百歳以上の高齢者所在不明者が93人だった安中市の行政怠慢指数 困ったちゃん岡田前市政
■最近はマスコミでも報じなくなりましたが、現在の日本の行政の怠慢を如実に物語る出来事として、高齢者の所在不明者続出問題が8月から9月にかけて、話題となりました。日本の戸籍制度は世界に誇れる制度だと思っていたら、とんでもない実態が続出し、消えた年金問題や、年金の不正受給などを考え合わせると、長寿国日本などと胸を張れない状況に、我々日本国民として、情けなく思ったものでした。
事の発端は、平成22年7月29日、東京都足立区の民家で、明治32年7月22日生まれで戸籍上は東京都内男性最高齢の111歳とされていた加藤宗現さんが、ミイラ化した遺体で見つかった事件でした。死後約30年間経過しているとみられている加藤さんには、その時点まで妻の遺族共済年金が支給されており、保護責任者遺棄致死容疑や年金詐欺容疑にまで発展しました。
■その後、全国の自治体で、続々と所在不明の高齢者が相次いだため、慌てた法務省が、8月末に各地の法務局を通じて、全国の自治体に調査を依頼した結果、約5257万2916戸籍(平成22年3月31日現在)の90%に当たる4743万9848戸籍が調べられました。調査は電子化された戸籍を中心に実施されましたが、これは全国市区町村の約8割相当だとのことです。
この全国9割の調査で、9月10日までに、戸籍上は「生存」しているにもかかわらず、現住所が分からない100歳以上が、23万4354に上ることが判明しました。このうち120歳以上は7万7118人、150歳以上も884人にのぼりました。
100歳以上の「生存」不明者が1万人以上だったのは、東京、大阪、兵庫、福岡、沖縄の各都府県で、150歳以上は、群馬が最も多く184人で、沖縄103人、愛媛70人、岡山59人、山口44人と続き、群馬県行政の怠慢度を全国に示しました。
■この過程で、安中市も100歳以上の戸籍を調べたところ、93名が残っていたと9月1日に発表したことが、平成22年9月2日付け東京新聞で報じられました。
そこで当会はさっそく、「この戸籍調査の端緒から結果の発表に至るまでにかかる一切の情報(起案書、回議文書、調査方法、調査結果、発表原稿などを含む)」を安中市長に開示請求しました。
その結果、平成22年9月27日に開示された資料で次のことが分かりました。
(1)最近、新聞紙上で報告されている100歳以上の高齢者の所在不明者について調査したところ、現在、安中市に本籍のみある所在不明者は、平成22年8月27日現在で、93名発見できた。
(2)93名の性別については、男性43名、女性48名、性別不詳2名。この中での最高齢者は、135歳(明治7年9月8日生)だった。
(3)平成22年8月27日現在の100歳以上で戸籍のみの者の一覧は次のとおり。
年齢 人数
101 5
102 7
103 10
104 7
105 3
106 3
107 6
108 11
109 9
110 3
111 8
112 1
113 1
114 0
115 2
116 1
117 1
118 2
119 1
120 1
121 1
122 1
123 0
124 0
125 1
126 0
127 0
128 1
129 0
130 0
131 0
132 0
133 0
134 0
135 1
計 93
(4)100歳以上で戸籍のみの者の地区別一覧は次のとおり。
<旧安中市>
中宿 1(女1)
安中 9(男4女5)
高別当 2(男1女1)
古屋 1(女1)
小俣 1(男1)
原市 13(男5女8)
郷原 4(男2女1?1)
簗瀬 1(女1)
嶺 1(男1)
磯部 4(女4)
下磯部 3(男1女2)
東上磯部 2(男1女1)
西上磯部 2(男1?1)
大竹 1(女1)
鷺宮 1(女1)
下間仁田 2(男2)
岩井 2(男2)
板鼻 2(男1女1)
東上秋間 6(男4女2)
上後閑 3(男2女1)
中後閑 6(男3女3)
下後閑 3(男1女2)
<松井田町>
松井田 2(男2)
新堀 1(女1)
五料 2(男1女1)
横川 2(女2)
坂本 2(男1女1)
原 2(男1女1)
人見 2(女2)
二軒在家 2(女2)
下増田 1(男1)
高梨子 1(男1)
小日向 2(男2)
新井 1(女1)
上増田 3(男2女1)
■こうした住所不明高齢者の戸籍が多数存在していることについて、法務省は「死亡届などが提出されないままとなっていることが原因」などと説明し、「戦災で死亡は確認できるものの身元が不明だった場合や、移民など海外移住先で死亡したが、日本の公的機関に届け出が出されていない場合などが考えられる」と分析しています。
その一方、総務省は、120歳以上の高齢者について、戸籍上、現住所が判明しなければ、戸籍を消除できると各法務局に通知しました。これまで確認作業を必要としていた手続きが円滑に進むようにするのが目的のようですが、自分の不始末の痕跡を消すためには、直ぐに決断するところは、さすがに公務員です。抜け目がありません。
■さらに、法務省では「国民健康保険や国民年金といった行政サービスは住民票を基にしているため、行政上の影響はほとんどない」などと勝手な自己論理で発表しています。
