2012/5/30  23:53

カドミウム汚染地へのメガソーラー導入に係る質問状に対して1ヵ月以上も回答しない東邦亜鉛の思惑  東邦亜鉛カドミウム公害問題

■昨年の3.11東日本大震災を契機に、日本の電力事情は様変わりをしました。とりわけ、群馬県でも大口の電力需要者であり、人口約37万人の高崎市の一般家庭すべての消費電力を1社だけで上回るといわれている電気亜鉛製造を主力事業とする東邦亜鉛安中製錬所では、これまで東京電力から破格の安さで電力を調達してきましたが、この度の東電による大口向け電気料金16.39%値上げ方針(東電は原発再稼働がなければ、値上げ率が24.79%になると脅かしている)を受けて、電力ピーク時の夏場の操業を2カ月間、コスト削減のため操業を停止するという措置を先日発表しました。


 当会は、15年ほどまでに、東邦亜鉛へ電力を供給する送電線の更新の話があった際に、地区の景観を阻害する送電線や送電鉄塔を廃止する為に、自家発電施設の導入の検討を提案した経緯がありますが、夜間電力利用や大口電力需要家としてのバーゲニング・パワーにより、1キロワット当たりの電力単価が極めて安く済むという理由で、初期投資の負担の大きい自家発電施設の話には耳を傾けようとしませんでした。今回、そのツケが回ってきたといえるでしょう。

■ところで、昭和40年前半に、富山県の神通川流域の三井金属鉱業神岡鉱業所のカドミウム公害によるイタイイタイ病が公害病として広く世間に認知されたことと合いまって、群馬県安中市の東邦亜鉛安中製錬所から長年にわたり排水や排煙に混じって排出された大量のカドミウムによる土壌汚染や亜硫酸ガスによる大気汚染により、安中製錬所周辺でも農産物や養蚕業への被害として長年顕在化していたこと、また、イタイイタイ病に類似した症例や喘息患者が周辺より異常に多いという指摘により、安中公害として全国的に広まりました。そのため、それまで東邦亜鉛の高飛車な態度に苦しめられてきた地元農民らが立ち上がり、ついに1972年3月31日に前橋地裁に提訴しました。

 裁判は実に10年に及び、1982年3月20日、東邦亜鉛の故意責任を認め、賠償額を要求額15億5478万円(提訴時より増額されている)の僅か5%の7993万円とする不当判決がおりました。非情な東邦亜鉛に加担する裁判所の追い討ちにあった農民は直ちに同年4月12日に控訴し、14億120万円を東邦亜鉛側に求めました。

 1985年5月24日、東京高裁による和解勧告が出て、それを踏まえて協議の結果、1986年9月22日、東邦亜鉛が住民らに4億5000万円を支払うことで、和解が成立しました。

■しかし、これで公害問題が片付いたわけではありません。

 安中製錬所周辺の安中、中宿、岩井地区の一部の水田は客土が行なわれましたが、野殿や岩井地区の畑地は、安中製錬所のカドミウム等の重金属を含む排煙により降下煤塵にため、高濃度の重金属に汚染されたままとなっており、公害訴訟から既に40年が経過しているにもかかわらず、まだ手付かずのまま放置されています。

 こうした中、昨年の3.11大震災を契機に原発事故の巨大リスクを回避するため、自然エネルギーが見直されていることはご承知のとおりです。

■その後の法整備に伴いメガソーラー計画が今年初めから俄かに注目され、東邦亜鉛安中製錬所周辺の重金属汚染地にメガソーラーを導入するという話が、今年の元旦に北野殿公会堂で行なわれた地元新年会の会合で挨拶に立った岡田義弘・安中市長の口から飛び出し、集まった地元住民を驚かせました。

 このため、長年、東邦亜鉛の不誠実で汚いやり方に不信感を刷り込まれてきた地元住民は、東邦亜鉛から長年に亘り献金を受けている同市長の発言のウラには、東邦亜鉛の存在があると看破したのでした。

