IoT時代到来に伴う電磁波障害者への対応を問うため楽天モバイルに申入書提出  オンブズマン活動

■今、盛んに「5G」という言葉が取りざたされています。これは第5世代という意味で、戦闘機、暗視スコープ、ビデオカメラなどの軍事や映像分野でも使われますが、本稿では移動通信システムについて考えてみます。5G、つまり、第5世代無線通信システムを導入すると、超高速・大容量の通信が可能になり、約2時間の映画を僅か3秒でスマートフォンに取り込めたり、 ロボット等の精緻な操作をリアルタイム通信で実現できたり、スマホやPCをはじめ、身の回りのあらゆる機器がネットに接続できるようになり、自動車自動運転化や4K/8Kの導入が可能になり、さまざまなモノがネットにつながるIoT化が加速するなど、言いことづくしのような印象です。

 5Gに使われる電磁波は、ミリ波と呼ばれる非常に高い周波数の電波で、直進性が強く、エネルギーも高く、金属などの障害物に当たると反射する性質があります。そのために電波等の影になる鉄筋の建物の中には電波が入りにくくなります。そこでSub-6とよばれる6GHz帯未満の電波を併用します。ミリ波と比べると、Sub-6は遮蔽物や雨に強いという特徴があるからです。

 ただし、それでも遮蔽物に弱いという特性は克服できないため、ミリ波で5Gエリアを広げようとすると、従来よりも非常に多くの基地局を設置しなければなりません。このため、5Gの普及を目指して基地局があちこちで林立し始めています。

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2020年4月1日から楽天モバイルが都内で運用を開始した5G基地局。同社がNECと開発したSub-6用アンテナ(右)と設置中のmmW用アンテナ(左)


■こうした中で、令和3年4月16日、前橋市は国(内閣府地方創生推進事務局国家戦略特区担当スーパーシティ班)に、スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募へ提案書を提出しました。

 この「スーパーシティ」構想というのは、医療や交通、教育、行政手続きなど、生活全般にまたがる複数の分野で、AI(人工知能)などを活用した最先端のサービスを導入することにより、便利で暮らしやすいまちを実現していく、というものです。

 そしてこの構想のもとに、前橋市は、デジタル最先端技術等を活用した「スーパーシティ」の実現により、日常の負担となっていることを軽減することで、日々の暮らしにゆとりが生まれ、そのゆとりで、豊かな自然、歴史文化に触れ、食や文化を楽しみ、自分らしく生き生きとした生活を送る「スローシティ」の構想を目指すとしています。しかし、スマートシティには5Gが必須となります。

■前述のとおり、5Gで使われる電波(電磁波)は高エネルギー・高周波であり、人体に対して熱作用を及ぼす可能性が指摘れされていますが、それ以外の影響についてはまだ未知の部分もあり、安全性が証明されているとはいえません。

 また、コロナワクチン接種によるアレルギーなどの副反応を起こす例があるのと同様に、電磁波過敏症の体質を持つ人が存在することも事実です。

 当会会員においても、そうした体質をお持ちの方がおり、日常生活でもいろいろな場面で電磁波障害に悩まされているとの報告がありましたので、ご紹介します。

■群馬県伊勢崎市内在住のAさん(61歳・女性)は電磁波過敏症ですが、昨年来、体調不良の原因が分からないでいた矢先、自宅近くに、楽天モバイルが基地局を建設したことを知ったのは2020年10月20日ごろでした。

 さっそく楽天モバイルに善処を求めたところ、同年10月27日に、楽天モバイルのS氏から電話が有り「楽天のせいで体調が悪いのであれば、客観的な証拠となる診断書を出してほしい。稼働していないのに楽天のせいだというのか?」と問われたAさんは「楽天は電磁波過敏症を病気と認めますか」と逆に質問しました。

 すると、楽天モバイルのS氏は沈黙してしまいました。

 そこでAさんは、S氏の上司のM氏に電話をしました。するとM氏は「楽天のせいで体調が悪いのであれば、客観的な証拠となる診断書を出してほしい。(最寄りの基地局が)稼働していないのに楽天のせいだというのか」と述べたうえで、「(部下の)Sが言ったことを文書にするかどうか、会社で話し合い電話をする」とし、さらにAさんに「要望書を出してほしい」と言ったものの、要望書の宛先や住所等はもとより書式についてAさんが尋ねても返事はありませんでした。

