2012/2/21  23:26

ノルマにあえぐ地域警察官への「実績低調者」という烙印の実態解明に立ちはだかるバリヤー(その1)  警察裏金問題

■警察用語に「実績低調者」という言葉があります。これは読んで字のごとく「検挙実績が低調な者」のことです。検挙実績が、予め与えられた実績数に達しない場合、警察ではこういう烙印を押して、あれこれいじめているのです。

 警察官には、いろいろなノルマが課せられています。とくに厳しいのは交通切符や検挙で、これらは全てノルマなので、例えば交通切符が少ないと、実績低調者として一箇所に集められ、懲罰講習を受けなければなりません。つまり、毎月検挙率の目標値が定められ(ノルマが課せられ、それを1カ月単位で集計した結果、達成できなければ、課長や署長から厳しく叱責されて、始末書をとられ、2、3カ月も目標未達成だと、「実績低調者」として本部の地域課に呼ばれて罵声を浴びせられて叱責されるというのです。このことを警察用語では「招致教養」と言うそうです。


■警察官が街中でよくやっている「ネズミとり」と呼ばれる行為が知られています。スピードの出しやすい道路のものかげに警察官が潜み、通過する車両がスピード違反を犯したのを確認して、その運転手に反則切符を切る方法です。事故の「予防」ではなく、「速度違反という犯罪」をうまく誘発させて、その場で摘発するという卑劣な手法ですが、これもノルマが課せられているから、警察官が義務付けられている行為なのです。

これと同じような手法に「職務質問」があります。気の弱そうな通行人を呼び止めて、所持品検査と称して、かばんの中をあけさせ、中に十徳ナイフのような銃刀法や軽犯罪法の取り締まり対象となるものが入っていた場合、「ちょっとパトカーの中でお話をうかがえますか」、「ここでは何ですから、ちょっと警察署まで来てもらえますか」と、その人物を言葉巧みに警察署まで連れて行き、調書を仕上げたり、指紋や顔写真を半ば強制的に撮ったりする行為です。

昨年9月、ロシアから3名の技術者を日本に招聘したことがありますが、成田空港から帰国する3名を見送るため、一緒に連れて行った時、成田空港第1ターミナル駅で降りて、改札を出て、パスポート検査場所を通った直後、後ろから呼ぶ声がするので振り返ると、3名のうち2名が千葉県警の警察官に職務質問をさせられていました。見ると、パスポートを取り上げて、個人情報をメモしたりしています。「これは私が招聘したお客さんですが、なにか問題でもあるのですか」と警察官に尋ねたところ、「いやちょっと、パスポートを拝見させてもらっているだけだ」というのです。地下のロビーを通過する外国人全員が対象というわけではなく、声をかけやすそうな人を選んで声をかけて、パスポートの中をみるのです。

 当会は、「パスポートは、10mしか離れていない空港警備のカウンターで、既に全員提示済なのだから、どうせパスポートをチェックするなら、空港警備の人たちと一緒にチェックしたらどうですか」と質問しましたが、どうもその気はないようです。当会は警察官に対して「せっかくよい印象を日本に抱いた外国人が、もうすぐ帰国するというタイミングにこのような無駄なことをするのはやめてほしい」と申し入れました。

■このように、ノルマという形で目標を課せられ、その目標を達成できない場合「実績低調者」として烙印を押す警察のシステムについて関心を抱いたので、当会の事務局長が代表を務める市民オンブズマン群馬では、平成22年1月21日付で群馬県警察本部長宛に「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」の公文書開示請求書を提出しました。

 その結果、同2月1日付群地第26号で決定期間を2月4日から3月23日まで延長する旨の決定期間延長通知書が届きました。理由は、「業務がふくそうしていることに加えて、開示請求に係る公文書の開示・非開示の審査に相当の期間を要するため」とされていました。県警の担当課は生活安全部地域課となっていました。

 続いて、平成22年2月17日付群地第37号では、公文書開示決定通知書として「平成20年4月9日付、群地第174号 地域警察官実績低調者等指導要綱の制定について(通達)」若しくはこれに類する文書」が2月26日(金)午後2時に県庁2階県民センターで開示されました。これこそが、冒頭のノルマを警察官に課す為の根拠となっている、県警本部長からの通達です。

 いよいよ実績低調者に関する指導状況についても開示されるのか、と期待していたところ、同日の群地第38号として「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書について、非開示決定通知書が届きました。開示しない理由は次の通りとなっていました。

○群馬県情報公開条例第14条第2号該当
 個人の勤務成績及び個人の評価に関する情報であって、特定の個人を識別することができる情報(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報を含む。)又は公にすることにより、個人の権利利益を侵害する恐れがある情報であるため。¥

○群馬県情報公開条例第14条第4号該当
 職務質問の内容や各種取り締まり状況等、犯罪の予防、操作の手法、技術、体制、方針等に関する情報が含まれており、公にすることにより将来の犯行を容易にし、又は将来の操作に支障を生じる恐れがあるため。

○群馬県情報公開条例第14条第6号該当
 人事管理に係る情報であり、公にすることにより、円滑な人事管理に支障を及ぼすおすぉれ及び今後の警察活動の適正な遂行に支障を及ぼす恐れがあるため。

■このため、市民オンブズマン群馬では、行政不服審査法に基き、平成22年4月12日付で、異議申立を行いました。公安委員会向けには異議申立書ではなく、審査請求書という名称が使われます。

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審査請求書
平成22年3月29日
群馬県公安委員会 御中
   審査請求人
 郵便番号 371-0801
 住  所 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
 氏  名 市民オンブズマン群馬
代表 小川 賢 (58歳)
 連絡先 TEL:027−224−8567
事務局長 鈴木 庸
行政不服審査法の規定に基づき、次のとおり公文書非開示決定に対して異議申立を行います。

1. 審査請求申立に係る処分:
群馬県警察本部長が審査請求人に対して平成22年2月17日付け(群地第38号)で行った「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」に関する非開示決定処分(以下「本件処分」という。)

