2010/9/1  23:54

八ッ場ダム推進でアブク銭にあずかりたい国交省職員の気持ちを体現した斉藤烈事件(その1)  八ッ場ダム問題

■国交省は、8月11日、入札前に談合情報が寄せられるなどした岩手県の胆沢ダムと群馬県の八ツ場ダムについて、談合を疑わせる事実は確認できなかったとする再検証の結果を発表しました。

 八ツ場ダムは、今年2月の国会審議で落札率が高いなどの不自然さが指摘されていました。発注した工事や設計などの業務は千件を超えるため、国交省は入札業者が1社しかいないなど談合の可能性がある31件を抽出して調べましたが、談合は確認できなかったとしています。

 この再検証作業は、前原誠司国交相の今年2月の指示を受け、資料の再チェックや当時の関係職員のヒアリングなどを通じて行ったそうです。


 しかし、国交省の役人が自分のやった違法不当行為を認めるわけがありません。したがって、この発表には疑問があります。なぜなら、今回紹介する八ッ場ダムや国道建設をめぐる用地調査業務における国交省と測量会社、それを仲介する国交省の天下り役人による国交省の内部情報の外部への漏洩と業界調整の事実について、国交省は記者会見などで見解を発表しようとしないためです。

■その辺がうしろめたいのか、8月11日の国交省の発表では、談合情報のこれまでの処理方法には不十分な点もあったとして談合対応マニュアルを見直し、新たに(1)談合情報を警察庁に連絡(2)資料の保存を徹底(3)情報提供者に接触し内容を確認―などの対応を追加しました。

 ちなみに、胆沢ダムをめぐっては、2004年から2005年に複数の談合情報が国交省にありました。再検証では、入札参加業者が工事費の積算などで情報交換した形跡はなかったが、資料が残っておらず確認できない部分もあったと発表されました。やはり、こちらも自浄作用は期待薄のようです。

 せっかく談合情報が寄せられても、それが生かされないのは、国交省の天下り役人が、入札する側の業者に天下っているからです。その連中が、役所にいる、かつての部下や同僚と情報交換をしているのですから、談合情報がもみ消されるのも当然です。

 つまり、泥棒に泥棒を捕まえさせるというのですから、自浄作用が機能するはずがないのです。

 巨大な利権にまみれる八ッ場ダムをめぐる、役人と天下り企業との癒着の実例を検証しました。

■今から4年前の2006年7月5日に、国交省の首都国道事務所用地第二課長だった斉藤烈(たけし)容疑者(当時44)が収賄容疑で逮捕されました。

 翌7月6日の上毛新聞には、この事件について、次のように報じられました。

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【1面記事】
 「八ッ場ダム前課長逮捕 国交省工事で収賄容疑 警視庁」
国土交通省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所(長野原町)が発注する用地調査業務などをめぐり、便宜を図った見返りに無利子、無担保で業者から約六百万円を借りたとして、警視庁捜査二課は五日、収賄容疑で千葉県流山市中野久木、同事務所前用地第一課長(現同省首都国道事務所用地第二課長)、斉藤烈容疑者(44)を逮捕、同事務所などを家宅捜査した。
 捜査二課は贈賄容疑で東京都練馬区、協立測量(東京)元専務、阿部善宏被告(46)=別の収賄罪で起訴=を任意で調べており、同容疑で書類送検する方針。
同課は、斉藤容疑者が関東地方整備局内の入札予定価格を算出できる内部資料などを入手できる立場にいたことから、阿部被告がこの資料を受け取り、入札に利用したとみて参加した入札の特定を急ぐ。
 調べによると、斉藤容疑者は八ッ場ダム工事事務所用地第一課長だった2004年11月から今年3月にかけ、協立測量に便宜を図った見返りとして、阿部被告から数回にわたり無利子、無担保で約六百万円を借りた疑い。容疑を認めているという。
 斉藤容疑者は1991年から阿部被告と面識があり、02年ごろから融資を受けていた。これまでに二千数百万円を借りたが、返済したのはわずかで、残りは飲食費や借金返済に充てていたという。
<再発防止努める>
 門松武・関東地方整備局長の話:職員が収賄容疑で逮捕されたことは、行政の信頼を裏切るもので極めて遺憾。厳正かつ適正に対応するとともに、このようなことが二度と起こらないよう再発防止に努めたい。

