って選挙運動を真摯に展開した侯補者が,法93条1項 3 号に係る票数に満たないことを理由に選挙公営が適用されず選挙費用を自己負担させられるのに対し,法を破って買収行為をした候補者や候補者の総括主宰者等が買収行為をしたために連座制が適用されて当選が無効になった候補者に選挙公営が適用されることは,他の候補者との機会均等を図る選挙公営制度の運用上不適切である。
      そのため,そもそも,違法である買収行為をするなどの金銭的に余裕

<9>
がある侯補者の場合,選挙公営制度の適用外にあると考えるのが妥当である。
    (イ) 本件連座判決の確定により,和憲は本件選挙につき,当選無効となり, 当然に得票数は0票とみなされることになる。そのため,和憲の本件選挙に係る得票数は,法93条1項3号に係る票数に満たないことから選挙公営の適用外となる。
      それにもかかわらず,群馬県選挙管理委員会は,和憲の選挙運動に係る選挙公営費を本件各支払として支出しており違法である。
   イ 被告の主張
     連座制は,当選を無効とすることはあっても,有権者の投票の効力を無効とする効力はないから,本件選挙に係る和憲の得票数が本件連座判決により0 票とみなされることはない。
     その他,和憲について選挙公営費の支出が認められない事情はない。
  (2) 争点2(浦部の本件各支払に係る損害賠償責任の有無)
   ア 原告の主張
     群馬県選挙管理委員会は,令和元年5月24日時点で和憲が群馬県議会議員を辞職し,公職選挙法違反の疑いで群馬県警察から任意で事情聴取を受けていることを承知していたにも関わらず,和憲に対する事情聴取もしないまま,同月27日には本件支払1を,同年6月12日には本件支払2をしている。このことは,公正・公平かつ適正に行われなければならない 選挙を管理する立場の群馬県選挙管理委員会が重大な過失を犯したことを示す事実である。
   イ 被告の主張
     争う。
  (3) 争点3(群馬県の損失又は損害の額)
   ア 原告の主張

<10>
     本件各支払の合計額である 207万6293円が群馬県の損失又は損害となる。
     なお,選挙運動用通常葉書の郵送料金について,和憲は,県議会議員選挙における使用上限枚数である8000枚を使用したと推測されるため,本件支払1の支払額は49万6000円(1枚当たり62円×8000枚)である。
   イ 被告の主張
     否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
 1 争点1(本件各支払が違法か)について
  (1) 前記第2の2(2)イのとおり,和憲は,本件選挙の際,法93条1項3号に係る票数である1051.850票を上回る9807票を獲得して当選しており,選挙公営費の支出対象者であると認められることからすると,本件各支払は適法にされたものと認めるのが相当である。
  (2) これに対し,原告は,法を破って買収行為をした侯補者や候補者の総括主宰者等が買収行為をしたために連座制が適用されて当選が無効になった候補者に選挙公営が適用されることは,他の侯補者との機会均等を図る選挙公営 制度の運用上不適切であるから,違法である買収行為をするなどの金銭的に余裕がある候補者については,選挙公営制度の適用外である旨を主張する。
    しかしながら,前記第2の1(2)アないしウのとおり,法は,いわゆる選挙公営制度について,選挙運動に係る一定の費目についてこれを採用し,都道府県の鏃会の議員及び長の選挙についてはその具体的な内容等を条例に委任しているところ,法及び法の委任を受けて制定された本件条例のいずれにも,法に反する行為があった場合に選挙公営を適用しない旨の定めが存在しないことからすると,買収行為等の法に違反する行為をした候補者や総括主宰者等が買収行為をしたため連座制が適用されて当選が無効になった候補者に対