■2020年11月26日に、Aさんは2017年7月に電磁波過敏症を発症して以来、受診しているかかり付けの医院の医師に相談しました。するとその医師は「カルテに化学物質過敏症と書いていない」(当会注:電磁波過敏症は病名リストに載っておらず、リストにある化学物質過敏症の付随的な症状として記載されているため)と述べて、「診断書を携帯会社に出せば嫌がらせを受ける。家族が総務省から圧力を受けかねない」などとして、診断書の発行を拒否されてしまいました。

 その後、同年11月29日にAさんは楽天モバイルに内容証明郵便で善処を求めました。

 すると同年12月11日にM氏から「Sの言ったことは文書にしない。内容証明郵便に対しても文書で回答しない」と言ってきました。

 Aさんは納得できず、同年12月30日及び2021年1月10日に楽天モバイルに対して、2回目と3回目の内容証明郵便を送りました。さらに、かかり付けの医者がビビッて診断書を書いてくれないため、医師免許を持つ親族が書いた診断書を同年2月12日に楽天モバイルに提出し、同3月5日には、基地局撤去の要請を求める近隣住民172人やAさんの知人・友人ら312名の署名簿を楽天モバイルに提出しました。

■さらに同3月19日に、Aさんが楽天モバイルに電話をしたところ、同社T氏は「基地局が稼働していないと誰が言ったのか」と訊いてきたので、Aさんは「S氏とM氏です」と答えました。

 同4月1日に楽天モバイルからAさんに電話がありました。同社M氏は「家族の書いた診断書ではなく、第三者が書いた診断書を出してほしい。内容も楽天モバイルの基地局のせいで、具体的にこれこれの症状が出たと書いてほしい」というので、Aさんは「診断書は家族の関係でも足りるはずです。基地局の稼働について、M氏とS氏は稼働していないと言ったが、稼働していたのでしょうか」と質問しました。

 するとM氏はこの質問に答えず「診断書は第三者に書いてもらってほしい」の一点張りでした。Aさんは「あなた(M氏)が言ったことを文書にしてほしい」と申し入れました。

 その後、4月16日にM氏から電話があり、「文書は出せない」と連絡してきました。

 Aさんは、5月18日に、楽天モバイル以外の大手携帯3社に、楽天モバイルに提出した診断書の写しを同封して、診断書の取扱いについて各社の見解を問い合わせました。すると、5月31日付で携帯会社から「電磁波過敏症ということでお見舞い申し上げます」との内容の返事が郵送されてきました。家族の書いた診断書を有効と判断する携帯会社もありました。また、Aさんが相談した電磁波問題の専門家も「家族の書いた診断書を認めないのは不当だ。これまで聞いたことがない」とコメントしました。

■4月17日以降、楽天モバイル側からなんの応答もないため、Aさんからの要請を受けて当会は6月22日付で次の内容の申入書を楽天モバイル宛に特手記録郵便で提出しました。7月2日必着で楽天モバイルの見解を書面で求める内容としています。

*****6/22申入書*****ZIP ⇒ 20210622_rakuten_mobile_heno_mousiiresho.zip
                            令和3年6月22日
〒375-8601 東京都世田谷区玉川一丁目14番1号
楽天モバイル株式会社
代表取締役社長 山田善久 様
電話:050-5432-2890(楽天モバイル基地局設置)

         〒371-0801 群馬県前橋市文京町1丁目15番10号
         市民オンブズマン群馬  代表  小川 賢
         TEL: 027-224-8567(事務局・鈴木)/
            090-5302-8312(代表・小川)
         FAX: 027-224-6624