今回の所在不明高齢者問題のポイントは次の3点にあります。つまり、
1. 死亡届を提出せず、あるいは失踪宣告を受けず、かつ、年金その他を不正受給している場合。
2.死亡届を提出せず、あるいは失踪宣告を受けずにいるが、行政はその住民票か戸籍を把握していて年金その他を止めている場合。
3.百数十歳になる人の戸籍が残っている場合。
■本来は、上記1の年金不正受給が問題のはずです。厚労省によると、年金受給者のうち、住民票で照合できない770人を調査したところ、その3%に当たる23人が死亡又は行方不明であるにもかかわらず年金を受給していたということです。つまり、年金受給者の3%が行方不明か死亡しているのが実態なのです。
当然、詐欺事件の場合が考えられますが、これまで役所が何も確認していなかった、ということが疑念としてわきあがってきます。
■この問題は、死亡届義務者(戸籍法第87条による同居の親族、その他の同居者、家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人)の義務の不履行や、行政の怠慢で引き起こされています。戸籍行政、住民票行政がズサンだという批判されても仕方がないでしょう。我々の税金で高い給与をもらっている役人が、仕事をさぼり、そのツケがこうして詐欺事件の温床になっているのです。
年金不正受給の抑止には、罰則強化等と含む厳しい取り締まりと、たるんだ行政関係者の綱紀粛正が不可欠です
とくに、市区町村に配置される非常勤の地方公務員特別職で、地域住民の生活状態を調査することが主な仕事内容となっている民生委員のあり方についても、見直す必要があります。
■法律では、我々住民に対して、死亡届が義務付けられています。戸籍法第86条には「死亡の届出は、届け義務者が死亡の事実を知った翌日から7日(国外の死亡は3ヶ月)以内にしなければならない。届書には、死亡の年月日時分および場所ならびに法務省令で定める事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。やむを得ない事由によって診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない」と定めてあります。
■さらに、届出をしなかった場合の罰則として戸籍法135条で「届出義務者が、正当な理由がなくて期間内にすべきこの届出を怠った場合には、5万円以下の過料に処せられる。」と定めてあります。過料は、刑罰の「科料」とは異なり、法的秩序の維持や、行政法規違反に対する金銭制裁であって、前科にはあたりませんが、届出を怠ると罰をうけることは間違いありません。
でも、役人にはなにも義務や罰則がありません。これではいかのみ不公平です。早急に、役人は役所内でノホホンと毎日を過ごして禄を食むのではなく、もっと住民の中に飛び込んで、汗をかく必要があるのです。
【ひらく会情報部】
※参考資料
<2010年9月10日現在の全国各地の100歳以上の所在不明者>
自治体 100歳以上 うち120歳以上 うち150歳以上
札幌 3,043 572 0
函館 2,174 572 0
旭川 1,290 162 0
釧路 1,823 400 1
福島 3,655 759 1
山形 2,723 1,153 8
盛岡 1,168 260 0
秋田 3,088 836 11
青森 1,734 410 2
東京 11,877 5,582 14
横浜 8,165 3,114 40
さいたま 2,869 954 5
千葉 5,038 2,222 34
水戸 3,312 1,330 13
宇都宮 1.244 132 0
前橋 3,987 1,996 184(ダントツの全国第1位!)
静岡 3,366 1,081 10
甲府 3,310 1,475 37
長野 3,063 899 9
新潟 4,733 1,263 11
名古屋 2,992 868 3
津 2,579 875 7
岐阜 1,719 599 2
福井 2,769 1,395 8
金沢 2,579 890 0
富山 1,328 213 0
大阪 18,986 6,642 6
京都 1,098 528 1
神戸 11,016 4,472 29(阪神淡路大震災の影響か?)
奈良 1,451 564 3
大津 1,907 592 10
和歌山 6.330 3,321 14
広島 8,284 2,877 32
山口 9,111 2,806 44
岡山 5,402 2,276 59
鳥取 1,616 701 9
松江 1,655 682 11
高松 4,177 1,889 25
徳島 2,109 770 9
高知 2,333 517 7
松山 7,411 3,762 70
福岡 11,000 2,699 6
佐賀 3,178 1,013 1
長崎 4,213 1,045 11
大分 3,767 1,145 3
熊本 9,691 2,652 15
鹿児島 7,090 2,266 15
宮崎 2,076 551 14
那覇 10,718 3,072 103(海外移民の影響か?)