<11>
する選挙公営の適用を否定すべき法令上の根拠はなく,原告の主張は理由がない。
  (3) また,原告は,本件連座判決の確定により本件選挙に係る和憲の得票数が0票とみなされ,その結果,和憲の本件選挙に係る得票数は,法93条1項3号に係る票数に満たないことから選挙公営の適用外となる旨を主張する。
    しかしながら,前記第2の1(4)アのとおり,法251条の2第1項は,連座制が適用された場合の効果として,公職の候補者等の当選の無効,及び一定期間にわたる当該選挙に係るー選挙区(選挙区がないときは,選挙の行われる区域)における立侯補の禁止を定めているにすぎず,連座制が適用される原因となった行為がされた選挙に係る当該公職の候補者等に対する有権者の投票を無効とする効力を定めるものではないことからすると,本件連座判決により,和憲の得票数が0票とみなされることはないと解するのが相当であり,原告の主張は理由がない。
 2 争点2(浦部の本件各支払に係る損害賠償責任の有無)について
   原告は,群馬県選挙管理委員会が重大な過失により本件各支払をした旨を主張するが,上記1(1)のとおり,本件各支払が適法であることからすると,原告の主張は理由がない。
 3 結論
   以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条, 民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。

    前橋地方裁判所民事第1部

<12>
      裁判長裁判官  渡 邉 和 義
         裁判官  杉 浦 正 典
         裁判官  浅 川 浩 輝

<13>
  これは正本である。

  令和2年12月23日
    前橋地方裁判所民事第1部
     裁判所書記官 橋 本 勇 一

                      前橋 10-001355
**********

■このように、判決は「法は,いわゆる選挙公営制度について,選挙運動に係る一定の費目についてこれを採用し,都道府県の鏃会の議員及び長の選挙についてはその具体的な内容等を条例に委任しているところ,法及び法の委任を受けて制定された本件条例のいずれにも,法に反する行為があった場合に選挙公営を適用しない旨の定めが存在しないことからすると,買収行為等の法に違反する行為をした候補者や総括主宰者等が買収行為をしたため連座制が適用されて当選が無効になった候補者に対する選挙公営の適用を否定すべき法令上の根拠はなく,原告の主張は理由がない。」というものです。

 判読が難しいので分かり易く言うと、つまり、選挙違反をしても、ひとたび投開票日の翌日の選挙会で当選の判定が出れば、たとえ選挙中に選挙違反行為が発覚しても、あるいは後日選挙違反が発覚して、逮捕されたり、連座制によって当選が無効になっても、当選した選挙違反者に公金で支払われた選挙公営費は、そのまま弁済しなくてもよい、ということが、司法により判断されました。

 今回の出訴に際しては、事前に総務省自治行政局選挙部選挙課に電話をして、「選挙違反で連座制により当選が無効になれば、公金で賄われている選挙公営費もドブに捨てられたようなものなので、原因者がきちんと弁済すべきではないのか」、と問い合わせたところ、「国としては地方の選挙管理委員会に対して、指導したりする立場になく、あくまでも対等な立場。したがって、それぞれの選挙委員会の判断に委ねるかたちになるが、もし、きちんとした判断を求めるのであれば、法廷で決めてもらうのが良いと思う」との担当官のコメントをもらいました。

 そのため、裁判所に出訴すれば、常識的な判断が為されるかと内心期待するところもありました。しかし、結果的には、「法律に明記されていなければ、不問にする」という、呆れた判断でした。

 公選法違反をした候補者が、公選法により公費で賄われる選挙公営費用を自己負担しなくてもよいというのです。他方、法定得票数に達しなかった候補者は、公選法を遵守しても、選挙公営費用を全額自己負担しなければなりません。

 候補者にこのような不公平な条件が適用されるのですから、「選挙の平等」「公平公正な明るい選挙」などと総務省や都道府県の選挙課がPRするのをみると、鼻白んでしまいます。

■それでも、この訴訟を勧めてくれたのは、総務省の選挙課ですので、きちんと結果について報告をしなければならないと思い、12月24日に上京した際、地下鉄丸ノ内線の霞ヶ関駅で総務省の合同庁舎2号館にある選挙課を呼び出し、判決文の写しを渡したいと申し出ました。