            申 入 書
 群馬県伊勢崎市太田町にある貴社基地局の撤去について

拝啓 貴社益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
 弊団体は、行政およびその関連機関を外部から監視し、当該機関による権限の不当な行使ないしは不行使による一般国民への権利利益侵害、並びに税金を原資とした公的資金の濫費について、調査および救済の勧告を図る活動をしている民間団体です。活動の対象は行政の他、事案によって、公益的な事業を営む第3セクターや企業・団体に及ぶことがあります。
 さて、当会に寄せられた情報によりますと、群馬県伊勢崎市に在住されている電磁波過敏症の■■■■様は、自宅近くに貴社が設置した携帯電話基地局による心身への影響が極めて深刻なため、同基地局の撤去を、令和2年10月から貴社に求めています。
 ■■■■様は、多数の署名を集めて、診断書を添えて貴社に提出していますが、貴社から誠意ある対応が未だにいただけておりません。
 当会は、住民の安心・安全な生活環境の保全を最優先とする観点から、貴社に、当該基地局の撤去を強く要請致します。
 また、このことについて、貴社の対応方針、およびその理由や根拠について貴社の見解をお聞かせくださるようお願いします。
 なお、貴ご回答については、大変勝手ながら、書面で2021年7月2日(金)までに郵送あるいはFAXにて上記弊連絡先まで折り返し送達いただければ幸いです。
 なお、何らかの事情によりこの期限までの回答が不能である場合は、大変お手数ではありますが上記弊連絡先までお伝えいただきたく存じます。
                         以上
**********

■電磁波の問題は、コロナ禍対策のワクチン接種の場合に想定される感染リスクと副作用リスクの比較考量と異なり、公益事業であるだけに、事業者や認可機関には、電磁波過敏症の人たちへの配慮が求められます。

 楽天モバイルがこうした症状に悩む人たちのことをどのようにとらえているのかどうか、対応が注目されます。

■新聞などメディアでは、毎日のようにデジタルに関わる言葉を目にします。デジタル庁、スマートシティ、GIGAスクール、5G、AI……。これらを見ていると、世の中が「デジタル化社会」に向かって加速していることを実感させられます。

 しかし、社会には電磁波を発生するものに対して、頭痛やめまい、吐き気、動悸、胸の圧迫感などのさまざまな症状を呈する方々がいます。そのため、Aさんのように、スマートフォンやパソコン、テレビ、炊飯器などが使えなくなり、電線の下や携帯電話基地局の近くにいられない人たちが、不自由な生活を強いられているのです。

 Aさんの場合、症状の改善に努めていますが、発症から約4年が経過した現在も、ほとんど変化は見られません。

 Aさんのように電磁波に何らかの体調不良を示す人たちは、人口の2〜10%いることが疫学調査や研究で判明しているとの報告もあります。また、子どもについては、頭蓋骨が薄く、免疫も未発達のために電磁波の影響を受けやすいとする考えも提唱されています。

 デジタル化社会は私たちの生活に便宜をもたらす面は確かにあるでしょう。しかし、その構築には電磁波の発生が付きまといます。政府や行政、そして事業者には、デジタル化社会の実現促進ばかりでなく、人体になんらかの影響を与える電磁波から住民の健康を守るための手法や技術開発も疎かにしてほしくありません。

■楽天グループのHPには「1997年の創業時より、イノベーションの力を信じ、大切にしてきました。今も、『イノベーションを通じて、人々と社会をエンパワーメントする』という想いのもと、『グローバル イノベーション カンパニー』であり続けることを目指し、様々なビジネスを展開しています。」と自らを紹介しています。

 楽天グループとして、高速通信を核としたビジネスを今後も展開してゆくのであれば、電磁波障害で苦しむユーザーのことを楽観的に考えるのではなく、「楽天」の由来となった戦国時代の織田信長や豊臣秀吉など各地の戦国大名により行われた経済政策「楽市楽座」と明るく前向きな様を表す「楽天」の趣旨を重視して、誰にでもメリットのあるイノベーションを実践してもらいたいものです。

【7月12日追記】
 楽天モバイルからの回答期限日から1週間以上が経過しましたが、結局、なにも同社から応答が得られませんでした。当会のブログ記事を楽天モバイル社が閲覧していることは確認できましたので、ダンマリを決め込んでいても、反応を気にしている風情はあるようです。
 楽天モバイルの企業としてのCSR体質は所詮この程度であることが分かったのは収穫でしたが、今後、当会会員の電磁波過敏症に悩む親族の方の苦難と苦痛を思うと、暗澹たる気持ちです。