2. 審査請求申立に係る処分があったことを知った年月日:平成22年2月19日

3. 審査請求申立の趣旨:
本件処分は、条例を不当に解釈し運用されたものであり、本件処分の取り消しを求めます。

4. 審査請求申立の理由:
(1)審査請求申立人は県民として公文書の開示を求める権利を有しています。
(2)群馬県警本部長は、群馬県情報公開条例第14条第2項、第4項、第6項に該当するとしましたが、審査請求申立人は次の理由により本件処分は公にすることが必要と考えます。
@条例第14条2項に非該当:公務員である警察官又は警察職員(以下「警察官等」という)として県民の代表として勤務する公人が、県民・国民の税金により雇われ、県民・国民の安全・安心のために公然と勤務しているものであって公開することが何ら(警察官等の)個人の権利利益を侵害するおそれは全くないため。
A条例第14条4項に非該当:警察官等の「職務質問の内容や各種取締り状況等、犯罪の予防、捜査の手法、技術、体制、方針等に関する情報(以下「技術等情報」という)が含まれており、としているが、この技術等情報こそが、群馬県警察本部長が「実績低調者に対して行った指導状況」であると推測される。「警察官等」を雇っている納税者の県民・国民に対して技術等情報を明らかにすることは、納税者の知る権利である。また、審査請求申立人に対して本件処分を取り消しても、将来の犯行を容易にし、又は将来の捜査に支障を生じるおそれはない。なぜなら、審査請求申立は、技術情報等を、地域住民の安全・安心のための活動に役立てるものであり、将来の犯行増加や捜査への支障は全くないため。
B条例第14条第6項に非該当:本件処分を取り消すことこそ、適正、警察の円滑な人事管理を実現する最も有効性のある情報であり、人事管理や警察活動に支障を与えるおそれは全くないため。
(3)よって、本件処分を取り消し、全面開示を求めます。

5.処分庁の教示の有無及びその内容:平成22年2月17日付群地第38号の公文書非開示決定通知書により、「この決定に不服がある場合には、この決定があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に、群馬県公安委員会に対して審査請求をすることができます」と通知されました。
                  以 上
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■ところが、今度は審査請求書の記載事項等の要件が満たされていない、という理由で補正命令が平成22年4月19日付で届きました。

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        審査請求書の補正命令について(連絡)
 貴団体は、平成22年2月17日付(群地第38号)で群馬県警察本部長が行った公文書非開示決定処分について、行政不服審査法に基づく不服申立てを行うとして、群馬県公安委員会に「審査請求書」を郵送されました。
 審査請求書については、不服申立てに係る事務担当係である群馬県警察本部警務部監察官室(訟務係)にて受領しましたが、同審査請求書の記載事項等の要件について確認したところ、記載事項の一部に不備(記載漏れ等)のあることが判明しました。
 提出された「審査請求書」に対する「補正命令」が群馬県公安委員会から発せられましたので、郵送させていただきます。
 期間内に「補正された審査請求書」、貴団体の会則の写し及び代表者の選任したことを証する総会議事録等の写しを各2通、下記あて先まで郵送してください。
 なお、期限内に提出がなされなかった場合には、不適法なものとして「却下」されることがありますので、ご了承ください。
                  あて先
                    〒371−8580
                    群馬県前橋市大手町一丁目1番1号
                    群馬県公安委員会
                  問い合わせ先
                    群馬県警察本部警務部監察官室総務係
                    電話 027−243−0110
                       内線(2883)
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     補  正  命  令  書
                   群公委第520号
                   平成22年 4月19日
住所 群馬県前橋市文京町1丁目15−10
   市民オンブズマン群馬
   代表小川賢  殿
           群馬県公安委員会 印
 あなたの審査請求書は、次の事項について不適法ですから、平成22年5月17日までに補正してください。
        記
1 代表者の資格の証明等
 行政不服審査法第13条第1項では、「代表者若しくは管理人、総代又は代理人の資格は、書面で証明しなければならない。」と規定していますので、貴団体の会則の写し及び代表者の選任したことを証する総会議事録等の写しを提出してください。
2 記載漏れの事項(代表者の住所)
 行政不服審査法第15条第2項では、「審査請求人が、法人その他の社団若もくは財団であるとき、総代を互選したとき、又は代理人によって審査請求をするときは、審査請求書には、前項各号に掲げる事項のほか、その代表者若しくは管理人、総代又は代理人の氏名及び住所を記載しなければならない。」と規定していますので、代表者の住所を記載してください。
3 押印漏れの事項(代表者の押印)
 行政不服審査法第15条第4項では、「審査請求書には、審査請求人(審査請求人が法人その他の社団又は財団であるときは代表者又は管理人、総代を互選したときは総代、代理人によって審査請求をするときは代理人)が押印しなければならない。」と規定していますので、代表者の押印をしてください。
4 正副2通の審査請求書
 行政不服審査法第9条第2項では、「不服申立書は、異議申立ての場合を除き、正副2通を提出しなければならない。」と規定していますので、上記事項を補正した正副2通の審査請求書を提出してください。

 なお、上記期限までに補正に応じないときは、行政不服審査法第40条第1項の規定により、不適法な審査請求として却下されることがあります。
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■このため、市民オンブズマン群馬では、平成22年4月28日付で補正書を作成して提出しました。

 その後、市民オンブズマン群馬の審査請求書は、次の経緯を辿って、群馬県公文書開示審査会で審査が続けられたのでした。

 平成22年6月10日 諮問
 平成22年7月16日 諮問庁からの理由説明書を受領
 平成22年8月24日 審査請求人からの意見書を受領
 平成22年9月6日(第35回第二部会)  審議(本件事案の概要説明)
 平成22年11月4日(第127回審査会) 審議
平成22年12月14日(第128回審査会) 審議(実施期間の口頭説明)
平成23年1月19日(第129回審査会) 審議
平成23年3月7日(第130回審査会) 審議(審査請求人の口頭陳述)※欠席
平成23年4月19日(第131回審査会) 審議
平成23年5月23日(第132回審査会) 審議
平成23年7月5日(第133回審査会) 審議
平成23年8月24日(第134回審査会) 審議
平成23年9月30日(第135回審査会) 審議
平成23年11月7日(第136回審査会) 審議
平成23年11月15日 答申