 時期をほぼ同じくして、東邦亜鉛の地元対策担当者だったOBが北野殿の幹部らの自宅を訪れ、メガソーラーの新聞切抜きを配ったという情報が村中を飛び交いました。
クリックすると元のサイズで表示します
東邦亜鉛OBが地元に配布した新聞記事の写し(1月26日読売)
クリックすると元のサイズで表示します
東邦亜鉛OBが地元に配布した新聞記事のコピー(1月23日上毛)

 そのため、東邦亜鉛が、安中製錬所の周辺の汚染地の指定解除のために、本気でメガソーラー発電を提案しているのかもしれない、と考えた当会は、直接東邦亜鉛の社長に確認すべく、4月16日に東京都日本橋にある同社の本社を訪れて、応対に出た技術担当重役に次の質問状を手渡しました。応対に出た重役はさっそく、“環境管理部長に後で確実に渡しておく”と約束しました。

**********
                       平成24年4月16日
〒103-8437 東京都中央区日本橋本町1丁目6番1号(丸柏ビル3〜5階)
 東邦亜鉛株式会社 社長 手島 達也 様
                       〒379-0114 群馬県安中市野殿980
                       小川 賢
北野殿地区における貴社安中製錬所周辺公害地におけるメガソーラー計画について(質問)
 平素より、地域の産業振興に関してご尽力賜り厚く御礼申し上げます。
 さて、長年にわたり、地元の公害汚染農用地に対する公害防除にかかる農業農村整備計画に基く土地改良問題が懸案として残ったままになっており、公害の原因者である貴社のご協力がますます重要な役割を期待されております。
 一方、昨年の3.11東日本大震災で発生した東電福島原発事故による自然エネルギーの見直しの気運が後押しになり、最近、メガソーラー計画が世間が注目を浴びております。
 こうした状況下において、昨年末から今年初めにかけて、地元安中市在住の貴社OBのかたが、地元の幹部ら宅を訪れ、メガソーラー計画の推進に関する新聞スクラップを提示するなどして、メガソーラーに対する貴社の関心を示唆する行動をおとりになりました。
 また、安中市の首長も、メガソーラー計画の誘致についてなみなみならぬ意欲を見せております。
 つきましては、このことについて、次の質問があります。お手数ですが、4月26日(木)までにご返事をいただければ幸いです。
1. 貴社は、北野殿地区の公害汚染地の指定解除に向けた施策のひとつとしてメガソーラー計画をどのように位置付けておりますか?
2. 貴社は、同地区においてメガソーラー計画の実現について、何らかの検討をされていますか?
3. 貴社は、公害防除特別土地改良事業として、一定の負担(およそ10億円強と言われています)を義務付けられているようですが、もし、メガソーラー計画の実現に向けた背策の検討を行なう場合、その負担予定額全額を、メガソーラー計画に投入することは可能と考えていますか?
                    以上
**********

■ところが、その後1ヶ月以上経過したにも係らず、東邦亜鉛の代表者からは梨の礫です。

 そのため、5月29日の午後3時過ぎに、東邦亜鉛安中製錬所を訪問し、同所幹部らと面談してこの件について東邦亜鉛の真意を質しました。

 彼らの説明は次のような趣旨でした。
 @4月16日付の質問レターの件は本社から安中製錬所にも連絡があったので、内容は知っている。
 A我々としては本社の怠慢だと思っており大変失礼だと思っている。こちらからも本社にプッシュしてきちんと回答したい。
 B汚染地へのメガソーラー計画の導入については、メリットがないので検討していない。農業関係法律の公害特別事業が、メガソーラーで変更になるはずがないからだ。
 C結果的にずっと本件が凍結されて公害特別事業がストップしている形になってしまったが、別に策をめぐらせているわけではない。
 D今回のメガソーラー計画はこれまでの農業がらみの流れとは別なので、これに我々が首を突っ込むと混乱しかねない。そのため、我々は発言を控えざるを得ない。
 E何かをしないと汚名がいつになっても晴れない。メガソーラー計画でも汚染地の指定を解除して、土壌改良を必要としない雑種地としてもらえればよい。
 F昨年8月までは、確かに公特事業を今すぐ進めたいというスタンスで県が積極的に動いていたが、その後、担当者3名が揃って異動になり、音沙汰がなくなったので、正直、面食らっている。
 G東邦亜鉛としても、10億円の費用を確保する為に、予算措置をとろうとした矢先、行政が何も動きがなくなったことに戸惑っている。
 Hこの問題についてはとにかく早期にケリをつけて汚名返上したいのが東邦亜鉛としての本来の姿勢。
 I他の重金属汚染地の富山県や秋田県は、既にきちんと土壌汚染問題を長い時間をかけて解決を済ませている。群馬県はコメどころではないので、行政にも真剣味が足りないのかもしれない。