総合計 234,354 77,118 884
2
事の発端は、平成22年7月29日、東京都足立区の民家で、明治32年7月22日生まれで戸籍上は東京都内男性最高齢の111歳とされていた加藤宗現さんが、ミイラ化した遺体で見つかった事件でした。死後約30年間経過しているとみられている加藤さんには、その時点まで妻の遺族共済年金が支給されており、保護責任者遺棄致死容疑や年金詐欺容疑にまで発展しました。
■その後、全国の自治体で、続々と所在不明の高齢者が相次いだため、慌てた法務省が、8月末に各地の法務局を通じて、全国の自治体に調査を依頼した結果、約5257万2916戸籍(平成22年3月31日現在)の90%に当たる4743万9848戸籍が調べられました。調査は電子化された戸籍を中心に実施されましたが、これは全国市区町村の約8割相当だとのことです。
この全国9割の調査で、9月10日までに、戸籍上は「生存」しているにもかかわらず、現住所が分からない100歳以上が、23万4354に上ることが判明しました。このうち120歳以上は7万7118人、150歳以上も884人にのぼりました。
100歳以上の「生存」不明者が1万人以上だったのは、東京、大阪、兵庫、福岡、沖縄の各都府県で、150歳以上は、群馬が最も多く184人で、沖縄103人、愛媛70人、岡山59人、山口44人と続き、群馬県行政の怠慢度を全国に示しました。
■この過程で、安中市も100歳以上の戸籍を調べたところ、93名が残っていたと9月1日に発表したことが、平成22年9月2日付け東京新聞で報じられました。
そこで当会はさっそく、「この戸籍調査の端緒から結果の発表に至るまでにかかる一切の情報(起案書、回議文書、調査方法、調査結果、発表原稿などを含む)」を安中市長に開示請求しました。
その結果、平成22年9月27日に開示された資料で次のことが分かりました。
(1)最近、新聞紙上で報告されている100歳以上の高齢者の所在不明者について調査したところ、現在、安中市に本籍のみある所在不明者は、平成22年8月27日現在で、93名発見できた。
(2)93名の性別については、男性43名、女性48名、性別不詳2名。この中での最高齢者は、135歳(明治7年9月8日生)だった。
(3)平成22年8月27日現在の100歳以上で戸籍のみの者の一覧は次のとおり。
年齢 人数
101 5
102 7
103 10
104 7
105 3
106 3
107 6
108 11
109 9
110 3
111 8
112 1
113 1
114 0
115 2
116 1
117 1
118 2
119 1
120 1
121 1
122 1
123 0
124 0
125 1
126 0
127 0
128 1
129 0
130 0
131 0
132 0
133 0
134 0
135 1
計 93
(4)100歳以上で戸籍のみの者の地区別一覧は次のとおり。
<旧安中市>
中宿 1(女1)
安中 9(男4女5)
高別当 2(男1女1)
古屋 1(女1)
小俣 1(男1)
原市 13(男5女8)
郷原 4(男2女1?1)
簗瀬 1(女1)
嶺 1(男1)
磯部 4(女4)
下磯部 3(男1女2)
東上磯部 2(男1女1)
西上磯部 2(男1?1)
大竹 1(女1)
鷺宮 1(女1)
下間仁田 2(男2)
岩井 2(男2)
板鼻 2(男1女1)
東上秋間 6(男4女2)
上後閑 3(男2女1)
中後閑 6(男3女3)
下後閑 3(男1女2)
<松井田町>
松井田 2(男2)
新堀 1(女1)
五料 2(男1女1)
横川 2(女2)
坂本 2(男1女1)
原 2(男1女1)
人見 2(女2)
二軒在家 2(女2)
下増田 1(男1)
高梨子 1(男1)
小日向 2(男2)
新井 1(女1)
上増田 3(男2女1)
■こうした住所不明高齢者の戸籍が多数存在していることについて、法務省は「死亡届などが提出されないままとなっていることが原因」などと説明し、「戦災で死亡は確認できるものの身元が不明だった場合や、移民など海外移住先で死亡したが、日本の公的機関に届け出が出されていない場合などが考えられる」と分析しています。
その一方、総務省は、120歳以上の高齢者について、戸籍上、現住所が判明しなければ、戸籍を消除できると各法務局に通知しました。これまで確認作業を必要としていた手続きが円滑に進むようにするのが目的のようですが、自分の不始末の痕跡を消すためには、直ぐに決断するところは、さすがに公務員です。抜け目がありません。
■さらに、法務省では「国民健康保険や国民年金といった行政サービスは住民票を基にしているため、行政上の影響はほとんどない」などと勝手な自己論理で発表しています。
今回の所在不明高齢者問題のポイントは次の3点にあります。つまり、
1. 死亡届を提出せず、あるいは失踪宣告を受けず、かつ、年金その他を不正受給している場合。