■この過程で、平成22年7月20日付で、諮問庁である群馬県公安委員会から「公文書非開示決定とした理由説明書」と、それを踏まえての請求人への意見書提出の依頼書が送られてきました。

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様式第4号(規格A4)(第7条関係)
                               公開審第30105-2号
                               平成22年7月20日
市民オンブズマン群馬
 代表 小川 賢 様
                  群馬県公文書開示審査会会長 新井博
           意見書の提出の求めについて
 下記1の諮問事件について、当審査会の調査審議の参考としたいので、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第1項の規定に基づき、下記2のとおり意見書の提出を求めます。
    記
1 諮問事件
 諮問番号:諮問第1 2 9号
 事件名:「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」の公文書非開示決定に対する審査請求
2 意見書の提出
(1)提出期限
 平成22年8月24日(火)
(2)提出を求める意見書及び提出方法
 別紙様式により作成した書面を、持参又は郵送で群馬県生活文化部県民生活課に提出してください。
 なお、提出された意見書は、群馬県公文書間示奏査会奏議要領第7条第2項の規定に基づき諮問庁にその写しを送付しますので、念のため申し添えます。
                   〒371-8570前橋市大手町1-1-1群馬県庁
                   事務局:県民生活課情報公開係
                   電話:027-226-2271
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(別紙)
                               平成○年○月○目
群馬県公文書開示審査会会長 様
                           審査請求人住所・氏名
     「意見書」の提出について
 このことについて、群馬県公文書開示審査会審議要領第7条第1項に基づく「意見書」
を下記により提出します。
     記
1 開示請求公文書の特定について
2 群馬県情報公開条例における開示・非開示の解釈について
3 諮問庁の公文書を開示しない理由に対する意見
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【群馬県公安委員会からの理由説明書】
(群馬県県民生活課収受22・7・16)
            群公委第1074号
            平成22年 7月16日
群馬県公文書開示審査会
会 長  新 井  博 様
                      群馬県公安委員会
「理由説明書」の提出について
 平成22年6月14日付け公開審第30105−1号により依頼のあったみだしのことについて、別添のとおり送付します。
       公文書非開示決定とした理由説明書
1 開示請求に係る公文書の特定について
 審査請求人は、群馬県情報公開条例(平成12年群馬県条例第83号。以下「条例」という。)第12条第1項の規定により、平成22年1月21日付けで、次の公文書開示請求を行なった。
 「群馬県警察が実績低調者に対して行った指導状況が分かる一切の文書」
 この請求内容から、実施機関は、本件開示請求に係る公文書を、地域警察官検挙実績低調者等指導要綱の制定について(平成20年4月9日付け群地第174号通達)に基づいて、実績低両者に対して指導を行った状況が記載された指導・面接結果(通達別記様式第3号)及び群馬県警察身上指導推進要綱の制定について(平成14年群本例規第35号)に基づいて作成される身上指導記録表(別記様式第2号)と特定した。
2 条例における開示・非開示の解釈について
 公文書の開示については、条例第13条で「次条に規定する場合を除き、開示請求者に対し、当該公文書を開示しなければならない。」と定めている。
 これを受けて、条例第14条では、個人又は法人の権利利益の保護、公共の安全と秩序の維持、事務又は事業に関する情報で公にすることにより適正な業務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの等の観点から、限定的に非開示情報を規定している。
 実施機関は、条例第14条に規定される非開示情報が記録されている場合を除き開示請求に応じて公文書を開示しなければならない義務を負うものであり、公文書の非開示決定は、個々の開示請求ごとに当該公文書に記載されている内容等に即して、かつ、条例の規定の趣旨に添って、個々具体的に判断しなければならない。
(1)条例第14条第2号(個人情報)
 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を書するおそれがある情報は非開示としている。
(2)条例第14条第4号(公共安全情報)
 公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報は非開示としている。
(3)条例第14条第6号(事務事業情報)
 地方公共団体が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、円滑な人事管理に支障を及ぼすおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある場合は非開示として規定している。
3 非開示とした理由
(1)本件対象公文書について
ア 指導・面接結果
 指導・面接結果は、実績が低調である地域警察官の能力及び実績の向上を図り、治安の回復に資することを目的として、指導・面接実施者である警察署長、警察署地域課長等が実績低調者と面接し、当該職員から実績低調項目について、その理由等を聞き取りながら、あらゆる角度から原因等を検証し、改善すべき点、問題点、組織として取り組むべき事項等を把握して、検挙実績の向上に向けた指導教養内容が記載されるものであり、警察署地域課長等が作成するものである。
イ 身上指導記録表
 身上指導記録表は、警察職員の家庭環境、健康、悩み、勤務態度等の身上事項を把握し、早期に問題点を発見して組織的指導等を適切に行い、各種事故防止はもとより、職員が心身共に健全な状態で職務に専念できるようにすることを目的として、監督者である警察署長等が面接結果や身上把握をした事項をその都度記載するものである。また、前述の「指導・面接結果」については、その指導概要を身上指導記録表に転記することとなっている。
(2)条例第14条第2号該当性について
 本件対象文書には、実績低調者の氏名、所属、職名、性別、年齢、面接実施者の氏名等、個人を識別することができる情報が記載されており、条例第14条第2号に該当する。また、これら個人識別情報を非開示としたそのほかの部分には、指導・面接した結果として、実績低調者の勤務状況、改善すべき点等が記載されており、この部分を公にすることは、当該個人の権利利益を書することから、条例第14条第2号に該当すると判断した。