【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】

※関連情報「Aさんの直面する問題を報じた記事」
**********日刊ゲンダイ2021年05月17日06:00
5Gスマホ戦争の盲点 基地局新設で電磁波過敏症の症状が…
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運転中も電磁波シールドが欠かせない(提供写真)
体調悪化の原因は新設の「基地局」だった
 大通りに面した民家の駐車場に、先端にアンテナのついた、高さ7〜8メートルほどの鉄塔が、天に向かって伸びている。基地局という。スマホや携帯電話と交換局とを結ぶ、電波の中継施設だ。
 群馬県某市――。
 付近に住む主婦のA子さん(61)が語る。
「去年の10月20日ごろに発見しました。少し前から頭痛や息苦しさ、胸の圧迫感など体調がすごく悪かったのですが、あれが原因だったようです」
 というのにはワケがある。学校教員だった彼女は、めまいに悩まされた末、定年を待たずに退職した。パソコン仕事がつらかったためだが、代わりに始めたパート先で電子レンジを使ったところ、「ヤリの束が頭にザーッと降ってきたみたいな、強烈な頭痛に襲われて。以来、パソコンやスマホはもちろん、テレビの画面さえ見られません。家の照明は部屋の端に移しました。外でも電線の下がダメなので、ヘルメットと電磁波シールドが欠かせないんです」。
 いわゆる電磁波過敏症(EHS)の症状が一気に噴き出した。それでも一軒家でひっそり暮らしていれば、一定の体調を保てもしたが、新しい基地局は直線距離で約130メートルの地点にあった。
 A子さんの夫は現役の保健所医師である。苦しむ妻を見かねた彼は駐車場の地主に相談。すると翌々日、基地局の主の側から電話がかかってきた。
 楽天モバイル。三木谷浩史氏率いる楽天グループの移動体通信部門だ。
 A子さんの話。
「専門家のSと名乗る男性が、その距離なら電磁波の影響はないはずだと断じました。それでも基地局のせいだと言うなら、医師の診断書を出せ、と」
■楽天モバイルは回答拒否
 実はA子さん夫妻と楽天との交渉は、半年以上も前のこの時点から、一歩も進んでいない。診断書はかかりつけの医師に、「楽天の嫌がらせや総務省の圧力が怖い」という、奇妙な理由で断られた。当初は好意的だった地主さんの態度が一変した。
 だが、このままでは生活できなくなる。次回で述べるように、電磁波による健康被害は過敏症でない人にも起こり得る。A子さんは三木谷氏やモバイルの社長宛てに、合理的な配慮を求める内容証明を送った。基地局から300メートルの範囲で撤去を求める署名活動を行い、この2月に169筆、3月には13筆を集めた。他に友人・知人らの272筆(2月)と40筆(3月)も。診断書は夫が医師として書いてくれた。
 だが一切が顧みられない。文書による回答さえ拒否されたままでいる。
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「基地局」は7、8メートルの鉄塔の先端にアンテナ(提供写真)
日本は基地局の電波の安全基準が極端に甘い
 デジタル改革関連法案が、12日成立した。このままだと私たちは近い将来、わずかな利便性と引き換えに、監視社会の囚人となる。政府と巨大IT資本に支配されるだけの客体におとしめられていく。
 と同時に、電磁波過敏症(EHS)の人だけでなく、多くの人々の健康に悪影響があるのではないか。デジタル化で電波があふれ、高速で大容量の5G(第5世代移動通信システム)が広がれば何もない方が不思議だ。
 環境NGO「電磁波問題市民研究会」の大久保貞利事務局長が語る。
■諸外国では重大な環境問題
「電磁波はヨーロッパなど諸外国では重大な環境問題です。EUによる2007年の公式意識調査では、健康への影響を心配している人が76%を占めました。実際、その4年前にはフランスの国立応用科学研究所が、基地局周辺に住む530人を調べて、300メートル以内だと体調不良を訴える人が多いとする疫学研究を発表しているんです」
 特にEHSを対象にした調査ではない。それでも吐き気や食欲不振、視覚障害、かんしゃく、うつ症状、性欲減退、頭痛、睡眠障害など、多様な症状が報告された。これとは別に、精子への影響や自閉症、白血病との関連を示す研究もあるそうだ。