 すると、なぜか担当官は、腰が引けた対応をしました。面談したくないそぶりです。せっかく判決文をコピーして持参したのに、受け取ろうと言う意欲が見えません。10分間ほど電話で何度も掛け合った挙句、「合同庁舎の中に入れてもらえないのであれば、今、霞ヶ関駅の改札口のそばにいるので、ここで手渡したい」という当会の提案がようやく受け入れてもらえました。担当官が「それではこれからそちらに降りていく」と言ったのです。

 待つこと5分。二人の選挙課の職員がやってきました。名前をきくと高林と児玉と名乗りました。簡単に事情を説明した後、持参した判決文の写しがはいったクリアファイルを渡しました。改札口付近での立ち話なので、1分足らずでその場を離れ、地下鉄で帰りました。

 その後、12月28日の仕事納めの午後1時過ぎに、思い立って総務省選挙課の高林氏に電話をしてみました。判決文の内容についてコメントを聞いたところ、なんと「裁判所の判断は妥当だと思う」という返事でした。総務槽選挙課のコメントの内容次第では、控訴も視野に入れていたのですが、このコメントを聞いて、一気にやる気をなくしました。と、同時に、我が国の選挙制度の歪である不合理性と不透明性をあらためて痛感させられた次第です。

■なお、ネットで「選挙違反 当選無効」で検索すると、2020年12月10日のYahooニュース記事がヒットします。元特捜部主任検事による解説記事です。

**********Yahooニュース2020年12月10日(木)08:00
河井案里氏にボーナス309万円支給 連座制で当選無効でも返還請求できぬ訳
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(写真:つのだよしお/アフロ)
 選挙違反で裁判中の河井案里氏に約309万円のボーナスが支給された。しかし、秘書の有罪判決確定で連座訴訟となり、当選が無効になっても、案里氏がこれまで手にした歳費などの返還は請求できない。なぜか――。
★今後の流れは?★
 案里氏には、2019年7月の参院選での初当選後、国から給与に当たる歳費と文書通信交通滞在費の合計200万円超が毎月支給されているほか、6月と12月にはそれぞれ300万円超のボーナスが支払われている。
 一方、検察は、選挙運動員に対する買収で懲役1年6か月・執行猶予5年の有罪判決が確定した秘書を連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」とみている。
 早ければ年内には、広島高検が原告となり、案里氏を被告として、その当選無効などを求め、広島高裁に連座訴訟を提起することになる。裁判は年明けに始まり、年度内には高裁の判決が下るだろう。
 過去の同種事案をみると、ほぼ検察側の勝訴で終わっており、案里氏の場合もこれらと同じ結末になる可能性が濃厚だ。案里氏が上告しても、最高裁が棄却すれば、案里氏の当選は無効となる。
★いつから無効に?★
 では、その場合、国は案里氏に支払い済みの歳費などの返還を請求できるか。
 結論から言うと、返還請求はできないし、案里氏も返還を要しない。
 というのも、連座訴訟の場合、公職選挙法の規定により、当選無効の効力はその旨の判決が確定した段階から生じることになっているからだ。
 当選のときに遡って無効となるわけではなく、連座訴訟の判決が確定するまでは議員としての地位があったとされるわけだから、歳費などの支払いも有効だったということになる。
★本人が選挙違反で有罪なら?★
 もっとも、その公職選挙法は、議員本人が買収罪で刑に処せられた場合、連座訴訟のような特別な裁判手続を経ることなく、直ちに当選が無効になると規定している。
 すなわち、いま進められている案里氏自身の刑事裁判で案里氏が有罪判決を受け、確定すると、自動的に被選挙権がなくなり、議員としての地位を失うわけだ。
 しかし、それでも歳費などの返還請求は困難だ。
 というのも、国会法により、議員が被選挙権を失ったときは「退職者」になると規定されているうえ、歳費法でも、議員が退職した場合、その日までの歳費を受けられると規定されているからだ。
★「不当利得」では?★
 ただ、秘書らの選挙違反に関する連座責任と異なり、議員本人が買収罪で刑に処せられた場合については、公職選挙法には当選無効の効力がいつから生じるのか明らかにした規定がない。
 そうすると、当選のときに遡って当選が無効だったと考え、当選後に受け取ってきた歳費などは「不当利得」にあたるとみる余地もある。
 この点については、地方議会議員に関する裁判例が参考となる。
 市議会議員が買収罪で有罪判決を受け、当選無効となって辞職したあと、住民が市に代わって議員報酬などの返還を求める裁判を起こしたものだ。
 しかし、裁判所は、次のような理由により、その訴えを棄却している。
・公職選挙法には当選が無効となった議員による無効となるまでの間の議員活動の効力について定めた規定がないから、議員活動は有効だったと考えられる。