 本件対象文書である指導・面接結果は、実績が低調である地域警察官について作成されるものであり、本件対象文書が作成されているということ自体が、個人の資質や名誉にかかわる当該個人の評価に関する情報である。したがって、開示、非開示の判断に当たっては、直接的又は間接的に個人を識別することができる情報のほか、個人を識別することはできないが、なお個人の権利利益を書するおそれがある情報に配意しなければならない。
(3)条例第14条第4号該当性について
 本件対象文書には、実績低調者の指導を行う上で、職務質問の内容や各種取締りの状況等が記載されている部分があり、これらの情報を公にすることは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認められ、条例第14条第4号に該当する。
 なお、これらの情報は、当該職員を指導するために記載された情報であり、当該職員の能力や資質に係る情報であるから個人に関する情報でもある。
(4)条例第14条第6号該当性について
 本件対象文書は、実績が低調である地域警察官について作成されるものであり、職員を評価し、改善を図ることを目的とした人事管理に係る情報である。本件対象文書が作成されているということ自体が、個人の資質や名誉にかかわる個人情報であり、これを公にすることは、当該職員に組織への不信感を抱かせ、自己評価との差異を巡る監督者との対立を招くなど、組織の一体性を失わせ、また、当該職員が萎縮し、志気の低下を招くなど、実績低調の改善を図るという当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあることから、条例第14条第6号に該当する。
(5)非開示決定について
 本件対象文書は、前述のとおり、その全体が条例第14条第2号及び同条第6号の非開示情報に該当するとして、そのすべてを非開示としたものである。
 なお、指導・面接結果の様式については、審査請求人が行った別の開示請求により、既に審査請求人に開示している。
4 審査請求人の主張について
(1)審査請求人は、公務員である警察官等は、県民の代表として勤務する公人であり、県民・国民の安全・安心のために公然と勤務しているものを公開しても、何ら個人の権利利益を侵害するおそれは全くないと主張している。
 しかし、本件対象文書に記載された職員の氏名等については、前記3(2)「条例第14条第2号該当性について」のとおり、職務遂行上の情報ではなく、個人に関する実績等の評価に関するものであることから、階級に関係なく、個人情報として非開示と考える。
(2)審査請求人は、警察官等の行う職務質問の内容や各種取締り状況等を非開示情報としているが、県民・国民には知る権利があることから開示するべきであると主張している。
 しかし、条例第14条第4号において、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示と規定しており、本件対象文書の内容は、職務質問の内容や各種取締り伏況等、犯罪の予防、捜査の手法、技術、体制、方針等、公共の安全と秩序の維持に必要な情報が含まれている。
 また、これらの情報は、実績が低調である地域警察官を指導するために記載された情報であり、当該職員の能力や資質に係る情報であるから個人に関する情報でもある。
 したがって、非開示として保護されるべき情報であり、審査請求人が主張する知る権利を持っても、なお、尊重されるべきである。
(3)審査請求人は、本件対象文書を開示することが適正、円滑な人事管理を実現する最も有効性のある情報であるとして、非開示処分を取り消すべきであると主張している。
 しかし、本件対象文書は、実績低調者の平素の勤務状況等を通じての指揮・指導、監督や、個々面接等を通じて、警察署長等の監督者の評価等が記載されており、このような評価等が開示された場合、当該職員に組織への不信感を抱かせ、自己の評価との差異を巡る監督者との対立を招くなど、組織の一体性を失わせ、
 また、当該職員が萎縮し、志気の低下を招くなど、実績低調の改善を図るという当該事務の遂行に支障を及ぼし、条例第14条第6号における人事管理に係る事務に開し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ及び今後の警察活動の適正な遂行に支障を生ずるおそれが十分認められることから、審査請求人の主張は認められない。
<群馬県情報公開条例>
改正 平成21年3月27日群馬県条例第22号
<解釈>
第14条(非開示情報)関係
(非開示情報)
第14条 実施機関は、開示請求に係る公文書に次の各号に掲げる情報(以下「非開示情報」という。)のいずれかが記録されている場合は、当該公文書を関示してはならない.                                   
【趣旨】
 本条は、開示請求に係る公文書に非開示情報が記録されている場合は、当該公文書を開示してはならない旨定めるものである。
【解説】
(1)原則開示のルールの下では、非開示情報に該当するとして例外的に非開示の決定がなされた場合、その非開示決定の妥当性を立証する責任は実施機関が負うものである。
(2)本条各号の非開示情報は、保護すべき利益に着目して分類したものであり、ある情報が各号の複数の非開示情報に該当する場合があり得る。ヽまた、例えば、ある個人に関する情報について、第2号のただし書の情報に該当するため同号の非開示情報には該当しない場合であっても、他の号の非開示情報に該当し非開示となることはあり得る。よって、ある情報を開示する場合は、本菜の非開示情報のいずれにも該当しないことを確認することが必要である。
(3)本条各号で用いられている「公にすること」とは、秘密にせず、何人にも知り得る状態におくことを意味する。本条例では、何人も関示請求ができることから、開示請求者に開示するということは、何人に対しても開示を行うことが可能であるということを意味する。したがって、本菜の各号において非開示情報該当性の判断をする場合、各号に規定された「おそれ」の有無等については、「開示請求者に開示することにより」ではなく、「公にすることにより」判断することとしている。
(4)非開示情報該当性は、時の経過、社会情勢の変化、当該情報に係る事務・事業の進行状況等の事情の変更に伴って変化するものであり、開示請求があった都度判断しなければならない。このような変化は、「おそれ」が要件となっている非開示情報の場合に顕著であると考えられる。一般的には、ある時点において非開示情報に該当する情報が、別の時点においても当然に非開示情報に該当するわけではない。なお、個々の開示請求における非開示情報該当性の判断の時点は、開示決定等の時点である。
第14条第2号(個人情報)
(2)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)又は特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの。ただし、次に掲げる情報を除く。
イ 法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報
ロ 人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報