 あるいは、インドの最高裁が2017年に基地局の撤去を命じる判決を出している。他国に先駆けて5Gの商用化を実現したスイスも、昨年2月にその基地局の全面一時停止を決めた。安全基準策定のための調査が必要というのが理由だ。
「野放しなのは米国と日本くらいなもの。日本は基地局の電波を法的に規制する電波防護指針値が極端に甘い。諸外国とは比べものになりません」
 電磁波の問題は難しい。どれほど重い症状があり、疫学的には因果関係があると考えられても、少なくとも現状では病理学的に証明できないからだ。
 たばこの受動喫煙にも酷似した特徴だが、扱われ方は対極にある。日本では今や、たばこが絶対悪なのに、スマホは神様なのが興味深い。うかつに電磁波被害を語ると“電波系”の烙印を押されかねないゆえんである。
 とまれ、WHO(世界保健機関)は05年に公表した「ファクトシート」でEHSの用語を用い、彼らの日常生活に支障をきたす症状群を「確かに存在する」と認めている。電磁波との因果関係に「科学的根拠はない」とも述べているが、それは現状での話。
 時代は移りゆく。幾多の公害病も、当初は存在しないことにされていた。
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1月、新携帯電話料金を発表する楽天の三木谷浩史会長兼社長(C)日刊ゲンダイ
楽天モバイルには誠実に対応しなければならない道理がある
 電磁波による健康被害や恐れを理由に基地局の撤去や建設中止を求める訴訟は、これまで幾度も提起されているが、原告側が勝訴した例はない。この国の司法は政府の意向に従うだけだから、と環境NGO「電磁波問題市民研究会」の大久保貞利事務局長は語る。
「法廷よりも、住民パワーを結集した運動で闘うべき。そうやって基地局の被害を食い止めた事例が、全国にはすでに約280件もあります」
 電磁波過敏症(EHS)に苦しむ住民には、2016年に施行された障害者差別解消法も味方になってくれるはずだ。役所や事業者は、障害のある人に「合理的な配慮」をすることと定めた法律で、障害者権利条約が提示した「障害の社会モデル」を基調としている。
 そこで内閣府の障害者施策担当官にEHSの場合を確認すると、「障害および社会的障壁により、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあれば、化学物質過敏症などと同様に、法の対象となり得ます」。とすれば、たとえば冒頭で紹介した群馬県のA子さんに対しても、基地局を建てた楽天モバイルは誠実に対応しなければならない道理だが、現実はどうか。
 中国のIT大手・テンセントと資本提携したりソフトバンクの機密を元社員から入手したカドで1000億円の損害賠償請求訴訟を起こされたりと、近頃やたら騒々しい楽天。参入して間もない携帯電話事業でも、この夏の全国回線エリアカバー率目標96%を急ぐあまり、基地局設置をめぐるトラブルが続出している。
■公共性の自覚が欠落
 創業オーナーの三木谷浩史氏が、4月の「日刊工業新聞」で、「1日100局前後を開通させている」旨を語っていた。身勝手きわまりない成長戦略の、A子さんは犠牲者なのだ。
 異様な会社である。取材を申し込もうと代表番号に電話したが、「フリーからの連絡は取り次がない」由。(日刊ゲンダイの)社員デスクにかけ直してもらい、ようやく広報と電話が通じたのも束の間、その後も門前払いの連続でメールでの説得を重ねさせられた揚げ句、「ご依頼の件、諸所の都合により大変恐縮ですが辞退とさせていただけますと幸いです」で強制終了。公共性の自覚が決定的に欠落した、いかにも政治権力に近い政商企業だった。
 あらゆる申し入れを無視され続けているA子さんは8日、楽天モバイルの山田善久社長に4度目の内容証明郵便を送付した。22日までの回答を求めているのだが――。
【斎藤貴男:ジャーナリスト。1958年生まれ。早大卒。イギリス・バーミンガム大学で修士号(国際学MA)取得。日本工業新聞、プレジデント、週刊文春の記者などを経てフリーに。「戦争経済大国」(河出書房新社)、「日本が壊れていく」(ちくま新書)、「『明治礼賛』の正体」(岩波ブックレット)など著書多数。】
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