・議員活動と対価性を有する報酬の請求権までもが当然に遡って失われるわけではない。
・失職した議員による役務の提供やその勤務により受けた市の利益と、市から報酬を受けた議員の利益との間に差がある場合に、その限度で具体的な報酬請求権が消滅する。
・これは、議員が無形の精神活動すらなしえず、任期前に市政に関する調査、研究、思索していた内容が議案などの形で結実したわけでもなく、政党や会派にも所属していないような極めて例外的な場合に限定される。
★地方議会では変革も★
 こうした裁判例を踏まえ、自治体の中には、刑事責任を問われた地方議会議員らに対する報酬支給の停止手続や返納に関する規定を条例の中に設け、現に返還を請求しているところもある。
 しかし、国会議員の場合、いまだにそうした規定が整備されていない状況だ。
 逮捕や勾留されて国会に出席できなくても歳費の支給をストップできないのは、無罪推定の原則があることに加え、法令にそれを可能とする規定が置かれていないからでもある。
 選挙違反事件で連座訴訟が想定される場合、国民の批判をかわすため、当選無効になる前に自ら辞職する議員が多いのもそのためだ。
★自主返納は?★
 では、案里氏が議員を続けつつ、歳費などを自主的に返納することは可能か。
 何ら問題なさそうに思えるかもしれないが、公職選挙法が禁止する議員による寄附行為にあたることから、これもまた違法なものとして許されない。
 参議院議員の場合、2018年の定数増加に伴って増大する経費を節減するため、2022年7月までの間、月額7万7000円までの返納に限って寄附規制に関する規定を適用しないとされているが、それすらも各議員の自主性に委ねられている。
 1997年に詐欺事件で逮捕された当時の参議院議員が、実刑確定による失職までの4年以上にわたる勾留中、何ら議員活動をしていなかったにもかかわらず、総額1億円超もの歳費を受け取っていたこともある。
 法制度の不備が問題視されたものの、現在もその状況は何ら変わっていない。
 国会議員は、不逮捕特権や免責特権と並び、歳費受領という特権が認められ、優遇されているというわけだ。
 コロナ禍で経済的に苦しい思いをしている多くの国民からすると、到底納得できない話ではなかろうか。(了)
前田恒彦元特捜部主任検事
 1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。きき酒師、日本酒品質鑑定士でもある。

**********

■ここで引用している行政事件の裁判例とは、次の事件です。

*****<行政事件裁判>*****
●事件番号  平成11(行ウ)15
●事件名  違法支出金補填請求住民訴訟事件
●裁判年月日  平成13年5月25日
●裁判所名  静岡地方裁判所
●分野  行政
●判示事項
 公職選挙法違反により有罪が確定して当選無効になり市議会議員を辞職した者が当選から辞職までの間に市から支給を受けた議員報酬及び期末手当は不当利得に当たるとして,同人に対し地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき市に代位してされた前記報酬等の返還請求が,棄却された事例
●裁判要旨
 公職選挙法違反により有罪が確定して当選無効になり市議会議員を辞職した者が当選から辞職までの間に市から支給を受けた議員報酬及び期末手当は不当利得に当たるとして,同人に対し地方自治法(平成14年法律第4号による改正前)242条の2第1項4号に基づき市に代位してされた前記報酬等の返還請求につき,当選人自身が選挙犯罪を犯した場合については,遡及的に当選の日から当選の効果は生じなかったことになると解されるが,公職選挙法上,当選無効議員のなした議員活動の効力について定めた規定はないことなどから,その議員活動については有効と解するのが相当であって,有効と解される議員活動と対価性を有する前記報酬等の請求権までが当然に遡って失われるものではなく,当選無効により失職した議員が提供した役務の提供ないし勤務により受けた市の利益と,同市が支給した前記報酬等を受けた同人の利益との間に差があると認められる場合に,その限度において,具体的な報酬等請求権が消滅し,不当利得返還請求権が生ずると解するのが相当であるところ,前記差があると認められるのは,当該議員が無形の精神活動すらなしえず,任期前において市政に関する調査,研究,思索していた内容がその後議案等という形で結実したわけでもなく,政党や会派にも所属していないような極めて例外的な場合に限定されるとした上,前記の者は,市議会会派の会長を務め,任期前に複数の議案について討議し同議案の提出者にも加えられていること,同議案は全会一致で原案のとおり可決されていることなどからすると,同人が提供した役務の提供ないし勤務により受けた市の利益と,市が支給した前記報酬等を受けた同人の利益との間に差があるということはできないとして,前記請求を棄却した事例
●判決全文 ZIP ⇒ 015589_hanrei.zip
**********