ハ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第1031号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。)、独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員、地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ.)の役員及び職員並びに公社の役員及び職員をいう.)である場合において、当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の職及び氏名(当該公務員等の氏名を公にすることにより、当該公務員等の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると詰めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除く。)並びに当該職務遂行の内容に係る部分
【趣旨】
  本号は、個人に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。
【解説】
1 本文
(1)個人に関する情報については、個人のプライバシーなどの権利利益を害するおそれがあるものに限って非開示情報とする方式(プライバシー保護型)を採用している県もあるが、いわゆるプライバシーの概念は、法的にも社会通念上も必ずしも確立したものではないことから、本条例では、個人の権利利益の十分な保護を図るため、特定の個人を識別できる情報は、原則として非開示とする方式(個人識別型)を採用している。しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を超えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。そこで、特定の個人を識別することができるもの(以下「個人識別情報」という。)を原則非開示とした上で、個人の権利利益を侵害せず非開示にする必要のないもの、
 及び個人の権利利益を侵害しても開示することによる公益が優先するため開示すべきものを、本号イからロで例外的事項として限定列挙している。
(2)「個人に関する情報」(以下F・個人情報」という。)とは、個人の内心、身体、身分、地位その他個人に関する一切の事項についての事実、判断、評価等のすべての情報が合まれるものであり、個人に関連する情報全般を意味する。 したがって、個人の属性、人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報も含まれる。
(3)個人の権利利益を十全に保護するため、個人識別情報を一般的に非開示とし、本号本文の判断に当たり、原則として、公務員等に関する情報と非公務員等に関する情報とを区別していない。ただし、前者については、特に非開示とすべきでない情報を本号ハにおいて除外している。
(4)「個人」には、生存する個人のほか、死亡した個人も含まれる。生前に本号により非開示であった情報が、個人が死亡したことをもって開示されることとなるのは不適
 当であるからである。
(5)「事業を営む個人の当該事業に関する情報」は、個人情報の意味する範囲に含まれるが、当該事業に関する情報であるので、法人その他の団体に関する情報と同様の要件により非開示情報該当性を判断することが適当であることから、本号の個人情報からは除外している。
(6)「その他の記述等」としては、例えば、住所、電話番号、役職名、個人別に付された記号、番号(振込口座番号、試聴の受験番号、保険証の記号番号等)などが挙げられる。氏名以外の記述等においては、単独では必ずしも特定の個人を識別することができない場合もあるが、当該情報に含まれるいくつかの記述等が組み合わされることにより、特定の個人を識別することとなる場合が多いと考えられる。
(7)「特定の個人を識別することができるもの」の範囲は、当該情報に係る個人が誰であるかを識別させることとなる氏名その他の記述の部分だけでなく、氏名その他の記述等により識別される特定の個人情報全体である。
(8)「(他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)」とは、当該情報単独では特定の個人を識別することができないが、他の情報と照合することにより識別可能となるものについても、個人識別情報として非開示情報となるという趣旨である。
 照合の対象となる「他の情報」としては、公知(周知)の情報や、図書館などの公共施設で一般に人手可能なものなど一般人が通常入手し得る情報が含まれる。また、何人も開示請求できることから、仮に当該個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれると解する。他方、特別の調査をすれば人手し得るかもしれないような情報については、一般的には、「他の情報」に含めて考える必要はないものと考えられる。
 照合の対象となる「他の情報」の範囲については、当該個人情報の性質や内容等に応じて、個別に適切に判断することが必要となる。
(9)個人識別性の判断に当たっては、厳密には個人識別情報ではないが、当該情報の性質、集団の性格、規模等により、個人の権利利益の十全な保護を図る観点から個人識別性を認めるべき場合がある。例えば、特定の集団に属する者に関する情報を開示すると、当該集団に属する個々人に不利益を及ぼすおそれがある場合がこれに当たる。
(10)「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお、個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、実施機関が保有する個人情報の大部分は個人識別情報であり、これを非開示とすることで、個人の権利利益の保護は基本的には十分確保されると考えられるが、中には、匿名の作文や無記名の個人の著作物のように、個人の人格と密接に関連したり、公にすれば財産権その他の個人の正当な利益を害するおそれがあると認められたりするものがあり得ることから、補充的に非開示情報として規定したものである。
2 イ
(1)個人識別情報であっても、一般に公にされている情報については、あえて非開示情報として保護する必要性に乏しいものと考えられることから、ただし書により、本号の非開示情報から除くこととしたものである。
(2)「法令等の規定」は、何人に対しても等しく当該情報を公開することを定めている規定に限られる。公開を求める者又は公開を求める理由によっては公開を拒否する場合が定められていれば、当該情報は「公にされている情報」には該当しない。
(3)「慣行として」とは、公にすることが慣習として行われていることを意味するが、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として公にされていること又は公にすることが予定されていることで足りる。
 当該情報と同種の情報が公にされた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り、「慣行として]には当たらない。
(4)「公にされ」とは、当該情報が現に公衆が知り得る状態に置かれていることを意味するが、現に公知(周知)の事実であることまでは必要としない。
 過去に公にされたものであっても、時の経過により現に公衆が知り得る状態に置かれていなければ、開示決定等の時点では公にされているとはいえない場合があり得る。
(5)「公にすることが予定されている情報」とは、将来的に公にする予定(具体的に公表が予定されている場合に限らず、求めがあれば何人にも提供することを予定しているものも含む。)の下に保有されている情報をいう。ある情報と同種の情報が公にされている場合に、当該情報のみ公にしないとする合理的な理由がないなど、当該情報の性質上、通例、公にされるものも含まれる。
3 ロ