【21面記事】
“ダムの町”に動揺 「交渉に影響」懸念の声
 “ダムの町”に動揺が広がった。国土交通省関東地方整備局発注の用地調査業務をめぐる贈収賄事件。警視庁に収賄容疑で逮捕された斉藤烈容疑者(44)=千葉県流山市=は今年三月まで2年間、八ッ場ダム建設に伴う長野原町の水没地区住民との交渉を担当していた。関係者は「あのまじめな人がなぜ」と驚く一方、「交渉に影響が出る」と今後を懸念する声も上がった。
 関係者の話を総合すると、斉藤容疑者が課長を務めていた八ッ場ダム工事事務所用地第一課は、水没五地区のうち長野原、林、横壁の三地区の代替地交渉などを行っていた。
 公私ともに接触があった地元の男性は「代替地の地主との話し合いに奔走していた。 住民ですら業者からの接待の申し出があるほど。課長ならなおさらだろうが、贈収賄とは夢にも思わなかった」と驚く。勤務態度や風ぼうなどから、「堅物」のイメージが定着していたという。
 斉藤容疑者は同事務所勤務時代、町内の寮で単身生活をしていた。町役場関係者は「派手には見えなかった。ここで一人暮らしでは、お金の使いようがない」と話す。
ダム建設の計画浮上から半世紀余り。町内で代替地の分譲やまちづくりの計画が着々と進む中、不祥事は発覚した。関係住民でつくる八ッ場ダム水没関係五地区連合対策委員会の萩原昭朗委員長は「今でもダムを造ることに批判している人もあり、打撃が大きい」とショックを受けた様子。
 同町の高山欣也町長は「大変心外で、今後の交渉がやりにくくなるだろう。一期分譲者の取得面積、農地などの交渉が控えていて重要な時。こんなことは絶対にあってはならない」と語った。
 関東地方整備局によると、贈賄側とされる阿部善宏被告(46)が専務を務めていた協立測量は2004年4月から今年4月末までに、同局発注の業務27件を指名競争入札で発注。八ッ場ダム工事事務所の業務の落札はなかった。
 警視庁は同事務所の指名競争入札への同社の参加状況についても調べていく。
警視庁は五日、長野原町与喜屋の同事務所を約6時間にわたり家宅捜査し、捜査員8人が段ボール箱三箱分の資料を押収した。
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■そして、警察による逮捕、送検から、検察の起訴、そして刑事裁判を経て、逮捕から約3ヵ月半の2006年10月25日に判決が下りました。翌10月26日の上毛新聞記事を見てみましょう。

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「八ッ場ダム元課長に有罪 国交省事務所汚職で判決 東京地裁」
 国土交通省八ッ場ダム工事事務所(長野原町)など発注の測量業務をめぐり、受注側から借金の形で710万円のわいろを受け取ったとして収賄罪に問われた同事務所元用地第一課長、斉藤烈被告(44)=懲戒免職=に対し、東京地裁は25日、懲役2年6月、執行猶予4年、追徴金710万円(求刑懲役2年6月、追徴金710万円)の判決を言い渡した。
 川本青厳裁判長は「無利息、無担保で金を借りた見返りに指名競争入札の内部資料を繰り返し提供し、連日のように飲み歩いた。動機や経緯に酌量の余地はない。刑事責任は重いが、事実を認め、反省している」と判決理由で述べた。
 判決などによると、斉藤被告は2004年11月から今年4月にかけ、同事務所が発注した測量業務の設計書や仕様書のコピーを郵送した見返りなどとして協立測量(東京)の阿部善宏元専務(47)=有罪確定=から計710万円を借金した。
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 役人が収賄で逮捕された場合、追徴金を科せられますが、ほとんどの場合執行猶予付き判決となります。この追徴金の根拠は刑法18条1号3号、19条の2によるものとされており、今回の斉藤烈事件では、追徴金として710万円が課せられていますが、斎藤が既に費消して没収できないので、その価格を後日被告人から返済するとしています。しかし、本当に、斎藤から追徴金が支払われたのかどうかは、確認のすべがありません。また、訴訟費用の処理については、刑事訴訟法181条1項の但し書きにより、「不負担」となっています。斉藤烈の裁判費用は、我々の税金から支払われたのです。

■当会では、八ッ場ダムにかかる公金支出差止請求中の市民オンブズマン群馬の協力を得て、この事件の刑事記録を調べました。

 刑事裁判(平成18年刑(わ)第2813号事件)の公判に提出されたのは、起訴状(平成18年7月26日、4ページ)、第1回公判調書(同9月27日、2ページ)、検察の冒頭陳述(同9月27日、5ページ)、被告弁護人宮崎敦彦の弁論要旨(同9月27日、7ページ)、第2回公判調書(同10月25日、第1回公判速記録も含めて41ページ)、論告要旨(同10月25日、3ページ)、供述調書及び関連証拠資料です。供述者は、収賄容疑者の斉藤烈と、贈賄容疑で別途逮捕された協立測量の元専務・阿部善宏のほか、参考人として、八ッ場ダム工事事務所の当時の職員だった冨田衛副所長・武士修用地第一課長(斉藤烈の後任)・今井弘幸総務課長・安田利治係長職です。贈賄側の協立測量関係者は丸峰順市営業推進部長。そのほか、同業者として山田克己・鈴木克太郎・柏原良一が供述しています。

 不思議なのは、八ッ場ダム工事事務所の当時の斉藤の上司だった安田所長ら幹部は一切事情聴取を受けていないことです。また、贈賄側である協立測量の最高責任者の阿部会長や国交省の天下り社長も一切事情聴取を受けていません。