■今回の裁判で、当会は、準備書面で求釈明として「候補者自身が公選法違反をした場合にはどのような措置がとられるのか?」と法廷で、直接渡辺裁判長を通じて、群馬県に質問しました。しかし、群馬県の訴訟代理人の関夕三郎弁護士は、「回答の必要を認めない」と渡辺裁判長に告げると、同裁判長も「そういうわけで、被告が回答しないといっているので」と言うだけで、そのあと「ほかに主張もないようですので、これにて結審します」と宣言し、前掲の判決言渡しとなりました。

 このことは、連座制でも候補者本人でも、選挙違反をしても、当選さえしてしまえば、供託金はもとより、選挙公営費も、さらには議員歳費もボーナスも、公選法違反による刑事裁判や連座制適用による行政裁判で有罪判決が言い渡され確定しないかぎり、身分が保証されることを意味しています。まさにドロボーに追い銭の状況が、現在の我が国の公職選挙法の現実なのです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連記事「河井案里議員の参院選買収事件有罪判決」
**********時事通信2021年01月21日20時34分
河井案里被告に有罪 「選挙の公正害する」―参院選大型買収・東京地裁
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河井案里被告
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【図解】案里被告事件の主な争点と判決の認定
 2019年参院選をめぐる大型買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)罪に問われた参院議員、河井案里被告(47)の判決が21日、東京地裁であり、高橋康明裁判長は「選挙の公正を害する犯行」と述べ、懲役1年4月、執行猶予5年(求刑懲役1年6月)を言い渡した。広島県江田島市議への現金提供については無罪とした。
 案里被告は有罪が確定すると当選無効となり失職する。判決は、分離公判中の夫で衆院議員の元法相、克行被告(57)との共謀を認め、克行被告が現金提供を取り仕切ったと認定した。
 判決後、案里被告は「主張のうち一部しか受け入れられず、大変遺憾。判決内容を精査し、今後の対応を検討する」とのコメントを出した。
 主な争点は、地元広島の議員5人に渡った現金の趣旨。高橋裁判長は、うち広島県議4人への現金について、被告の選挙情勢が自民党広島県連の支援を得られず厳しかったほか、授受は公に知られないように行われ、金額も選挙運動の報酬に見合っていることなどを理由に、票の取りまとめとしての報酬で選挙買収だったと認定した。
 その上で、克行被告は選挙活動全般を取り仕切り、現金授受の結果をまとめたリストなども作成、保管していたとして、同被告との共謀があったと指摘。「現金は当選祝いや陣中見舞いで、共謀もなかった」とした弁護側の主張を退けた。
 一方、江田島市議への現金10万円の供与については、当時の公設第1秘書が克行被告の指示で渡しており、夫妻で「直接意を通じていたと認められる証拠はない」として共謀の成立を否定した。
 判決によると、案里被告は19年3〜5月、克行被告と共謀し、広島県議4人に投票や票のとりまとめなどの選挙運動を依頼し、報酬として現金計160万円を提供した。
 山元裕史・東京地検次席検事の話 主張が一部認められなかったことは遺憾。判決内容を検討し、適切に対処したい。

