2011/10/12  23:48

コメの収穫期を迎えて報じられた「福島全域でコメ出荷可能」ニュースと日本の食品基準  東北関東大震災・東電福島原発事故

■10月12日の共同通信によると、「福島全域でコメ出荷可能 放射性物質規制値下回る」として次の報道がなされました。

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 コメの作付けが行われた福島県の全ての市町村で収穫された一般米の放射性物質濃度が調査の結果、全て国の暫定規制値(1キログラム当たり500ベクレル)を下回り、出荷可能となったことが10月12日、福島県への調査で分かった。
 県は9月23日、収穫前の予備調査で唯一、目安の200ベクレルを超える500ベクレルちょうどの放射性セシウムが検出された二本松市を「重点調査区域」に指定。収穫後の本調査で調査地点を大幅に増やし監視を強化していた。
 本調査では、500ベクレルを超えた場合、旧市町村エリアごろに出荷が停止される仕組みになっているが、最終的に全ての検体で下回ることが確認されたという。[共同]
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■この内容を見ると、ご同慶の至りですが、どうも腑に落ちません。国の暫定規制値というものの根拠が曖昧だからです。

 たしか、日本政府は、25年前の1986年4月26日に発生したチェルノブイリの原発事故による放射性物質による輸入職員汚染に際して、許容基準値を370ベクレルにしていたはずだからです。当時の新聞記事です。

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1987年1月10日 神奈川新聞
「放射能ナッツ水際阻止」
横浜・大黒埠頭などに陸揚げされていたトルコ産ナッツから基準を上回る放射性物質が検出され、厚生省は9日、輸入元に対しトルコに送り返すよう指示した。汚染されていたのはトルコ産ヘーゼルナッツ。同省は10サンプルを抜き取って国立衛生試験所で放射能検査を行ったところ、全サンプルから許容基準値1キロ当り370ベクレルを大幅に超える520?980ベクレルのセシウム134、137が検出された。
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1987年2月7日 日本海新聞
「輸入香辛料などまた放射能検出」
厚生省は6日、トルコから輸入した月桂樹の葉、セージ(サルビアの葉)とフィンランド産の冷凍の牛の胃から、基準値を上回るセシウム134、137を検出したと発表した。月桂樹の葉からは1キロ当り最低490ベクレルから最高670ベクレル、セージからは同1000ベクレルから3000ベクレル、牛の胃からは440ベクレルのセシウムが検出された。
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1987年2月13日 読売新聞
「放射能汚染 トナカイ肉も」
スウェーデンから成田空港に到着した輸入トナカイ肉が放射能で汚染されていることがわかり、厚生省は13日、積み戻しを指示した。今年1月に届いたトナカイ肉0.5トンのうち0.2トン分からセシウム134、137が1キロ当り389ベクレル検出されたもの。同省では、輸入食品の濃度限度を1キロ当り370ベクレルと定めている。放射能汚染の輸入食品がみつかったのは5件目
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 ヘーゼルナッツやハーブや、牛の胃袋やトナカイ肉などは、毎日食べる食品ではありません。しかし、コメは、いくら昔に比べて消費量が減ったとはいえ、依然として日本人の主食です。輸入食品の濃度限界が1キロ当たり370キロベクレルなのに、なぜコメの安全基準が500ベクレルなのでしょうか。

■これと同じことが、カドミウム汚染米にも言えます。

 国際的な食品基準や汚染低減のための規範を審議して決定する機関であるコーデックス委員会では、コメのカドミウム残留基準を当初0.2ppmとして設定していましたが、日本政府は、厚生労働省が中心に実施した疫学調査の結果と、農水省が中心になって実施した農作物等に含まれるカドミウム実態調査の結果を提出し、必死になって、この基準値の底上げを諮りました。