 当方からは、次のコメントを返しておきました。
 @もともと、東邦亜鉛は周辺住民の声を軽視してきたので、今回の仕打ち(質問状への無回答)もその延長線上にあるのではないか。
 A東邦亜鉛からカネをもらってきた安中市長はもとより、群馬県の役人が“公特事業なんかやりたくない”というのが本音なのだろう。
 B昨年夏までは、確かに公特事業の再開に向けて県が積極的に動いていたことは地元住民にも聞こえていたが、急にトーンダウンしたのは事実。誰かが政治力を使って役所に圧力をかけて計画を妨害しているのではないか。
 C東邦亜鉛は、グローバル企業を標榜し、ゼロエミッションのエコ企業を目指すとHPでもうたっているが、実際には安全宣言をしたくないという前近代的な考えの御仁が経営陣の中にいるとすれば問題ではないのか。

■東邦亜鉛側から、ほかに次の話がありました。
「上記の質問レターに、弊社OBが地元住民を回っているという指摘があるが、事実関係を確認するために、実際に当の本人を呼び出して問いただした。東邦亜鉛のOBが地元をそういう意思で本当に回っているのであれば、OBとはいえ、会社にそのような行動について報告をしてもらわないと情報困るからだ。本人に確認した結果、当人からは、“そのようなことをしていない”とコメントを得ている。再度念押しをしたが、当人は“本当にしていない”と明言した。そういうことなので、東邦亜鉛としてはメガソーラーについてOBがそのようなことをしたという認識は持っていない」

 このことについては、当会は、既にブログで報告したとおり、東邦亜鉛のOBが実際に地元に配布した資料を入手しており、OB本人がメガソーラー計画を報じた新聞の切抜きコピーを配布したことは事実であると信じています。

■もし、OB本人が信念をもって自主的に、長年付き合って顔馴染みの周辺住民らにメガソーラー計画のメリットを説明したのであればともかく、東邦亜鉛では本人に確認したところ、上記のような返事だったということで、これは同社OBが、直接、元の勤務先から詰問されたため、急遽事実を認めたくなかったので、事実と異なることを言わざるを得なかったのか、それとも、会社ぐるみで口裏を合わせて事実と異なることを言っていることになります。

 いずれにしても、安中製錬所では、社長もしくは環境管理部長名で、当会の質問に対する回答を“しかるべく早期に出します”と言っていることから、同社OBによる地元への根回しが事実だったのかどうかを含め、東邦亜鉛として誠意ある見解が得られるのかどうか、回答書を見た上で判断したいと思います。

■ただし、懸念される点として、同社の環境管理部長は安中市長と姻戚関係にあるため、環境管理部長名で回答が来た場合、本当に東邦亜鉛としての正式回答書として看做すことができるのか、それとも、安中市長の意向が反映された形の内容になるのか、定かでないことです。

 東邦亜鉛が、当会の質問状のあて先のとおり、折り返し、同社代表者=社長の名前で回答書を送ってくるのかどうかが、同社の誠意度を評価する大きな指標になると当会では考えています。

【ひらく会情報部】
0



コメントを書く


名前
メールアドレス
コメント本文(1000文字まで)
URL




teacup.ブログ “AutoPage”
AutoPage最新お知らせ