■公判は2回行われ、平成18年9月27日の第1回公判では、被告は「生まれ変わってゼロからやり直すつもりです」と述べました。平成18年10月25日の第2回公判では、被告の実父と妻が情状証人として出廷し「今は新潟で両親、妻と、2人の子どもらと同居し、両親妻子で本人を指導監督していく」と証言して結審し、その後、判決が下りました。巨額公金を投入して進められている超巨大プロジェクトを食い物にした事件なのに、なんと執行猶予付きの判決でした。

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【判決文】 H18.10.25宣告 (6ページ)
平成18年刑(わ)第2813号事件
東京地裁刑事8部 裁判長 川本清巌
         裁判官 大寄 淳
         裁判官 明日梨佳
被告 斉藤烈
 上記のものに対する収賄被告事件について、当裁判所は検察官島根豪及び弁護人宮崎敦彦各出席の上審理し、次のとおり判決する。
  主  文
 被告人を■■■■に処する ←※新聞報道から「懲役2年6月」だと分かります。
 この裁判が確定した日から■■■■その刑の執行を猶予する ←※同じく「4年」だと分かります。
 被告人から金■■■■円を追徴する ←※同じく「710万円」だと分かります。
  理  由
(罪となるべき事実)
第1 被告人はH16.4.1からH18.3.31までの間は国交省関東地方整備局用地第一課長として、同事務所が発注する用地調査業務の設計書の審査及び同事務所・・・
 阿部は、H11.6.18からH8.5.18までの間、東京都杉並区上荻1-15-1に本店を置き土地家屋測量調査乙を目的とする共立測量株式会社の代表取締役専務として、同社の業務全般を統括。
 指名競争入札案件等について、情報漏洩したことで、協立測量が有利かつ便宜な取り計らいを受けることに対する謝礼及び今度も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨で貸付けられたものであることを知りながら、
1.H16.11.24〜H17.10.14前後6回荻窪4-11-11の日本郵政公社荻窪四郵便局他1箇所から合計410万円を日本郵政公社の被告人名義の通常郵便貯金口座に振り込み送金させ、無利子、無担保で返済の制限を定めぬまま借り受けて、金利の利益を得、
2.H18.3.24頃、上荻1-8-8の荻窪野村證券ビル地下1階所在の飲食店「カフェ&レストラン葉山」で、200万円を借り受け、もって、自己の前記職務に関して賄賂収
第2 ■■■(全部非開示)
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 「第2」の項目に係るページは全て白抜きになっていましたが、これも報道により「首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の建設工事の測量業務を巡る競売入札妨害(不正入札)事件」のことであることが分かっています。今回は八ッ場ダムに絡む贈収賄事件として閲覧したため、このように別件は全て非開示となりました。

■証拠等については、次の関係書類が付けられていましたが、全体から見るとかなり省略された観があります。中には、供述調書作っていないものや、供述調書を改訂したものもあります。

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【証拠等関係カード】平成18年第6700号
・ 被告人の当公判廷における供述
・ 被告人の検察官(乙12、乙13)及び司法検察員(乙2)に対する各供述調書
・ 阿部善宏の検査官(甲63の同意部分)及び司法警察員(甲57)に対する核供述調書謄本
・ 司法警察員作成の振込み送金等原資解明捜査報告書(甲28)
・ 東京法務局杉並出張所登記官作成の履歴事項全部証明書謄本(甲65)及び閉鎖登記簿謄本(甲66)
・ 被告人の司法警察員に対する供述調書(乙5、乙8)
・ 阿部善宏の司法警察員に対する供述調書謄本(甲58の同意部分、甲59)
・ 冨田衛(甲2、甲3)及び武士修(甲12)の司法警察員に対する書く供述調書
・ 司法警察員作成の収賄被疑者職務権限報告書(甲1)
第1の1の各事実について
・ 横浜貯金事務センター所長作成の捜査関係事項証明回答書(甲42)
第1の1の別紙一覧表番号1、2、4及び6の各事実について
・ 司法警察員作成の資料入手報告書(甲34)
第1の1の別紙一覧表1及び3の各事実について
・ 若尾香佳の司法警察員に対する供述調書(甲32)
第1の1の別紙一覧表2、4及び6の各事実について
・ 渡辺進の司法警察員に対する供述調書(甲31)
第1の1の別紙一覧表3及び5の各事実について
・ 司法警察員作成の資料入手報告書(甲35)
第1の1の別紙一覧表5の事実について
・ 関原陽子の司法警察員に対する供述調書(甲33)
第1の2及び第1の各事実について
・ 被告人の司法警察員に対する供述調書(乙11)
・ 阿部善宏の司法警察員に対する供述調書謄本(甲61)
第1の2の事実について
・ 司法警察員作成の所在確認捜査報告書(甲37)予備建物名称訂正報告書(甲38)
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【ひらく会情報部・八ッ場ダム問題研究班】
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