 そのために、コーディクス委員会に対して、カドミウム残留基準を精白米0.4ppmとした変更手続が日本政府から申請されたのです。つまり、従来の玄米の基準から精白基準にすることによって、カドミウム汚染の比率を軽減することが目的だったからです。その理屈は、コメ消費の多くは精白米で摂取されているから、というものです。

 コメを含めて、厚労省は、次のような修正をコーデックスに求めました。(単位:ppm、カッコ内は日本に適用した場合に基準値を超えることになる当該品目食品の比率=違反率:%)。

   品目      コーデックス案     厚労省案
   コメ       0.2 (3.3%)      0.4 (0.3%)
   大豆      0.2 (16.7%)     0.5 (0.6%)
   サトイモ    0.1 (11.0%)      0,3 (0.5%)
   ニンニク     0.05 (29.5%)    0.2 (0%)
   オクラ      0.05% (25.0%)   0.2 (0.7%)
   トマト      設定せず        0.05 (0%)

 その結果、2006年7月に、精米については0.4 mg/kgという基準値が決められたのでした。しかし、世界では、玄米基準として0.2mg/kgが常識であり、日本のコメがいくら「おいしい=食味がよい」とはいえ、カドミウム汚染濃度を考えると、決して自慢して薦めたり輸出したりできる代物ではないことを認識しておかねばなりません。

■こうした日本政府のダブルスタンダード体質は、今回のコメの放射能汚染の基準値適用に際しても、存分に発揮されたものと言えます。

〜食べ物に含まれる放射性物質の安全基準について、世界各国の基準値を比較したものがあります。次のその一例を示します。

●ベラルーシ(子供)              37 Bq/kg
●ウクライナ(野菜)セシウム137        40 Bq/kg
●ベラルーシ(野菜)              100 Bq/kg
●コーデックス(Sr90,Ru106,I131,U235の合計) 100 Bq/kg
●アメリカの法令基準             170 Bq/kg
●これまでの日本の輸入品規制値         370 Bq/kg
●日本の暫定基準値(野菜) セシウム137     500 Bq/kg
●日本の暫定基準値(野菜) ヨウ素131     2000 Bq /kg

■こうした放射能汚染に対する我が国の食品基準の大甘な現状を外国の専門家が批判するのは当然です。10月12日の共同通信は次のように報じています。

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日本の食品基準は甘すぎ ベラルーシ専門家が批判
チェルノブイリ原発事故後の住民対策に取り組んできたベラルーシの民間の研究機関、ベルラド放射能安全研究所のウラジーミル・バベンコ副所長が12日、東京都内の日本記者クラブで記者会見した。東京電力福島第1原発事故を受け、日本政府が設定した食品や飲料水の放射性物質の基準値が甘すぎ、「まったく理解できない」と批判、早急に「現実的」な値に見直すべきだと述べた。
 例えば、日本では飲料水1キログラム当たりの放射性セシウムの暫定基準値は200ベクレル。一方、ベラルーシの基準値は10ベクレルで、20倍の差があるという。
 ベラルーシでは内部被ばくの影響を受けやすい子どもが摂取する食品は37ベクレルと厳しい基準値が定められているが、日本では乳製品を除く食品の暫定基準値は500ベクレルで、子どもに対する特別措置がないことも問題視。「37ベクレルでも子どもに与えるには高すぎる。ゼロに近づけるべきだ」と指摘した。(2011.10.12 20:28共同)
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■大震災で世界中から義捐金を送ってもらったのに、この国は、東電福島原発事故で放射性物質を世界中に撒き散らしてしまいました。にもかかわらず、相変わらず日本政府は脱原発政策に舵をとることができず、原子力ムラの利権を温存しようとしています。

 同じ敗戦国のドイツやイタリア、そして中立国のスイスがいち早く脱原発を打ち出したのに比べると、この国には将来の世代を見据えた正しい見方のできる為政者のいないことがよくわかります。それのは、「長いものには巻かれろ」的な国民性が起因しているのかもしれません。

【ひらく会情報部】
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