**********時事通信2021年01月21日20時33分
主文に紅潮、うなずく 言い渡し後は一礼―案里被告
 東京地裁で21日に開かれた大型買収事件の判決公判で、参院議員河井案里被告(47)は懲役1年4月、執行猶予5年の主文が言い渡された瞬間、顔や耳を紅潮させ小さくうなずいた。
 案里被告は、胸に議員バッジを着け、上下黒のスーツ姿。弁護人の隣に座り、開廷前はしばらく傍聴席に鋭い視線を向けた。
 午後3時に開廷し、裁判長に促されて証言台の前に立つと、主文にじっと耳を傾けた。一部無罪を告げられてもややうつむいたままで、大きな反応は見せなかった。
 これまでの公判では、法廷で笑い声を上げたり、涙を流したりと感情を表に出す場面が多かった案里被告。判決理由読み上げの間は背筋を伸ばし、時折鼻をすすったり、首をかしげたりしながら聞き入った。言い渡しは1時間余りで終わり、裁判長から控訴の手続きについて説明を受けると、何度か小さくうなずき、一礼した。
 閉廷後、取材に応じた主任弁護人は「判決言い渡し後も(案里被告は)落ち着いた様子だった」と振り返った。控訴や議員辞職の可能性については「判決の内容を検討して、これからお考えになると思う」と述べた。

**********NHK News Web 2021年1月21日18時03分
河井案里参院議員に有罪判決 東京地裁 確定すれば当選無効
 河井案里参議院議員がおととしの選挙をめぐり公職選挙法違反の買収の罪に問われた裁判で、東京地方裁判所は、地元議員らに現金を渡したのは買収が目的だったと認め、「供与した額は多額に及び刑事責任は重い」として懲役1年4か月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。有罪判決が確定すれば、公職選挙法の規定によって案里議員の当選は無効になります。
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 参議院議員の河井案里被告(47)は、夫で元法務大臣の克行被告(57)とともに、おととしの参議院選挙で広島の地元議員5人に合わせて170万円を渡したとして、公職選挙法違反の買収の罪に問われました。裁判では案里議員が無罪を主張した一方、検察は懲役1年6か月を求刑していました。
 判決で東京地方裁判所の高橋康明裁判長は、4人の県議会議員に現金を渡した目的について、「自民党広島県連の支援を得られず、地元議員からの支援を期待できない状況で、厳しい選挙情勢だった。県議会議員に渡した金額は票の取りまとめの報酬に見合う」と指摘し、買収目的があったと判断しました。
 また、夫の克行元大臣との共謀について、「現金の交付は克行元大臣が全体を計画し、取りしきっていたと認められる。案里議員が現金を渡したことは当時の選挙情勢のもとで、克行元大臣が差配したと認められ、案里議員の単独行為ではなく、共謀によると認められる」と指摘しました。
 そのうえで「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行で、供与した額は多額に及び、刑事責任は重い」として、懲役1年4か月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。
 一方で、起訴内容のうち、江田島市議会議員に10万円を渡したとされた部分については、「主導したのは克行元大臣で、案里議員の積極的な関与は認められない」として無罪としました。
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 有罪判決が確定すれば、公職選挙法の規定によって案里議員の参議院選挙での当選は無効になりますが、控訴すれば議員の立場が維持されます。
 21日の判決は、100人に対して現金を配ったとして前例のない大規模な買収の罪に問われている夫の河井元法務大臣の裁判の行方にも影響を与えるとみられます。
★河井案里議員 有罪が言い渡されたときの様子は★
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 河井案里議員は、黒色のスーツに紫色のシャツを着て、左胸には議員バッジを付けて判決の言い渡しに臨みました。前回の裁判の時よりも髪を短くしていました。冒頭で有罪が言い渡されたときは背筋を伸ばしてまっすぐ裁判長の方を向いていました。
★河井案里議員「主張の一部しか受け入れられず大変遺憾」★
 判決について河井案里議員は「当方の主張のうち一部しか受け入れられておらず、その点では大変遺憾である。いずれにしても判決内容を精査し、今後の対応を検討することとしたい」とするコメントを出しました。
★案里議員の弁護士「非常に不満が残る判決」★
 判決の後、案里議員の弁護士は「無罪を主張していたが、一部しか認められておらず非常に不満が残る判決だ。判決の内容を詳しく精査し、今後の対応を検討する」と述べました。
★専門家「買収と認定したところは説得力あり 量刑も常識的」★
 判決について元刑事裁判官で法政大学法科大学院の水野智幸教授は「案里議員にとって厳しい選挙だったことを踏まえた上で、時期や相手の立場、やりとりなどから買収と認定したところは説得力があり、量刑も常識的だ」と話しています。
 そのうえで「これまでは、選挙から時期が離れていると現金を渡す理由が複数考えられることから、立件されることが少なく、政治家の間で『なんとなく大丈夫な基準』ができていたが、今回の判決で買収が認定されれば時期は関係ないということが示された。政治家は襟を正していく必要がある」と指摘しています。