2.死亡届を提出せず、あるいは失踪宣告を受けずにいるが、行政はその住民票か戸籍を把握していて年金その他を止めている場合。
3.百数十歳になる人の戸籍が残っている場合。
■本来は、上記1の年金不正受給が問題のはずです。厚労省によると、年金受給者のうち、住民票で照合できない770人を調査したところ、その3%に当たる23人が死亡又は行方不明であるにもかかわらず年金を受給していたということです。つまり、年金受給者の3%が行方不明か死亡しているのが実態なのです。
当然、詐欺事件の場合が考えられますが、これまで役所が何も確認していなかった、ということが疑念としてわきあがってきます。
■この問題は、死亡届義務者(戸籍法第87条による同居の親族、その他の同居者、家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人)の義務の不履行や、行政の怠慢で引き起こされています。戸籍行政、住民票行政がズサンだという批判されても仕方がないでしょう。我々の税金で高い給与をもらっている役人が、仕事をさぼり、そのツケがこうして詐欺事件の温床になっているのです。
年金不正受給の抑止には、罰則強化等と含む厳しい取り締まりと、たるんだ行政関係者の綱紀粛正が不可欠です
とくに、市区町村に配置される非常勤の地方公務員特別職で、地域住民の生活状態を調査することが主な仕事内容となっている民生委員のあり方についても、見直す必要があります。
■法律では、我々住民に対して、死亡届が義務付けられています。戸籍法第86条には「死亡の届出は、届け義務者が死亡の事実を知った翌日から7日(国外の死亡は3ヶ月)以内にしなければならない。届書には、死亡の年月日時分および場所ならびに法務省令で定める事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。やむを得ない事由によって診断書又は検案書を得ることができないときは、死亡の事実を証すべき書面を以てこれに代えることができる。この場合には、届書に診断書又は検案書を得ることができない事由を記載しなければならない」と定めてあります。
■さらに、届出をしなかった場合の罰則として戸籍法135条で「届出義務者が、正当な理由がなくて期間内にすべきこの届出を怠った場合には、5万円以下の過料に処せられる。」と定めてあります。過料は、刑罰の「科料」とは異なり、法的秩序の維持や、行政法規違反に対する金銭制裁であって、前科にはあたりませんが、届出を怠ると罰をうけることは間違いありません。
でも、役人にはなにも義務や罰則がありません。これではいかのみ不公平です。早急に、役人は役所内でノホホンと毎日を過ごして禄を食むのではなく、もっと住民の中に飛び込んで、汗をかく必要があるのです。
【ひらく会情報部】
※参考資料
<2010年9月10日現在の全国各地の100歳以上の所在不明者>
自治体 100歳以上 うち120歳以上 うち150歳以上
札幌 3,043 572 0
函館 2,174 572 0
旭川 1,290 162 0
釧路 1,823 400 1
福島 3,655 759 1
山形 2,723 1,153 8
盛岡 1,168 260 0
秋田 3,088 836 11
青森 1,734 410 2
東京 11,877 5,582 14
横浜 8,165 3,114 40
さいたま 2,869 954 5
千葉 5,038 2,222 34
水戸 3,312 1,330 13
宇都宮 1.244 132 0
前橋 3,987 1,996 184(ダントツの全国第1位!)
静岡 3,366 1,081 10
甲府 3,310 1,475 37
長野 3,063 899 9
新潟 4,733 1,263 11
名古屋 2,992 868 3
津 2,579 875 7
岐阜 1,719 599 2
福井 2,769 1,395 8
金沢 2,579 890 0
富山 1,328 213 0
大阪 18,986 6,642 6
京都 1,098 528 1
神戸 11,016 4,472 29(阪神淡路大震災の影響か?)
奈良 1,451 564 3
大津 1,907 592 10
和歌山 6.330 3,321 14
広島 8,284 2,877 32
山口 9,111 2,806 44
岡山 5,402 2,276 59
鳥取 1,616 701 9
松江 1,655 682 11
高松 4,177 1,889 25
徳島 2,109 770 9
高知 2,333 517 7
松山 7,411 3,762 70
福岡 11,000 2,699 6
佐賀 3,178 1,013 1
長崎 4,213 1,045 11
大分 3,767 1,145 3
熊本 9,691 2,652 15
鹿児島 7,090 2,266 15
宮崎 2,076 551 14
那覇 10,718 3,072 103(海外移民の影響か?)
総合計 234,354 77,118 884