(1)人の生命、健康その他の基本的な権利利益を保護することは、実施機関の基本的な責務である。
 非開示情報該当性の判断に当たっては、開示することの利益と開示されないことの利益との調和を図ることが重要であり、個人情報についても、公にすることにより害されるおそれがある当該情報に係る個人の権利利益よりも、人の生命、健康等の保護の必要性が上回るときには、それを開示する必要性と正当性が認められることから、
 当該情報を開示しなければならないこととするものである。現実に、人の生命、健康等に被害が発生している場合に限らず、将来これらが侵害される蓋然性が高い場合も含まれる。
 この比較衡量に当たっては、個人の権利利益には様々なものがあり、また、人の生命、健康、生活及び財産の保護についても、保護すべき権利利益の程度に差があることから、個別の事案に応じた慎重な検討が必要である。
(2)人の生命、健康等の基本的な権利利益の保護以外の公益との調整は、公益上の理由による裁量的開示の規定(第16条)により図られる。
4 ハ
(1)公文書には、公務遂行の主体である公務員の職務活動の過程又は結果が記録されているものが多いが、県の諸活動を説明する責務を全うするという観点からは、これらの情報を公にする意義は大きい。一方で、公務員についても、個人としての権利利益は十分に保護する必要がある。
 この両者の要請の調和を図る観点から、どのような地位、立場にある者(「職及び氏名」)がどのように職務を遂行しているか(「職務遂行の内容」)については、たとえ特定の公務員が識別される結果になるとしても、当該公務員個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合を除き、個人に関する情報としては非開示とはしないこととする趣旨である。
 なお、独立行政法人等及び地方独立行政法人の役員及び職員については、独立行政法人等及び地方独立行政法人が行政を担う主体であり、その役員及び職員については、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)においても公務員と同様の取扱いをしていることから、本号においても公務員と同様に取り扱うこととする。また、公社の役員及び職員についても、公社が広い意味での県行政を補完する業務を行っていることから、公務員と同様に取り扱うこととするものである。
(2)「公務員等」の職務遂行に係る情報が職務遂行の相手方など公務員等以外の個人情報である場合がある。このように一つの情報が複数の個人情報である場合には、各個人ごとに非開示情報該当性を判断する必要がある。すなわち、当該公務員等にとっての非開示情報該当性と他の個人にとっての非開示情報該当性が別個に検討され、いずれかが非開示情報に該当すれば、当該部分は非開示とされることになる。
 「公務員等」とは、広く公務遂行を担任する者を含むものであり、一般職か特別職か、常勤か非常勤かを問わず、国及び地方公共団体の職員のほか、国務大臣、国会議員及び地方議会議員並びに独立行政法人等、地方独立行政法人及び公社の役員及び職員等を含む。また、公務員等であった者が当然に含まれるものではないが、公務員等であった当時の情報については、本号ハの規定は適用される。
(3)「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が行政機関その他の国の機関、地方公共団体の機関、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報を意味する。例えば、行政処分その他の公権力の行使に係る情報、職務としての会議への出席、発言その他の事実行為に関する情報がこれに含まれる。
(4)本号ハは、具体的な職務の遂行と直接の関連を有する情報を対象とし、例えば、公務員等の情報であっても、職員の人事管理上保有する健康情報、休暇情報等は管理される職員の個人情報として保護される必要があり、本号ハの対象となる情報ではない。
 なお、「休暇情報等」でも、特定の日に職務に従事していなかったこと、職務専念義務が免除されていたこと、欠勤していたこと等の情報は本号ハに該当する可能性がある。
 ただしこの場合にも、年次有給休暇、病気休暇などの休暇の種別や、職務専念義務免除の個別具体的な内容、欠勤の理由等は本号ハに該当せず非開示情報として取り扱う(最高裁第二小法廷平成15年上1月21目判決(平成12年(行ヒ)第334号))。
(5)「そのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名」は、職務の性質上、個人の権利利益を害するおそれが強いと実施機関が判断した職にある公務員を保護するために設けたものである。これに該当する職にある者として、警察本部告示(平成14年群馬県警察本部告示第1号)において、「警部補以下の階級にある警察官及びこれに相当する警察職員をもって充てる職」が指定されている。
5 本人からの開示請求
 本条例の開示請求制度は、何人に対しても請求を認めていることから、本人から、本人に関する情報の開示請求があった場合にも、開示請求者が誰であるかは考慮されない。したがって、個人識別情報等(本号本文)であれば、本号イからハ又は公益上の理由による裁量的開示(第16条)に該当しない限り、非開示となる。
 なお、本人情報の開示請求については、群馬県個人情報保護条例(平成12年群馬県条例第85号)を参照のこと。
6 食糧費支出に係る公文書の開示の取扱い
 公文書の開示等に関する条例においては、公務員の職・氏名についても個人情報に該当し非開示とされていたが、食糧費支出に関しては、行政の透剛性確保のため、平成8年5月24日付広第5号(食糧費支出に係る公文書の開示取扱について(通知)総務部長から各実施機関(議会、公安委員会及び警察本部長は除く。)及び各所属長あて)により、会議に伴う弁当、茶菓子及び式典、イベントに伴う飲食等については、相手方を含めた出席者の職・氏名を開示することとし、また、意見交換、情報収集、交渉、協議、打合せ等に伴う飲食についても相手方を含めた出席者の職・氏名は原則開示としてきたところである。
 群馬県情報公開条例においては、本号ハにより、職務の遂行に係る公務員の職・氏名は、当該公務員の個人の権利利益を不当に侵害するおそれがある場合又はそのおそれがあると認めて実施機関が定める職にある公務員の氏名を除き、開示されるものである。
 また、公務員以外の食糧費支出の伴う会議等出席者の職・氏名については、前述の通知により平成8年6月1日以降に作成・取得した公文書(決裁・供覧済みのものに限る。)の原則開示が統一的に行われ、すでに定着したものであるので、本号イの「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当すると考えられる。よって、食糧費支出に係る公文書に記載されている公務員以外の出席者の職・氏名についても、原則として、非開示とする個人情報には当たらないと解する。なお、会議等の内容によっては、公務員・公務員以外を問わず、第6号等他の非開示情報に該当することはあり得る。
第14粂第4号(公共安全情報)
(4)公にすることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報
【趣旨】
 本号は、公共の安全等に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。
【解説】
(1)公共の安全と秩序を維持することは、国民全体の基本的な利益を擁護するために国及び地方公共団体に諜せられた重要な責務であり、情報公開制度においてもこれらの利益は十分に保護する必要がある。