**********朝日新聞デジタル2021年1月21日11時00分(2021年1月21日15時15分更新)
河井案里議員の裁判、有罪判決 失職の可能性をQA解説
 2019年の参院選で初当選した参院議員の河井案里被告(47)が、地元県議らを買収したとする公職選挙法違反の罪に問われた裁判で、東京地裁は21日午後、懲役1年4カ月執行猶予5年(求刑懲役1年6カ月)の有罪判決を言い渡した。
 案里議員は昨年6月に逮捕されて以降も参院議員を続けているが、有罪が確定すれば失職する。ただ、仮に最高裁まで争われるとすれば、その前に国会議員の資格を失う可能性もある。
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★河井案里議員、午後判決 失職の可能性は★
 Q 河井案里・参院議員を失職させるかどうかの裁判が起こされたんだって。どのような裁判なの。
 A 2019年7月の参院議員選挙をめぐる公職選挙法違反(こうしょくせんきょほういはん)事件で、昨年11月に案里議員の秘書の懲役(ちょうえき)刑が確定したんだ。これを受けて案里議員に「連座(れんざ)制」が適用されるかどうかが広島高裁で争われるよ。
 Q 連座制って?
 A ある候補者に一定の関わりを持つ人が選挙で罪を犯した場合に、その候補者の当選を無効にする制度だよ。候補者本人の違反じゃなくても連帯責任をとらせ、お金が飛び交うような選挙を防ぐのがねらいだ。
 Q 「一定の関わりを持つ人」って、どういう人?
 A 選挙運動の全般を仕切る「総括主宰者(そうかつしゅさいしゃ)」や会計を担う「出納(すいとう)責任者」、親族などだ。選挙の腐敗への批判から、1994年に秘書や「組織的選挙運動管理者等」まで対象を広げた。
 Q 案里議員の秘書は?
 A 秘書は選挙の時には陣営幹部だったので、「組織的選挙運動管理者等」だったといえるかどうかが焦点になりそうだ。ビラ配りや遊説の計画、弁当の手配など、前線や後方でリーダー的に立ち回っていれば、該当すると判断されるよ。
 Q 結論はいつ出るの?
 A なるべく100日以内に判決を出そうという努力目標があるんだ。「百日裁判」といって、多くの人に関わる選挙の結果は早く確定させるのが大事だという考え方だよ。連座制の適用が問われる行政訴訟は94年〜2019年に152件あったけど、だいたい被告側が敗訴(はいそ)しているようだ。
 Q 案里議員は自身も買収の罪に問われているね。
 A 21日に東京地裁で判決が言いわたされる見込みで、有罪が確定すれば自動的に失職する。夫の克行・衆院議員も総括主宰者として罪に問われていて、その連座制で失職することもありうるね。(阿部峻介)
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参院本会議場に入る河井案里被告=2020年1月24日午後0時55分、岩下毅撮影
**********
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