 そこで、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある情報を非開示とし、その判断の司法審査に当たっては、実施機開め裁量を尊重することとするものである。
(2)「犯罪の予防」とは、犯罪の発生を未然に防止することをいう。なお、県民の防犯意識の啓発、防犯機材の普及等、一般に公にしても犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがない防犯活動に関する情報については、本号に該当しない。
 「犯罪の鎮圧」とは、犯罪が正に発生しようとするのを未然に防正したり、犯罪が発生した後において、その拡大を防止し、若しくは終息させることをいう。
 「犯罪の捜査」とは、捜査機関が犯罪があると思料するときに、公訴の提起(検察官が裁判所に対し、特定の刑事事件について審判を求める意思表示をすることを内容とする訴訟行為をいう。)などのために犯人及び証拠を発見、収集又は保全することをいう。
 刑事訴訟法によれば、犯罪捜査の権限を有する者は、検察官、検察事務官及び司法警察職員であり、司法警察職員には、一般司法警察職員と特別司法警察職員とがある。
「公訴の維持」とは、提起された公訴の目的を達成するため、終局判決を得るまでに検察官が行う公判廷における主張・立証、公判準備などの活動を指す。
 「刑の執行」とは、犯罪に対して科される制裁を刑といい、刑法第1編第2章に規定された死刑、懲役、禁鋼、罰金、拘留、科料、没収、追徴及び労役場留置の刑又は処分を具体的に実施することをいう。保護観察、勾留の執行、保護処分の執行、観護措置の執行、補導処分の執行、監置の執行についても、刑の執行に密接に関連するものでもあることから、公にすることにより保護観察等に支障を及ぼし、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報は、本号に該当する。
(3)ここでいう「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防・鎮圧又は捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を中心としたものを意味する。
 刑事訴訟法以外の特別法により、臨検、捜索、差押え、告発等が規定され、犯罪の予防・捜査とも関連し、刑事司法手続に準ずるものと考えられる犯則事件の調査、独占禁止法違反の調査等や、犯罪の予防・捜査に密接に関連する破壊的団体(無差別大量殺人行為を行った団体を含む。)の規制、暴力団員による不当な行為の防止、つきまとい等の規制、強制退去手続に関する情報であって、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあるものは、本号に含まれる。
 また、公にすることにより、テロ等の人の生命、身体、財産等への不法な侵害や、特定の建造物又はシステムヘの不法な侵入・破壊を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報や、被疑者・被告人の留置・勾留に関する施設保安に支障を生じるおそれがある情報も、本号に含まれる。
 一方、風俗営業等の許可、伝染病予防、食品、環境、薬事等の衛生監視、建築規制、災害警備等の、一般に公にしても犯罪の予防、鎮圧等に支障が生じるおそれのない行政警察活動に関する情報は、本号に該当するものではなく、第6号等により開示・非開示が判断されることとなる。
(4)[その他の」公共の安全と秩序の維持とは「犯罪の予防」、「犯罪の鎮圧」、「捜査」、「公訴の維持」又は「升IUの執行」のほか、平穏な市民生活、社会の風紀、その他公共の安全と秩序を維持するために必要な活動をいう。
(5)「支障を及ぼすおそれがある」とは、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序を維持するための諸活動が阻害される、若しくは適正に行われなくなる、又はその可能性がある場合をいう。
(6)実施機関の第一次的判断
 「支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」としているのは、本号に規定する情報に該当するかどうかの判断に当たっては、実施機関の裁量を尊重するという趣旨である。すなわち、本号に規定する情報の開示・非開示の判断には、犯罪などに関する将来予測としての専門的・技術的判断を要するなどの特殊性が認められることから、司法審査の場においては、裁判所は実施機関の第一次的な判断を尊重し、その判断が合理性を持つ判断として許容される限度内のものであるか(「相当の理由」があるか)否かを審理・判断するのが適当であるとして規定したものである。
 なお、「相当の理由がある」か否かについて述べられた判例には、次のものがある。
「その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲をこえ又はその濫用があったものとして違法であるとすることができるものと解するのが、相当である。」(最高裁大法廷昭和53年10月4目判決)
(7)具体例
 対象となる公文書は、捜査機関が作成又は取得したものに限らず、開示請求を受けた実施機関自らが作成し、又は捜査機関等から取得したものも該当する場合がある。
 本号に該当する情報は、例えば次のようなものをいう。
○犯罪の捜査等の事実又は内容に関する情報
 ・麻薬覚せい剤協力調査に関する情報
○犯罪捜査の手法、技術、体制等に関する情報
 ・犯罪捜査等に用いる機材等の性能に関する情報
○情報提供者、被疑者、捜査員等関係者に関する情報
○犯罪の予防、鎮圧に関する手法、技術、体制等に関する情報(犯罪の目標となることが予想される個人の行動予定、施設の所在や警備の状況に関する情報を含む。)
 ・火薬庫台帳
 ・毒物・劇物台帳
 ・麻薬・覚せい剤・大麻の取扱業者名簿
 ・庁舎警備業務日誌
○被疑者・被告人の留置・勾留に関する情報
第14条第6号(事務事業情報)
(6)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの
イ 監査、検査、取締り、試験又は租税の賦課若しくは徴収に張る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれ
ロ 契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、県、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ
ハ 調査研究に係る事務に関し、その公正かつ能率的な遂行を不当に阻害するおそれ
ニ 人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれ
ホ 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業、独立行政法人等、地方独立行政法人又は公社に係る事業に関し、その企業経営上の正当な利益を害するおそれ
【趣旨】
 本号は、事務又は事業に関する情報の非開示情報としての要件を定めるものである。
【解説】
1 本文
(1)県の機関、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は公社(以下「県の機関等」という。)が行う事務又は事業は、公共の利益のために行われるものであり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報については、非開示とする合理的な理由がある。しかし、県の機関等が行う事務又は事業は広範かつ多種多様であり、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれのある事務又は事業の情報を事項的にすべて列挙することは技術的に困難であり、実益も乏しい。そのため、各機関に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報を含むことが容易に想定されるものを「次に掲げるおそれ」としてイからホまで例示的に掲げた上で、これらのおそれ以外については、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」として包括的に規定した。
(2)「次に掲げるおそれ」としてイからホまで掲げたものは、県の機関等に共通して見られる事務又は事業に関する情報であって、その性質上、公にすることによりその適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると考えられる典型的なものである。これらの情報のほかにも、同種のものが反復されるような性質の事務又は事業に関する情報であって、ある個別の事務又は事業に関する情報を開示すると、将来の同種の事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものなど、「その他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」のある情報はあり得る。
(3)「当該事務又は事業の性質上」とは、適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるかどうかを判断するに当たっては、当該事務又は事業の本質的な性格、具体的には、当該事務又は事業の目的、その目的達成のための手法などに照らして行うという趣旨である。
(4)「適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」については、実施機関に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の要件の該当性を客観的に判断する必要がある。また、事務又は事業がその根拠となる規定又はその趣旨に照らして公益的な開示の必要性などの種々の利益を考慮した上での「適正な遂行」と言えるものであることが求められる。
「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる確率的な可能性ではなく、法的保護に値する蓋然性が要求される。
2 イ
(1)「監査」とは、主として監察的見地から、事務又は事業の執行又は財産の状況の正否を調べることをいう。
 「検査」とは、法令等の執行確保、会計経理の適正確保、物資の規格・等級の証明等のために帳簿書類その他の物件等を調べることをいう。
 「取締り」とは、行政上の目的による一定の行為の禁止又は制限について適法又は適正な状態で確保することをいう。
 「試験」とは、入の知識、能力等又は物の性能等を試すことをいう。
 「租税」には、国税、地方税がある。「賦課」とは、公租公課を特定の人に割り当てて負担させることをいい、「徴収」とは、租税その他の収入金を取り立てることをいう。
(2)上記の監査等は、いずれも事実を正確に把捉し、その事実に基づいて評価、判断を加えた上で、一定の決定を伴うことがある事務である。
 これらの事務に関する情報の中には、例えば、監査等の対象、実施時期、調査事項等の詳細な情報や試験問題などのように、事前に公にすれば、適正かつ公正な評価や判断の前提となる事実の把握が困難となったり、行政客体における法令違反行為又は法令違反に至らないまでも妥当性を欠く行為を助長したり、巧妙に行うことにより隠蔽を容易にしたりするなどのおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とするものである。また、事後であっても、例えば、違反事例等の詳細についてこれを公にすると他の行政客体に法規制を免れる方法を示唆するようなものは該当する。
3 ロ
(1)「契約」とは、相手方との意思表示の合致により法律行為を成立させることをいう。
  「交渉」とは、当事者が、対等の立場において相互の利害関係事項に関し一定の結論を得るために協議、調整などの折衝を行うことをいう。
  「争訟」 とは、訴えを起こして争うことをいい、訴訟、行政不服審査法に基づく不服申立て、その他の法令に基づく不服申立てがある。
(2)県の機関等が一方の当事者となる上記の契約等においては、自己の意思により又は訴訟手続上、相手方と対等な立場で遂行する必要があり、当事者としての利益を保護する必要がある。
 これらの契約等に関する情報の中には、例えば、入札予定価格等を事前に公にすることにより、公正な競争により形成されるべき適正な額での契約が困難になり財産上の利益が損なわれるおそれや、交渉や争訟等の対処方針等を公にすることにより、当事者として認められるべき地位を不当に害するおそれがあるものがあり、このような情報については、非開示とするものである。
4 ハ
(1)県の機関等が行う調査研究(ある事柄を調べ、真理を探究すること)の成果については、社会、県民等にあまねく還元することが原則であるが、成果を上げるためには、従事する職員がその発想、創意工夫等を最大限に発揮できるようにすることも重要である。
(2)調査研究に係る事務に関する情報の中には、例えば、@知的所有権に関する情報や調査研究の途中段階の情報などで、一定の期日以前に公にすることにより成果を適正に広く県民に提供する目的を損ね、特定の者に不当な利益や不利益を及ぼすおそれがある場合、A試行錯誤の段階の情報で、公にすることにより、自由な発想、創意工夫や研究意欲が不当に妨げられ、減退するなど、能率的な遂行を不当に阻害するおそれがある場合があり、このような情報を非開示とするものである。
5 ニ
 県の機関等が行う人事管理(職員の任免、懲戒、給与、研修その他職員の身分や能力等の管理に関すること)に係る事務については、当該機関の組織としての維持の観点から行われる一定の範囲で、当該組織の独自性を有するものである。
 人事管理に係る事務に関する情報の中には、例えば、勤務評価や人事異動、昇格等の人事構想等を公にすることにより、公正かつ円滑な人事の確保が困難になるおそれがあるものがあり、このような情報を非開示とするものである。
6 ホ
 県、国若しくは他の地方公共団体が経営する企業(地方公営企業法第2条の適用を受ける企業及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和23年法律第257号)第2条第2号の事業を行う国の経営する企業をいう。)又は独立行政法人等、地方独立行政法人若しくは公社に係る事業については、企業経営という事業の性質上、第3号の法人等に関する情報と同様な考え方でその正当な利益を保護する必要があり、これを害するおそれがある情報を非開示とするものである。ただし、正当な利益の内容については、経営主体、事業の性格、内容等に応じて判断する必要があり、また、その開示の範囲は第3号の法人等とは当然異なり、その事業に関する情報の非関示の範囲は、より狭いものとなる場合があり得る。
**********

【ひらく会情報部・この項つづく】
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